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性癖暴露会再び



※『ただのフェチズム語り』の続編。


 一度オープンにする事を許可してからか、長谷部は私と二人きりになると平然と猥談を語ってくるようになった。


「主、主…!先日、また新しい春本を手に入れましてね!其れがなんと滅茶苦茶大当たりで、俺得大特集なヤツだったんですよ…っ!!どうですか?主も読んでみませんか!?」
「俺得大特集なのに当たって嬉しいのは分かったし、興奮のあまりテンション上がってんのは分かるけど、一旦声落とそうか。幾ら此処が離れの間と言えども、あんまり大きな声で喋ったら普通に母屋の方にも聞こえちゃうからね…?あと、先日私自ら許可したor共に同じフェチを推す同士の間柄と言えども、嬉しいからってエロ本読むのを仮にも己の上司に向かって薦めるのはどうかと思うよ」
「すみません、つい語れる時が来たのだと思うと嬉しくってテンション振り切ってしまいまして…!」
「其れでこの部屋来た時から桜吹雪なのは容易に理解出来たが抑えろ。部屋爆発しそうな勢いで溢れてるから」
「えへっ!すみません、主…!!主の為にも、頑張って低レベルくらいには抑えますね!!」
「誉桜の降り方にレベルあんのか、凄ェな」


 マジで部屋の戸外れて吹っ飛んでいきそうなくらいに桜撒き散らしていたので、程々にしておけよと忠告しておく。
じゃないと、冗談抜きで審神者部屋君の桜で埋まっちゃうから。
 ぶわっぶわに降らせまくっている桜を何とか抑えつつ気も落ち着けた長谷部が腰を据えてお茶を差し出してくれたので、有難く受け取りつつズズズ…ッ、と啜る。
次いで、渡されたお茶菓子とエロ本に何とも言えない気持ちになりながらも受け取り、まずは糖分摂取が先だと仕事で疲れた脳味噌に甘味成分を送った。
うん、今日の茶菓子も美味いな。
歌仙作の物だろうか、雅で美しい上に味も絶品と来た。
おまけにお茶も良い茶葉を使ってるんだろう、何とも深みのある上品な甘みと苦味に身も心も落ち着ける味だ。
たぶん、うぐお薦めの茶葉だな。
何方も甲乙付け難いくらいに文句無く美味しかった。
 …で、一服して落ち着いた事で、改めて献上紛いに差し出されたエロ本のチェックと致しますかな。
渡されたからには読まない訳にはいかんだろう。
別に読まずに断りを入れて返しても良いんだろうけど、長谷部のリアクションからあまりにも気になるので、ちょこっとだけのつもりでぱらり、と頁を捲ってみた。
そして判明した事実。
コレ、ガッツリなエロ本やないかーい……。
興味本意でチラ見して良いレベルの物じゃないよ。
そんで、そんなガチでエロイエロ本を上司且つ女である私に渡すな読ますなや、長谷部よ。
一応、検分の体でパラパラと数頁捲って読んでみたけど、やはりガッツリなエロの成人向けの漫画だった。
こらアカンですわ…いち兄に見付かったら、即行で“弟達の目に触れたら教育上宜しくありませんので処分致します”のコースやわ。
自分の事は棚に上げてな。
 一先ず、そっ閉じして、ニコリと笑って長谷部の手元へと丁重にご返却した。


「い、如何でしたか…っ!」
「うん、取り敢えず、ガチでエロな発禁本を女である私に堂々とお薦めするのはどうかと思うとだけ先に述べておこうか」
「え…っ、やはり駄目…でしたか?」
「寧ろ何で良いと思ったんだ。一応成人した身ではあるけども」
「この間、主もとても熱く語っていらしたので、もしかして少しは嗜まれているのかなぁと思いまして…其れで、“此れはイケる流れだ”と思ってしまいました」
「私、仮にも君の上司。おまけに性別女よ。よく其れで“イケる”と思ったな?お前の思考回路ちょっと心配になってきたよ」
「すみませんでした…主の仰る事はごもっともです。最も重要で基本的な事を忘れていました…俺の失態です、お許しください。まさかの基本的な事が盲点になっていたとは……っ、主の御目を汚してしまい申し訳ございません」
「いや、まぁ良いんだけどね。本当は良くないけども。前回も言った通り、ウチはそういった点ユルいから、基本的には自分等の中で楽しむ分には構わない。他の子に迷惑をかけなければ全然OKなスタイルの方針だから。其れは頭に入れておいてね。ついでに、他の子にもそれとな〜く伝えといてくれると助かる。私自ら大っぴらに言っちゃうと逆効果になりそうだからさ」
「ハイ!分かりました!!では、今度仲間内でそういう話になったら伝えときますね…っ!!」
「うん、ありがとね。ついでのついでに感想も言っとくとね、まぁ悪くはなかったと思うよ」
「あ、有難うございます…っ!まさか、今の流れで感想を頂けるとは思っていなかったので、恐縮です!!」


 大事な事は忘れずしっかりと改めて伝えておくついでの流れで読まされたエロ本の率直な感想も伝えといた。
すると、長谷部は先日同様に感動してまたも桜を抑えられずにぶわっと溢れさせて、視界が淡いピンク一色と化した。
うん、相変わらずね、この流れ。
ナチュラルにエロ本を介した上での猥談を許可した流れで、ふと思い至った事を訊いてみる事にした。


「ねぇ、今の読んで思ったんだけどさぁ…長谷部って、バック攻め好きだろ?」
「えっっっ!?さ、流石のそっちの話題は、その、色々とアウトと言いますか…っ。純粋に恥ずかしいと言いますか、ね……っ」
「いや、ガチなエロ本読ませておいてソコで恥ずかしがるの可笑しくない?ぶっちゃけ今更やろ。お前の恥ずかしがるポイントが分からん」
「いえ、その…流石の其処まで深堀されるとは思っていなかったものですから、心の準備が出来ておりませんでした。面目無いです…っ」
「あぁ…まぁ、普通ならそうだわな。最初に断っといた上でのこの会話だからな。矛盾してんのは承知の上さね。気にしたら負けだよ、長谷部」
「は…っ、以後気を付けます…!」
「や、其処まで気にするもんでもねぇけど」


 変なところで恥ずかしがる長谷部を突っ込みつつ、更なる深堀をしていく為、憚る事無く突っ込んでいった。


「…で、ぶっちゃけどうなのよ?やっぱり長谷部の好きな体位ってバック攻めなの?」
「えっと…、まぁ、そうですね…好きですね、バック…」
「あ、やっぱり?お尻好きならバック攻め推しだろうなぁ〜と勝手に思ってたんだけど、当たってたね。やったぁ」
「先日暴露した事で、俺の性癖は全て主に知られてしまってますもんね…。でしたら、もうこの際、全てを曝け出して行きましょうか…ッ!」
「ヨッ、長谷部おっとこまえ〜!」
「主にそう言って頂けて、有難き幸せ…。そうと決まれば更なるぶっちゃけトークと致しましょう!!確かに、俺は前回尻派且つ太股派と豪語しましたが、普通に正常位も美味しいです!!何故ならば、相手の蕩けた顔を真正面から眺め…いや、拝める権利を堂々と獲得出来るからですよ!!」
「お〜、凄ェ勢い良くぶちまけたなぁ…。でも、理由はめっちゃ分かりみ。トロ顔は大事よね」
「またしても主からの理解を得れて俺は大感激です!!控えめに言って嬉し過ぎる…!主は俺をどうしたいんですか…っ!!」
「別にどうこうする気無いけど、強いて言うなら盛大に嬉しがってる長谷部のリアクション面白くて、その面白さ見たさに弄ってる感はある(笑)」
「もう!主ったらァ……ッ!!好きッッッ!!!!!!」
「うん、知ってる」


 長谷部のクソデカ愛の告白を受けて、既に知ってるぜ…の体でナチュラルに塩対応で受け流す。
寧ろ、コレで知らない方が可笑しいよ。
へし切長谷部の大抵が主大好きを拗らせてクソデカ愛をぶちまけてるんだから。
まぁ、その愛を如何に自然と受け取りつつ宥めるのかも審神者の腕次第だけどな。
その点、私は長谷部の事を知り尽くしているが故に完璧なのだよ。
例え、審神者がへしさに推しでなくても好きなジャンルであって嗜んでいて、且つ異性の好みに入りかけるけども違うんだよなタイプであっても。
 微妙なラインを行き来しつつ曖昧な関係を続けていくのは大変なのよ。
審神者って、悪までも審神者で、刀剣男士達とは主従関係or上司と部下の関係だから。
下手に境界線踏み越えないように努めなきゃならんのだよ。
そういう意味では、審神者の仕事って楽なもんでもないのよねぇ。
簡単に見られがちだけれども、実際は意外と色々な面で大変なのよ。
だって、相手は大抵が成人男性の見た目で顕現してるからね。
お世話するのは楽しいけども、大変な事の方が多いのよって楽観視してる若い衆には言いたい。

 まぁ、其れはそうとして…。


「正常位以外に好きな体位挙げるとしたら何?」
「バック攻めの他ですと、対面座位でしょうか」
「おや、これまた意外。ちなみに理由の程をお聞かせ願っても?」
「相手を下から突き上げる度に相手が悦ぶ表情を間近で眺められるのが最高ですし、何より大好きなお尻を掴み放題揉み放題です」
「真顔で何言ってんだコイツ……とかって一瞬思わなくもなかったけど、納得の理由で頷けたわチクショウ!そういえばそうだったね!!対面座位もお尻堪能し放題シチュだったね!!」
「ええ!!だから、今回手に入れた本は貴重な俺得祭りのパラダイスです…っ!!ちなみに、先程言いました正常位へ持っていく流れの中で好きなシチュエーションについての推しポイントですが、相手の股へ頭を挟む瞬間が最高だと思います!!お尻も好きですが、男たる者、女性の太股の柔らかさに喜ばざるを得ないもの…!!此れぞまさしく太股万歳ですよ!!」


 今の絶対語尾にハートマーク付いてたやろ、ってくらいに甘えた感じの口調だったわ。
可愛いから許すけど。
へしかわは尊いもの。
コレはへし推し民なら当然の謳い文句だ。
伊達に片足へし沼に突っ込んでねぇわ。


「今の流れからして、主も普通にエロ本の類いを嗜まれている事が明確に判明致しましたが…実際のところ、どうなんですか?嫌悪感とか全く抱かないタイプだったりします?」
「エロ本読むのは男しか居ないと思われがちだけども、女だって普通に読むもんよ?その為に成人女性向けジャンルがあるんだから。私だって、公然とは言わないけども、普通に支部とか支部とか辺りで色々と見てるし読んでるわよ。一部マニアックな部類に入るのも普通に嗜んでます、ドヤァ」
「さ、流石は俺の主…っ!御見逸れ致しました!!」
「フフン、エロイのが好きなのが男だけと思ったら大間違いなんだから…!女だって頭ん中エロイのよ!!“そんなの男しか考えないもん”とか可愛い子ぶってられるのは幼稚なガキ共な間だけ!!女だって普通にエロ本読むんじゃい!!分かったかァッッッ!!」
「はいぃッッッ!!何かよく分かりませんけど御免なさい!!」
「素直で宜しい!!……で、話戻すけどさぁ、ぶっちゃけ好きな体位語り出したら個人差丸分かりになっちゃうよね〜」
「話の展開が最早ジェットコースター並みに乱高下激しくてぶっ飛んでますが、その平然と話の流れを元に戻す主、格好良いです…好き、憧れます……っ」
「軌道修正も出来ずして百振り近くの刀剣達纏められっかよ、って話な」
「嗚呼、そうやって自然に受け取られる主の清々しさ、素敵です…!いっそ眩しい程に…!!」
「え、何…長谷部の視点で見たら私後光でも射してんの?凄ェオーバー過ぎる反応返されて軽く引くわぁ…」
「地味に抉ってくるスタイルも嫌いじゃないですが、“軽く”なところに愛を感じて俺は絶賛幸せです…っ!」
「どうでも良いが桜抑えろ。私の顔面にまで当たってるから。口ん中入ってきちゃうから」
「ああっ、本当にすみません!!わざとじゃないんです!!でも、主の口の中に俺の桜の花弁が入ってしまうのは厭らしくてけしからんですね!!いっそ俺自身が入りたい!!」
「分かったから、長谷部ステイ、落ち着け餅つけ」


 もう視界全部桜のピンクでお部屋大変な事になってるから。
最早桜の嵐巻き起こってて長谷部の姿見えないくらいになってるから。
つか、地味に風圧痛いよ。
「誉桜にこんな圧あったっけ?」って思うくらいの状態だから、頼むから落ち着いてくれ。
 何とか宥めすかして桜吹雪を落ち着かせると、漸く視界に長谷部の姿が戻ってきた。
良かった。
もう声しか聞こえてない状況だったから、流石の私も焦ったよ。
たぶん、止めてなかったら軽く私の部屋吹き飛んでたね。
とりま、落ち着いてくれて何よりだと思いつつ、茶を飲む事を勧めると素直に湯呑みに口を付けてくれた。
そして平常に戻ったのか、通常運転の切り返しで以て先の話題を蒸し返してくるのだった。


「ところで、今しがたマニアックな部類の物も読まれていると仰られておりましたが、具体的にはどのジャンルの物かお訊きしても…?」
「凄ェ食い付いてくるじゃん、長谷部ったら〜。もぉ〜エッチだね!」
「はい!!俺はエッチな男です!!否定はしません!!」
「本当潔いよなお前…まぁ、良いけど。あまりに変なとこで潔くなってるから“育て方間違っちゃったかな?”とか思わなくもないけど、まぁ良いや。…で、私の好きなマニアックなジャンル、つったっけ?んっとね、包み隠さずぶっちゃけるとだな…其れは獣系なのだよ。引くかい…?」
「ハッ…!所謂、獣姦的なアレですか…っ!?なかなかにマニアックな…」
「いや、正確に言えば、ケモミン×のナイスバディーな女の子。別に、女の子側は美人で可愛いだけでも良い。いっそ性別は男の子でも可。私は腐女子だからな、BLだって嗜みます、キリッ!」
「そういえば、主は動物の類いが大のお好きでしたね。成程、其れでそのジャンルを」
「まぁ、更にぶっちゃけると、普通に男女のエロも捨て難いけど、一番の大好物は『人外×少女(もしくは女性)』かな…!ソコに萌を禁じ得ないのよ…っ!!」
「今のちょっと恥じらいを込めて言いましたね…?そんなあざとく可愛らしいところも好きです」
「ブレねぇな、お前も…」
「えへ!俺は主の事大大大好きですから、当然ですね!!…それにしても、『人外×人間』の女性でしたら、まさに俺達ですね!俺は刀で付喪神ですから、立派な人外です!!」
「言うと思ってたけど、確かに根本言えばそうなんだよねぇ…直視しない点ではあったけども」
「期待しても良いんですよ…?俺ならば、主の好みにだって添ってみせます!」
「いや、別に読み物として読んでただけのもんだからリアルは求めてないのよ、御免ね」
「率直に謝られるとグサリと刺さるのは何でなんでしょうか…ッ」
「さぁね。槍に刺されるよか痛くないんだからマシじゃない?」
「確かに物理的に痛くはありませんが、心が痛いですよ主……っ」
「知らんがな」


 何か勝手に傷付いて痛がって胸を押さえて床に転がる長谷部。
しかし、地味にアピールしてきてるつもりなのか、チラッチラこっち見てきてんの分かってるからな。
その手には乗らんぞ、あざとい奴め。


「話を戻しますが…一番始めに好みの体位の話を持ちかけてきたのを察するに、主もだいぶエロイの平気なタイプですね?」
「だから言ったろ?女だってエロイの好きだし普通にエロ本だって読んじゃうって。おにゃのこに夢見てた勢の野郎共には夢ぶち壊す発言だとは分かってるけどもね。でも、長谷部は私の程度じゃ引かなかったね?」
「えぇ、主の事を全て理解してこそ主の側に居る権利を獲得出来るのですからね。今のくらいで引く奴なんて、とてもじゃないですが主の近侍引いてはお相手は務まりませんね。ついでに暴露しますと、今のはほんの軽く甘いレベルかと」
「わぉ。流石は長谷部。なかなかにレベルが高い子ね…」
「お褒めに与り光栄です。もっと褒めてくださっても良いんですよ?」
「いや、今の別に褒めてないんだわ」
「急な辛辣。でも、其れが良い…!」


 やはり長谷部はいつも通り長谷部だった。
何処までもブレないの、逆に感服するわ。
 一先ず、長谷部がドエロくてマニアックな物も嗜んでいるというのは分かった。
ド助平なのは変わんないけども。
何か其処に属性的なものが付属した感じに受け取れたのは確かである。

 ――へし切長谷部ノ称号『ド助平長谷部』ニ、『エロエロマニアック』ノ属性ガ追加サレタ!
称号『ド助平長谷部』ノランクガ昇格シタ!


執筆日:2021.08.31
公開日:2021.09.02