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龍虎揃って縁が強い所以



「何でなんだろうな…?」
「うん…?どうした、小鳥よ」


本日分の執務を終えて、ゆったりのんびりと茶を啜っている休憩時の事だった。

ふと零した呟きを、すぐ側に居た彼に拾われた。

ので、私は現在進行形で思っていた・考えていた事をそのまま素直に口に出してみる事にした。


「いや、ね。大した事じゃないんだけどさ…ウチの本丸、お姉の本丸と比べたら比較的上杉刀揃うの早かったんだけど、何でかなぁってちょっと不思議に思って。特にコレと言って繋がりとか無い気がするのになぁ〜、と」
「はぁ…?私は比較的最近来た者だし、我が本丸の刀達がどのようにして集まったかについては詳しくないのだが…強いて言うなれば、その時の運や縁などではないかな?」
「かなぁ〜…?まぁ、たぶんそんな気はしてたけどもね。でも、ちょっとふと考えてたのよ〜。ちょもさんはともかく、“上杉刀が早めに集まったのは何でかな?”って。私、上杉家の縁者でも何でも無いし。つか、縁者で言ったら真逆の縁者になっちゃうしさぁ」
「真逆、とは…?」
「ん?あ、そっか…ウチの家系の話って、まだちょもさんにはしてなかったっけ。実はさ、ウチの家系、上杉とは敵対関係にあった武田家の縁者に当たる家系なんだよね〜。だから“真逆”って言ったの」
「何と、其れは初耳だった上に飛んでもない話を聞いてしまったな…!そうか、君は武家の家筋の者だったのか…っ。成程、だから他の女子等に比べて血の気が多い訳だ」
「はははっ。その件については事実だから否定はせんよ。つって、縁者って言っても、もうほんのちみっとぐらいのDNAしか受け継がれてないと思うよ?そもそもが母方の親戚のご先祖様がそうらしいってな話なだけだから」
「しかし、其れでも実に凄い話だと思うぞ…?いやはや、巡り合わせというのは面白いものだな」
「まぁ、其れに関しては同意するけどもね」


一概に女子らしく慎ましくないとの言い回しには軽く笑って流した。

恐らく、彼の事だから遠回しに窘めている事に気が付いていないだろう。

気付いていない事にわざわざ触れて広げるのも申し訳ないので、このままそっとしておくとしよう。

一先ず、自身の女らしくのない振る舞いについての指摘には言及せず、話の続きをする事にした。


「そうだな…確かに、その話で言ったら真逆の立場という事になろうが…上杉と武田は歴史的にも縁が強く深い。故に、君の何かに惹かれて私も含め彼等は顕現したのではないかな?」
「ふむ…縁ねぇ。其れで言ったら、ウチに来た子全員何かしらの縁で来てる事になっちゃうな。だって、初期の初期の頃なんざ、審神者のちゃんとしたお仕事の遣り方知らなくて…っつーか、日課のこなし方知らなくて、刀集めは鍛刀せずに泥頼りしてたもんなぁ〜。確実な何かを感じ取ってとかではないだろうけど、個人的に思うに、刀剣男士がその本丸本丸で顕現する・しないってのにはその本丸ないし審神者に縁が有るか無いかみたいな感じだとは思ってるかね」
「ほう。小鳥はそう考えながら日々審神者を勤めていたのだな。感心したぞ」
「刀が来る・来ないは大体そんなもんでしょ?縁以外に何があるのか、仮に挙げたら…運命とかそういった事しか浮かばないぞ。まぁ、中にはそういう子も居るとは思うけどね。運命的な巡り合いって言うの?ちょっとロマンチックでちょもさん的には恥ずかしいネタかな」
「いや、そうでもないさ。素敵な話だと思う。…しかし、成程。我々との巡り合いをそういう風に考える者も少なくない訳だな…」
「―でもさぁ、山鳥毛さんがウチに来たの、主は“根性で奇跡的に喚んだんだ”って言うけど、縁で来たかもしれないって話は強ち間違いじゃないかもよ…?」
「ほぇ…?何で?」
「え、何でって…主自身は自覚無いの?」
「いや、何に対してのだ?」


刀剣男士の顕現についての話題をちょもさんと繰り広げ(論議し)ていたら、偶々近くで話を聞いていたみっちゃんが混ざってきた。

ちょもさんがウチに来たのは縁で来た、とは…どういう事だ?

加えて、問われた意味が分からず、何に対する自覚が有る無しなのかを逆に問い返してみれば、当然と言った口調で自信満々に返される。


「何って…主、猫好きじゃない」
「うん。……うん?だから何だって話なんだが?今のとその話、どう繋がるん?」
「主は猫好きで猫科の動物に目がない。加えて、主自身そのものが猫っぽいよね。だからだよ」
「……え…っ。其れがちょもさん来るとか上杉刀早め揃う意味に繋がるとか意味分からんのじゃけど…」
「嗚呼、成程…そういう事か」
「えっ、ちょもさん今ので分かったん!?」
「あぁ。比較的分かりやすい物の例えだと思ったが?」
「へ…?“物の例え”とな…?」
「そういう事だ」
「うんうん。虎は猫科動物でしょ。虎は武田の象徴と思われがちかもしれないけれども、五虎退君の虎君が居るように虎は上杉の象徴でもある、ってね!」
「あ…あ〜っ!え、まさかのそういう事…!?」
「かもしれないってだけの話だよ。本当のところは本刃ほんにん達に訊いてみれば分かるんじゃない?小豆君達、すぐ其処の位置に居るから、僕呼んで来ようか」
「え、や、良いよ…。何かわざわざその為だけに呼び付けるの悪いし…そういう話を実際に本刃達から聞くのって、何か個人的に恥ずかしいからさ」
「ふふっ……小鳥にも私の恥ずかしがり屋なところが移ってしまったかな」
「んん゛…っ、別にそういう訳でもなかったんだけど……一々指摘するのもめんどいから良いや…っ」


彼等の顕現に縁が纏わるかどうかの話についての真偽は定かではなかったが、強ち嘘ではないのかもしれない。

何せ、ウチの伊達組は、ほぼほぼ審神者の伊達好きが高じて初期に全員揃ったようなもんだからである。

みっちゃんを筆頭に伽羅ちゃん、鶴さん、貞ちゃん…と綺麗に揃った伊達刀四振り達。

皆、私が彼等の元主である伊達政宗公の事を武将の中で最も好きな武将として推していたから故の縁が強い節は、割と本気でそうなんじゃないのかと内心自負している。

まぁ、その原因として、某ゲームやアニメの影響が多分に含まれるがな。

婆娑羅に出てくる政宗公のインパクト強過ぎて、政宗公へのイメージ像が全て婆娑羅に出てくる奥州筆頭になるのはヲタク故に致し方無い事だよね…!

『Let's party!!』ってちょっと舌巻いた感じで寄せた発音で言ってみたりとかさ。

あ、コレは単なるヲタクの悪癖なだけですか、そうですか…。

――とかってクルクル色んな事考えて一人明後日な事に思考を飛ばしていたら、未だ話題を続けていた二人からちろり、と視線をもらって小首を傾げる。


「うん…?どしたの二人共?」
「…いや、縁で来る話についてだが、伊達の刀達についても同じ事が言えるのではないかと思ってな」
「へぇん…っ!?なしてそう思ったのかにゃ!?」
「何、その驚き様…」
「いや、すまん…今めっちゃくちゃ同じ事考えてたから、めっさタイムリーな事言われて思わずな…」
「おや、そうだったのか。これは奇遇だったな」
「…で、僕達伊達組が何だって?」
「うん、君達も上杉出の者達と同じような縁で結ばれて此処にやって来たのではないかと思っただけさ。武将の話を此処で持ち出すのは卑怯かもしれんが、確か小鳥が好きな武将の一人に伊達政宗公が居たと思ってな…。の御仁と言えば“龍”の名が付くだろう?“独眼竜”とね。縁での繋がり的に言えば、君達は其方の意味での繋がりが強いのではないかと思ったのだ。小鳥は龍も好きな対象の一つだった筈だからな…違ったかな?」
「いや…ビンゴですぜぃ、ちょもさん……。流石、お頭っすね…」
「はっはっは、少し君や君の周りの事を観察していれば分かる事さ。別に組の頭を務めているからという訳からではないよ」
「え、マジで本当なの?主…?」
「うん…っ、マジっす。私的に、君等伊達組が初期の頃に全員すぐ揃ったのには、単に私が伊達好きだったからなのが所以してんだと思ってた…」
「えー…っ、何其れ…すっごく嬉しいんですけど」
「恥ずかしいんちゃうんかい、嬉しいんかい」
「うん、嬉しい。だって、其れってイコール政宗公の事好きだったからって話でしょ?」
「そうだけども……って、ちょい、そのネタ掘り下げんの止めて!俺の黒歴史暴露されちゃうから…!歴女時代の話とかただの黒歴史だから…っ!!」
「えぇっ、何でさ!もっと聞かせてよ!政宗公への愛一緒に語ろうよ!!」
「無理!これ以上その話は駄目!!先手必勝、此処は逃げるが勝ちなう…っ!!」
「あっ!待ってよ主ったら…!」
「待たん…っ!!」
「ちょっと待ってってばぁ〜!少しだけでも良いからぁ…っ!!」
「No comment…ッ!!我は黙秘権を行使する…!!」
「もう…っ!こうなったら意地でも捕まえてみせるんだからね!!極めた僕の速度舐めないでくれよ…っ!!」
「ハッハッハァ!この我に勝てるものなら勝ってみせなされ〜ぃ!!」
「言ったねぇー!?もう全力出しちゃうんだから、その余裕何時いつまで持つかな…っ!!」
「はははっ……今日も元気な鳥達だな。賑やかで良い事だ」
「…?どうしたんだい、山鳥毛?とてもきげんがいいみたいだけれど、なにかいいことでもあったかい?」


通りすがりのあつきが私達一人と一振りと擦れ違いに部屋へ入ってきて、一人残されていた彼に訊ねる。

すると、彼は機嫌良さげにこう答えるのであった。


「いや、なに。私の小鳥は随分と愛らしい事を考えていたと思ってな…少し嬉しくなっただけさ」
「主がどうかしたのか…?」
「ふふっ…何でもないよ、謙信。……まぁ、強いて言うなれば、我等は来るべくしてこの本丸に来た、もしくは喚ばれたのだ…という事かな」
「う〜ん…よくわからないけれど、きみがなんだかたのしそうにしているのなら、それでいっか。あぁ、そうだ、おやつのおかしができたからこえをかけにきたんだった。あるじやほかのものたちにもつたえるつもりできたんだが…なにやらあるじはいそぎのようだったようで、どこかへいってしまったな……」
「それなら、私が呼びに行ってこよう。丁度、元気に飛び出して逃げて行った小鳥を呼び戻そうかと思っていたところだったからな。向かう先は大広間で良かったかな…?」
「うん。では、まかせたのだぞ、山鳥毛」
「うむ。さて…私の小鳥は何処まで飛んでいってしまったかな?彼女はなかなかに俊敏で素早いからなぁ…探すのに苦労しなければ良いが」
「主様をお探しなら、僕も手伝いましょうか…?」
「おや、五虎退も共に探してくれるか。では、お願いしようか」
「はい…っ!主様でしたら、さっき彼方の方向に行かれているところを見掛けたので、きっと彼方の方へ向かえば逢えると思います!」
「じゃあ、五虎退の案内通りに行ってみようか」
「はい!僕が案内して差し上げますね…!」


みっちゃんに追われるのから逃げた私を追って、五虎ちゃんを連れた彼も動き出す。

程無くして、五虎ちゃんのでっかなもふもふの虎君に捕まった私は難無く彼の元へと回収されていったのだった。


「ふえぇ〜……っ、頼むから黒歴史暴くのだけはご勘弁を〜…………っ!」
「黒歴史…って、主様は山鳥毛さんと何のお話をされてたんですか?」
「五虎退…小鳥が可哀想だから、その話はもうその辺にしてやってくれないか?」
「えっと…よく分かりませんけど、山鳥毛さんがそう言うなら。…でも、何で主様は燭台切さんから逃げてたんでしょう?」
「まぁ、少々小鳥の琴線に触れる話題を持ち出してしまったから…になるかな?」
「主様にとって触れてはいけない話題があったとは…!僕もこれから主様とお話する時、うっかり触れたりしないよう気を付けなきゃですね……っ!」
「うーん、君と小鳥が話す時はそう気を付けるような事は起こらないと思うが…まぁ、良いか」
「ガゥ?」


捕まった時に何故かもみくちゃにじゃれられた後、背中に乗せられての移動だったので、虎君が首を傾げるのと同時に躰も揺れてちょっとだけ不安定になる。

危なげないようにとしっかり背に捕まって彼の見上げる方向へ視線を向けてみると、何やらちょもさんが此方を微笑ましげに見つめてきていた。


「ちょもさん…?どうかしました?」
「…いや、何でもないよ。小鳥は気にしなくて良い」
「はぁ…?」


まさか虎からの上杉との縁もあっただなんて、思いもしないとは…果たして私だけだったのだろうか。

猫みが強いと彼等上杉刀との縁も強くなるだなんて話、恐らくウチの本丸だけの話だと思われるけど。


執筆日:2021.04.26