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疵だらけ



 とある城の本丸に所属するとある刀剣男士には、稀に見る特殊体質があった。顕現した時点より、持ち主である審神者の心の形状が見える・・・というものである。尚、該当の本丸に所属する他の刀剣男士等にも軽く調査をしたものの、同様の特殊体質を持つ個体は確認出来なかった。
 何故、の個体のみそのような特殊体質を持つのか。原因は未だ解明出来ておらず、特殊能力を持つ個体の報告は一定数挙がってきている事から、現状は定期観察を続けつつ報告をするように義務付ける事で、後は持ち主の審神者へと放任している。


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 自分は、この本丸で初めて顕現した時から、他には無い少し特殊な性質を持ち合わせている事に気付いた。他の仲間達には見えない、本来ならば見える筈もないものが見えるという現象だ。さて、ならば何が見えると言うのか。端的に言えば、自身の主である女の心である。もっと正確に言えば、心の形状が見えるというものだった。他の者達の中身は見えないのに、何故か彼女のものだけ見える、何とも不思議で不可解な能力だった。
 ――こんな意味も分からない能力、何の役に立つんだか……。
 初めはそう思い込んで、戦の役にも立たなさそうな使い所も無さそうな力に意味を見出だせず、持て余すばかりだった。だが、ふとした時に見た彼女の心の形状が、どうにもいびつである事に気付いて、ハッとした。どう歪であったのかを如実に述べると、表面おもてで装い取り繕う形とは正反対な有り様だったのだ。まるで自分と同じ見た目をしているのに、其れを必死で隠しているみたいな……。
 自分の主だと言う女の心は、見るからにボロボロであった。繕う端からぽろぽろと欠片が零れ落ちていくような、痛ましいとしか言い様のない、悲惨な形状。けれども、彼女の口が語るは其れを取り繕い装った表向きの言葉のみ。隠すのは、余計な気遣いや心配をかけぬ為であろう。どうして、そんなボロボロになってまで戦の指揮など執っているのか、不思議で堪らなかった。けれど、その根底には自身が顕現した意義と使命とが重なって見えたのだ。だからこそ、女の身ながらも勇ましく本丸の大将として振る舞い自分達を束ねて歩む姿に鼓動の高鳴りを覚えた。
 それからというもの、他と違って顕現時より疵だらけの見目で顕現した事から何処となく親近感を覚えると同時に、表面おもてでは取り繕っていても心音は正直に傷付いており、だがしかし気丈に振る舞い時折俯きはすれど懸命に前を向いて歩みを止めない姿に愛しさを覚えるようになった。取り繕った疵は、よくよく見ると罅割れたのを何とか繋ぎ留めたような不恰好な様だ。けれど、どうしてだろう。何故か、その不恰好さが己の様と似通って見えて、愛おしい。自分と似て疵だらけな心を必死に抱え込んで生きている人の子の娘が可愛くて仕方がない。


執筆日:2023.11.02