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守りたいから弱いままでいてくれ



事ある毎にアンタは「強くならなきゃ駄目だね。」と言った。

けれど、無理をしてまで強くなろうとしなくても良いんだと伝えたかった。

アンタが自分を壊してしまうくらいなら、今のまま弱いままで良いんだ。

だから俺は言ってやった。


「俺はアンタを守りたいから、弱いままでいてくれ。」


半ば縋るように告げた其れに、アンタは泣きそうな顔で笑って返した。


『有難う、たぬさん。たぬさんは、何時も優しい言葉をかけてくれるよね。でも、そんなに甘やかさなくたっても良いんだよ?時には強く言ってくれたって良いんだから。ちょっと強く言われたくらいじゃ、俺は折れないからさ。そんなに優しくしなくたっても良いよ。』


そう言って、アンタは泣きそうに口許を歪めるんだ。

だったら、そんな台詞を口にしなけりゃ良いだろ。

情けなくとも格好悪くたっても良い。

俺を頼ってくれ。

無理に強がらないでくれ。

辛いなら辛いと言ってくれ。

苦しいのなら苦しいと言ってくれ。

そしたら俺は、アンタを蝕み、阻む全てのものから払ってでもアンタを守るから。


「…頼むから、俺にアンタを守らせてくれ…ッ。」


祈りにも似た言葉で乞う俺に、アンタはやはり「うん」とは頷いてくれないんだ。

代わりに返される言葉には、「御免ね」と謝罪の意味ばかりが混ぜられる。

そんな言葉は要らない。

ただただ、俺はアンタを守りたいだけなんだ。

…なのに、どうしてアンタは頑なにも首を縦に振ってはくれないのだろうか。


執筆日:2020.04.25
Title by:ユリ柩