また明日を迎える為には、今日を終えなきゃいけないから。
おかえり、今日もお疲れ様。
日が暮れて、月が昇って、もうじき夜更けだ。
世界が真っ暗闇に包まれる。
だけど、恐がらなくても良いよ。
俺が付いてるから。
何時だって側に居るよ。
だから、今だけは無理して笑わなくても良いよ。
偽って誤魔化したりしなくて良い。
有りの儘のアンタで居てよ。
泣きたくなったのなら泣けば良いし、吐き出したくなったのなら吐き出せば良い。
背負い込んでるものが重くて辛いのなら、一旦下ろして軽くしたら良い。
話なら何だって聞くからさ。
何処からだって良いよ。
アンタが話したいと思った事を口にしてみなよ。
上手く喋ろうとしなくても良いから。
俺に話して聞かせて。
吐き出して、軽くなって、少しでも心が楽になって、また明日を望めるようになったなら。
御飯を食べて、お風呂に入って、歯を磨いて、服を着替えて、床へ向かおう。
大丈夫、俺が付いてるからさ。
世界が闇に満ちて夜に覆われたって、恐いものなんて無いから。
今は休む事が大事だよ。
酷く辛い出来事に遇って、先に進む事も出来ないくらい落ち込んだのなら、無理に進もうとしなくて良いよ。
泣きたくても泣けなくて泪が枯れちゃってるのなら、泣けるようになるまで待つよ。
アンタの手を握って、背中も擦ってあげる。
ずっとずっと寄り添っていてあげるからさ。
前も見えないくらい視界が眩んじゃったのなら、一度立ち止まってみようよ。
立ってるのも辛いなら、膝を折ってしゃがみ込んだって良いんだよ。
そうして、ちょっとだけ休もうよ。
もし、もう身体を起こしているのも辛いなら、早めに横になろう。
そうして、疲れた心と身体を労ってあげようよ。
眠るのが恐いなら、眠気が来るまで手を握っていてあげるから。
頭を撫でていてあげるから。
子守唄でも歌っていてあげるから。
アンタの側にずっと居るよ。
だから、安心して。
今日もよく頑張ったじゃん。
無事に生き延びれただけでも偉いって。
どんなに今日が悪い日だったとしても、今日が終われば、また明日は来るから。
明日は、きっと良い日になるよ。
だから、今日はもう寝ちゃおう。
嫌な事があったのなら、尚更、早く寝ちゃってさっさと忘れちゃおう。
今日はもうお終い。
崩れたメイクなんか落として、綺麗さっぱりしちゃおうよ。
アンタはアンタなんだから。
誰でもない、代わりなんて居やしないんだから。
さぁ、寝る準備が整ったんだったら、布団に入る。
アンタが眠った後だって、俺はずっと側に居るんだから。
離れてやったりなんかしないんだから。
寝ている間に悪夢がアンタの事を襲おうとしたって、俺が付いてれば大丈夫。
俺が全部斬っちゃうから。
安心しておやすみ。
「アンタが真っ暗闇に呑まれて光を失って道に迷ったのなら、何時だって俺はアンタの手を取って導いてやるよ。アンタの手を引いてやるのは、俺の役目だかんね。明日が見えなくなったのなら、俺を呼んで。俺の手を掴んでみて。そしたら、絶対にアンタの手を離さずに夜を越させてあげるから。」
ぼろぼろと溢れて止まない雨が彼女の頬を濡らす。
堰き止めていたものが決壊したように溢れ、地面の布を濡らしていく。
吐き出せるものは吐き出させてやらなきゃ、此れから先を上手く歩けない。
濡れた睫毛が閉じられる。
今はただ、ゆっくりとおやすみよ。
今流れる雫も、明日にはきっと乾いちゃってるから。
―疲れて眠る彼女の横で、曉色をした眸は夜を見つめた。
執筆日:2019.04.03