『ねぇ、清光?』
「ん〜?なぁに…?」
『私と結婚しよう!』
「……………は?」
唐突にそう告られた清光。
当然、訳が解らずに固まり、混乱する。
「え…、ち、ちょっと待って……?何で俺?というか何でいきなり?主に相応しそうな奴、他にもいっぱいいるよね…?え?っていうか、俺、今告られたの?好きも付き合うもすっ飛ばしてプロポーズされたの?え?マジで?え、これ現実…?夢じゃね?」
『ちょぉーっと一旦落ち着こうか、清光ー。めっさ混乱してるよ?』
「いやいやいや、混乱しない方が可笑しいって!!どうしちゃったの主!?何か変なモンでも食べた!?」
『失敬な。私は至って普通、通常運転だよ。』
「嘘だよ!だって、普段の主が、そんな事言う筈ないもん…っ!!」
『そんなに信じられないかね…?』
「そりゃ、信じたいよ!信じたいけど…。ありえないよ…。だって、俺人間じゃないし、刀だし。主とはずっと一緒に居れるか解んないし。でも、俺、主の事大好きだし。愛して欲しいって思うし。主が俺と結婚しようって言ってくれたの、スゲェ嬉しいし、それだけ俺の事大好きだって事なんでしょ…?」
『うん、そりゃ勿論っ。』
「夢みたいだって、思っちゃっても仕方ないじゃん…っ。こんなの、嬉し過ぎて泣いちゃうじゃん…っ!」
ぽろぽろと泣き出した清光に、少しだけ戸惑いつつも、「あぁ、ほら、泣かないのー!」と優しく抱き締め、背中を擦る。
身長差で、彼女の方が少し小さい為、抱き付いてくる彼を受け止めるような形になってしまうが。
「本当に…本当に、俺なんかが相手で良いの…?俺、我が儘だし、面倒くさいよ…?それでも、良いの…?」
『良いに決まってるでしょ?私は、清光が良いの。だから、私と結婚、しよ…?』
「うん…っ!主の事、絶対幸せにする…っ!!」
『はは…っ、そりゃ大歓迎だ。清光に似合うような素敵なお嫁さんになるねっ。』
「もう十分素敵だよ。だって、主の方から告ってきたんだから…男前過ぎて、俺泣いちゃう。」
『もう泣いちゃってるけどな!』
「ゔぅ゙…っ、言わないでよ馬鹿ぁ…っ!」
グスグスと泣き続ける彼を宥めて、苦笑を浮かべる璃子。
暫くすると、大分落ち着きを取り戻したように涙を拭った清光。
そこに、飛んでも発言を落とす。
途端に、場は拗れるかに見えた。
『ところで、清光…?』
「何…?主…。」
『今日が何日か知ってる?』
「今日が何日か…?四月一日だけど、それがどうかしたの…?」
『四月一日がどんな日で何の日か、清光は知ってる?』
「どんな日か…?」
『四月一日とは、別名四月馬鹿と読んで、別の言い方をすると、エイプリルフールと言う。』
「エイプリルフール……、あ…っ!もしかして…っ!?」
『エイプリルフールは、嘘を付いても良い日と言われているよね?』
告げられた真実に、清光はショックを受けたような表情に変わる。
「ま、まさか…っ!今の告白、全部嘘……っ!?」
『ドッキリ大成功〜っ!!ど?驚いた…?』
「酷いよ、主…!!今の、俺超本気だったかんね…!?」
『あっはっはっは!いやぁ〜、コレ、一度やってみたかったんだよねぇ〜!!』
「主の馬鹿っ!最っ低…!!」
『ふっふっふ…っ、こんなものも見抜けないようじゃあ、まだまだ甘いにゃあ〜。』
「クッソォ…!もう良い!!主なんか知らない!!」
完全に怒ってしまった彼は、彼女に背を向け、ヒールを折れんばかりに打ち鳴らして歩き去っていく。
その背を見つめながら、璃子は、その何処か寂しそうな背に言った。
『あー、言い忘れてたけど、私は何時でも本気だからねぇー?』
「主なんて、知ーらない…っ!」
その返答に、彼女はクスリと笑う。
『私は、今日でなくとも、清光の事ー、結婚したいくらい愛してるからねぇーっ!!だから、もし、清光自身も本気なら、今夜零時過ぎに、返事頂戴ねぇー?』
そう言われて始めて、ピタリと足を止めた清光。
そのまま、くるりと振り向けば、眩しく慈愛に満ちた笑みで微笑む璃子が。
そして、彼が何かを言う前に、今度は彼女がくるりと彼に背を向け歩き去っていく。
「え……、今のどういう意味………?ねぇ…っ、今のどういう意味さ…!?ねぇってば…!!」
真っ赤な顔になって狼狽える彼は、その場から動けずに叫ぶ。
だが、しかし、彼女は振り返る事をしない。
堪らず、彼は璃子を追って走り出す。
「ねぇっ!主ってば…!!待って!!俺の言葉に答えてよぉ…っ!!」
そんな二人の様子を終始微笑ましげに眺めていた者が一人、屋根の上に居た。
「はっはっは…っ、よきかなよきかな。」
「三日月さん、そんな処でお茶飲むの危ないから、そろそろ降りよう?」
「あい、解った。だが、どうしたものか、降り方が解らぬのだ。大和守よ、俺を降ろしてくれぬか…?」
「誰かぁー!!お爺ちゃん助けてあげてぇーっ!!」
終われ。
執筆日:2018.04.01