今年度も花火集めの季節が到来した。真夏の連隊戦で夜光貝集めの次は、花火イベントである。まぁ、ほとんど良い経験値稼ぎのレベリング祭という趣旨で参加させてもらっている。
此度も例に漏れず、レベルの上げたい子を中心とした編成を組んで、ひたすらグルグルと周回してもらう流れを組む。その合間の隙間時間に、休憩と称して我が本丸でも夜花を拝める景趣で花火を楽しませてもらう。勿論、その趣旨の真意は、新規追加となった各刀剣達の花火ボイスを聞く為である。欲望に忠実、職権乱用等々、何と言われようと構わない。全ては其れが聴きたいが為にその景趣にしているのだから。
基本的に、近侍は周回組で無い子を固定に組むつもりで一文字の長たる山鳥毛に任せていたが、実際のところは、背景に合わせた装いを拝む絶好の機会だと思ったが為でもある……というのは審神者の心の中だけの秘密である。
そもそも、各刀達の花火ボイスを聞きつつ、己が願うは、“疫病退散”――此れに尽きる。その他、願う事があれば、定番の“健康長寿”、“家内安全”などといったところだろうか。欲が無いと言われれば其れだけだが、世の中の情勢を思えばしょうがない事であろうとも思う。
彼、山鳥毛は、未だ花火ボイスの実装されていない組の者だったが、ボイス云々無しでも彼とも花火を見てみたいなとほんの好奇心と興味本位から、彼を花火が一番綺麗に拝めるポジションへ連れて行き一緒に眺めた。
何度見ても思うが、本丸で見る花火も風情があって乙な感じがして、まことに良きものである。
私は一人、歓声の声を上げながら、年甲斐も無くはしゃいで呟く。
「やっぱり綺麗だなぁ〜! 本丸でも花火打ち上がる景色を眺められるのって、控えめに言って最高だと思うわ! 皆も楽しんでくれてる空気伝わってくるし! ちょもさんも楽しんでるかい?」
きっと何も返ってこないと分かっていても、己の気持ちが何割かでも届いていたら良いなとの気持ちで一方的に言葉を投げ掛けていく。
「私、打ち上がる瞬間も好きだけど、花火が消えかかってキラキラ光の粒が火の粉みたいに散っていく様を見るのも好きなんだよねぇ……っ。あと、花火が沢山打ち上がった後の夜空の
夜空を彩る花火を眺めながら、そういえば皆は一言必ず願い事を口にしていたな、と思い出して。至極在り来たりだけれども今一番思う大切な願い事を口にする。
「う〜ん、私が今願うとしたら、“疫病退散”! 此れに尽きる……! だって、早くこれまでの平穏な日常が返ってきて欲しいしね。“疫病退散”、コレ大事大事……! その他は……まぁ〜、無難に“家内安全”とか、“健康長寿”とかぐらいかな……? 其れ以外はあんま思い付かないや。とりま、皆が幸せで居れたら其れが一番……っ! 其れが一番何よりも大切だと思う!!」
色鮮やかな夜花を一頻り楽しんだ後、共に眺めていた隣の刀の方を見つめる。すると、彼の美しき紅き瞳が無言のメッセージを投げ掛けてきているかのように見えた。先程まで夜空を賑わわせていた花火が散り終えた直後の、一寸の間……彼の視線は真っ直ぐと此方へ注がれていた。物言わぬ代わりに、その瞳のみが彼の今の心の内を雄弁に語っているようで……。暫し、私は呆然と彼の眼差しを受けるがまま見つめ返していた。
口では多くは語らぬ分、その瞳の内に秘めた感情は、熱は、きっと瞳の色のように熱く滾るものなのではないか。そんな風に受け取れた。単なる私の解釈違いかもしれぬが。でも、たぶん、そう遠くはない気がした。
ただ、この時の静かに熱を宿したような眼差しは、不思議と印象強く残って、暫くの間忘れられそうにない。
Title by:Rewind.