偶々、姉に用があって姉宅本丸へ訪ねに行った時の事だった。
『こんちはーっ、遊びに来ましたよ〜…っと。』
「おや、来客か。
『あ…噂のちょもさんや。』
偶然玄関先へと通り掛かったのか、姉宅の本丸では比較的新刃に当たる彼が出迎えた。
まだウチには居ない刀であった為に、ついまじまじと物珍しそうに見てしまった。
その視線に、彼は首を傾げながら、此方へ用件を訊ねる。
「君は…見たところ、政府の者というよりかは審神者に近い者の様だが…?」
『あ、はい。私は此方の本丸の審神者の妹でして、同じく審神者をやってる猫丸という者です。貴方のお噂は
「嗚呼、そういえば、以前小鳥が話しているのを聞いた事があったな…。三つ、四つ歳の離れた、同じく審神者を勤める妹が居ると。君の事だったのだな。…成程、確かに何処となく彼女と纏う霊気や空気なるものが似ている気がする。――すまない、名乗るのが遅くなってしまったな。改めまして、私は山鳥毛と言う。此方こそ、お初に御目にかかれて光栄だ。」
『まぁ、姉妹な身な者ですんで、何処となく似てるのはしょうがないかもです。けども、姉とは根本的には異なるので、質は近くてもやっぱり違うとこは違ったりしますかね〜。元々のタイプや性格が異なりますんで…まぁ、その点につきましては追々。たぶん今後もちょくちょくこうして姉宅本丸に来る事ありますんで、顔を会わせる事もあると思います。どうぞ、宜しくお願いしますね〜。』
「嗚呼、宜しく頼むよ、我が小鳥の妹君。…ところで、此方へはどういった用件で来たのかな?」
初めましての挨拶を交わしながら握手をしたところで、本日来訪の理由を訊ねられた。
其れに私は和やかな空気をもって返す。
『大した用じゃないんですけど、ちょっと姉に訊きたい事があって直接会いに来た…というだけです。全然重要な話でもないんで、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。』
「そうか。しかし、生憎小鳥は只今外出中でな…すぐに取り次ぐ事は出来ないんだ。すまないな。」
『あ、いえいえ…っ!そんな謝らないでください!こっちもアポ無しで…って言っても通じないか、連絡無しで来た身ですから…っ。来て本人が居ない点については想定内の事ですんで、お構い無く。一応、先日姉の方には直接会いに行く旨は話してたんですけど…お互い忙しくてなかなか予定が合わないんで、空いてる時間に適当にこっちに向かう事にして、敢えて詳しい日程とか時間とかも決めてなかったんです。だから、申し訳なく思わなくて良いんですよ。』
「そうだったのか…。此れは失礼した。だが、客人をこのまま玄関先で待たせるのは礼儀としても反するし、何より申し訳ない。今は私が留守居役を担っていてな、大したおもてなしは出来ないかもしれないがお許し頂こう。」
『いえいえ、どうぞお構い無く…!こっちこそ突然やって来た身なんですから、待って当然です…っ!』
「しかし、主の妹君ともなればそうはいかないだろう。せめて、客間へ案内するくらいはさせてもらえないだろうか…?」
『えぇー…っ、別に本当に構わないのに…。けど、お頭に其処まで言われてしまっては仕方ないですね…っ。――というか、本音言ったところ、此処までお頭に気を遣わせてしまった事自体申し訳なく思うんだが…。うわぁ………っ、滅茶苦茶畏れ多い事してんな、自分…。帰ったら
「君の処にも、我が子猫は来ているのかね…?」
『あ、はい。まだウチには、一文字一家のお頭は未実装ではあるんですけど…南泉君は居ますよ。まだまだ成長途中の育ち盛りの段階ですが。』
「そうか、我が子猫が其方でも世話になっているのだな…。子猫の世話は手を焼くだろう?もし困った事があれば、遠慮無く私を頼ると良い。其方の本丸にも、早く私が配属される日が来ると良いな。」
『はは…っ、そうですね〜。じゃないと、南泉君も寂しがってるかもしれませんしね。今度、夏の連隊戦の特別合戦場枠で稀泥可能となってたんで、今回は頑張ってみようと思います…!確定報酬の治金丸君もお迎えしたいですから!』
「では、我が小鳥と目標は同じという訳だな。それぞれ遣るべき事は個々異なるだろうが、共に頑張ろうか。」
『はい…っ!ウチにも早くお頭をお迎え出来る様、頑張りまっす!!』
彼の掛けてくる圧に負けて、結局客間へ通される事となった今、案内される道中の会話でウチにはまだ彼が来ていない事の話となった。
今年始めの冬の連隊戦で彼が確定報酬となっていたのは知っていたが、何分初めての実装という事もあってか、報酬額としての額がえげつなく、最高額の二十万を達成せねば獲得出来なかったのであった。
故に、まだ当時極部隊も未実装だった我が本丸は手が伸びず、初めから諦めての周回を決めていたのだった。
南泉君には申し訳なかったが、まぁ彼も承知の上での話だったので、改めて今回こそは頑張って粘りたいところである。
そうこう考えていると、あっという間に客間へと着き、彼に中で座って待っているようにと座布団を勧められたので、取り敢えずは彼がお茶を持ってくるまでの間大人しく寛ぎながら待っているとしよう。
其れにしても、まさか彼が出迎えてくれるとは思っていなかっただけに、内心驚いた。
顔にはあまり出していなかったから、そんなバレてないと思うけど。
そう思いつつ座布団の上に腰掛けて、何となく床の間に飾られた花や掛け軸を眺めていた。
たぶん、花瓶に生けられてる花は、この本丸の歌仙によるものかな。
何処の本丸でもそうだが、彼の雅さを気にするところは一緒らしい。
季節の花で彩られた部屋の一角は見事なものだ。
やはり、花が有るのと無いのとでは、部屋の空気や雰囲気そのものが異なって見えるし、花があるだけで明るく華やかに見えて良い。
程無くして、彼がお盆を片手に客間へと戻ってきた。
「待たせてすまない。お茶を用意する途中、客人が来た事を他の者にも伝えていたら、燭台切から此方を渡されてしまってね。本日の御八ツで出す予定のお菓子だそうだ。元より数は多めに作っているという事だから、遠慮せずに召し上がってくれ。」
『わぁ、見た目からして美味しそうな和菓子ですね…!突然訪問したにも関わらず、わざわざ色々と気遣って頂いて有難うございます!』
「いや、何の。此方は当然の事をしたまでだ。気にしないでくれ。ちなみに、お茶の方は鶯丸から頂いた茶葉で煎れた物だから、味は保証しよう。」
『おぉっ、うぐのお墨付きという事なら、絶対に美味しいに丸ですね…!ふふっ、自分とこにも居るけど、やはり何処のみっちゃんもおもてなし大好きなとこは一緒で微笑ましいです。』
「ほぉ、其方にも燭台切は居るのだな?」
『はい、勿論…!何せ、ウチの初太刀ですから…っ!!自慢じゃないですが、ウチの燭台切の料理の腕もかなり高いですよ…!甘味の腕も納得の味です!まぁ、初太刀がみっちゃんなのは、此方も一緒ですがね。姉がまだ審神者初期の頃、鍛刀レシピ教えてたの私なんで。』
「そういえば、君は我が小鳥の先輩に当たるのだったな。小鳥から聞いているよ。」
『先輩と言っても、就任時期が数ヶ月先か後かってだけの話なんで、審神者歴としてはほぼ同期ですよ。初めの内は確かに先輩だったのかもしれませんが…今じゃ審神者レベルも本丸の全体的な錬度も姉宅の方が上ですから、私としてはあんまり先輩って感じじゃないです。まぁ、ウチはウチのペースがあるんで、ゆっくり頑張っていきますがね。』
「そうなのだな…成程、やはり君達は姉妹なせいかよく似ているよ。」
『ははは…っ、よく言われます。』
お茶とお菓子を受け取りつつ、和やかに会話が弾む。
どうやら、姉が本丸へ帰宅するまでは彼が話し相手となってくれるようだ。
単なる審神者の妹というだけなのだから、わざわざ其処まで気を遣わなくても良いのに、律儀な刀である。
「つかぬ事を訊くが…小鳥の妹君に対しての呼び名はどうしたら良いのかな?“妹君”、とだけ呼んでも良いのだろうが…何かしっくりこなくてね。何か案や希望があれば言って欲しい。」
『え…っ、呼び名ですか…?別に何でも構わないですし、お頭の好きに呼んでくださって良いんですけど…。』
何故かそう唐突に彼から訊ねられ、戸惑ってしまった。
だって、ウチには居ない子というのも大いにあるが…纏っている風格だとかが、此れ迄相手してきた刀とは一風を画しているので、変に緊張するのだ。
一先ず、任侠の世界に身を置く彼に合わせて、失礼が無い様当たり障りない程度に返しておく。
すると、その様な回答が返ってくるだろうと予測していたらしい彼から微妙な反応を受けた。
「うむ、そう返されるだろうなとは分かっていたが…やはり、私個刃が何となく落ち着かなくてね。我が小鳥の妹君と言うのだ、私としては出来る限り丁重に扱いたいし、その扱いに相応しい呼び名で呼びたいと思うんだ。…如何かな?」
『まさかのお頭から其処まで私の呼び名について拘られるとは思わなんだ…っ。う〜ん…、別に本当に何でも良いんすけどねぇ。』
「そうだろうか…?我が身内の者とは異なるが、やはり我が本丸の主の妹君ともなれば、出来ればその身に相応しい呼び名で呼びたいのだが…。」
尚も食い下がってくる様子のお頭に、ちょっとだけ意外だなぁ〜なんて思いながら、思い浮かんだ案を口にする。
『じゃあ…“雛鳥”なんてのは如何です?』
「雛鳥…?」
『えぇ。“小鳥”の妹になるから、其れよりも小さな存在という事で“雛鳥”とか。…どうです?此れならまぁしっくりくるんじゃありません?』
「成程…雛鳥か。なかなかに良い響きだな。気に入った。是非ともその名で呼ばせて頂こう。」
『ははは…っ、お頭のお気に召した様で良かったです。でも、本当のとこ言ったら、私あんまり鳥って感じじゃないんですよねぇ〜。何方かと言うと猫って感じで…でも“猫”って付けると、お宅の身内の南泉君と被っちゃいますし、紛らわしいかなぁ〜と思いまして。なら、“小鳥”の妹という事から、その小鳥よりも幼く小さな存在として“雛鳥”にした訳です。事実、色んな面でしっかりとした姉に比べて、私はまだまだガキンチョの甘ちゃんですからね〜。ふふ…っ、まぁ安直な気もしますが、分かりやすくて良いかなと。』
「嗚呼、実に分かりやすくて助かるよ。其れに、わざわざ此方の呼び方に合わせた呼び名で考えてくれたのだろう…?その
『わぉ…っ、早速使って頂ける上に呼んで頂けるとは……何か凄くむず痒いです…っ。あと、お頭から呼ばれてるってだけで畏れ多いっす…。南泉君の気持ちが今ならよく分かるぜ。』
「はっはっは、逆にそう縮こまられては私も困るぞ。せっかく素敵な呼び名を考えてもらったんだ。有効的に使っていきたいだろう…?すぐにとは言わないが、慣れていってもらえると嬉しい。」
『うっす…善処しまっす…。』
お気に召して頂けたのは何よりだが、予想以上の気に入り様に何か逆に申し訳なくなってきたのであった。
そんなこんな会話をしながら一緒にお茶をしていれば、件の本人が帰ってきた声が聞こえてくる。
その声に、留守居役として本丸の指揮を預かっていた彼は、言葉短めに「失礼」と断りを入れて席を立ち、部屋を出て行った。
恐らく、帰宅した姉へ私の件を知らせに行くついでに、留守居役だった間の報告をしに行ったのだろう。
私は慣れた様子でそのまま客間で寛ぎ、出されたお茶菓子に舌鼓みを打った。
すると、姉と彼が此方へとやって来る前に、別のお客さんが顔を見せに来た。
此方の本丸の五虎退と謙信君である。
五虎退に至っては、ウチと同じく極めた身であるからか、何となく親近感を覚える。
『やぁ、こんにちは二人共。謙信君の方とは会うのは初めましてだけど、五虎退の方は久し振りだね。』
「こ、こんにちは…!初めましてなんだぞ…っ!」
「はい…っ、主様の妹さん、お久し振りですね。僕の事、覚えててくださって嬉しいです…!」
『そりゃまぁ、君達二人共ウチにも居る子達だからねぇ。覚えてるに決まってるでしょ。謙信君と会うのは今回が初めてになるけど、話はお姉の方から聞いてたからね。何せ、ウチの方が先に謙信君来てたからなぁ…来るまでめっちゃ羨ましがられてたんだ。ウチの本丸では、何時ぞやの鍛刀強化キャンペの時に来てたからさ。――…で、君達はもしや、客人が私と聞いて気になって顔を見せに来たのかな?』
「う、うん…っ、そうなのだぞ。もしかして、迷惑だった…?」
『いんにゃ、全然そんな事はないから安心しなさいな。寧ろ、自分とこの子じゃないけども、君達刀剣男士が本丸でわちゃわちゃ元気そうにしてるのを見れて嬉しく思うよ。』
「えへへ…っ、そう言ってもらえて安心しました…!あ、あの…もし、駄目じゃなかったらで良いんですけど、お側に行っても良いですか?」
『良いよ〜。おいでおいで。何だったら、可愛い君達の為なら、頭撫でたりなんてサービスもしてあげちゃうよ?あ、でもお姉とちゃうから嫌かな?』
「いいえ…っ、寧ろ喜んでお願いします…!」
「ぼ、僕もお願いしたいのだぞ…っ!」
『あはは…っ、ハイハイ、順番に撫でてあげるから。喧嘩しないで仲良くね?』
そう笑いながら、側へと寄ってきて頭を差し出してくる二人を順番に可愛がりつつ撫でてやっていると、其処へ戻ってきた彼と一緒にやって来た我が姉。
いつの間にか自分以外の者がやって来ていた事に少なからず驚いてる様子のお頭が、物珍しいものを見る目で此方を見遣ってきた。
「ウチの小鳥達が、知らぬ間に随分と雛鳥と仲睦まじくなっている様で微笑ましく思うが…私が席を外していた間に何があったんだ?」
『あははぁ〜…っ、まぁ此れは、ウチにも居る子達且つウチは既に上杉組が揃ってるからじゃないですかね…?つって、本当の事言ったら、私が何度か此方に顔を見せてた過程で彼等とも打ち解けてたってなだけなんですが。謙信君の方は、今日が初めましての筈だったんですがね。五虎退の慣れた様子に釣られたんでしょう。怖がられたりとかされなくて安心しました。』
「まぁ、ウチの子達だし、相手が私の妹のアンタって事だからでしょ。其れはどうでも良いんだけど…アンタ来てたのね。そんで、相変わらずウチの子達とも大変仲が宜しい様で何より。」
『いやぁ〜、審神者モッテモテで参っちんぐ!』
「嘘付けっ、めっさデレデレな顔しといてよく言う。」
『あっはぁ〜、だって毛利君じゃないけど、ちっちゃい子大好きだもん!リアルでは論外だけど。二次元のショタっ子は皆可愛くて天使だからね!つい甘やかしてしまっても仕方がないよね…っ!』
「まぁ、其れは分かるけどね。私も同じだし。けど、私はリアルでもちっちゃい子好きよ?だって可愛いもん。」
『えー…私はやだよぉ…っ、悪ガキばっかで。リアルのガキンチョはマジで何考えてるか読めないし、何やらかすか分かんないからね。其れに比べて、短刀の子等は元の生まれた年代から考えると、姿こそ私達より幼い子供の姿してるけど、実年齢は私達よりめちゃんこ上やし。幼いって言っても、確実に小学生以上くらいの見た目が多いじゃん?中には数人小学生くらいの子も居るけども、でもほとんどが皆其れなりに大きいし、手ぇ掛からないでしょ。だから、私的に別個問題なんだよね〜。リアルの方での子供の扱いは苦手。』
「うん、まぁアンタん中でのショタ論は分かったから…今日は例の件話しに来たんでしょ?ちょっと待ってて、今資料持ってくるから。部屋はこのままで良いよね?」
『あざーっす。部屋は、別にこのままで構わんよ。ちなみに、来たらお姉出掛けてるって言われたんやけど、何処行っとったん?まぁ、差し支えなかったらでええんやけど。』
「ん?ちょっと買い足しに万屋までまんばちゃん連れて。」
『あー、なる。買い出しお疲れさん。』
「おー、どもども。じゃ、ちょっと私自分の部屋戻ってくるから、ちょもさん達と待っててぇ〜。」
『うーっす、了解でーっす。』
ナチュラルに彼等を置いて話を進めていれば、いつの間にか空気となって置いてきぼりになっていたお頭が、部屋を出て行く前の姉に何やら確認を取っていた。
「ちょっと良いかな、小鳥。少々気になったので一つ質問させてもらうが…その話とやらに私が同席したままで良いのか?大事な話なら、五虎退等と一緒に退席して別室にて待機しているが…。」
「あぁー…別に其処まで大した話じゃないし、ちょもさん達に見られても聞かれても大丈夫な話だから。…たぶん?私的には全然平気ですよ。」
「そうなのか…。では、指示通りにこのまま此方で待っているとしよう。」
姉とお頭の遣り取りを眺めつつ、可愛い彼等の頭をなでこなでこする。
片や猫っ毛でふわっふわな髪質で、片やサラッサラで丸っこく撫でやすい頭付きをしていて癒される。
帰ったら、ウチの子達の頭も撫でとこう。
ついでに、存分に癒されとこう。
彼等の頭を存分に撫でまくっていたら、五虎退のでっかな虎君の方が其れまで大人しくしていたのに、本体の五虎退ばっかり狡いと羨ましくなったのか、急に頭をゴッツゴッツとぶつけてきたので「おぅふ…っ、」となりながらも撫でてやった。
御免て、君の事忘れてた訳じゃないのよ。
だからそんな頭突きしてこないで、地味に痛いから。
たぶん、猫科の動物的にじゃれてきてるだけなんだろうけども。
虎君の構ってアピールにあっぷあっぷしていたら、話が終わっていたらしい彼の此方の様子を眺める視線とかち合った。
「…ふむ、雛鳥は随分と五虎退の虎に懐かれている様だな。」
『そう、なんすかね…?だったら嬉しいっすけど。』
「恐らくだが、同類と思われているのではないか…?」
『え、マジで?五虎退、其れ本当?』
「えぇっと、はい…っ。どうやら、虎君は妹さんの事を同じ猫科のお友達みたいに思ってるみたいです。すみません…っ。」
『いや、全然ええんやけどね。寧ろ、この反応からして妙に納得したというか、何というか…まぁそんなとこやから、そんな悄気た顔せんでええんやで五虎退。君の虎君にお友達認定受けてる身としては、逆に有難うってくらいやから!だって、自分でも猫っぽいって自覚あるからね!全然気にしなくて良いのよ!はは…っ、私、君等の主さんの妹ってなだけやけども、どうぞ此れからも変わらず仲良くしたってや〜っ。』
「も、勿論なのだぞ…!」
「僕からも、宜しくお願いしますね…っ!」
「ふ…っ、良かったな、雛鳥。」
『えへへ…っ。でも、一応言っときますと、お頭もこの中に含まれてますからね!』
「私もか?」
『当然なのですよ…!だって、せっかくこうして出逢えたんですから、此れからも仲良く交流出来たら嬉しいっす!』
「そうか…では、改めて此方からも宜しく頼むとしよう。我が小鳥達と仲良くしてくれて感謝するぞ、雛鳥。」
突然お頭に微笑まれた瞬間、急激に居た堪れなくなり、顔を覆って虎君の肩(?)に伏せた。
もう…唐突に微笑むとか、反則っすよ、お頭ァ…。
訳が分かっていない短刀二人と一匹は小首を傾げてお互いに顔を見合わせる。
その様子に彼は更なる追撃を食らわすように口を開いたのだった。
「おや、雛鳥も小鳥に負けず劣らず恥ずかしがり屋かな…?」
『…お頭ァ…っ、すんませんが、もうその辺にしてもらっても良いでしょうか……ッ。貴方のご尊顔が眩し過ぎて直視出来ません………ッ。』
「はっはっは、今からそんなんでは、其方の本丸にも同じく私が来た時に対処出来なくなるのではないかな?」
『うわぁん…っ、お頭が揶揄ってくるよぉ〜う……っ。どうしたら良いのさ南泉君や…今すぐ教えて
ずむずむと虎君のもっふもふなボディーへ埋まっていっていると、何かを勘違いしたらしい虎君から遊んでくれてると思われ、頭にスリスリと顎を擦り寄られてしまった。
おぅふ…っ、どうしたら良いの、この状況…。
頭上げるに上げられぬまま虎君の身に埋まっていっていれば、戻ってきた姉に変な目で見られてしまった。
「何やってんのよ、アンタ…。アニマルセラピーでも受けてる最中なの?アンタ、そんなに疲れてたっけ?」
『…助けてお姉やんやぁ〜っ。』
終始愉しげに笑むお頭であった。
―後日、ウチの南泉君の為に一日彼を借り受けれないかを問うと、逆にウチのあつき(小豆長光)を貸し出すのを条件に快諾されて、姉宅本丸のお頭が我が本丸へと遊びに来た。
『ようこそ、我が本丸へ〜。一日限りではありますが、どうぞ此方でも変わらず寛いで行ってくださいね〜。』
「嗚呼、今日一日世話になる。…ところで、此方のウチの子猫は元気にしているかな?」
『あ、今丁度すぐ近くに居た筈なんで、呼んできますね。おーい、南泉君やぁーい…っ!』
「あ…?どうしたんだよ、主……って、んに゙ゃ゙!?にゃ…っ、にゃんでお頭が此処に居るんだにゃ…っっっ!?」
『今日一日限りだけどね、姉宅本丸から出張で借り出してきましたぁ〜っ。反対に、今あつきをウチから出張で貸し出してる訳なんですけども。南泉君にはサプライズで吃驚させようと思って敢えて何も伝えてなかったんだぜ!…どう?お頭と会えて嬉しい?ウチにはまだお頭が居なかったから、南泉君には寂しい思いをさせてるんじゃないかと常日頃思ってたんだよ…。だから、その為に今回の計画を立てて、其れが成功し、更には今の君の反応を見れて私は大変満足しているよ!(ドヤァッ!!)』
「余計なお世話にゃっ!!つーか、他所の本丸の奴でも、お頭連れてくんなら一言言えよ…ッ!!心の準備だとか色んなもんがあるだろーがァ!!あと、その顔クソ腹立つから止めろォ…ッッッ!!」
「子猫よ…幾ら不服があろうとも、お前の事を思って気遣ってくれた雛鳥に対して、その言い方は無いのではないか…?其れに加えて、
「ゔっ、ウッス…!すんませんっした、お頭ァ!!以後、改めますから、今は勘弁してくれにゃあ〜……っ!!」
「うむ…ではまた後程、改めて指導すると致そう。雛鳥も、我が子猫が失礼した。どうやら、私の教育が至っていなかったようだ…。組の長として、大変申し訳なく思う。謝ってお許し頂けるかは分からぬが、此処は素直に謝罪しておこう。すまなかった。今後は態度含めてきちんと改める様キツく躾ておくので、安心してくれ
『い、いや、別にそんな気にしてないっすから…っ!あ、頭上げてくだせぇお頭…!お頭に頭下げられるとか、逆にこっちが申し訳ないっすからぁ…!!つーか、教育だったら、審神者である私の仕事ですから!!お頭は客人としてゆっくりしていてください…っ!!』
唐突に指導の入ったお頭に腰を低くする南泉君に釣られて、何だか私までもヘコヘコと頭を下げてしまった。
頭を上げた彼はまだちょっと不服そうなお顔だったが、取り敢えず今回は単なるお客人という体で何とか落ち着いてもらう事とするのだった。
急に組の長っぽく振る舞い出した瞬間は焦った焦った…。
何故か私も本丸の主を勤めるという点で、彼の中では“組の長たる者”とかって言う存在に位置付けされているしで、何だか変な気分であった。
私が組長の立場ってちょっと…否、かなり似合わないというか、そんな組絶対すぐに潰れるわ…とかって思わざるを得なかったのである。
同じく組の者として務めるなら、精々が下っ端の平組員か、構成員程度だろう。
うん、どう考えても私にゃ組長なんてもんは無理だ。
その事を然り気無く彼に伝えると、彼はきょとんとしながらこう返してくるのだった。
「既に八十振りもの刀剣達を束ね、従えている身で何を言っているんだ…?雛鳥は、もう立派に本丸の長という立場をこなしているじゃないか。もしや、自覚が無かったのか…?」
『……まさかそんな切り返ししてくるとは誰も思わないっすよ、お頭ァ…っ。』
お頭と同じ立ち位置とか、何ソレ無理過ぐるわ。
その日一日は、とにかくひたすらお頭がどんな人物なのかという事を、改めて南泉君と共に思い知らされたのであった。
『南泉君…お頭って凄い
「お頭が凄ェのは当たり前だろ…にゃ。此れで懲りたなら、もう二度と気安くお頭を借りてきたりなんてすんにゃよ…っ。」
『うす…っ、肝に命じとくわ…。』
―その後、何とか無事我が本丸にも実装された彼を連れ、再び姉宅本丸へと遊びに行った。
『こんちは〜っ、またまた遊びに来ましたよ〜。』
「おや、此れは此れは、雛鳥ではないか。久しいな。息災であったか…?」
『おーっ、丁度御目見えとあって嬉しいです、お頭…!めでたくウチにもお迎え出来ましたよぉー!』
「そうかそうか、其れは良かったな。一通り小鳥から話は聞いているぞ。今回は今まで以上に頑張ったそうじゃないか。よく頑張ったな、雛鳥。」
『えぇ、そりゃもう…っ。今回はマジで本気で回りまくりましたからね…。最早執念でお迎えした感半端ないっすけど、無事何とか来てくれただけで有難いっす…っ!』
「…小鳥よ、“雛鳥”というのは?」
『嗚呼、この呼び名はね…?ウチのお姉やんとこのちょもさんことお頭という事で、“小鳥”の妹だから“雛鳥”って事にしたんです。ちなみにコレ、私の案なんですよ。――ね…っ、お頭?』
「ふふ…っ、そうだな、雛鳥。…ところで、私は変わらず“お頭”と呼ばれているが、其方の私は何と呼ばれているのかな?」
『一応、呼び分けするなら…ウチの方は“ちょもさん”って呼んでます!――基本的には、そんな感じっすよね?ちょもさんっ。』
「嗚呼。まだ慣れず、なかなかに気恥ずかしくはあるがね。――その方は、私より早く顕現した者とお見受けする。私が顕現するまで、我が小鳥が度々世話になった様だな。」
「何、私は大した事はしていないさ。彼の雛鳥はまだ多方面において未熟と聞く…どうか指導の程、宜しく頼んだぞ。」
『わぁ、お姉やんから何聞かされたかは知らんけど…確っ実に何か要らん話聞かされたんは分かったわ。うわぁーっ、彼奴何余計な事吹き込んどんねん…。下手な事すなよって何時も言うてんに…次、面見せたら一遍シメたろか、ゴルァ。』
「…小鳥、少々口が過ぎるのではないかな?」
『へい、すんません…っ、つい何時もの調子で口が滑っちまいやしたわ。』
「其方の“小鳥”は、我が小鳥と違ってなかなかに喧嘩っ早いというか、血の気盛んな様だな…?」
「全く…手の掛かる小鳥が多くて困ってしまうよ。」
「だが、口ではそういうものの、実のところ、手の掛かる者程愛らしいと思っているのではないかな?ご同輩よ。」
「はは…っ、此れは御見逸れいった。まさか其処まで筒抜けだとはな…私もまだまだという事か。」
何やら愉しげにお互いを認め合うような会話をする二人に、何だか此方も嬉しく思った。
―しかし、思うのだが…“お頭”こと姉宅の山鳥毛さんの口が立つのは、主である我が姉に似たのだろうか。
やはり、顕現させる審神者の影響を受けるのは何処も同じであるらしい。
お陰で、ウチのちょもさんは他の個体より幾分喧嘩っ早いというか、戦闘狂の気があるような気がしてならない。
別に似なくても良いところを…変なとこで私に似てしまって、何だか複雑な心中である。
執筆日:2020.09.09