「大将ぉ〜っ、今懐入っても良い?」
其れは、執務の合間の休憩中の事であった。
いつもの通りに卓上の前でゆるりと寛いでお茶を飲んでいたらば、ふと部屋を訪ねてやって来た彼がそう言った。
私はにこやかに笑みを浮かべてから頷き、彼の方へ向かって手を広げる。すると、彼はとても嬉しそうな顔をして広げた腕の内側へ飛び込むのだ。そして、胸元へ頭を寄せ、至極幸せそうに顔を綻ばせるのである。
その表情があまりに幸せそうだから、思わず私は口を利いた。
「お前は本当に懐が好きだよねぇ。何でそんなに懐に入りたがるんだい?」
ふと思った事を訊ねると、彼は私の胸元へ耳を預けたままこう返してくるのだった。
「其れはね、大将の息衝く音がするからだよ。こうしてるとね、大将が生きてるって改めて分かる心地がして、凄く落ち着くんだぁ。だから、俺は大将の懐が好きなんだよ」
故に、君は度々私の懐に入っては至極穏やかな笑みを浮かべていたのだと知った。
執筆日:2022.05.27