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蔵暮らしのド陰キャ光世ッティの刃生計画



※『Log:捌』収録の大典太光世掌編『極修行から帰ってきたと思ったら何でか蔵に仕舞われた主の話する?』と若干リンクした構成のお話です。
※普通に単体でも読めます。
※以上を踏まえた上で、どうぞ。


 寝る準備万全で後は寝るだけ〜って離れの私室に戻ろうとしてたところに、無言でやって来た光世ちゃんが突如審神者の事を抱っこキャッチして攫った。
 「急に何だ、どうしたどうした??」と混乱しながらも、己の身を担いで攫う本刃から物凄く強い酒の匂いを感知した為、「あっ、コレ酔っ払ってるパターンや……」と早くも納得する。
 素直にあーれーっ、とされるがまま攫われていると、途中酔って何処かへと移動し始めた兄弟を追って様子を見に来たのであろうソハヤ君と遭遇して、ズンズンと突き進む光世ちゃんの肩越しより手短に事情説明を受けた。
「悪ぃ! 今の兄弟、派手に強い酒かっ喰らいまくった所為か、珍しく滅茶苦茶酔っちまってるみてぇなんだ! さっきまでは何ともなさそうに鬼丸国綱と飲み比べしてたんだが、流石の兄弟も飲んだ量が量だったもんで、酔いが回ってきちまったみてぇでさ! すまねぇが、後の事頼んだわ……っ! 今夜の寝床は、十中八九、兄弟専用の蔵の方だと思うから、そんまま付き合ってやってくれ!」
「あー、まぁ、そんなこったろうとは思ってたが……こうなるまで飲むとか、光世ちゃん、どんだけ飲んだのよ? まぁ、どうせ寝るだけなら一人も二人も同じおんなしやし、任されたわ〜」
「主に後始末押し付けるみてぇで、本っ当にすまねぇ!! 明日、兄弟には俺からちゃんと言い聞かしとくからさ!!」
「うん、分かったよぉ。ほなな〜。ソハヤ君もお疲れさん。後片付け済んだら、君もおやすみんしゃいね〜」
 どうやら、行き先は、光世ちゃん専用の蔵(住心地抜群にDIY改築された方)らしい。眠気が勝って喋る気すらも起きない模様で、詳しい事情は翌日本刃から聞く事に。
 とりま、ソハヤ君から言われた“今夜は蔵で寝るみたいだからそのまま付き合ってやって欲しい”の意を汲んで、蔵へとナチュラルin。抱っこ状態のまま上階のロフトまで上がったかと思えば、寝蔵ポイントへ到着するなり、己を抱き込んだままズルズルと寝床inして寝落ちられた。
 審神者の匂いを嗅ぎながら抱き締めている内に気分が落ち着いたのか、スヤスヤとそのまま寝付いてしまった光世ちゃん。仕方なしに、このまま一緒に寝るのも付き合ってやるかと、元々寝る準備万全体勢で整えていた審神者も就寝コースへ移行。
 翌日、目を覚ました光世ちゃんに盛大に謝られるも、悪い気はしなかったから別に構わんと実に緩〜く許した。
「極めて帰ってくるなり俺を蔵に仕舞って以来、ちょくちょく俺を蔵に招き入れるように誘って連れて来ては、囲ってくるみたく側にくっついて離れんようになったよな。そういうトコ、其れまでちょっと警戒して懐かんかったお猫様が懐いてくれるようになったみたいで嬉しいよ」
「嫌じゃないのか……?」
「嫌だったら、最初から拒んどるし、大人しく攫われたりとかもしとらんよ。俺、其処までか弱い乙女じゃねぇーんで。嫌なら嫌って端っから口にしとるから、其処んトコは安心してくれてもエエよ」
「だが、力業で丸め込まれたら、流石のあんただって抵抗出来んだろう……?」
「無理繰りされそうになったら、言霊でも何でも使える手は何でも使って御しとるわい。何なら、この本丸に居る限りは誰かしら近くに常駐しとるんやけ、大声出して叫べおらべば一発で駆け付けて何とかしてくれるわ。俺の刀である以上、俺が嫌がるような事はせんと信頼した上で抵抗せんかっただけや。事実、一緒にお寝んねするくらいはどうって事ないと思うたし、別に嫌でも何でもなかったしな」
「そうか……それなら、良かった」
 一通り反省会に区切りが付いたところで、この状態に至るまでの事情聴取がてら、改めて昨晩の様子を聞き出してみる。
「光世ちゃんにヨイショされて某ピーチ姫の如く攫われてる道中でソハヤ君に聞いたけど、昨日は鬼丸さんと飲み会してたんやって? ちったぁ楽しめたかい?」
「あぁ。色んな美味い酒を飲み比べている内に、どれだけ多く飲めるかの対決になってな……。結局、どっちもどっちで勝敗が付かずに、最終的に眠気で記憶が無くなって……気付いたら、というか、目が覚めたらあんたを抱き枕にした状態で寝落ちていたんだ。……本当にすまない」
「その件については、もう良いって! 其れよか、君等酒呑み連中じゃザルの方なんに、よく飲み比べ対決なんざしようと思うたな……っ。ぶっちゃけ、勝敗もクソもあらへんやろうに」
「お互いにだいぶ飲んだ後の事だったからな……ただ飲むだけもつまらないと、何方からか言い出して始めたんだろう。俺は眠気で最後の方は覚えていないから、今回の勝負は鬼丸国綱の方に軍配が上がる事になるかな」
「まぁ、ザルな分、幾ら飲んでも翌日に響かん点は良かったな……。次の機会があるかは知らんが、もしまたやる時は程々にしときぃよ」
「あぁ、そうするとも。今度は、意識も記憶も有る内にあんたの元へ行くとしよう」
「そんで、また俺を蔵に連れ込んで一緒に寝るってかい?」
「あんたが嫌がらなければな」
「余程の用でも無けりゃ拒否りゃしねぇさわ。俺も大概自分の子達には甘いんでね」
「その甘さに付け込んで甘える俺は悪い奴だな」
「相思相愛且つ互いに合意の上なら無問題モーマンタイでは?」
「ふっ……そんなに甘やかされていては、その内うっかり喰われてしまっても文句は言えないな?」
「おや。光世ちゃんが雄になった! ははっ! 此れじゃあ、“光世ちゃん”じゃなく“大典太さん”だな!」
「今は、そういう事にしておこう。……さて、朝飯でも食いに行くとするか?」
「せやね。顔洗って身支度整えたら、御飯食べに行こか」
 二人きりの閨で恋人同士のように睦言を交わしてとこから起き上がる。
 起き上がっても、まだ頭は完全に覚醒し切っていないのか、寝惚けたように審神者の頭へ鼻先を寄せて、スンスンと犬の如く匂いを嗅いで擦り寄ってきた。まるで、大きな大きな大型犬を相手しているかのような気分である。
「ほぉら、ちゃんと起きて、身支度してから朝飯食いに行くぞぃっ!」
 そう言って、擦り寄ってくる大きな体躯の彼の襟足を擽ってたしなめるように起床を促せば、素直な彼は喉奥で低く頷く返事を返したのちに、米神こめかみに口付けを落としてからようやっと動き出す。
「風呂場も洗面所も付けたから、案内しよう」
「最早個刃専用のお家じゃん。光世ちゃん、本格的に此処に住む気か??」
「その気になれば、何時いつでも居住を移せるくらいには色々整ってはいるぞ」
「凄ェじゃん……光世ちゃん、やれば何でも出来る子じゃん?? 優良物件過ぎて、お相手も出来たら完璧レベルなトコまで来てるぜ……」
「うん、まぁ、そうだな……相手にその気が出来たら、即挙式からの二人だけの住まいに早変わりする予定だ」
「わぁ、もう其処まで段階進んでんの? 凄いねぇ」
「俺が言う相手と言ったら、あんたぐらいしか居ないんだが……今はまだその時・・・じゃあないんだろう?」
「待って、急に矛先俺に向けて来ないで吃驚するから」
「だから、あんたの気持ちが固まるまでは待つつもりだ。俺は、そこそこ待てが出来る方なんでな。ゆっくりと待つさ。だから、あんたも焦らず決めてくれ」
「ひぇッ……こんなん光世ちゃんじゃねぇ……大典太さんモードじゃん。やば……」
「具体的には何がやばいんだ?」
「俺の情緒的何かがやべぇって意味で言ったの……改めて聞いて来ないで、察してくれ……っ」
「某漫画の台詞を此処で持ち出されるとはな」
「そんなつもりで言った訳じゃねぇーんだけどな」
「分かってるさ。冗談だよ」
「真面目なトーンで冗談言うなよ、紛らわしい……」
「まぁ、でも、あんたを娶りたいって話は冗談でも嘘でもなく本気の話だけどな」
「オ°ア°ッッッ!? ……だっから、そう気安く爆弾を落とすな!!?」
「あんたの反応が逐一面白いから、つい揶揄からかいたくなるんだ。気を悪くしたら、すまん」
「俺をもてあそぶのも大概にしないと、審神者怒っちゃうからな!?」
「あぁ。だから、今日のところはこの辺に留めておくさ」
 極めて以降、軽口で冗談まで叩けるようになったらしい蔵暮らしのド陰キャ光世ッティは、新しい感情に目覚めて久しく、今日も審神者を目で追い駆けて視線が交われば、慈しみたっぷりの愛しさ溢れた熱視線で以て返すのであった。


執筆日:2025.08.24