「何時まで燻っているおつもりですか?」
彼の鳥が側に寄ってきたかと思ったら、開口一番にそう言い放ってきた。
彼が言う、“燻っている”というのが何を意味し指しているのかは解っている。
解っているが、解らないフリをしているのかもしれない。
もしくは、解っていて無視をし続けているのかも。
或いは、本当に解っていなくて、その意味に気付いてすらいないのかも。
下らない問答が己の心中に落ちる。
其処に、再び彼の言葉が落とされた。
「とっくに貴女は自由の身なんですよ。それなのに…貴女はまだこんな檻染みた鳥籠の中に居座って、外の世界を羨ましげに眺めている。…正直、もううんざりしているのでしょう?飽きてしまったのなら、早く出ておしまいなさいな。貴女の羽根は、其れを望んでおいででしょう…?」
長い淡い桃色の髪を尾のように流して謳う。
―そう、彼の言う通りだ。
自身はとっくに自由の身だ、と。
頭は理解しているも、心はまだ囚われているが如く、その自由な四肢を伸ばさない。
重い足枷は、まだ付いたままだ。
しかし、その枷の鎖は既に朽ち錆びて千切れてしまっている。
後は、意思を働かせ、その身を動かすだけだ。
鳥は何時だって自由に羽ばたくもの。
「こんな狭い小さな世界に留まってないで、もっと広い世界に飛び立ってはどうですか?独りがお寂しいのでしたら、僕も付き合いますよ。どうせ暇ですからね。」
淡い桃色の鳥は、そう宣ってふてぶてしげに笑う。
「…箱庭のような鳥籠の戸は、もう開いていますよ。後は、貴女のその仕舞って持て余している翼を広げるだけです。」
隣に御坐す鳥が、美しき翼を広げた。
鳥籠の鍵は開いている。
後は、意思に従い、翼を動かすだけ。
隣の鳥は飛び立った。
彼の者を追って、自身も飛ぶだけ。
だがしかし、まだその意思は弱い。
脆く崩れ掛かった籠に、或る鳥は居続ける。
残された鳥は、ただ虚ろに蒼空を眺めるだけであった。
執筆日:2019.07.28