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主が性欲爆発して『SEX FREE』の板掲げて出待ちしてるのに遭遇しちまった



 とある昼下がりの事であった。
 とある本丸の、一番目立つ且つ確実に誰かしらとすれ違う場所に、明らか何か待ちをしている審神者が突っ立っていた。
 その審神者の首には、気のせいだろうか、『SEX FREE』と書かれたプラカードがぶら下げられているように見えた。
 偶々其処へ、第一目撃者として通りすがってしまったソハヤは、そのまま無視して過ぎ去ってしまう事も出来ずに、何とも奇っ怪な物を見る目で審神者へ声をかけた。
「何してるんだ、こんな処で……? というより、その文字の意味分かって待機してるのか?」
「分かってやっておりますとも。この歳でコレ分かんないとか有り得ないから。仮に分かんないとか嘘ぶっこく奴は、猫被ってあざと可愛いを狙ってるだけよ」
「まさかのジョークとかでなく、ガチの確信犯かよ……っ。正直に言って、ソイツはジョークでもキツいと俺は思うぜ……? 何でんな馬鹿げた真似おっ始めたんだよ?」
 当たり前に思った疑問を率直にぶつけたソハヤ。陽キャ故の怖いもん無しなのか。
 問われた審神者は、無駄に深刻そうな顔を作って白状し始める。
「あのな……コレ、地味に深刻な話なんだけど……ぶっちゃけ、女だって性欲溜まる生き物なのよ。特に、やってる仕事が仕事なだけにね……こう、フラストレーションが溜まりに溜まりまくったりする事もあんの。で、まぁ、そういう時は早い話、ちゃちゃっと自慰なり何なり一人エッチしてヌケば済むって訳。でもさ、其れが繰り返されると、段々自慰だけじゃ満足出来なくなってくるのよ。其処で私は思った……いっそロストヴァージンで処女捧げると共に誰か手頃な相手に抱いてもらおうか、と」
「まさか、其れでそのプラカード首から下げて出待ちしてたのか……っ!?」
「Yes。だって、現在進行形で絶賛兎に角性欲発散したくってウズウズムラムラしてるんだもの。此処本丸という場所なら、相手は事欠かないしね! 寧ろ、イイ男選り取り見取りで選び放題! こんな最適な場所も無いわよ〜!」
 深刻そうな声まで作って告白するから、どんな話が飛び出して来るかと思いきや、である。まさかのまさかな発言が彼女の口から飛び出てきた事に、偶々通りすがってしまったが故とは行かない展開となって参りました。
 驚き大部分、残った正気で更に問い質せば、あろう事か、身売り前提で事を推し進めようとしているではないか。あまりのぶったまげな内容についつい思考が宇宙猫に飛ばされてしまったが、かぶりを振って我に返った彼は、真剣な顔付きで我が主を説得しに掛かる。
「けど、男の身で顕現した俺としては、もっと体を大事にしてくれって思うけどなぁ……っ」
「まぁ、勿論その反論も普通に分かるし認めるわよ? でもね、最早そんなん言ってらんないくらいこっちは切羽詰まってる身なのよ。切実に発散したいの。セックスしたくて堪んないのよ」
「お、おぅ…………ッ、」
 何時いつに無くオブラートに包む事の無いドストレートな物言いに、思わず怯んでしまうソハヤ。誰がどう聞いてもドン引く事間違い無しな話だが、気にせず彼女は続けた。
「あと、おまけに、刀剣男士と寝れば霊力増強出来るって言うし? 私、霊力の質はまぁまぁ良くても量はいまいち多くないタイプみたいだからさぁ……所属する刀が百振り以上もの数に増えてくると、ちょっち体力的にも厳しくなってきてるっぽくてねぇ〜っ。なので、ワンチャンナイトで霊力増強もイケたら一石二鳥でお悩み解決や〜んってな……!」
 あまりにお軽くケラケラと笑いながら暴露された内容に、ソハヤは微かにピクリと表情を強張らせながらも、審神者の本心を聞き出すべく口を噤んで先を促す。
 黙って話に耳を傾けてくれているのを良い事に、彼女は尚も暴露を続けた。
「まぁ、ただ性欲発散するだけなら、審神者専用の花街もあるって聞くから? そっちでワンチャン試してきてもおkかな〜とか思ったんだけど……やっぱ初めては気心知れた相手のが良さげかな、とも思ったので。我が本丸の子達で勇者たる有志を募っていたところだったのですよ。事情説明は此れで終わりね! ――で……君は私とワンチャンヤるの、ヤらないの、どっち……?」
 一通り説明し終わった審神者は、途端に艶やかな空気を醸し出して問う。
 其れに、それまで黙って聞いていた彼が真摯な眼差しを向けて応える。
「……今の全部聞いた流れで放っとける訳無いだろ? 俺なら、霊力有り余る程潤沢に蓄えてるからな……俺相手でも不満が無いってんなら、その役目引き受けなくもないぜ?」
「えっ、本当!? マジ!? うっそ、一発目の子相手でオッケー貰えると思ってなかったんだけど!! わぁーい、やったぁ〜有難うソハヤ!」
「――但し、また同じような発作的反応起こした場合も、他の奴には頼らず俺を頼ってくれよな……? つまりは、アンタのしとねの相手は、これからもずっと俺だけって事だ。分かったか、主……?」
 両手を上げて万歳と喜ぶのも束の間……。唐突に纏う雰囲気を変えて口を開いてきた彼の態度に、あからさまに一瞬分かりやすく動揺する様子を見せた審神者。ドキリとしつつも、平静を装ったぎこちない声で返事を返した。
「ッ……う、うんっ……分かった…………」
「よしっ。じゃあ、この話は此処で終いだ! 後の細かい話は、アンタの部屋で聞く……良いよな?」


 結果、刀さにカップル成立となり、また新たにソハさにカップルが誕生する事となるのであった。
 今回のお話は、その切っ掛け話である。


執筆日:2022.12.13
公開日:2022.12.14