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どうしようもない



◎審神者が体調を崩して机上にべっちゃりと伏せました。

【初期刀・加州清光の反応】


「どうしたの、主…?大丈夫?」
『……胃が痛い…。』
「胃が痛いの…?」
『うん…。お腹はお腹で痛いんだけど、下腹部っていうより圧迫された胃がズキズキして痛い…っ。あと、ついでに頭と腰も重くて痛む。』
「あ゙ー……っ。もしかして、女の子の日来ちゃった…?」
『うん…生理痛で胃が痛くて辛い……、ゔぅ゙…ッ。』
「あ゙〜…うん、辛いよね〜…。俺、男だから分かってあげられないけどさ。」


そう言って、清光は、優しく貴女の頭を撫でてくれました。

少しだけ生理の辛みも和らぎます。


「あんまし辛いなら、今日の執務もう止めとく…?」
『………うん…ちょっとお休みしとく…。』
「分かった。んじゃ、他の面子の奴等にもその事伝えてくるね。あと…何か主が飲めそうな飲み物、持ってくるよ。お茶はあんまり受け付けないんだよね…?」
『うん…ありがとね、清光〜…。出来れば、スポドリを頼んます…っ。』
「オッケー。じゃ…ちょっとだけ俺側から離れるけど、我慢してね?ゆっくり楽な体勢で待ってて。辛かったら、横になってても良いから。」
『うぃ〜っす…。』


優しくポンポンと軽く頭に触れた後、彼は飲み物を取ってきてくれると言ってくれました。

生理で辛い貴女は、そんな一言でも癒されました。

一人部屋に残された貴女は、清光が戻ってくるまで暫くその場で横になる事にしました。


◎審神者が体調を崩してパソコン前でべちゃっと畳に伏せていました。

【偶々に部屋を訪ねてきた大倶利伽羅の反応】


『ゔぇ゙〜………っ。』
「…、何やってるんだアンタ…?」
『ぅ゙ゔゔ…ッ、胃が痛い……!』
「は…?」
『ぅ゙〜……気持ち悪い、気分悪いぃ…っ。』
「…………。」
『………お゙ぅ゙ぇ゙…ッ。』


辛い為か躰を丸めて蹲っていた貴女を見て、彼は暫し無言で立ち尽くしていました。

しかし、貴女が時々辛そうに言葉を漏らすのを聞き、側へと近寄ってきました。

貴女に近寄った大倶利伽羅は、そっと貴女に触れ、肩を擦ってくれました。

そこで初めて彼の存在に気付いた貴女が、蒼白い顔で彼の方を振り返り見ます。


『ん゙ぅ…っ、伽羅ちゃん……?』
「嗚呼…俺だ。顔色が悪いな…普段と比べて血の気が無い。体調悪いのか?」
『う、ん……ちょっと、アレが来てるせいで…少し。』
「アレ、か………。大丈夫か?」
『ん…ちょっと今、胃が痛くて気持ち悪いだけだから……っ、少し休めば楽になるよ…。』
「…そうか。」


少し会話をしただけで疼いた胃の痛みに、貴女は再び唸り始めました。

その様子を見兼ねた彼が、優しく貴女の側に寄り添い、痛みが少しでも和らぐようにと背を撫でてくれます。

少しの間、側に誰も居なくなっていた寂しさがすぐに埋められました。

彼の優しさと労りが弱った躰に沁みて、迂闊にも涙が溢れそうになるのでした。


◎審神者が時折辛そうに呻き声を上げながら畳の上に伏せていました。

【審神者に用事があって訪ねてきた無用組の反応】


「おーい、主ー?明日の出陣についての事なんだけどよ…って、ぅお…っ!?」
「んあ?何だ、どうかしたのか正国…って、うわ!どうしたんだ、主?だ、大丈夫か…っ!?」
『ん゙ぅ゙……っ、その声は…無用組、ぎねとたぬさんか。』
「あ、アンタ、どうしたんだよ…!?」
「どっか具合悪いのか?」
『ん゙…ちょっと、ね〜…。』
「そんな蒼白い顔して“ちょっと”な訳があるか!何でそんなになるまで無理したんだよ…。」
「なぁ、大丈夫か…?どっか痛かったりするのか?」
『…あ゙ー、まぁ…頭と胃と腰が現在進行形で痛いかな……っ。』
「ええ…っ!其れ、本当に大丈夫か…!?」
「大丈夫だ…そこまで心配するまでもない。此奴の不調の原因は、“生理”だ。」
「へ………?生理…?」


貴女がぐったりと辛そうに蹲っている様子を見るなり心配の声を上げた御手杵へ、側で寄り添ってくれていた大倶利伽羅が端的に答えます。

その言葉に、数秒の間、固まり動きを止めた二人。

言葉を噛み砕いて漸く理解出来た二人は、途端にそれぞれ視線をそっぽへと逸らしました。

貴女の不調の理由を知った同田貫は、気まずそうに小さく言葉を零します。


「…あ゙ー、ソイツは確かに辛ぇだろうな…。男の俺達にゃ一切分かんねぇけど。」
「うん…まぁ、その、何だ…。あんまり痛くて辛いっていう時は、言ってくれよ?俺、刺す以外能がないから、大して力になってやれる事は出来ないだろうけどさ…。ほ、ほら、今は人の身があるから、何か必要な物あったら取ってこれるし!」
「側に付いて居てやれる事も出来るしな。」
『ゔっす…ありがとなのです〜…。』
「なぁなぁ、アレだったら…布団で寝た方が良いんじゃないか?俺、布団敷いてやろうか?」
「嗚呼、その方が良いだろうな。よし…敷くか。今寝れる準備してやっから、ちょっと待ってろよー。」
「…布団敷けたら起きれるか?」
『あ゙ー…うん、何とか頑張れば…。』
「無理なら運んでやる。」
『お゙ぅ゙……っ。』


あまりにも調子が悪そうに見えたのでしょう、二人は襖で仕切った奥の部屋へ行き、押入れから布団を引っ張り出してくれました。

二人が敷いてくれた後、付いてくれていた大倶利伽羅が子供を抱えるように抱っこで運びます。

しょうもない事に世話を掛けて申し訳ないと思う貴女は、生理中故のナーバス状態に陥り辛い気持ちになってしまいます。

横になったものの、辛そうに涙で目を潤ませる貴女を見て、同田貫は優しく頭を撫でてくれました。


「辛ぇ時は無理すんな。不器用だが、俺達を頼れ。アンタは甘えなさ過ぎるんだよ…。こういう時ぐらい、甘えとけ。」
『ゔぇ゙〜…だぬ゙ざぁ゙ん゙……っ。』
「大丈夫か…?どっか擦って欲しいとかあるか?それか、手握っといてやろうか…?」
『ん゙ぎゅ…にゃら、お願いしやす…。』
「俺は、頭痛を少しでも紛らわせれるよう、額を冷やせる物を探してくる…。アンタは大人しく寝ていろよ。」
『ん゙み゙ぃ゙…っ。』


既にだいぶキテいるのか、情けなくも貴女は元気の無いか細い声で返事を返す事しか出来ませんでした。


◎審神者が完全にダウンして床の間に臥せました。

【事を聞いて様子を見に来た陸奥守吉行の反応】


『ゔぅ゙ん゙……っ、頭重いぃ…ふぐぅ、辛たん…っ。』
「主、大丈夫かえ〜…?」
『ん゙……この声は、むっちゃ…?』
「おんっ、わしぜよ。加州や前田等から伝え聞いて、心配になったき様子見に来たんじゃ。具合はどうかえ…?」
『ゔ、ん…っ、あんまし良くはないかなぁ………。』


大倶利伽羅と入れ替わりに部屋を訪ね来たのは、陸奥守でした。

彼は、初期刀の清光と同じくらい頼りにしていた刀故か、大層心配した様子で見に来たようです。

いつもは元気に上がっている眉毛も、今はしょんぼり両下がり眉です。

これ程の事で皆に迷惑や心配をかけてしまっていると心の底から申し訳なく思えてきた貴女は、遂には堪え切れなくなったのか、ぽろりと眦から涙を溢してしまいました。

其れを見た途端、貴女がこれまで色々と抱え込んで我慢していた事を察した陸奥守は、これまでに無い程の優しい笑みを浮かべて側に腰を下ろしました。


「なんちゃあ泣かんでもえいがに、おんしゃあわしが来た事で安心でもしたなが…?」
『ふえぇ〜…っ、むっちゃ゙あ゙〜……っ!』
「あーあー、せっかくの別嬪さんが台無しになるろう?おんしが今辛いんはよう分かっちゅー…。おんしのそん痛みを代わってやれたらええんじゃけんどにゃあ…男のわしじゃあ、どういても無理やきぃ。気を紛らわせるか慰める事ぐらいしか出来ん。其れぐらいしか出来んわし等ですまんのぉ…。けんど、おんしが不安やったら、何時までもずっと側に居っちゃるき、安心しとうせ。加州等も、もうじき来るきね。」
『…うん…っ。こんな如きで体調崩す貧弱い審神者で、ごめんね…?』
「謝らんでえいって〜!おんしは、いっつも頑張っちゅーんじゃき、偶にゃあ休んじゃっち罰は当たらんぜよ。おんしゃは、今は他の事はなぁーんも気にせんでえいきに、ゆっくり休みとうせ。残っちゅー仕事ん事じゃったら、出来る分はわし等で片付けちょくき、心配せんでえい。」


一度決壊してしまった涙腺はなかなか止まらず、ぽろぽろと次から次へと目尻を流れ枕を濡らしました。

それすらも何だか申し訳なくて、ごちゃごちゃになっていく思考の中、ただただ彼に優しく涙を拭われ、頭を撫でられます。

優しく宥めるように語りかけてくる彼の声は、不安げに揺らいでいた心に酷く響き渡りました。


『ゔぅ、ふ…っ!あぃがとぉ…むっちゃ……っ、皆ぁ…!』
「今は情緒不安定になっちゅーもんにゃあ…不安になってしまうんも無理はないのぅ。今は我慢せんでえいき、好きなだけ泣いて、好きなだけ甘えとうせ?」
『あうぅ゙…っ、むっちゃぁ〜!…っ、ゔみ゙ゅ゙ぅ゙〜………っ!』
「おんおん、好きなだけ抱き付きとうせ。おんしの辛いんが軽うなるんやったら…何ぼでもわしの胸貸しちゃるぜよ。」
「…まるで我が子を宥めすかすような手付きだな、お前…。」
「つーか、陸奥守だけ何か役得っていうか、良いトコ取りして狡くね…?」
「ほ…?なぁんの事かのお…?」
「うわ、思いっ切り白切りやがったぞ、コイツ…。」
「酷ぇ。」


つい、気付けば陸奥守に縋り付くように抱き付き泣いてしまっていた貴女は、横で愚痴を垂れる二人の様子に気が付きませんでした。


◎そうこうしていたら、長い間暫く側を離れていた初期刀の清光が戻ってきました。

【それぞれ主が大好きな皆が大集合する反応】


「ごめんね、主ぃ〜…っ!色々準備して持ってきてたら、遅くなっちゃった…!」
「お加減は大丈夫ですか?主君…っ!」
「ハイ、言われた通りのスポドリと他水分補給用の水ね。あと、きちんと横になって休むなら、何かお腹に入れた方が良いかもっておじや作ってきたから、少しだけでも良いから食べて?」
「それと、今辛いのが少しでも軽くなる用に調合した薬だ…っ。其れ食った後に飲んでくれ。用意すんのが遅れちまってすまねぇな、大将…。」
『清光に、前田きゅん…っ、それに薬研も…!』
「皆、アンタを心配して来たんだな…。」
「良かったな、主。アンタは、ちゃんと愛されてるぜ…?」


最も信頼を寄せる初期刀の清光が戻ってくるまでに付いていてくれた者達が皆、貴女へ優しげな表情で温かな眼差しを向けました。

遅れて戻ってきた大倶利伽羅の手には、水の入った小さな桶と手拭いがあります。


「そら、持ってきてやったぞ。受け取れよ。」
『うにゃ…っ、ありがとなのだ…。』
「大将が弱って幼い口調になってんなー。」
「やべぇ、むちゃくちゃ可愛いんだけど…!」
「ほら、其処のデカブツ、邪魔だからさっさと退いて!主におじや食べさせらんないでしょ…っ!?」
「ぷ…っ、デカブツって言われてやんの…!ダッセー。」
「何だとぉ…っ!?俺だって、好きでこんなデッカイ見た目になったんじゃないんだからなぁ!!」
「お二人共…っ!此処は病人がいらっしゃるお部屋ですよ!?それ以前に我が主君の御前です!騒ぐのでしたら、外でお願い致します…っ!!」
「温厚な前田が怒ったぞ…。」
「ちょっと、其処に居るぜよぜよも邪魔だからアッチ行っててよ。」
「わしだって、主の看病したいんじゃがの…?おまんが戻ってくるまで主の側に付いちょったんはわしじゃき。食べさしちゃるのもわしちや!」
「は…?お前みたいな奴に任せられる訳ないでしょ?“時代は拳銃ぜよ”ばっか言ってる土佐犬野郎はアッチ行ってろって。邪魔。」
「おまんが居らん間寂しゅうて泣いちょった主を泣き止ませよったんも、わしやぞ?」
「はぁっ!?其れぐらいで何良い気になってんの…!?主が本当に気を許してんのは、俺と前田だけだからぁ…っ!!」
「……いちいち騒がしい奴等だな…。少しは静かに出来ないのか…?」


一様に集まれば一様に騒ぎ出し、喧嘩が勃発したりと賑やかです。

それまで不安だった気持ちも何処かに吹っ飛んでしまった貴女は、呆気に取られ、気付けば笑っていました。

そして、いつの間にか周りの皆も柔らかに微笑み、温かく見守っているのでした。


執筆日:2019.01.24
加筆修正日:2020.04.09