審神者の過去の歴史が時間遡行軍に目を付けられたらしく、審神者の過去の時間軸に飛び、審神者となる前の主様を敵から守れとの指令が入る。
派遣されたのはその本丸に所属していた同田貫で、飛ばされた時代は彼女がまだ学生の頃で中学生時代だった頃。
セーラー服姿のまだまだあどけなさ残る少女の頃の主を見て、今や恋仲の相手であり生涯共に居る事を誓った番相手の彼女にも純粋な少女時代があったのだな、と半ば感心しながら見守っていた。
しかし、放課後彼女が一人となった瞬間に生徒に紛れ潜んでいた敵が襲い掛かってくる。
其処へ颯爽と登場、変装用にとその中学の制服(学ラン)を身に纏い生徒に扮した姿の同田貫。
過去の彼女に未来の主の記憶は無い事は分かっているので、混乱を避ける為、御札に込めた霊力で本丸に待機していた彼女の精神を指示通りに一時的に憑依させる。
下校時間はとっくに過ぎた時間と言えど、人気の残る校舎内では戦えないとして、学校の真隣に位置するように在る神社へと避難する事に。
其処ならば比較的磁場も安定しているし、結界も張りやすいor土地神の守る地の氏子故に少なからず加護を与えてくださるだろうとの判断で逃げ込む。
モノホン神様相手にゃ奴等も勝ち目は無かろうし、土地神の領域にそう容易くは干渉して来ないだろうと推察。
だが、そこで別の問題が発生する。
戸締まり担当の教師だろう――こんな時間にも関わらずまだ生徒が残っていたのかと、校内を駆け抜けていた際に姿を見られていたらしい――一人の教師が此方の方へと向かって歩いてくる姿が視界の端に映った。
今、此処で部外者の人間が来ては厄介だ。
咄嗟の機転で、彼女は相棒の刀に指示を飛ばす。
「たぬさん!今すぐ私にキスして…っ!!」
突拍子も無い話にギョッと目を剥いて、何をこんな時にと言い返そうとする同田貫の台詞を遮って彼女は必死に繰り返す。
「良いから早くっ!!」
「――〜〜〜ッ、どうなっても知らねぇぞ…!」
口付けた瞬間、教師が此方の様子を覗き込もうとして慌てて踵を返していくのを彼は片目の視界で認めた。
「成程…あの人間を此処に近付かせねぇ為の咄嗟の判断ってヤツかい」
「急な事頼んで御免ね…っ。でも、お陰で余計な被害出さずに済みそう……!ありがとね!!」
「へっ…!この件が片付いたら褒美にもう一回接吻させろよ?今のじゃ物足りなさ過ぎてつまんねぇからなァ…ッ!!」
「許可するにせよ、まずは此れを終わらせてからだけどね…!あと、するなら本丸帰ってから“私本人”にしてね!!」
「んなこた分かり切ってらァ…!!」
後日談として、未来の自身の憑依が取れた中学時代の方の彼女は元通りの生活に戻り、またキスされていた現場を目撃したらしき教師が通りすがりの彼女へと訊ねる。
「**さん、彼氏とラブラブなのは良いけど、イチャイチャすんのも程々にね!放課後帰る時間になったらすっと帰る…!分かった?」
「え…?先生、何の事言ってるんですか…?」
「え?昨日、放課後遅い時間まで君校内に居たよね…?」
「いいえ…?昨日は私、仲の良い友達と一緒に、寄り道とかもせず真っ直ぐに家に帰りましたけど……」
「あれ…っ?先生の見間違いだったのかなぁ〜…」
「偶々、私と似たシルエットの子と間違えたんじゃないですか?だって、私、生まれてこの方一度も彼氏居た事も無ければ、好きな相手すら居た事ありませんから。…ねっ?」
「うんうん。璃子ちゃんに彼氏出来たとかになったら、真っ先にウチ等が食い付くしねぇ〜!」
「そもそもが、私、今はまだ現実の男に興味が無いんで…。嫁は二次元だけで間に合ってます」
「そ、そっかぁ〜…。何か変な事言っちゃって御免ねぇ?じゃ、この後の授業も頑張って!」
「はーいっ」
「先生も授業頑張ってね〜!」
「応援ありがとぉ〜っ」
まさか未来の自分が過去の己に乗り移り、且つ恋人と口付けまで交わしてみせる仲まで発展しているとは露知らぬ事である。
執筆日:2021.09.08