鶴丸曰く、“主は蓮の花のような人だ”と例えた。
―私が、蓮…?
何故、そう思ったのかを問うと。
彼はこう言った。
「だってそうだろう?泥のように澱んだ現世で自我を失わぬよう気高く生きている。それでいて、現世の澱みに染まらず仏のように優しい心を持ったまま生きている。その思考や心は美しい。そんな君の様が、泥の中から美しく静かに穏やかに凛と咲き誇る蓮の花のように思えたのさ」
そんな美しい精神でも何でも無いと思うのだけど。
私は素直にそう思った。
けれども、彼から見たら違うらしい。
私が蓮の花に例えられるだなんて、ちょっと意外…というより、初めての事だった。
あれ程純粋でも美しくもないと思うのに。
例えても、精々が道端に咲く雑草や野花で十分なくらいだ。
実際のところは、其れ程にも力強くも忍耐強くも無いけれども。
しかし、彼は言う。
「いや、やはり君は蓮の花という例えが似合う。泥の沼から可憐に花開くように、地蔵行平のような凪いだ心を…悟りすら開いたが如く仏の心を持って此処に存在しているんだからな」
其れは流石に言い過ぎだと思って口を挟もうと開きかけるも、彼が私の口を遮るが如く続けて口を開いたから閉ざさるを得なかった。
「故に、俺はその蓮の花が穢れぬよう守り抜きたいのさ。穢れを纏った思念や澱みの塊に足を取られて泥の沼に沈んでしまわぬように」
そう言って、彼は儚げとも泣きそうだとも取れるような複雑な笑みを浮かべて、私の顔の横に落ちる一房の髪を取って耳に掛けるのだった。
執筆日:2021.09.08