※前作『無音の囁き』の続編です。
※単体でも読めます。
また今年も夜花を拝める季節がやって来たようだ。夜空を色とりどりの美しき火花が彩り飾る、あの風情ある行事が。
心なしか、本丸の皆も浮足立っているような空気を醸し出しているように感じる。其れは、我が一文字の鳥達も同じく、また己もそうであった。本丸の将たる小鳥も例外では無いようで、その瞳をキラキラと童のように輝かせていた。
此度は、奇しくも我が身を側仕えとして近侍役を任じられていた。故に、自身は小鳥と共に本丸一の特等席で花火の打ち上がる様を眺められる事を許可された。その何と嬉しき事か。
密かに恋い慕う愛しき小鳥と同じ時を過ごせるだけで飽き足らず、まさか彼女のすぐ隣の場所という位置で、である。はしゃぐなという方が存外無理な話であった。
愛しき小鳥の存在が、己のすぐ側の近くに居る。其れだけでも嬉しいのに、手を伸ばせば触れられる距離に居るのだ。だが、羽目を外し過ぎて小鳥に嫌われたくはない。精一杯の理性を総動員して、彼女に触れまいと動きそうになる手を抑え込んだ。
そんな必死な攻防を己がしているとは露知らぬ様子の小鳥は、無邪気な声を上げて次々と花火が打ち上がる度に素直な感想を零していた。嗚呼、何と愛らしい事か……。
常ならば凛とした雰囲気を纏って本丸の指揮を執る彼女だが、この時ばかりは異なって、自然体のままを露わにしていた。夜空を飾る花火も美しく心躍ったが、其れ以上に彼女の表情の変わる様を眺める方が非常に心惹かれた気がした。
堪らず、半ば花火そっちのけで夢中で彼女の方を眺めていたらば、不意に彼女が此方の方へ向いて言葉を投げ掛けてきた。
「花火綺麗だったねぇ〜! いやぁ〜、やっぱ本丸で見る花火は良いモンですわ! 皆何かとお願い事したりしてたけど、ちょもさんは何かお願い事したりしました? 私の方は、“疫病退散”でコレに尽きると思って、ひたすら“コロナ退散……ッ!!”って祈ってばっかでしたけど、ちょもさんは……――、」
願う事なら、彼女の幸せを――…。もし叶うならば、その隣に自身の存在を置いてもらえたなら、と……。きっと届かぬであろう想いを、ただ一つの視線に全て込めてその目を見つめた。
どうか、私の想いが届きますように……と、密やかに隠し続けてきた甘やかな熱を、感情を、一心に注ぐ。すると、不思議な事に、彼女の視線がひたと真っ直ぐに己のものと交わってドクリと心臓が脈打った。小鳥がゆっくりと瞬く。瞬き一つすらも愛おしくて、彼女の取る一挙手一投足の仕草を焼き付けたくてじっと見つめたまま動かない。
何かを言いかけて開きかけた口を噤んだ様子の小鳥が、小首を傾げさせる。彼女の視線が不思議そうなものと別の感情を滲ませた風に瞬く。全てが伝わっていなくとも良い。けれど、ほんの一握りだけでも伝わっていたのなら、後は自然と変わっていく筈だ。
水面に花火の打ち上がった後の余韻が揺らめくように揺蕩う。いつか、夜空を彩る花火や水面を照らす篝火のように、彼女の胸の内にパチリと熱く爆ぜる火を熾せたのなら、後は私の焔で燃え上がらさせるのみ。瞳の内にひた隠す焔で
今、この時ばかりは、君の視線を私
もし、私と同じ想いを宿してくれるのなら、その時は離しはしないと。我が身、刃に誓わせて頂こう。加えて、その時は私の
Title by:Rewind.