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出来る男



電子端末で書類を書き進める作業を続けている時の事だった。

合間合間に喉が渇くからとマグに入れたお茶を口にしていると、ふと作業を始めてから長い時間が経っている事に気付く。

すると、頭を使う仕事をしていた故か、何となく甘い物を口にしたいなと思った。

何か小さな物…そうだ、ちょっとした飴玉やチョコレートなんかで良い。

取り敢えず、糖分を摂取したいなと一瞬考えたが、その為に今まで順調に続けてこれていた作業の手を中断させるのは憚られた。

寸分の刹那、思考を逡巡させた。

その間、不自然に止まっていた手に気付いていたのか、ふと近侍勤めをしていた山姥切の本歌、長義君が近寄ってくる。

そして、不意打ちに口許へ小さなボール状の形をしたチョコレートの玉を放り込んだのだ。


「…全く、それくらいの事で思考を逡巡させるのは止めてくれないか?そんな小さな軽い事に一々仕事の手が中断されてしまっては面倒だからね。」
『…!………!?』
「嗚呼…何故解ったんだ、と言いたげだね…?答えは簡単さ。君は見ていて解りやすい。だから、日々観察していれば、今君が何を求めようとしているのか、手に取るように解るよ。君は非常に素直で解りやすいお人だからね…。それに、俺は与える側の者だ。君の思考を理解する事なんか、出来て当然の事なんだよ。」


そう言って、自信満々な笑みを浮かべて、空になったマグへとおかわりを注いでくれるのだ。

長船の刀って、どうしてこうも出来る男が多いのだろう…?

長義君は、政府出身だった事も相俟ってか、特に出来る男過ぎてコワイ。

おまけに、顔も良くてイケメンと、ビジュアル自体も完璧過ぎる男だ。

性格には少し難癖があるが、他の要素がそれをカバーしている時点で、然して気にならないという…。

見た目も中身も完璧で格好良いとは、罪作りな男である。


「…どうしたかな?そんなにまじまじと見て。何か気になる事でもあったかな…?」
『いやぁ…長義君って、やる事成す事本当イケメンっていうか、サラリと色々こなしちゃうから格好良いなぁ〜、と…。』
「まぁ、そう言われても当然の事だろう。俺は偽物君とは違うからね。持てるものこそ、与えなくては。」
『…っはぁ〜、……そういうところだよ、長義君。』
「はい…?」


また別の疑問が湧き出てきて、あからさまな溜め息を吐くのだった。


執筆日:2019.04.13