世界が綺麗な事を知ったから、泪が出たんだ。
その裏側が酷く醜いものだと知ったから、解った事なんだ。
だから、世界が綺麗なのを知って泪したんだ。
酷く脆い内側を思い知ったから、とても悲しくて哭いたんだ。
其れでも、世界は本当に綺麗だと思ったんだ。
ちっぽけな悩みが馬鹿らしくなってくる程に、綺麗に耀いて見えたんだ。
あまりにも眩しく見えたから、つい顔の前に掌を翳して目を眇めたんだ。
だけども、その目映い耀きは変わらなくて、目に沁みたんだ。
抱えてたものが辛くて苦しくて、全部投げ捨ててしまいたかったんだ。
堪らず顔を地に伏せて、嘆いてしまいたかった。
灯火さえも擲(ナゲウ)ってしまおうかとも思ったんだ。
だけども、思い止まらせてくれたんだ。
目映く見えた光の先で手を差し伸べてくれる君が居てくれたから。
綺麗な裏側が醜くくても、綺麗な耀きは失われる事は無いから。
此処まで導いてくれたから。
世界が本当に綺麗だった事を知れた。
醜い世界しか知らずに終わる事が無くなって良かったと思った。
世界は本当に綺麗だ。
君は可笑しそうに笑った。
止まらぬ泪を拭ってまた一緒に来ようと言ってくれる。
君と出逢えたから、向き合う事が出来たんだ。
君が共に歩んでくれると言ってくれたから、今此処に居られるんだ。
過去は捨てる事も出来ない、忘れる事も出来ないと、もう充分に思い知った。
君が笑って手を差し伸べた。
その手を取って、今日を、そして、また明日を歩むんだ。
何時の日か、心の底から嫌った明日という夜明けを迎える為に。
眩しい朝日が雲間から射して世界を照らした。
日陰者だった私に世界の耀きを教えてくれた太陽のようなひとに背を押され、今日も歩む。
目元はまだ濡れている。
けれども、頬はもう乾いたから、明日を進もう。
背中を押す君が笑った。
「おんしが望むなら、何時でも支えちゃるき。不安に押し潰されて、独りで立てんようなって動けんようなったら、わしがおんしにまた明日を望めるよう世界を見せちゃる。朝日を一緒に迎える為に、おんしがまた笑えるようにする為に。おんしの背中を押すんは、わしの役目やきの。」
朗らかに歯を見せ笑った君が、振り向いた私にそう言った。
―後ろに続く、白く長く伸びた尾っぽが愉しそうにぴょこん、と跳ねた。
執筆日:2019.04.03