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ただのフェチズム語り



 偶々、部屋を覗き込んで声をかけてみたら、雑務片付けてくれてる傍らでこっそりエロ本読んでるところを目撃してしまった。
長谷部、主がいきなり来た事に驚き慌てふためいた末に、資料に紛れさせて読んでいた愛読書(らしき)のエロ本を主の目の前でぶちまけてしまう。
そして、主の目に入る、美人で可愛いナイスバディーな水着のお姉さんの表紙。
何というか、如何にもな絵面過ぎて逆に驚かないというか、そんなリアクション。
一先ず、自分の主の目に留まってしまった事に戦慄して固まってしまっている彼の代わりに拾ってやる事にしよう。
ついでに、返す手前に今一度じっくりと表紙のお姉さんの絵を眺めてから返してやった。


「ハイ、長谷部。落としたよ」
「……あ…はい……拾って頂き有難うございます………」


 特にリアクションされる事無く淡々とご返却されたからか、放心したような状態で受け取った長谷部。
うむ、流石のこのまま放置はあまりにも可哀想か。
そう思って、今しがた見てしまった物に対する率直な感想を述べてみた。


「長谷部って、胸よりも尻派だったんだね。ちょっと意外」
「え……っ、あ…そう、ですよね……女性である主が居る手前でこんな物を読んでいたら引きますよね…すみません、今すぐにでもゴミに捨ててきま…――っ、いえ、やっぱり全部燃やして今後主の目には触れぬようにしてきます……!だから、どうか俺の事は捨てないで…………ッ!!」
「いや、今のはただ純粋な感想述べただけやったから、んな絶望じみた顔せんくて良いって。つか、今のくらいでお前の事捨てたりも刀解もせぇへんから。落ち着け餅つけ」
「あ、主……!なんて寛大なんですか、貴女は!!どう考えても今のは軽蔑されて仕方ないところでしたのに…っ!!」
「や、だって、別に男がエロ本持ってたり読んでたりするのって至って普通の事ですし、“健全たる男こそ読んでる物なのでは…?”とかって思ってるから、全然引かへん引かへん。大体、男が女の胸なりケツなり見んのって所謂フェチズムみたいなのと変わらんし。つー訳で安心せい」
「主ィ………っ!!」


 どうやらエロ本バレた時点で処刑コースと思われていたようで、「ちょっとオーバー過ぎんか?」と宥めに宥めた。
そのくらいで刀解はまず有り得ないから。
せめて説教程度までだと思うから。
 他所の基準は知らんけど、ウチはそういうとこユルいから、別にエロ本持ってようが読んでようが特に気にしない方向性で捉えている。
個人の趣味・性癖は悪まで個人の問題やから、他人がとやかく口出す事ではないと思う。
ので、先日通りすがりにこっそりエロ本読んでたっぽいいち兄や鶴さんの件もナチュラルにスルーして何も見なかった事にして反応していない。
大っぴらに口にしてきた訳ではなかったけど、主が女性だからと変に気を遣って誤解までしてる面子達の為にも、この場にて改めて私なりの考えを伝えておくとしようか。
 ついでに、聞いてしまったからには気になる事をとことん訊いてみる事にした。


「で、気になるから深堀して訊いちゃうけど、長谷部は女の子の躰でどの部分が一番好きなの…?主怒らないからおせーておせーて?」
「あっ、其処は引かずに自ら訊いていくスタイルなんですね?えっと、そのですね…控えめに言って、腰から下のラインと言いますか…ぶっちゃけますと、俺は胸よりも尻派です、すみませんっ!!」
「いや、何で謝る…?別に何処が好きかは個人の問題やん?だから、私はとやかく言うつもりは無いよ。寧ろ、そういうのには素直で良いと思うの。自分が好きなものには好きと貫き通してくれ」
「有難うございます…!主が理解ある方で良かった…!」


 素直な感想述べたら感謝までされてしまった。
何か今の反応で、今までの主に対してのそういう事への遠慮具合が何となく分かった気がする…。
別にそんな必死で隠して隠れて読まなくても、オープンで居てくれたって気にしなかったのに。
TPOを弁えてくれさえしてくれれば大いに許したのに、やっぱり主が女性ってなると皆遠慮しちゃうのかしらね。
まぁ、“刀剣男士”て付くくらい男しか居ないから、自然とそうなるのも仕方ないけど。
健全たる男こそ読んでる代物、っていうもんだから、TPOさえ忘れなけりゃ普通に許可するよ、私。
 取り敢えずは、長谷部の性癖・好みのフェチを暴露されたのに付き合って、自分が思う女の子に対する好みを暴露してみる事にした。


「話戻すけどさぁ、ぶっちゃけ私もどっちかって言うと胸より尻派かな〜。男は皆大抵乳がデカイだけの女が好みと豪語するが、アレ個人的には微妙と申したい。いや、まぁ、否定はせんよ?胸派が大多数なのは分かり切ってる事だし、女である私自身もおにゃのこのお胸は柔らかくてふわふわしてる魅力的なパーツだと思ってる。だがしかし、私は宣言する…!女の子の魅力がおっぱいだけではないのだと…!!」
「ま、まさかの主がこの流れに乗ってきただと…!?しかも、何か熱く語り始めた…っ!」


 こういう話題って、語り始めると妙に白熱したり論争勃発して最終的には聖戦という名のしょうもない言い争いが始まったりするよね。
まぁ、この場では二人しか居ないし、性別も同性どころか異性同士ですけど。
しかし、熱が入れば其処に男女の違いも立場も関係無い。
同じ性癖の者が集まれば、ただ混沌の世界が開くだけ。
ので、気にせず話を続けて凄く個人的な意見を発表プレゼンしてみた。


「最早な、可愛くてただ胸がデカイだけのおにゃのこじゃ物足りんのだよ!!あのな…世の中にゃ、良いケツした子がいっぱい転がってるんだぜ?胸ばっか見つめるのも良いが、腰から下のラインも見てみようぜ。――あ、リアルに露骨に見ようものなら捕まるから其処は注意してね!――女性だからこそ生まれるあの丸みを帯びたライン、ぷりっと綺麗なまぁるいお尻、其処から伸びていくむちっとした柔らかな太股…!最高の形状じゃない!?同じ女の子でも魅力的と感じるパーツよ!?何故、男共は皆胸から上ばかりを重要視するのかしら…っ!けしからんわ!!胸と顔だけで選ぶ男はクズよ!!もっと女体の魅力について学んできなさい…っ!!」
「嗚呼っ、主の仰る事、凄く分かります…!!そうですよね、ただ胸がデカイだけじゃ駄目ですよね!?」


 私の無駄に熱く語った己のフェチネタに対し、とてつもなく目をキラキラと輝かせて見つめてくる長谷部。
何か今までで一番活き活きしてるというか、めっちゃ元気で力漲ってるというかな。
とにかくそんな感じで長谷部が凄く輝いた目で以て私の事を見つめてきていた。
コレはアレだ…隠れヲタが同士を見付けて、更には同じ趣味を共有出来ると分かった時の目だ。
成程なぁ…長谷部の周りは皆胸から上派だったかぁ〜。
そりゃ肩身が狭く語りたくとも語れなかっただろうなぁ。
よしよし、主には遠慮せずぶちまけて良いから語ってみせなさいという体で更にこの流れに乗ってみせた。


「やはり、時代はおっぱいよりもお尻と太股よっ!!言うて、ちょっとはお胸も欲しいと思うのは仕方ないけどねぇ〜。だって、やっぱりナイスバディーなとこは捨て難いと思うし譲れなくない?」
「そうですね!!でも、別に俺はおっぱいよりも尻派+太股派なので、其れだけ揃ってれば文句無いです…っ!!」
「威勢良くぶちまけるねぇ〜。そんでブレないねぇ〜。素直で宜しい!良いよ良いよ、その調子でドンドン語ってこ!普段は言えない性癖だって、此処ではOKよ!胸も良いけど尻や太股の魅力を語っていこうじゃないの、同士よ…!私と長谷部は尻or太股派同盟を組んだ者同士、世の中おっぱいだけではないのだという事を語っていきましょう!!」
「はい!有難うございます!!じゃあ、もっと語っていきますね!!」
「おう!ドンと来いやぁ!!……って、こんな風に熱く語っちゃうのもさ、実際自分の胸が小さくてケツデカイっつーのがコンプレックスなのが理由なんだよね〜。此処だけの話、ぶっちゃけちゃうとさ。ハハッ、悲しいね…」


 そんな風に流れでぶっちゃけ、どんな反応が返ってくるのかと期待して彼の方を見遣ると、彼はやはりブレずにぶちまけてくれたのだった。


「良いじゃないですか!!ペチャパイでも魅惑的な美尻と其処から伸びる太股があれば…!!俺は全然イケますよ!!寧ろ、大好物です!!ご褒美です!!」
「ペチャパイとまでは言うとらんが…取り敢えず、長谷部の性癖と推しフェチは分かったわ。あと、私の事を実はそんな目で見ていたという事も…」
「でもっ、主はお優しく理解ある方ですから、こんな厭らしい趣味をした俺の事もお許しくださるのでしょう…?」
「まぁ、そうっすわな。其れだけを理由に嫌いになるという事も無い」
「嗚呼…やはり、俺は貴女の刀で良かった…こんなにも身も心も素敵な女性に出逢えたのですから」
「理由が理解なだけに凄ェ複雑だよ、私は。いや、そんな理由でも忠誠誓ってくれてんのは嬉しいけどね?長谷部は其れで良いのか逆に」
「構いません。自分の気持ちに正直に言えば事実ですから。どうか、これからも俺の事は重用してくださいね!貴女の為ならば何だってこなしてみせますから…っ。許されるのならば、主のその魅惑的なお尻を直に触れてみたいものですが」
「流石の其れは幾ら頼まれても許可しないからな?」
「えぇ、分かっております。ですから、その代わりに今後も貴女をオカズに想像しながらヌく事をお許しくださいね!」
「直球で飛んでもない事を最後に暴露しおったな、お前ェ……ッ」


 流石の其処までは知りたくなかったと暗に匂わせた目でジトリと彼を見遣るも、揺らぐ事無くキラキラとした目で活き活きとした笑みを浮かべているのだった。
うん、正直予想は付いてたけど、其れは知りたくなかったかなぁ…。
素直な事は宜しいのだけどね。
でも、“全部ぶっちゃけて良いよ”な勢いで言わせちゃった手前、今更否定するのも微妙だし裏切る形になりそうだと思って敢えて其れ以上は追及しなかった。
極めた事も相俟ってなのか、変に潔いとこがあるから、長谷部は揺らがねぇなァ…と思うだけに留めるのであった。

 今回の性癖暴露会を機に、内心こっそりと長谷部には『ド助平長谷部』の称号を与えよう。
何か無駄に語呂良いし響きも似合い過ぎるし違和感/zeroなのは、この際気にしない方向で。
ぶっちゃけ直に口で言っても開き直りそうというか、寧ろ喜んで大声で豪語しそうなのも否めないけど。
長谷部の名誉の為にもソレはしないであげよう。

 ――へし切長谷部ハ、密カニ主カラ『ド助平長谷部』ノ称号ヲ貰ッタ!


執筆日:2021.08.31
公開日:2021.09.02