物の使い途を示すのは、古来よりその物を扱いし持ち主であり、人であった。だからこそ、持ち主が正しく扱い切れなければ、その物の本懐を果たせはしないだろう。故に、きちんとした形で扱えなかった事を悔いた。そして、詫びもした。ちゃんと扱えなくて御免ね、と申し訳なく思いもした。
物は使い様。使用者が正しく扱えなければ、物は本来の力を発揮出来ない。しっかりと其れを理解した上での事だった筈なのに、自身は扱い切れなかった。だから申し訳なく思った。彼の評価を下げてしまったから。恐らく
私は、ただ証明したかったのだ。彼が、ちゃんと使えて、よく斬れる、立派な刃物の一つであり、道具なのだと。その存在価値が、お飾りで飾られ鑑賞し愛でられるがだけではないという事を。私はそう思った。そう信じて疑わなかった。
物は使い様。使用者の使い方によって、如何様にも在り方を変える。物の在り方とは、一つではなく、また、一面だけとも限らない。故に、此れは、単なる私のエゴに過ぎなかったのだろう。けれど、良いじゃないか、別に。自分の物の存在価値くらい、自分が定めたって。例え、持ち主が想像したように上手く扱えなかったとしても、彼の存在意義は、価値は、この世に何の為と定義され生まれたからには、其れ相応に扱っても許される権利くらいあるだろう。
でも、
私は、鈍く此方を映して光る刀身の横っ面をそっと柔く撫ぜて、口の中でくぐもった声で懺悔した。
「御免なさいね……俺が、刃物扱うの下手くそ過ぎて……君の事、ちゃんと使ってあげれなかった。でも、君は悪くないよ。悪いのは、君をきちんとした形で扱えなかった俺の方……。君は、何にも悪くないの。たぶん、俺では本来の用途として扱い切れないだろうから、飾って鑑賞品として愛でる事しか出来ないかもだけれど……どうか、許してね。代わりに、ちゃんと愛して大事にするから……君は、私の物なままだよ。大丈夫、使えないからって棄てたりだなんて勿体無い真似はしないから。だから、君は安心して、私の宝物の一つとして、大事にされてね」
本物の刀を写し取った、何分の一スケールとか言う、小さな小さな、紙切れを裂く為だけに生まれた、ひょろく細い、拵えも何も無い剥き身の刃を掌の上に乗せて愛でる。
雅で且つ華美で美しい刃紋を踊らせた、
どうか、此度の事だけに限らず、彼の価値が、存在する意味が、ちゃんと認められますように。少しでも多くの幸よ在れと、祈るように念を込めて優しく撫ぜた。
まさか、其れが、のちに起こる事件の一端になろうとは、この時は全く思いもしなかったのだが――。
加筆修正日:2023.12.18
公開日:2023.12.18