とある日の、平和も平和な日常を過ごしていた時の折である。
庭先の草花で遊んでいた
その後、予定通り日課の任務をこなし終えた審神者が部屋で気伸びをしていると、ふと空気の入れ替えの為一時的に開け放っていた障子の向こう側――縁側の方からひょこり、顔を覗かせた刀が一振り。その刀は、審神者が仕事を終えていると気付くなり、「お疲れ様です!」と癒しの笑顔と共に労いの言葉をかけてきた。その声に振り返れば、声の
非番であった物吉貞宗の方は、内番着姿でニッコリと癒しのスマイルを(無料・無自覚)提供しつつ縁側へと腰掛け、審神者が仕事中であった間、短刀の子等と草花で遊んだ際に完成した品を見せに来てくれた模様である。話を聞くに、どうやらあの後、和気藹々と草花と戯れる比較的ちっちゃい子ズ集団の中に一振りだけ大っきな子が混ざって一緒に遊んだのだそうだ。言わずもがな、その大っきな子とは、草花に触れる事が大好きな長船の祖が一振りな福島光忠の事である。可愛いかな。出来れば、その現場に自分も居合わせたかったという思いが生まれるも、当時仕事中だった事がちょっぴり悔やまれる。
「見てください! こんな立派な花冠まで作っちゃったんですよ! 皆で一緒になって作ったんですが、一番上手く出来たのは秋田君でした!」
「あぁ、秋田君、顕現した時からよく草花と戯れて色々作ってたもんねぇ〜。そりゃあプロ並みに上達するでしょうよ」
「ちなみに、その花冠はお兄さんの一期一振へプレゼントするそうです!」
「可愛いかな?? 尊いの極みが此処にあるの、控えめに言って尊い……」
「あと、別の意味で凄く立派な花冠を作っていらっしゃったのが、福島さんですかね! 完成した花冠は、同郷の日本号さんへ贈られるそうです!」
「みっさんなら普通にやりそう。というか、たぶんだけど、別の意味で立派という部分を強調して言ったのは……ソレ、絶対予想の斜め上な方向にゴージャスな出来になってたからでしょ? 違う?」
「流石は主様! そうなんです! 偶々お手持ちであった薔薇の花や様々な花も加えられて出来た花冠は、其れはもう素晴らしく立派で
「やりおるな、みっさん……。ソレを贈られる正三位の号さん、絶対微妙な顔して受け取ってそう(笑)」
「実際、その場面にも出会してこっそり一部始終を見守っていましたが、主様の仰る通りのご対応をされてました」
「微妙な顔をしつつも一応は受け取る号ちゃん……良い大人を保護者に持てて良かったな、みっさんや」
自分が仕事に勤しんでいた間の知らぬ間に、何やら各所で和気藹々とホッコリエピソードを繰り広げていたようだ。その様子を見れずとも、想像に難くなく、脳内再生は余裕のよっちゃんな審神者であった。そして、心のオアシスが潤ったと内心で悟り顔からの合掌を決め込むまでがテンプレの流れである。
そんなこんな癒しの提供を受けて、仕事で疲れた心に潤いを
「えへへっ。実は、主様を驚かせようと、とびっきりのプレゼントをご用意してたんです! はいっ! 主様へ、お仕事頑張ったで賞の花冠です!!」
「ほぁっっっ……無理、尊過ぎて目が潰れるッ……!」
「あははっ! 僕が丹精込めて作った花冠、主様へ差し上げちゃいますね! 頭に乗せて差し上げたいので、ちょっと頭を下向きにしてもらっても良いですか?」
「わ、ワァ……審神者、Dズニープリンセスになっちゃう……っ」
「僕からしてみれば、主様は
「殺し文句まで凄いの何なの、物吉君……。こんなん現世で荒みに荒み切った心も浄化されるヤツやん……やばぁ」
少ない語彙力で何とか絞り出して吐き出した感想が何とも言えない響きを伴っていたのは、この際スルーである。
一先ず、顔面から光線出してきたんじゃないかってくらいのあまりの眩しさに耐えられず、思わず両手で顔をガードするが如く覆い隠してしまっていたポーズを解いて、素直に頭を軽く下向かせる形で差し出した。すると、間もなくしてポスンッ、と軽い音と共に花冠を乗せられたのであろう重みを頭頂部に感じた。何処の
自分はとてもじゃないが童話に出て来るような如何にも可愛い
「素敵な花冠を有難う、物吉君。
「喜んでもらえて何よりです! もし、保存される際は、福島さんから保存の仕方を教わったので、後でその方法の事もお教えしますね!」
「何から何まで完璧かよ。流石は幸運の王子様、世のおにゃの子達が放っておかない訳だ」
「やだなぁ〜っ、そんな風に褒めたってこんな物しか出せませんよ?」
「うん? まだ他にもにゃにか出て来るのかね??」
純粋な疑問を抱くままに問えば、ちょっぴりはにかんだ様子で笑った彼から左手を出すように言われたので、言われるままに「ハイ、どうぞ」と差し出す。すれば、その手を
呆然と左手薬指に嵌められたシロツメクサで出来た指輪をぱちくりと目を瞬かせながら見つめていたらば、少しだけ照れた風な笑みを浮かべて彼は言った。
「僕が主様へ幸運の指輪を贈った事、皆さんには内緒にしてくださいね……っ。花冠を作る傍らでこっそり作った代物ですので……」
そう言って恥ずかしそうに頬を掻いて誤魔化した彼は、「それじゃあ、僕の用事は此れだけでしたので、休憩中のところお邪魔致しましたぁ〜!」と口にするなり、そそくさとその場を去って行ってしまった。
極修行から帰ってきてそれなりに経つと思っていたが、思わぬところで爆弾を落とされた審神者は見事クリティカルヒットで被弾し、その後、審神者部屋前を通りかかったおやつを持ってきた燭台切光忠より蘇生を受けるのであった。
極めた物吉貞宗という王子様からのそんなサプライズは、審神者のライフを軽率に奪うものである。まぁ、末期のヲタク程不死鳥の如く蘇るので、蘇生されれば何度でも蘇る猛者であったりしなくもないのだが……軽率に尊み秀吉な贈り物をされれば、何処のどんな審神者であろうと老若男女恋に落ちるのは必至だと思われる――という事だけは言い遺しておこう(遺言)。
「しっかりして主ッッッ!! まだ死んじゃ駄目だよ……!!」
「お花畑の向こうで某Dズニープリンスな物吉君が手ぇ振ってるのが見える……」
「ちょっと意味分かんない事呟かないで!?? というか何で物吉君が出て来たのかが謎過ぎて逆に怖いよ、主ッッッ!!」
「あ。今、みっさんもお花畑の組に加わったわ……」
「ちょっと待って。何でウチの福さんも登場するかの意味が分かんないから、今主の見えてる世界の事詳しく教えてくれる? というか、何でこんな場所に落ちてたのかの原因をまず教えてくれないかな?? 切実に」
「誰か俺の事呼んだ?」
「あっ、本当に来ちゃった……」
「うん? 呼ばれたみたいだったから来たけど……コレ、今どういう状況??」
「御免。物凄く申し訳ないけど、今君に出て来られたら余計事がややこしくなりそうだから一旦帰って」
「弟がお兄ちゃんに辛辣で冷たい……」
「俺の所為で何か御免ね、みっさん……っ」
※ちょっとした解説※
シロツメクサ(白詰草)の花言葉には、『幸運』『約束』『私を思って』などがあります。
また、シロツメクサの花言葉には、次のような意味合いがあるんだとか。
・『幸運』は、四つ葉のクローバーを見付ける事で幸せになれるという言い伝えに由来しているとの事。
・『約束』『私を思って』は、大切な人と素敵な関係性を築く上で役に立つ花言葉だそうです。
他にも、シロツメクサには花言葉が存在するようでしたが、当作品の雰囲気に合う花言葉はこんなところかと。
以上を踏まえた上でもう一度お話を読み返したら、一味違う空気を感じれるかも……?
加筆修正日:2024.12.20
公開日:2024.12.20