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まあそんなわけで今後ともどうぞ末永くよろしく



「ただいま」
「やあ、おかえり。ご実家での休日は楽しめたかい?」
「家出してきた」
「は?」
「つーか、絶許言い渡されてカッとなってそのまま家出てきた」
「え、や、絶許て君ねぇ…実家に帰宅していた間に一体何があったんだい?」


 本丸へと帰ってくるなりぶちまけられた主の爆弾発言に、僕は驚きを隠せずのまま聞き返した。
そしたら、主は苛立ちを隠せない様子のまま早口で事の流れを捲し立ててきた。


「碌に職にも就かずふらふらとしてばっかでて向こうは言うてきたけど、ふらふらも何もこっちは何処にも出掛けずの引き籠りのままでしたが?あと、一般には非公開で現世の政府未公認の限定下での職に就いてるだけであって、ただの無職なニートと一緒にしないでもらいたい。そっちは知らないかもだけど、一応働いてお給料は稼いでるんだからさぁ。本当失礼しちゃう!」
「うん…まぁ、今の流れから何となく何があったかの予想は付いたが。其れにしても、絶許はどうしてだい…?」


 僕は疑問に思った事を素直に口に出しながら、主の持っていたパンパンに膨らんだ大きな大きな荷物鞄を受け取りつつ先を促す。
すると、主は、やはり憤慨した様子を隠さぬのまま口を開いて事の顛末を語り出した。


「親からの言い分としては、“このまま自分達が死ぬまで何処にも就かないんだったら、縁を切る”だって。早い話、“離縁させて、一人ポッと世の中に放り出す”とさ。所謂ニート策への強行手段よ。其れにしても酷くない?私、今でも密かに頑張ってんのに。だから私あったまキテ、“其れなら其れでこっちから出てってやるわよ!!”ってぶちまけて最低限の荷物だけ纏めて出て来てやった。ザマァ」
「いや、だからって遣る事為す事派手にぶっ飛び過ぎてないかい?」
「ちなみに、金がナイナイ五月蝿うるさかったから、こんのすけに“審神者業用に作った口座から月五十万なら五十万くらい実家の口座に落とせるよう手続き出来ないか”って頼み込んどいた。こんのすけ曰く、出来ねぇ話でもねぇからやっとくわ、だそうだぜ。此れで文句は無ェだろ、莫迦ばか共め。来月辺りになったら吃驚するだろ?私の名義である口座から知らず知らずの内に五十万程送り込まれてるんだからなァ!一月ひとつきに一人二十万弱あれば生活にゃ困らんでしょ」
「本当に豪快だな、君って奴は…。確かに、一般的には一月ひとつきに二十万程あればギリギリ生活出来るくらいにはなるだろうが……にしても、五十万程の大金をポンと簡単にやるなんて…君のご両親が腰を抜かさないか心配だよ」


 そうして呆れ返るも毛の一本程も響いてない風にあっけらかんとする主は、僕に振り返り言うのだ。


「そういう訳だから、今後ともどうぞ末永く宜しくお願いしますよ、歌仙さん」
「いやだから何が“そういう訳”なのかが分からないんだが!?」
「えぇ…?もう金輪際現世の実家に帰る事も無くこっちに永住する事にしたから、審神者辞めて現世に帰るんじゃないかって心配する必要無くなったわよ、って訳よ」
「其れなら其れで、必要な物を急ぎこれから揃えないとならないんだが、果たして君は其れを理解しているのか?」
「最低限あれば生活するには十分でしょ。今でさえ既にこっちでしょっちゅう寝泊まりしてたので半生活出来るくらいには揃ってんだし。まぁ、着替えとかだけはその都度買い足さなきゃなんないかもだけどね」


 嗚呼、本当に全く以て我が主は突拍子もない事を仕出かしてくれる。
しかし、其れでも愛しくて堪らないのは、彼女の刀として仕えるが故か、はたまた彼女という人間に惚れたが故か。
 僕はきっとこの世に付喪神として降ろされた時から、彼女という人柄に落ちてしまったのだ。
だから、何だかんだありつつも、小言を吐きつつも、彼女に付いていくのである。
彼女の行く末を見守る為に、彼女という存在が何処まで翔かけていけるかをすぐ側の隣で見ていく為に。
初期刀として、共に歩んでいきたいのだ。
彼女自らが初めの刀として選んでくれた事に恥じぬように。


執筆日:2021.11.01
Title by:惑星