光充とは…光忠への萌ゲージが不足したり、光忠を欲して止まなくなった時に、光忠(グッズ等)をぎゅうしたり、とにかく引っ付いたりして感情を満たす事である。
これは、光忠好きなクラスタさん、又は、燭沼住民の方々に度々起こる現象と言われている。
そして、そんな沼住民が此処にも存在した。
『はぁ〜…っ。光忠が足りない…っ。光忠を見たい…、光忠に逢いたい…っ、光忠に触りたい…っ!現実辛い…ッ!!みっちゃぁーん…ッッッ!!』
大好きな嫁に逢えない期間が長過ぎて、光忠不足になったのだ。
その為、少しでも気を紛らわそうと大声を出して叫んでみたが、結果、大して変わらないのだった。
否、寧ろ、虚しさが増しただけであった。
『うぅ…っ、みっちゃんが足りないのです…っ。格なる上は……ッ!』
むくりと伏せていた身を起こすと、突如、ギラリと目を煌めかせ起き上がった璃子。
何をするのかと思えば、徐にPCを起動させ、お気に入りの動画サイトを開くと、ゲーム中の光忠ボイスを集めた動画をクリックし、それを表示させて、だだ流しにする。
その他は、自身が普段使うベッドの上に、彼を模したグッズを並べる。
最後に、彼の抱き枕を用意したら、それを抱いてベッドへダイブするのだ。
これぞ、彼女の究極光忠対萌補充法なのである。
ちなみに、彼を近くに感じれるよう、実際の彼のサイズで購入したコスプレ衣装(戦衣装)が、壁際に掛けてある。
ついでに補足すれば、此処最近の彼女の部屋着は、光忠の内番服であるジャージ服(をイメージした物・市販購入)だ。
凡人たる一般ピーポーな方々には、一生相容れぬ感情であり、理解し難い事だろう。
中には、“コイツはただの変態だ”と称する者も出て来るだろう。
しかし、上には上が居る事をおして知るべし。
彼女など、まだ低レベルの序の口程度なのである。
『光忠が足りなくなったら充電なのですぅ〜…。はぁ…っ、格好良い光忠を眺めてるだけで癒されますなぁ…。』
先程の荒み具合は一体何処にいったと言いたくなるくらいの変わり様…。
のほほんとまったり、ベッドにごろりんちょする璃子。
しかし、その腕にあるのは、彼を模した抱き枕である。
グッズも其処らに散乱している状態だ。
『あー…。でも、やっぱり本物じゃないから、寂しいのだ…っ。う〜ん…っ、みっただぁ〜……!』
「うにゃにゃーっ!」と、身体を伸ばし切ったかと思うと、へにゃりと再び元気を失う璃子。
やはり、根本的な萌が足らないのか、不完全燃焼したような気分でやる気が出ない。
『みっちゃんが恋しいよ〜。本物のみっちゃんに逢いたいよ〜。でも、現実忙し過ぎて向こうに行く暇が無いよ〜っ!うわぁ〜ん…っっっ!!』
とうとう精神的に耐えられなくなったのか、光忠愛を拗らせた彼女は、寂しさのあまりに泣き出してしまった。
これでもかと抱き枕にぎゅうぎゅう抱き付いて、離れない璃子は、彼を模した抱き枕の胸元辺りに顔を埋める。
抱き枕故に、素材はクッションと変わりない為、その姿は、原型を留めぬ程変形している。
最早、彼を模した意味も形無しか。
延々とリピートされる彼のボイス集動画が、不意に、プチリと切られる。
そして、ぐしゅぐしゅと泣きべそをかいたような音を発していた彼女の元に、何者かが現れた。
「何時まで、偽物の僕なんか抱いて泣いてるの?良い加減離しなよ。」
不意に降りかかった声に、璃子は、埋めていた顔を上げる。
すれば、視界が映すは、待ちに望んだ、真っ黒な燕尾服を身に纏いし愛しの我が嫁。
『みっちゃん…っ!?』
「全く…、僕が側に居ないからって、こんなに部屋を散らかして…っ。おまけに、だらしない姿…!君ってば、本当、現世ではロクな生活してないね!?」
『うぇえ…っ!?にゃにゃ…っ!何で、光忠が此方の世界に居んの…!!?』
「あまりにも本丸に帰って来ないから、心配して様子を見に来たんだよ。近侍は、僕だしね。こんのすけに無理言って、現世へと行けるよう頼んでもらったんだ。」
突如として変化した状況に付いてこれない彼女が、しこたま吃驚したように驚いて目をぱちくりさせる。
そんな彼女に、光忠は、冷静沈着に対応する。
「まだ此方には帰れそうにないの…?」
『う、うん…っ。まだちょっと時間がかかるかも…。仕事が多忙期でさ。』
「それで…、この状態だった訳ね…。」
ふぅ…っ、と溜め息を吐いて、腕を組む。
「僕が側に居ないから、寂しくなってこの有り様なんだろう?」
『おぅふ……っ。』
「だからって、もう…っ、抱き枕の僕に抱き付くんじゃなくって、僕自身を呼べば良いじゃないか…!」
『だって…、それだけの理由で次元を越えさせる訳にもいかないし、こんのすけに現世へ来れるよう頼む訳にもいかないよ…っ。刀剣男士を現世に喚ぶには、政府への申請をしなきゃいけない訳だし…。』
「でも、それで君がその度にこんなんになってちゃあ、意味が無いよ。現世での仕事を辞める訳にはいかないのかい…?審神者業だけでも、十分生活するだけのお金はあるんだろう?」
『そりゃね…。だけど、現世での私の面子もあるのよ…。“貴女今何やってるの?”って訊かれるからね。“審神者やってます”なんて言ったって皆には通じないし、解んないだろうしな。“何ソレ、ちゃんとした職業なの?”とか言われるのがオチだよ。審神者なんて仕事、解る人にしか解んないからねぇ〜…。』
「現世って何だか世知辛いね…。人間の考える事はよく解んないや。」
『そんなもんだよ、世の中。』
「そんなもんなんだね…。」
心が狭く、世知辛い世の中を思い、憂いの表情を見せる璃子。
心なしか、遠い目をしている。
「そんな事なら、僕と契りでも結んだら良いんじゃないかな…?」
『は……?』
「僕と長期間離れる度に、こんな状態になるくらいならさ。確か、一人の刀剣男士と契りを結べば、その刀剣男士とはいつでも側に居れたんじゃなかったっけ…?何時ぞやに、そんな事を政府が言っていたような気がするよ。」
突然の爆弾発言に、彼女は呆然とした顔で彼の方を見遣る。
光忠は、平然とした表情のまま、話を続ける。
「契りを結べば、何処へでも一緒に居れるよ?現世へも、一々許可を取らなくても良くなるしね。契りを結んだ刀剣男士なら、申請をしなくても現世へ行けるって政府が言ってたし。どう…?悪い話じゃないだろう?」
『いや、あの…っ。話が飛躍し過ぎてて、付いていけてな……っ、』
「それに、僕と契りを結んでたら、何時も君の側に居てあげられるから、今みたいに寂しい思いをする事もなくなるし、何時でも君のお世話が出来るよ。長谷部君が言うような、“主お世話係”以上にね…?朝から晩まで僕が付いている訳だから、変な輩に襲われる心配も無いし、君にとっても、メリットの多い話だと思うけど?」
「これは名案だ!」とでも言うように、素晴らしく眩しい笑顔を向けてくる光忠だが…。
如何せん、話が突拍子もなく飛躍し過ぎていて、頭の処理が追い付けていない。
それどころか、その気満々な表情で、未だ寝転ぶままの彼女の顔の脇に手を付き、迫ってくる勢いだ。
『あの…っ、ちょっと待ってください…っ。』
「ん?何かな…?」
『契りを結ぶって…要は、結婚するって事なんだよね…?そういう事なんだよね…?understand…?』
テンパり気味に、矢継ぎ早にそう問い返せば、少しだけ思案顔になった後、こう答えた。
「うん、そういう事になるね…っ!」
思いっ切りな笑顔で、嬉しそうに言いやがったコイツを、今ばかりは少し殴ってやりたいと思った。
「別に、可笑しな話ではないと思うよ?」
『結婚て……っ、何ソレ超恥ずいじゃん…ッ!!』
「何を今更…。僕は、審神者としての君だけじゃなく、現世での普段としての君も知っているのに、今更じゃない?」
ごもっともな意見だが、それとこれとは話が別であると訴えたい。
しかし、彼からの更なる追撃は続く。
「それに…、君が思ってる以上に、僕は君に溺れてるんだよ…?」
『…何それ、何なの…?プロポーズか何かのつもり…?』
「僕なりのアピールのつもりだったんだけど…駄目だったかな?」
『どんなシチュで、どんなプロポーズだよ。』
「あれ…?やっぱり通じない…?う〜ん…人間がやるようには、上手くいかないなぁ…。」
それ以前の問題なのだが、敢えて言わないでおこう。
取り敢えず、今の現状をどうにかしたい。
「それで…?君の答えは、どうなの…?」
『…それ、今答えなきゃ駄目かな…?』
「今答えなかったら、何時答えるんだい?」
迫り来る彼の勢いは、既に至近距離の距離である。
『……答えって言っても、一つしかないんじゃ、答えようがないよ…。』
光充の果てに、彼女は、自身の刀剣男士である燭台切光忠と結ばれる事となったのだった。
「コレ、どんなオチだ。」という話は、言わないで頂きたい…。
執筆日:2018.01.21