子供の頃、友達が居ない代わりに影とお喋りしていたとの事を、つい最近実家に帰った際に親から聞かされた。
幼い頃の記憶はあまり憶えていない為、全く以て知らない憶えてもいなかった話で。
その話を聞いてから己の小さき頃の記憶を遡ってみると、ふとそういえば一度だけ不思議な事があったような…、と己の朧気な過去を思い出す。
何かよく分からないものに襲われかけて、其れをこれまたよく分からない人為らざる者に救われた…――そんな現実離れした出来事が。
朧気にしか思い出せないくらい遥か彼方過去の記憶だから、断片程度のものだが。
記憶の頃の私は、まだ七つにも満たない歳で、当時の私は人見知りが激しく、同世代の友達が居なかったのだとか。
その代わりに見出したのか、私は幼き頃、普通の人には見えない相手が見えたようで、自身の影として映る影に喋りかけていたという。
私だけにしか会話は通じないようだったが、そんな光景を目の当たりにしていた両親は初めこそ不気味がったそうだが、そこはまぁ歳が歳で七つにも満たっていなかった為か、“子供は七つ歳を取るまでは神の子”と思う事にし、放任していたらしい。
実はその頃から審神者適性を見出されていたとかで、次世代の審神者候補として保護観察下に置かれていたとの事。
審神者になってから改めて知った話であったが、確かあの時見た影なる姿の刀剣男士は、今思えば大典太光世だったように思える。
「…夢か幻か、本当にあった事の記憶なのかも分からないけれども、不思議な事もあるもんだなぁ」
そう零した私に、近侍として付いていた我が本丸の大典太は。
「嗚呼…そうだな。何はともあれ、アンタが無事で良かった…。でないと、今頃俺とアンタはこうしてこの場で逢えていなかったかもしれないからな」
…と、微笑を浮かべながら返してきた。
その如何にも懐古を思うようなしみじみとした言い方に引っ掛かった私は、“もしかして…”と問いかけて、緊急任務を言い渡しに飛び込んできたこんちゃんに遮られる。
そして、彼より言い渡された任務は、『未来の審神者となる者を守護せよ』というもの。
あまりにもタイムリーな内容に、私は再び真向かいに座していた近侍の方を見つめて口を開く。
「まさかのまさか、って話じゃないっすよね…?」
その問いかけに返ってくる答えには、俄かに弾んだ音が乗せられていた。
「さぁ、どうだろうな?アンタのご想像にお任せしよう。――暇潰しはここらで終いだ。…そら、新たに入った重大な仕事だぞ?俺はいつでも出られるから、指示をくれ」
そう告げて、颯爽と戦支度を整えに部屋を去る彼の背を、半ば呆然とした目で見送るのだった。
執筆日:2021.09.08