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世界の中心で萌を叫べ!



『おい、お前等。出掛けるぜ…!』
「出掛けるって…何処へ?」
『現世だ。』
「現世に何しに行くんだ?」
『ふっふっふ…っ。それは、着いてからのお楽しみというヤツさ!』
「「「?」」」


そんな話を、内番の畑仕事をしていた午前九時頃にされ、唐突として現世へと出掛ける事になった伊達組一行。

急いで用具を片付け、現世へ行く為の洋装に着替えると、早速現世へと繋げたゲートを潜るのだった。


着いた先は、主の出身である豊後国のとある地方だった。


「これから何をするの…?」
『とあるイベント事に参加する。』
「イベント事って、一体どんなイベントなんだ…?」
『美味い肉食って、想い想いの思いの丈を叫ぶイベントだ。』
「何だ、それ…。」
『取り敢えず、付いて来いって!』


言われるがまま、彼女の後を付いていく三振り。

いまいち、よく解っていない状況だが、何やら楽し気な雰囲気の彼女を見て悪い気はしないので、大人しく従うのだった。

彼女の後を付いていくと、何百人もの人で賑わう場所に着いた。

イベントの係の者だろう、緑色のゼッケンを付けたスタッフの元へ歩いていき、受付を済ませる。

すると、何やら道具と肉と野菜が入ったボウルに、スタッフが付けている物と同じ物を渡され、軽い説明を受けた。


「これ、自分達で焼くんだよね…?」
『うん。彼処らへん空いてるから、彼処にシート敷いて焼こうかっ。』
「この肉、美味いのか?」
『美味いよ。』
「そもそも…わざわざこんな所に来なくても、肉なら本丸でも食えるだろう…。」
『それじゃ、いつもと一緒じゃん。お天道様降り注ぐ陽の下、空気も美味しい自然豊かな山の麓で食べるからこそ、美味いんでしょうが!』
「普段インドア派な君から、そんな言葉が出てくるとはな…。驚きだぜ。」
『黙らっしゃい。だが、このイベントは、ただ美味い肉を食べるだけのイベントじゃないんだぞ?肉を食った後に、面白さが待ってるんだ…!』


ニヤリと悪どい顔をしてやる気を出す彼女に、ほんの少し引きつつ、用意された道具をセッティングし始めた伊達組。

イベント開始の合図が鳴れば、一斉に肉や野菜を焼き始める参加者達。

皆、美味しい肉を頬張りつつ、顔を綻ばせている。


『ん〜っ!やっぱ地元のお肉美味い…っ!!』
「本当だ…っ。普段、僕達が食べてるお肉も美味しいけど、それに負けず劣らず美味しいよ!」
『ウママァ〜ッ!やっぱ参加して良かった〜…。一度は参加してみたいと思ってたんだよねぇ…。んぐんぐ。』
「そんなに凄いイベントなのかい?主。」
『毎年、テレビで全国放送されるくらい有名なイベントだからな。凄いんだぜ!』


もぐもぐと箸を休めない彼女は、栗鼠の如く口いっぱいに肉を頬張る。

ご飯、美味い…っっっ!!

全身でそんなオーラを放つ彼女に、普段厨に立ち、料理を作る光忠は嬉しそうに微笑んでいた。


「美味しいね。お肉も野菜も、まだたっぷりあるから、遠慮せず食べてね!」
『ふぐぅーっ!』
「口に物を詰めたまま返事をするな。飲み込んでからにしろ。」
『むぐぐ…っ。』
「何か、君等、普段の食事風景と変わらないぞ?」
『ほうかな…?』
「あっ、璃子ちゃん!口許、お肉のタレ付いてる…!」
『んっ。本当…?何処…?』
「此処だよ。僕が拭いてあげるから、ちょっと動かないでね?」
『んー。ありがと〜。』
「本当、現世に来てもブレないな、君…。」


彼女の世話をする光忠の様子に、些か呆れた目で見る鶴丸。

その言葉に、彼は至極当然とばかりな様子で答えた。


「だって、何処に居ても、彼女が僕等の主である事に変わりはないだろう?」
「こりゃ、驚いた…っ。まさかそんな答えが返ってくるとはな…。」


もぐもぐとご飯を食べる璃子は、頬いっぱいに詰め込み、もきゅもきゅと咀嚼していた。

右隣に座る大倶利伽羅が、丸く膨らんだ頬をつついて遊ぶ。


「まるで栗鼠だな…。」
『むんぐ…っ。やめれ。』
「ふん…っ。」


そうやって仲良く四人で楽しく食べ進めていけば、気付けば、時間は十二時を回っていた。


『おっと、絶叫タイムが始まる頃か。』
「絶叫タイム…?」
『そのうち、俺も行かなきゃな。』
「何だ、君も参加してるのかい?」
『おうよ!叫ぶ台詞も、もう決めてあるんだぜ?』
「へぇ…、それは楽しみだね。」


これから始まるのは、参加した人々が、各々想った思いの丈をお立ち台から叫び、声の大きさやその内容のユニークさを競うイベントである。

エントリーしていた璃子は、順番が回ってくる頃には腰を上げ、絶叫者の列へと並ぶ。

順番がきて、イキイキとした笑みを湛えてポジションへ立った彼女。

そして、思いっきり息を吸い込んで、腹から声を張り上げた。


『嫁らぁーぶっ!!俺はみっちゃんが大好きだあーっ!!愛してるうぅーっっっ!!』
「ちょ…っ!?まさかの此処でそれ叫ばなくても良いじゃないか!恥ずかしい…ッ!!」


思わぬ彼女の叫びに、光忠は赤面して照れた。


「こんなの、格好悪いよ…!!」
「じゃあ、今度は君が叫んでやれば良いじゃないか。なぁ、伽羅坊…?」
「俺は、馴れ合うつもりはない。」
「よし…っ、僕もエントリーしてくる…!」
「おお…っ、とうとう君も出場か…!喜べ主!!」
『ただいまぁ〜っ、何の話?』
「光忠がアンタに対抗する話だ。」
『は…?』


その後、しっかり仕返しに叫び返した光忠に、主赤面沈没涙。

暫くは、踞って打ち震えていたという。

偶然、参加していた審神者さん達に、何故か祝福された光忠は満更でもなさそうだ。

実は、他本丸清光も参加していて、その本丸の主さんが、璃子と同様の内容の台詞を叫んでいたのであった。


「きよみつーっ!!私の嫁こと初期刀清光ぅーっ!!世界一可愛いよーっっっ!!これからももっと愛してあげるからねえーっっっ!!」
『わぉ、私と同類さん居たわ(笑)。』
「似た者同士だなぁ〜。案外気が合うんじゃないか?」
『後で声かけてみるよ。』
「それ、何かナンパしに行くチャラ男みたいだよ…?」
「ぶ…っ。」
『おい、伽羅。後でヘッドロックの刑な。』


そんな会話を飛び交わしていると、先程の主さんの本丸清光が叫んでいた。

あ、エントリーしてたんですね。

把握。


「主ぃーっ!俺の事愛してくれてありがとぉーっ!!主もー!世界一可愛いからねぇー!!」
「わぁ〜両想いだね、あの子。」
『微笑ましいな…。』
「君等も大して変わらん気がするがな〜。」


他本丸清光が叫んでいる最中、一行はぺちゃくちゃと喋っていた。


「これからも、俺の事めいっぱい可愛がってよねーっっっ!!」
『うんうん、清光は可愛いよ。ウチの清光もきっと負けてないね!』
「あれ…?君の彼氏は誰だっけ…?」
『ん?光忠だね!』
「うん、僕だよね…?浮気は許さないよ?」


「わあーっ!!」と歓声が聞こえて盛り上がる会場。

皆、笑顔に満ち溢れていて、賑やかだ。


『あー、お肉美味い。』
「嗚呼…美味いな。」
「ちょっと、話聞いてるの…?あ、コラッ、お肉ばっか食べないの!ちゃんとお野菜も食べて!」
『ウチの光忠がオカン…。』
「何か言ったかな?」
『いえ、何にも。』


未だ、照れの残る璃子は、彼の事をまともに見れずにいた。

それに気付いている鶴丸は、酷く面白い物を見付けたと意地悪な笑みで笑って、成り行きを眺める。

敢えて、我関せずとする大倶利伽羅も、実は彼同様、二人の様子を観察していたのだった。


「まだ照れてるの…?」
『照れてない。』
「嘘ばっか。さっきから一度も僕の目、見てくれてないだろう?もう…っ、可愛い反応は嬉しいけど、少しはこっち向いてくれないかなぁ…?寂しいじゃないか。」
『ゔ…っ。それは反則だろ…っ!』
「ふふ…っ。漸くこっち見てくれた。僕の可愛いお嫁さん…っ?」
『!!?』
「おおーいっ、お二人さん。イチャつくなら、二人きりの時にしてくれないか?熱過ぎて叶わん。」
「光忠に嫁と言った仕返しだな。」


執筆日:2017.10.16