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気遣いエスコートだってお手の物!



今日の分の仕事に一区切り付いたから、あとは午後分として少し休憩でも入れようかな〜…と部屋を出て運動がてら庭先を散歩していたら、何やら仲良しこよししている三兄弟を見付けた。

何だか楽しそうな空気すら漂っていたので、気になって其方へと近寄り声をかけてみた。


「なぁ〜にやってんの?国広兄弟達や」
「あっ、主さん…!お仕事お疲れ様です!お散歩ですか?」
「うん。ずっと座ったまんまの動かずっぱなはアカンと思うてな。君等は何してんの?」
「この間、舞台のDVDで観たのを思い出して、僕達もやってみたくなっちゃいまして…っ!」
「今日は寒かったからな…丁度良い機会だった」
「あー…、そういやこの間私が慈伝の蔵出し映像集観てた時、何か気付いたら一緒になって観てたっけなぁ〜。…其れでか」
「主殿も一緒にどうであるか?とてもあったかいであるぞ!」
「いやいや、言うても既に定員MAXで空きないやん。私入る隙無いねんで?」
「拙僧が場所を譲ろう。某、既にぽかぽかという程にあったまった故、十分である…!さぁ、主殿も兄弟の布の内側に入ってみると良いのだぞ!」
「お、おぉ…有難う…?なら、ちょいと失礼しまーす…っ」


そう言って、伏兄が空けてくれた片側のスペースにお邪魔してみる事に。

布を纏う本人であるまんばちゃんは、真ん中で堂々と平気な顔をして此方の様子を見つめていた。

その眼差しに僅かに期待らしきものが輝いているのに気付いて、内心ちょっと笑えてしまった。

中に入りやすいように布を広げて待ってくれているところへ収まるようすっぽり入って行けば、彼が上げていた腕を下ろして頭から布が被さるようにしてくれた。

成程、確かに此れは寒い日には丁度良い具合に温かいかもしれない。

ついでに、人肌にもくっ付いている事でよりあったかさが増す感じだ。

ただの仲良しかと思って見てただけだが、うむ、此れはなかなかに良いものだな。

なんて、変に感心したようにウムウムと頷いていると、反対側の隙間に収まっていた堀川君が嬉しそうに口を開いた。


「ねっ、兄弟の布の中はあったかいでしょ!」
「うん…っ、此れは良いな。」
「俺は季節問わずこの布を被っているからな。寒くなったらいつでも構わないぞ」
「流石カンストして長い子…!貫禄も威厳も違うね、まんばちゃん!」
「カカカカカ…ッ!然り然り!」
「でも、ふと思ったんだけどさぁ…布の内側で暖取る系なら、堀川君だって出来るんじゃない?ほら、今は内番服だけど、極めてからの戦装束ロングコートなんだしさ」


そう言ってみれば、彼は「今初めて気が付きました!」みたいな顔をして驚いた。


「ハッ…!そういえばそうだった…!?」
「君の意外と抜けてたりするとこ、私嫌いじゃないよ」
「兄弟は極めても前とあまり変わりないからな。変わったとしたら…雰囲気だとか、風格的なとこ辺りか?」
「確かに、我が兄弟は根本的には変わっておらんなぁ!しかし、そこがまた良しである!!カカカカカッ!」
「そうだね。伏兄の脳筋なとこも全然変わってないし、寧ろ、より一層筋肉馬鹿になっちゃった感否めないよね」
「それでこそ兄弟だよ…!」


なんて仲の良い兄弟達なんだ。

そんな国広兄弟三人に挟まれて、束の間の癒しを得た私であった。

え、運動がてら散歩するんじゃなかったのかって…?

実際に外出て歩いてみたら、思いの外寒かったから、国広兄弟等にくっ付いた後そのまま室内に戻る事にしたよ。

まぁ、気分転換は十分に出来たから問題は無いのだよ。


―そんな事があった翌日である。

今日はレベリングも兼ねて幾つかの編成を組んで出陣してもらう事にした。

朝一の朝礼時にその旨を皆に伝え、各自時間になるまでに準備をしてもらう。

各々の準備が整った辺りで門前に集合してもらい、出陣前の最終チェックを行う。

今日も寒いから、体調には気を付けつつ、出来る限り怪我をしないように努めてもらおう。

そんな感じで、持つべき物は持ったかの声かけや確認をしていたら、不意に室内と外との気温差に反応してか盛大なくしゃみをしてしまった。

やだ、可愛くない…っ。

せっかくこれから皆が出陣していくのを主らしく格好良く見送るつもりだったのに。

そう内心で己に対しての文句をぶつくさ垂れていると、ふと目の前にやって来た堀川君が自信に満ちた笑顔で私の方を見つめてきた。

「何だ何だどうした?」という風に小首を傾げて見つめ返すと、彼は自分のコートの内側を広げてみせてドヤ顔を曝してくるのだった。


「主さん、今なら僕だって兄弟と同じ事出来ますよ!」
「え…、は、うん…?」
「寒いんでしょう?少しの間だけなら、時間も皆も許してもらえますから、良かったらどうぞ!」
「ほ、堀川君…っ!」


なんて胸がときめくような事を仕出かしてくれるんだ、君は…!

思わず華の乙女らしくトゥンクしてしまったではないか、どうしてくれる。

たぶん、昨日私が言った事を実行してくれたんだろうが、取り敢えず、不意打ちに私をときめかした責任を取ってもらう為に、誘われるがまま彼のコートの内側にお邪魔させて頂く事にした。

かといって、あからさまにダイレクトに行くのは恥ずかしくて憚られたので、控えめに寄り添うみたく温まらせてもらおうと思っていたら、コートの内側に入れさせてくれるだけでなく、よりあったまれるようにコートと自身で包むようにぎゅっと抱き締められて死ぬかと思った。

たぶん、脳味噌は一回死んだと思う…。

堀川君たら、なんてあざと可愛らしい且つスパダリなんだ。

こんな感じで接せられたら、単純な私は勘違いを起こしそうだし、思わず乙女な自分が顔を出しそうになるではないか。

――…とかって内心色々考えまくって頭混乱させながら固まってたら、不意に耳元へ顔を寄せた堀川君が囁いてきた。


「僕だって、偶には男らしく貴女をエスコートしてみせますよ…?脇差だからって甘く見ないでくださいね、主さん」


最後に「ふふっ、」と小さく笑みすら零して私を抱き締めて離してくれなさそうな雰囲気を醸し出してきた彼に、急な展開と艶っぽい空気にてられた事もあってすっかりゆだってしまった私は「ふしゅう〜…っ」と湯気を立ち昇らせてノックダウンするのだった。


「…堀川君……、其れは反則だよ…………ッ」
「え?何の事ですかね?」


しらばっくれたってバレバレなのに、敢えて何も無かったみたく振る舞う彼は、やはり狡い人だ。


執筆日:2021.02.28