猫のように背を丸めて食卓に向かう主が居る。
つまりは猫背という事だ。
いつもの僕なら、だらしがないと注意するけど…今はしない。
猫背になって、もしゃもしゃと御飯を食べる主は、風邪で弱っているから。
だから、いつもみたいには叱れない。
弱っていても、審神者たる者として、何時だって手を抜かず仕事をこなす。
幾ら風邪で身体が弱っていたとしても、だ。
少しは気を緩めて欲しいな、といつも心の奥底では願っているけれど、僕はそれを口に出す事は無い。
だって、主がそれを望んじゃいないから。
ならば、今こうしている時だけでも、甘やかしてあげたい。
「御飯、美味しいかい…?」
『……うん。美味しい…。』
「それは良かったな。おかわりもあるけど…いる?」
『…いや、いい…。そこまで入んないから。これだけでいい。』
「そっか。いる時は、いつでも言ってね…?ついであげるから。」
『…ん…。』
短い会話が終わる。
主はぼんやりとした目で器を見つめて、また一口と口の中に御飯を入れた。
そして、ゆっくりとした動作で咀嚼する。
ごくりと飲み込めば、また同じ動作を繰り返す。
今日の主は、珍しく気を緩めてる。
時折、風邪のせいでくしゃみをして鼻をかんだり、咳をしたりして、顔を歪める。
せっかく綺麗な顔をしてるのに、勿体ないな、と思う。
でも、そんな表情も好きだな…なんて思えちゃう僕は、きっと重症なんだろうね。
『……ご馳走様でした。』
思考に耽っていると、そう、ぽつりと零した主。
きちんと手を合わせて、今日も御飯を食べれた事に感謝を捧げていた。
「お粗末様でした。うん、ちゃんと完食出来たね。ここ最近の君、食欲減退してるみたいだったから、ちょっと心配だったんだけど…今日もしっかり食べれたね。量的に言えば少ない方だけど、食べる事は身体を動かす上で大切だからね。しっかり食べて、寝て、また明日も頑張ろうか。」
優しく微笑みながらそう言えば、主は緩く目を細め、「ん…。」という短い返事と共にこくりと頷く。
そんな主が可愛くて、ゆるりと頭を撫でてあげれば、初めこそ驚いていたものの、大人しく撫でさせてくれた。
気持ちが良いのか、目を伏せて擦り寄ってくるから、これまた可愛いやら何やら…。
「…君は、どこまで僕を惚れさせたら気が済むんだい…?」
『は…?何の話…?』
そうやって下から僕を見上げる君は、何時だって無自覚に上目遣いで僕を見てるって事に、気付いてないんだよね。
執筆日:2016.12.13