居間の共用スペースに設置したテレビ画面に、今日一日現世で起きた事を纏めた報道番組が流れていた。
其処で流れた一つに、こんな話題があった。
――現世のとある場所に住む若者が、飛び降り自殺を図って死んだらしい、と……。
此れを見ていた
「今の若い子って凄いねぇ」
何気無く落とされた呟きは、恐らく、単純に思った事を述べただけの言葉であったのだろう。しかし、その端的で短い一言には、何とも寂しげな色と羨望のような音が混じっていたのだった。
其れに目敏く気付いた傍らの刀は、雪が舞い落ちるかのような静かさで諭す。
「死者を羨んではいけませんよ。自ら命を絶つ事を選び、身を
きっと、彼女は先程零した言葉に、こう続けたかったのだろう。“自分には、そんな事を成す度胸すら無い”と……。度々自殺願望を抱いては、その感情を上手く飼い慣らす事も出来ないまま、ずるずると過去の出来事に囚われ続けている、“駄目で情けない優柔不断な主”だと思っているのだろう。
其れ故にか、今の彼女は自己肯定感の低さが裏目に出たような陰気さを漂わせていた。
仏教に通ずるかの刀は、静かに告げる。
「大丈夫です。貴女の頑張りや努力は、我々がちゃんと見ていますよ。貴女がこの先も生き続けていく事への葛藤を抱き、藻掻き苦しんでいる事も知っています。悲しく辛い思いを抱え続けていくしんどさも、人為らざる者なりに理解しているつもりです。其れ故に、早く楽になってしまいたいという事も……」
沈黙を返事とし言葉に耳を傾ける彼女の肩を抱いて、刀は続ける。
「……大丈夫です、貴女のその努力はきちんと報われる日が来ますよ。何せ、我々が見ているのですから」
まるで、僧のように講釈を垂れて事を説いた彼に、寄り添い頭を寄せた彼女は目を伏せて返した。
「……そうでなきゃ、困るだろ。報われないままだなんて、私の魂が憐れで可哀想だ……っ」
半ば不貞腐れたような声音で以て言葉を返した彼女は、其れキリ口を閉ざし、傍らの刀の肩を枕に借りたまま身を預けて、微睡む体勢に入ったらしかった。宛ら、不貞寝のようである。
「――ええ、そうですね」
完全に寝入る方向へシフトチェンジしてしまったらしき彼女から返事が返ってくる事は無かったが、その表情が何処と無く安らいで見えたのは、きっと気のせいなんかでは無いのだろう。
公開日:2022.12.14