主はどうも俺の事が好きらしい。
顕現して、半年目くらい経った頃、内番で一緒になったばみにそう聞かされた。
その日は畑当番だった。
何がどうして俺なんて刀を好いたんだか。
俺みたいな傷だらけの武骨者好くたぁ、よっぽどの物好きくらいだろ。
他なら、ただの刀好きってだけが理由になるか。
そう思って言ったら、ばみも
訳が分からず、別の奴にも何か言われたら訊こうと思った。
次の日も内番で、その日は馬当番だった。
一緒になったのはぎねで、ばみと同じような事を言われた。
主が俺の事を好きらしいと。
俺はただその話を聞くだけ聞いて、取り敢えずは何のアクションも起こさず置いておく事にした。
何度と似たような話を聞くにつれて、とうとう自分から動く事にし、主本人へ直接問い質してみる事にする。
そしたら、何でもない風にケロッとした顔で。
「うん、好きだよ」
――なんて返すから、嗚呼何だやっぱりそんな程度の物好きか…と思いかけた時。
不意に何気無く顔を背けた主の頬がほんのり赤く色付いて女の顔とやらをしたから、“此奴は本気で俺に入れ込んでるのか”と理解して。
「なら付き合うか」
…って、軽く返しちまったんだ。
その時はただの気まぐれ程度のつもりで、人の真似事をするみたく暫くの間だけ恋人ごっこに付き合ってやろうと思っていた。
初めの内は、本当に“ごっこ遊び”と称するようなママゴトみたいな馴れ合いをしていただけだった。
だが、その内、人間の親愛やら何やらに対する感情を学ぶ内に俺の中の何かも変化していって、気付けばいつの間にか俺の方が本気になっていた。
初めはほんの気まぐれから始まった付き合いで、“飽きたら其れまでだ”というつもりだった。
けど、主はいつまで経っても飽きる事は無かったし、変わらず俺に好きだと気持ちを伝えてきていたから、俺も次第に本気で主の事を女として見るようになって、本気で好きだの大事だのと思うようになっていた。
其れは、修行に出てから殊更強く思うようになり、今や俺の方が主の事を好いていて、周囲へあからさまに強く好意を示すようになった。
そして、誰にも取られたくねぇと思った或る日、俺は主に言った。
「アンタ、ガチの本気で俺の女になる気はねぇか?」
…と。
主は首を傾げて返した。
「今も十分同田貫の女で居ますけど」
いつぞや見た風なケロッとした顔でそう宣う。
違う、そうじゃない。
俺ははっきりと告げた。
「そうじゃなくて、“俺だけの女になるか?”って訊いたんだよ。早い話、“俺の嫁さんになってくれ”って言ってんだよ。何でアンタって変なとこで鈍いんだ?普通、さっきの台詞だけで分かりそうじゃねぇか?」
「すまんね、物分かりの悪い女で」
「…で?返事はどうなんだよ」
「そりゃもう、“不束者ですが、どうぞ宜しくお願いします”って答えるしか無くない?私、端っからたぬさんにぞっこんラブなんだから。あ、“ぞっこんラブ”についてが寒かったら御免。私、時代の流行とか気にしないタイプだから、常に時代遅れという名の逆行してんのよ」
「“神嫁”になる点については何も不安はねぇのか…?」
「は、今更じゃん。私、既にとっくの昔から“たぬさんのもの”ですが、何か?」
「上等だ、コラ。精々離れたくても離れられねぇようにしてやるから覚悟してろ」
そうして俺達は本当の本当に結ばれて、晴れてめでたく
刃生何があるか分かんねぇもんだなァ。
飽きたら簡単に捨てられると思ってたもんが、いつの間にやらこっちが捨てられねぇ生涯大事にしてやりてぇもんになるとは、顕現し立ての頃の自分自身に言って教えてやりてぇよ。
“
―まさか、自分の主が自分の嫁になるなんざ思わねぇだろ?
Title by:惑星