「いらっしゃいませ〜っ。」
レジを担当して立っていると、色んな客がやって来ると心の底から思う。
「あ…っ、いらっしゃいませぇ〜っ。」
嗚呼、ほら、また新たな客がやって来た。
今度のお客は、男女連れのカップルのようだ。
慣れた事のように、近い距離で寄り添って入店してくる。
しかし、TPO構わずベタベタとするタイプじゃないのか、二人は手を繋いでいない。
うん、コレは好感度アップのカップル客だ。
世の中、処構わずイチャ付く若者が多くて困り物だ。
しがないアルバイターな私にとっては、ムカつくものでしかない。
大事な客だからと笑顔で接客はするが、本当ならその営業スマイルさえもそんな奴等に使いたくない。
そういう苛つく対象と比べて、あのお客は正に理想。
『光忠ー、私あっち見てくるね?』
「パンコーナーの方?うん、良いよ。見ておいで。僕は、飲み物見てくるから。」
『欲しいのあったらそっち持ってくから。光忠の分も何か適当に見繕っとくね。』
「うん、解った。」
おっと、彼女さんが入店して早々、何か一言言って別れたぞ?
カゴは彼氏さん持ちか…。
彼氏さんの方も、いつもの事なのか、ナチュラルに頷いてたけど…良いのか?
アレか、彼女さんの方は案外塩対応系女子か。
あ、それなら見てて飽きないし、視界に優しい。
と、なると、もしや彼氏さんは尻に敷かれる系男子か…!
何だか意外だなぁ…。
見た目、結構俺様っぽいのに…。
あ、パンコーナーに行ってた彼女さんが戻ってきた。
Oh…ッ、彼女さん、持ってきたパンをカゴに突っ込んだら、即、別のコーナーに向かっていったぞ!?
え、彼氏さん置いてっちゃうのか…!?
って、彼氏さん、まだ其処居んのかい…っ!
どんだけ飲み物選ぶのに時間かかってんだ!!
あ、漸く扉開けた。
遅いよ、彼氏さん…。
そういや、彼女さんの方は何処行ったんだ?
店内をぐるりと軽く見渡せば、レジからよく見えるお菓子コーナーに居た…。
お…?
彼女さんは甘いのがお好きか?
あ、ソレ、女子が皆よく買うヤツだ。
美味しいよねぇ〜、ソレ。
私もよく買って食べるわぁ〜…。
アレ…私、彼女さんとお菓子の好み似てるんじゃね…?
親近感湧くなぁ…。
あ、彼氏さん、やっと合流したな。
何選んだんだろう…?
「飲み物って、お水で良かったよね…?」
『え…?あぁ、うん…。つか、お前、水選ぶだけでどんだけ時間かかってんだよ?』
「ん?他の飲み物も一応見てたんだよ。チューハイ系のお酒とか、新発売の紅茶とか。」
『新発売のモンに釣られるて、お前は女子か。』
まさかの、み・ず…ッ!!
今の声小さかったけど、確かに今の、水って言ったよな彼氏さん…!?
マジでどんだけ時間かけてんのよッ!!
彼女さんのリアクション、GJです…!
つか…ガチで淡々としてる系なのね、彼女さん…っ。
全ての対応がクールだ…!
お…っ?
もう買う物は全部見終わったのかな…?
彼女さん、彼氏さん連れてこっち来る…。
あれ、やっぱり彼女さんが先にさっさか歩いてきちゃうタイプ?
大丈夫か?
彼氏さんよぉ…。
「いらっしゃいませ、こんにちは〜っ。お会計させて頂きますね〜。」
『お願いします。』
おっ、カゴの出し方丁寧な人だな…。
ちゃんと“お願いします”まで言ってくる人とか、今時珍しい。
コレは、また好感度アップだな。
表情はいつもの事ながらポーカーフェイスを保って笑顔のまま、内心すんごい程に観察分析して見る。
流れ作業の如く、バーコードリーダーでバーコードを読み取っていると、自然とどんな物を購入したのかを知る事が出来る。
成る程、パンは彼氏さんの分も含めて選んであげたんだな。
優しい彼女さんだ。
で、彼氏さんは何を選んだのかと思ったら、ペットボトルの水を二本、アルコール入りのとノンアルのをそれぞれ一本ずつのチューハイに、新商品の紅茶を一本って…。
もしかして、この新商品のを買うのかどうか迷ってたのか…!?
女子かッッッ!!
『ん…?光忠、お前、結局新発売がどーとか言ってたヤツ買ったのか。』
「うんっ、どうしても気になっちゃって!」
会話が逆だぞ、彼氏さんー!
ソコは、普通、彼女さんが言う台詞だろーッ!!
「お会計、全部で■■■円になりま〜すっ。」
「あ、お金は僕が出すよ。」
『おぅ。』
あ、ソコは彼氏さんが出すんだね!?
あー、良かった…!
もし、そこも彼女さんに任せてるんだったら、危うくポーカーフェイス崩れるところだったわぁ〜!!
あっぶね…ッ!!
「ありがとうございましたぁ〜っ。」
ふぅ…っ、色々と面白い組合せのカップル客だったなぁ…。
さて、次は、どんなお客が来るのかな…?
―とあるコンビニ店員のお話であった。
「いらっしゃいませ、こんにちはぁー。」
ドラッグストアに勤めてると、大体のお客は決まってくると思う。
大抵の客が主婦勢で、たまに、おつかい頼まれた系の学生さんだったり、化粧品か薬を買い求めに来ただけの女性だったり…。
稀に、男性客が一人だけでこっそりと来てたりもするけど、そういうのは、そう、アレだ。
溜まったモンを吐き出す為の、あの、アレだよ。
要は、セックスに使う系のモンだよ。
男って大変だよな…。
まぁ、かく言う俺も男だけど。
とか一人虚しく考えてたら、入口の自動ドアが開いた。
あ、お客さん来た。
あー、女の人が一人でか…。
奥の方に向かっていってたところを見て、生理用品売り場かな?
もしくは、二階の化粧品売り場か。
目薬とかも、よく買ってく人多いよね。
俺もよく買うわー。
ドライアイっていうのかね…すぐ目が渇いちゃうんだよな。
アレ、地味に辛い。
お…?
思ってた側から、さっきの人、目薬コーナーに行った…?
もしかして同士かな…。
同士だったら、ちょっと嬉しい。
む、今度は飴ちゃんのコーナーか。
飴ちゃん美味しいよね、俺もよく仕事の合間食べてる。
アレ、地味に癒されるのよ…。
やっぱ、疲れには甘い物が効くよねー。
あ、さっきのお姉さん、のど飴見てる。
喉の調子悪いのかな…?
職業柄、喉やられると辛いわー、俺。
だって、店員って、絶対声出さなきゃならないじゃん。
アレ、地味に嫌だよね…。
って、俺、さっきから地味地味うるせーな…。
とか、また一人寂しく考えてたら、さっきのお姉さんどっか行っちゃった。
二階にでも行ったんかな…?
かと思ってたら奥の方から出てきたお姉さん。
ん…?
レジの方向かってくるっていう事は、お会計かな?
はーい、俺のお仕事ターイム。
ちゃっちゃとバーコード読み取りますかー。
「いらっしゃいませ、お会計失礼しまーす。」
『お願いします…。』
お…っ?
お姉さん、もしかして人見知りする系ですか?
俺もなんすよー。
いやぁ、人見知りだと人間関係苦労しますよねぇー…。
上司との上下関係とか、もうやってらんないですよねー。
本当、何で社会人になったら働かなきゃならないんすかねぇー………って、え゙…ッッッ!?
思わず、たった今カゴから取り出した商品を二度見する。
え…ッ!?
ちょ…っ、コレ、お姉さんみたいな人が買う品じゃなくない…!?
今、俺が手にする物は、先程来客前に考えてた、男性客が稀にこっそり買っていくという類の品だった。
ソレが、ナニとは言わないが、まぁ、セックスの時男が必ず使うとされる…アレだよッ!!
しかも、そのセックス時に必要な物をフルセットでご購入ですか、お姉さん…ッッッ!?
ご本人、至って涼しい顔してらっしゃいますけど、嘘だろ…!?
え、何なの?
俺が勝手にお姉さんと思ってたけど、実はお兄さんでしたー!とか、そういう事ですかぁーッ!?
「ぇ…えっと、ぜ、全部で■■■■円になります…っ。」
いかん、動揺し過ぎて声が震えてしまったぁー…ッ!!
どうしよう、コイツ変な奴だな…とかって思われないかな!?
嫌だーッ!!
この状況で、ソレは絶対に嫌だーッッッ!!
もう俺のHPはゼロに近いぜ…!
「ぁ、ありがとうございましたー……っ。」
半分魂の抜けた状態に死んだ魚の目で見送ったお姉さん。
迷いなく真っ直ぐに出口へと向かっていく。
自動ドアが開くと、その先には、偉くイケメンで背の高いお兄さんが、申し訳なさそうな顔をして入口先に立っているのが見えた。
な、何だ何だ…?
レジから少しだけ身を乗り出して外を覗いてみる。
『何だ、お前車で待ってるんじゃなかったのか…?』
「いや、その…いつもソレ買ってもらうの頼んでるのが、申し訳なくなっちゃって…っ。」
『そう言うなら、最初からお前が自分で買ってこいよな?ったく…何でこういうのを買うのは躊躇っちゃう訳…?他の物は平気でひょいひょい買ってくる癖に。』
「だって…恥ずかしいじゃないか。お店の人に、そういうの買いますって出すの。」
『買うんだから当然の事だろ。つか、女である私が買う方が恥ずいわ。マジでこういうのだけはヘタレだよね、光忠は…。』
「わっ、悪かったね!ヘタレで…っ!!」
な…、なんですとぉー…ッッッ!?
ま、まさかの…ッ、イケメン彼氏かと思いきやの、飛んだヘタレ彼氏さんだったぁーッッッ!!
その真逆で、彼女さんはめちゃくちゃイケメンだったぁーッッッ!?
「…世の中、色んな人間がいるモンだ…。」
最早、悟りを開けそうな気分でした。
―とあるドラッグストアの店員のお話であった。
執筆日:2018.04.30