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報復



 戦に巻き込まれ、右目を潰された審神者が言う。
「良かった、利き目の左は生きてる。左を潰されてちゃ敵わなかった……っ。何せ、左の方が視力良いからね。潰れたのが右目で良かった」
 突然の、本丸への襲撃だった。
敵大将は何とか打ち倒せたが、代わりに、ただの人の子であった審神者は体の一部を失う事になった。白き衣は、見事なまでに赤く染まっていた。
 血味泥になりつつも、事態が収束し、安寧が戻ってきたと安堵したところでの時だった。薬研より手当てを受ける彼女は、ふとそう零したのだ。
 何が良かったものか。
主たる人を守り切れなかったどころか、大事な体の一部を失わせてしまったのだぞ。
 もう、主の右目は戻ってこない。元には戻せない。
我が主は、片方の視力を失った。
 だが、本人は至ってぴんぴんした声で言う。
「生きてるだけマシだよ。死んでちゃ何にも出来やしないんだから。命からがら助かっただけ運が良かったと喜ぼう!」
 本当は片目の視力を奪われ、四苦八苦しているだろうに。
空元気にもそう、明るい声音で以て言うんだ。
「失った片目の分、俺は君の目となろう」
 痛ましい顔を張り付けて手当てを手伝っていた光坊が頷く。
 敵よ、首を洗って待っていろ。
次に相見えた時、彼女の目を奪った分の復讐をしてやろう。


執筆日:2022.02.12