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彼岸と此岸を繋ぎし渡し船に乗るは、心優しき無邪気な未練なり。



 その日、自分は、眠る前日に発作の過呼吸を起こして、いつもより早めに寝付いて、疲労感からかなりぐっすり深く寝入っていた筈だった。しかし、気が付いてみたら、某ジブリ映画で見たみたいな、自分を除いたらほぼ無人と言える程静かで伽藍がらんとした電車に乗っていた。
 車内は、少しだけ古めかしい雰囲気の、ボックス席のあるタイプの車両だ。何両連なっているのかは分からないが、自分が座っているのは、車掌の運転する様子が見える一両目のようだった。
 初めこそ、ぼんやりとした意識でただただ目の前の、向かい席側の車窓から見える景色を眺めるようにして揺られていた。けれども、不意に意識がハッとして、我に返るように、慌てて辺りをキョロキョロと見渡してみて発覚した。どうやら、自分は今、電車らしき物に乗って何処かへと向かっている最中らしい。
 しかし、行き先は何処なのか、ちっとも見当が付かない。そりゃあ、そうだ。だって、何時いつ自分が電車に乗ったかすら記憶に覚えが無いのだから。
 一先ず、車内ならば、乗降口の辺りに電子掲示板か各停車駅の駅名標がある筈。そう思って、席を立って乗降口の近くまで寄って見上げてみるも、表示されている文字が読めなくて、困惑した。此れは、人の文字じゃあない。あやかし文字か、或いは、幽霊文字というヤツか。となれば、この電車は普通の電車ではないという事になる。まぁ、電車に乗るまでの前後の記憶が無い時点で怪しかったが……。
 さて、どうしたものか困ってしまった。文字を見上げたまま、次に取る行動を考えあぐねていると、ゆっくりとスピードを落とし始めた電車が何処かの停車駅へと停まった。
 すると、車内に乗っていた乗客が降りない代わりに、新たに乗り込んできた乗客が、すぐそばを通り過ぎるようにして少し奥まった位置にあるボックス席の方へと座っていく。その様子を何となく視界の隅で収める。他に乗車する客も降車する客も居ない事を確認した車掌が、笛を鳴らしてドアを閉める。その時、聞こえてきたアナウンスは、極々普通のもののように聞こえた。
 電車が再び動き出したのに合わせて、車内が揺れ始める。何にも掴まらないまま立っているのは危ないと思い、手短な乗降口そばの手摺を掴んで、次に停車予定の駅名を告げる車内アナウンスに耳を傾けた。聞くに、全く聞き覚えの無い、知らない駅名だった。ぶっちゃけ意味の分からない駅名だとも思った。この時点で、自分は何やら面倒臭い事に巻き込まれたのやもしれないと考え始めていた。
 まず、第一に乗った覚えの無い電車。次に、一文字足りとも読めない駅名標。更に挙げれば、車内アナウンスで流れる意味の分からない聞き覚えも無い名前の駅名。既に色々とお察しな状態であった。
 幸いなのは、まだ自分の理性が正常に働いている事。次点で、今のところ、特に体には異常が見られない事。初めこそぼんやりしていたが、今はきちんと意識もはっきりしていて、思考にも問題はない。
 はてさて、次に自分が取るべき行動は何かを改めて考える為にも、今一度周りの様子を見てみる必要が有りそうだと、何とはなしにぐるうり首を巡らせてみた。
 すれば、よくよく見てみれば、自分以外に乗る乗客は皆薄っすら透けて影のようではないか。更に言えば、ドアの窓の向こうに見えるは、海の上と思しき景色。夢でも見ているのかと思わずにはいられなかった。まんま、某神隠し映画じゃないか。海の上に普通レールなんてある訳ないし、電車が水上を走る事もまずない。
 一瞬、自分の頭が可笑しくなったのか、はたまた視界に異常でも発生したのか、そう思って頭を抱えるように額に手を当て固く目を瞑った。余程難しい顔でもしていたのだろう。其れか、気分でも悪くしたのかと思われたか。不意に、腕をポンポンと叩かれると同時に声をかけられた。
「あの、大丈夫ですか……? もしかして、具合でも悪いんですか? 良かったら、空いてる席にご案内しますよ」
 突然腕を叩かれた事にも驚いたが、それ以上に誰かから声をかけられた事自体に驚いてしまって、思わず派手に肩を跳ねさせると同時に素っ頓狂な声を出してしまった。次いで、あからさまに動揺と警戒を露わにした状態で一・二歩たたらを踏むように身を引くと、声をかけたヌシは慌てた様子で謝罪の言葉を告げた。
「わわっ、すみません! 普通に声をかけたつもりだったのですが、何だか考え事をなさっているご様子だったので、気付いていないのかもと思い、咄嗟に腕を触ってしまったのが悪かったですかね? そんな風に驚かれるとは思ってなかったので、気を悪くされたんでしたら御免なさい……っ!」
 見れば、相手は、何処かの本丸に属するのであろう、秋田藤四郎であった。腕章を付けていないのを見るに、政府所属個体ではなさそうだ。
 まさか、こんな所で見知った相手に出会でくわすとは思ってもみなかっただけに、少しでも自分が知っている存在に出会えた事に、自然と安堵から胸を撫で下ろしていた。その様子を見ていた秋田藤四郎は、何か得心が行った様子で、再び声をかけてきた。
「もしかして、お困り事ですか? 良かったら、僕がお話をお聞きしますよ! 立ち話も何ですし、一旦空いてる席にでも座って落ち着きましょうか!」
 笑顔でにこやかに振る舞う秋田藤四郎は、極々普通の何処にでも居るような個体のように思えた。だからこそ、この異常な世界観の中で心底安心出来そうな相手だと思った。
 促されるまま、秋田藤四郎に手を引かれる形で空いた席へと横並びで座る。そして、腰を落ち着け直した事で、ちょっと一息分、気持ち休まったタイミングを見計らった頃に秋田藤四郎から尋ねられた。
「えっと、差し支えなければ教えて欲しいんですが……貴女は、何処かの本丸の審神者さん、ですか?」
「うん、そうだよ。俺、陸奥国で本丸を構えてる、一応中堅どころの審神者なんだ」
「そうなんですね! 僕の主君も審神者なので一緒ですね! あっ、正確には同じ所属国ではないので、一緒というのは語弊がありますが。僕の主君の所属先は、備前国なんです! ……っと、今は審神者さんのお話を聞くところなので、僕の主君のお話は一旦隅に置いておくとして。お話を戻しますが、どうして先程困った様子だったのか、改めてお聞きしても宜しいですか?」
「えぇっと……自分、説明下手だから、上手く言葉に出来ないんだけど……。我が身に起こった事をありのまま話すとね、気が付いたらこの電車に乗ってたんだ。ちょっと前まで、自分の本丸の、自室のお布団で眠ってた筈なんだけど…………っ」
「不思議なお話ですねぇ〜」
「うん……自分でも、何か変な事言ってるなぁ〜って自覚は有るよ……っ」
「でも、審神者さんの言ってる事は、ちっとも可笑しくなんかないですよ! だって、此処は、そういった不可解で不思議な場所ですから!」
 自信満々に言い切られた手前、何とも言い返し難く、曖昧な感じの相槌を打つ事で続きを促した。
「そう、なんだ……?」
「はい! たぶんなんですけど、審神者さん、何処かで切符を手に入れませんでしたか?」
「切符……? そんな物、俺、持ってたかなぁ……?」
「何か其れっぽい物、袂の内側や服のポケットの中なんかに入ってたりしませんか?」
「袂の内側か、服のポケット……?」
 言われて初めて、自分の身に付ける衣服へと視線を落とし、ゴソゴソとまさぐってみる。すると、いつの間に持っていたのだろう、何処かの駅名の書かれた切符が羽織の袂の内側から出て来た。
「あら、本当だ。持ってたわ、切符」
「ほらっ、言った通りだったでしょう?」
「うん、言われるまで全っ然気付かなかったや……」
「其れを持ってたから、屹度きっと、知らず知らずの内にこの電車に乗車しちゃってたんだと思いますよ。この電車は、切符を持ってる人しか乗れない仕組みらしいですから」
「へぇ……まぁ、電車って言えば、切符無いと乗れないモンやと思うけんども」
「はいっ! つまりは、そういう事です」
「でも、俺、この切符の存在に身に覚えとか全く無いんだけど……其れも大丈夫なヤツ?」
「う〜ん。取り敢えず、切符さえ持っていれば終点までは行けるので、問題はないかと」
「そっか。其れなら、一先ずは一安心かな」
 会話に一区切りが付いたので、一度視線を向かい席側の車窓の外へと向けて景色を眺めてみた。
 相変わらず、何処の車線を走っているのかも分からず、ただただ停車予定の各駅まで走り続けている様子が視界に映る。
 そうして、再びぼんやりと景色を眺めていたら、トンネルに入ったのか、窓の景色が真っ暗になって、反射した車内を映すだけに変わったので、その反射した情景を視界に映す。すれば、乗客の大半である薄っすら透けた影人間達は、光を透かした風に薄ぼんやり映るだけで、影の薄い存在に思えた。反対に、色彩が鮮やかに映るそのままの存在として居る自分達二人だけ、異様な光景に映った。
「ねぇ、俺達以外の人達って、何で薄ぼんやり透けて見えるのか聞いても良い系……? あ、駄目だったら駄目で答えなくて大丈夫だから。その時は、大人しくお口ミッフィーして別の話題振るんで……っ」
「別に、特に何の問題もないので、お答えしますと……。あの人達は、皆既に此の世から他界された方々だから、影という存在としてしか映らないんですよ」
「おっとぉ? まさかのそういう感じですかぁ〜〜〜。……えっ、じゃあ、何で俺達は普通に見えてんの!?」
「其れは……たぶん、審神者さんがまだ生きてる方だからだと思いますよ? 基本的に、この電車に乗車される方々は彼の世側の人達ですから。だから、生きてる方が乗車するのって珍しいんですよ! 貴重な体験が出来て良かったですね!」
「う〜ん、経緯を考えると素直に喜べないのが実情かなぁ〜っ! 強いて言うなら、自分にホラー耐性があって良かったな、ってぐらいかな!?」
「ふふふっ! 僕は、久し振りに生きた方とお会い出来て、且つ、こうしてお喋りも出来て光栄です! 彼岸の方々とは基本的にお喋り出来ませんから……」
「あ゙ー……まぁ、“死人に口無し”とは、よく言うものねぇ〜……っ」
 何時いつからこの電車に乗車しているのかは不明だが、会話の流れから察するに、自分が乗っているよりも遥かに長い時間から乗車して降りる駅を待っているといった感じなようだ。あまり深くは詮索しまい。
 かと言って、下手に口籠るのも変な気がして、なるべく自然な流れを意識して、世間話のていでそれとなく気になっていた事についての話題を振った。
「ところで……君は、何でこの電車に乗ってるの?」
「僕は、主君が乗車してくる瞬間を待っているんです! 僕の主君は、子供の頃から電車がお好きな方で、所謂“鉄ヲタ”っていうらしいんですけど。お盆の時季だけ会えるので、此処でずっと待ってるんです……! えへへっ、此処だけのお話ですが……僕の主君は、毎年お盆の時季だけ、行きと帰りにこの電車に乗られるんです。なので、主君が一人で寂しくないよう、僕だけでも待っていてあげようかなって思って、此処でずっと待ってるんです」
「えっ…………」
 唐突に落とされた爆弾に、一瞬言葉を失ったものの、すぐに気を取り直して、思い至った疑問を口にした。
「え、えと、ちょっと待って……? お盆って、ついこの間過ぎたばっかだよね? 対百鬼夜行迎撃作戦の本チャンとも言えるシーズンで、時の政府も含め各本丸がめちゃクソ忙しかった、あの三日間の事の話を言ってる……??」
「あぁ、今はそんな催物もやってたりするんですね。僕、毎年この時季になると、いつもずっと此処で主君が乗車される瞬間を待っているので、他の事を気にした事がありませんでした! 教えて頂き、有難う御座います!」
「え゙ぇ゙ー……あの一年で一番短期で多忙な期間を知らんのかぁ……。ギリ大侵寇は知ってても、百鬼夜行はまだ始まって二年だから、参加してない勢とか審神者成り立ての新人さんとかなら知らんくてもしょうがないんかねぇ……」
 衝撃の事実にぶち当たって、感慨深げに溜め息をいて腕組みをした上で頬杖を付いていたら、再び横から聞き慣れた声音が話しかけてきた。
「審神者さんは、会って初めに“中堅どころ”って仰ってたので、そこそこ長く勤めていらっしゃるんだなって事は分かりますけど、今年で何年目になるんですか?」
「うん? 俺は、まだ七年目其処らよ。ガチのゴリラ審神者勢から見れば、ウチなんかまだまだケツの青い雛ゴリラレベルさね。日々精進あるのみよ」
「わぁっ、思ったよりも長く勤めてらっしゃるんですねぇ! 凄いです! 僕の主君はのんびり屋さんなので、審神者歴もそんなに長くないですし、本丸もまだまだ小さい方です。……っふふ、話していたら、何だか主君に会いたくなってきました! でも、我慢ですね。今年のお盆は過ぎたばかりみたいですし、次に主君のお顔を拝めるのは来年ですかね? 楽しみだなぁ〜!」
「お盆の間だけしか会えないのは寂しくなぁい?」
「う〜ん……寂しくない、と言ったら嘘になりますけど……僕達刀剣男士からすれば、一年なんてあっという間の時間ですから。瞬きの間に過ぎちゃいます。だから、辛抱強く待てば、また会えます。好きな人や大切な人と会えない時間というのも、素敵な時間で、楽しい事ですから! なので、へっちゃらです!」
「そっか。君は、強いね」
「えへへっ……褒められちゃいました! また来年、主君とお会いした時に一つ自慢話が出来て嬉しいです!」
 そうやって笑った秋田藤四郎は、心から嬉しそうに笑っていた。屹度きっと、彼の持ち主たる審神者は良い人なのだろう。何せ、こんなにも純粋な気持ちで慕われているのだから。
「また会えると良いね」
「はい! 今から心待ち遠しくって、わくわくしてきちゃいます……っ! ――あっ。審神者さんのお迎えの方でしょうか? 駅のホームで、審神者さんの方へ向かって手を振ってらっしゃいますよ!」
「えっ……?」
 向かい席側の窓の外を示すように指差した彼の視線を追って見てみれば、確かに、ウチの本丸の姫鶴一文字らしき姿が見えた。おまけに、何故か必死な形相で何言かを大声で叫びながらコッチに向かって大きく手を振っている様子も見て取れる。
 タイミング良く電車が駅へと停車し、ドアが開く。途端、聞き慣れた声と共に頭で理解出来る言葉が耳まで届いた。
「主、早くコッチへ……ッ!!」
 呼び声に反応を示した体が、自然と腰を浮かせていた。
「どうやら、審神者さんのお迎えの方で合ってたみたいですね! 丁度、終点駅に到着したようですし、無事審神者さんが元に帰れそうで良かったです!」
 反射的に立ち上がった体は、そのまま呼び声に弾かれたように足を前へと滑らせる。
 駆け足気味で降りたドアの先は、彼の言う通り終点駅のホームで、其処に我が本丸の姫鶴一文字が立っていた。
 自分の他に降りる乗客は居なかったのか、乗降口はポッカリと寂しげに口を開けるばかりで、電車が駅に到着した事を知らせる音楽が車内アナウンスと共にホーム上へ鳴り響く。
「姫……っ!」
 両手を広げて待ち受けていた姫鶴一文字の懐へ飛び込む勢いで駆け寄っていく。同時に、その背へと彼の声が発車の合図を知らせるベル音と被さるように聞こえた。
「さようなら、陸奥国の審神者さん! 次は、うっかり迷い込まないように気を付けてくださいね〜っ!」
 丁度言葉が途切れたタイミングでドアが閉まり、再び何処かへと向かうアナウンスが流れ、電車がゆっくりと動き出す。一瞬だけ、かけられた声に対して反射的に後ろを振り向きかけたけれども、その前にガッチリと姫鶴一文字から拘束される如しの熱烈且つ強烈な抱擁を受けたので、首を動かす事すら出来ずに去り行く電車を背後で見送った。
 完全に電車が行ってしまうのを待ってから、漸く抱擁の力を緩めたウチの姫鶴一文字が口を開く。
「さっ、とっととウチに帰んよ。皆、超心配してっから。……ったく、変な所で迷子になんのもコレっきりにしなねー。外部から手ェ回せないヤツ程厄介な怪異もないから。ただの迷子なら、夢繋げて渡って引っ張ってくるだけで済むんだけどさぁ〜。今回のは、定まったルール外からの干渉不可だったから超面倒かったし、地味に邪魔された感じしてウザかったし……。何より、夢繋げても外部からじゃ無理だって分かった途端、皆殺気立って大わらわだったんだから……っ。初期刀の清君も相当やばかったけど、ちょもと道誉君に古備前の三振りと三日月お爺ちゃんとかの大御所勢がガチやばやばのやばだったから……帰ったらフォロー宜しく」
「えっ……待って待って、全ッッッ然情報入ってこんのやが……っ!! そも、まず、その迷子ってどゆ事!? 怪異って何がどっから何処までの話!??」
「あ゙ー、まずはそっからかぁー……ッ。とりま、本丸帰り着いた後で一から全部話してやっから。絶対ェ俺から離れないでよ。フリじゃねぇーかんな」
「アッハイ……」
 そうして、よく分からない内に怪異の領域内へと迷子になってたらしきところを何とか救出してもらい、無事自分の本丸へと生還を果たせたのであった。
 正確には、無事五体満足で意識が元の体で覚醒して目覚める事が出来た……というのが真相なのだが。
 ――あの電車内で出会った彼は、一体何者だったのだろうか。
 時の政府へと今回の怪異被害についての報告書をしたためている折に、ふと独り言のように疑問を呟くと、原因の怪異について調べを済ませていたへし切長谷部から、淡々と報告を受ける。
「主が今回の怪異領域内にて囚われている間に会ったと思しき秋田藤四郎は、恐らく、同様の怪異領域内へと迷い込み囚われた者達の書き込みで目撃件数の多い個体の話ですね。主はお気付きになられていなかったご様子なので、敢えてお知らせしておきますと……該当の秋田藤四郎は既に折れており、未練が形骸化してあの場に留まる形で存在しているのだそうです。故に、うっかり生きたまま迷い込むと、決まって該当の秋田藤四郎の概念が自ら案内人を引き受け、元の場所まで帰れるように促すのが一般的な流れの模様です。今回の主が、そのケースに当たりますね。無事に意識が戻られて何よりです」
「え…………あの秋田藤四郎の主さんが既にお亡くなりになられてるんじゃなくて……??」
「残念ながら、全くの真逆です。該当の秋田藤四郎の所持者だった審神者は、本丸運営初期段階で己の采配ミスにより刀を折ってしまった後悔に蝕まれ、精神を病んでしまった挙げ句、運営は滞り。戦績が振るわない事を担当責任者より指摘を受けたタイミングで審神者を辞職。本丸は畳み、所持していた刀達は初期刀のみを残して刀解し、今は政府職員として勤務しているとの事です。ただ、今回みたく主が会ったように、複数件同様のケースの報告が挙がっているとの情報筋から……該当の折れた秋田藤四郎が概念のみの存在に形骸化しつつも、まだ怪異領域内にて自分の事を待っている事を知って以降、毎年供養目的にお盆の時季に合わせて切符を入手し、某怪異電車へと乗車しているとの事らしいですね。オカスレ界隈では、そこそこ有名な話のようです。今回は、まさか、主が被害に遭われるとは微塵も想定していなかったが故に、且つ情報収集を怠ったが為に引き起こった事件ですので、責任は俺達にあります。どうか、ご容赦を」
「いや、想定しろってのが無理くない!? 俺の方こそ、オカスレ結構な頻度で見てる癖して情報収集足らなかった挙げ句、皆に迷惑かけるような事態になっちゃって御免ね!! ていうか、ぶっちゃけ寝てる間に起きた事は不可抗力過ぎるって……!!」
「そもそも、今回のがイレギュラー過ぎるって話〜。何で勝手に他人の懐に切符が紛れ込んでんの? 意味分かんな過ぎて腹立つわ〜〜〜」
「お、落ち着け餅つけ?? 姫がマジおこになったら、洒落にならんどころか、手が付けらんなくなるだけじゃ済まなくなるかんね?? 一旦ステイTONIGHTしよ」
「これからは、小鳥の身辺警護をより一層強化すると共に、定期的に身体検査を行う事も業務内容へ組み込む事にしようか。担当者は、小さな若鳥達が適任かな」
「ノン。其れだけじゃ些か役不足だ。本丸に来て日の浅い若輩者が口を挟むべき事ではないとは理解しているがね。マイレディを守る本丸の同士として、敢えて発言させて頂くと……そうだな、常に枕刀を付ける事も視野に入れるべきだろう。例えば、お姫のような、夢を渡りやすい刀を近侍とは別に付ける……なんてのは如何だろうか? そうすれば、マイレディが一番無防備となる眠っている瞬間も、何事か起きた時に対処しやすくなるのでは、と思うのだが……他の者達の意見も聞かせて欲しい」
「僕は良い案だと思うよ。確か、主ってよく僕達の夢見るって聞くし。おつう以外も含めた、主の夢によく出て来るって刀を交代で付けるのはどうかな?」
「其れから言うと……統計上、御手杵や山鳥毛、及び大典太光世並びに古備前(新入りの信房を除いたRGB組)など、俺も含めて該当するな。主の警護ならお任せください。最良の結果を主に」
「待って。俺の知らんところで夢に登場しとる奴等の統計データとか作らんといて。せめて、当事者は話の勘定に入れといてよ。頼むから報連相くらいしてクレメンス」
「一先ず、主は暫く万屋ないし政府施設含めた本丸外部には外出禁止ね。つまり、外出自粛期間が解けるまでは、大人しく本丸で良い子でお留守番してよーねって事。大丈夫、俺かぁいい子のおりは得意だから。次、夢で何かしてこようとする奴居たら指一本触れさす前にシメとくし、そもそも次の機会とかやらねぇーから」
「わぁ……ウチの子達ったら、揃いも揃って頼もしいね! 勇ましくも逞しくって何より!! そういうところが格好良くて素晴らしく、強くて、痺れる、憧れるゥ!!」
「現実逃避しないでください、主様。貴女は、今回怪異の被害に遭われた当事者なんですから……。ほら、上に報告する為にも、諸々記載忘れも漏れも無いよう纏めて提出してくださいね」
「こんちゃんってば、相変わらず冷静ね……。つい先日、審神者体操で張り切って通信妨害跳ね除けた元気さは何処へ?? 今こそ、場の混沌を収めるべく、あの可愛さを発揮して審神者の事いたわるべきでしょ……」
「主様の無駄にあるホラー耐性の所為で怪異ホイホイ化しつつある現状を思うと、カワイコぶっても居られませんって」
「え……俺が悪いの????」
「現実を受け止めよう、主」
 衝撃の事実を知らされてショックからの傷心で居る暇も無く、頼れる相棒な初期刀・加州清光から肩ポンされて報告書作成に追われるのであった。無慈悲が過ぎる。この世は悲しみに満ちていますね……。この世は地獄。情け容赦とか基本無いモンだってはっきり分かんだね。泣きそう。心は既に色んな意味で泣いてるけど、実際の目からは涙なんてモンは出なくて。代わりに、冷や汗を垂らしながら周囲の騒動を抑え込みつつ、密かにウチの本丸の秋田藤四郎を呼び寄せてひっしと抱き締めておいた。例の怪異電車内であった彼とは違って極めて久しいウチの子は、一度も御守りを発動させる事もない程強く逞しく、安心感凄まじい笑顔で温かく抱擁を返してくれるのだった。


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 朝になって、とっくに朝餉も出来上がって準備万端という時刻なのに、幾ら直接枕元で呼びかけても激しく揺すってみても主が起きる気配がない。
 其ればかりか、主と誓約を結んで深く縁を結び付けている筈の三日月曰く、主の体そのものは其処に在るのに、心だけが何処かへと離れてしまっているようだ――と、口にした。
 慌てて本丸付きの管狐を喚び寄せて検査させてみると、精神――つまりは意識のみが何かしらが原因で体から抜け出てしまっている状態にあるとの診断結果を下した。このままの状況が長く続けば、主は植物状態化してしまいかねない。まさしく、危機的状況だった。
「ちょい荒っぽいけど、無理矢理夢繋いで、主の事起こせるか試してみるわ」
「今出来る最善策と言ったら、其れしか無かろうなぁ……」
「じゃあ、僕、おつうの布団一式準備してくるよ。主の寝てる敷布の隣に敷けば良い?」
「一応、念には念を入れて、簡易結界として蚊帳も張るべきだろうな。坊主は主の元に付いていてあげなさい。何、心配せずとも、我等の力に掛かれば、すぐに戻るさ。ちょいとばかし辛抱せい」
「蚊帳吊るの手伝うぜ」
「こんのすけは、狐ヶ崎を通して政府に連絡を。最悪の事態になるのは避けるべきだが、万が一という事もある……。俺も出来得る事をすべく手を尽くそう」
「怪異案件の可能性も加味して、オカスレ片っ端から当たってみるか」
「もうやってるぞ。そんで更に言えば、其れっぽい感じのケースに早速ヒットした。全員に情報共有でコピペしたデータ回すぞ」
 皆が大好きオカスレを片っ端から当たってみれば、ものの数秒で複数件ヒットした。その中から条件を絞って選りすぐると、こんな情報が出て来た。該当の話はこうである。

 ――怪異:【幽霊列車】。別名:【あやかし寝台列車】。A面ならぬ表面の通称名が【幽霊列車】で、B面ならぬ裏面の通称名が【あやかし寝台列車】。
 怪異:【幽霊列車】は、その名の通り、死んだ者の魂や未練を残して亡くなった者の思念体などが乗客のおもたる電車である。異界へと通じる乗り物でもある為、走る場所は彼の世と此の世――つまりは、彼岸と此岸の境も行き来する。
 ちなみに、【幽霊列車】は人の形をした者だけが乗車可能な電車なので、折れた刀剣男士の未練なんかも乗れたりする。
 乗車する為には、万屋街の裏番通りに在る辻道に現れる【辻市】でしか手に入らない【隠り世行き切符】が必須条件。
 基本的に一度乗車すると、生きてる者は終点まで降りれない仕組み。(※怪異領域内の徹底されたルールなので破れない、且つ、五体満足で無事に元の場所へ戻る為には従う他無し。)
 見た目は普通の電車っぽくて、切符を所持している場合に限り、気付いたら乗車してる感じ。外の景色は、停車駅によって様々な様相。車内は、基本的に死者の魂か或いは未練の塊みたいなものが乗車しているので、目に見えて分かる範囲の乗客は皆影のように薄っすら透けた白黒モノクロ状態。極稀に、生きていた時のままの色彩を投影した姿の者も居るが、その場合は、其れだけ死んだ時の未練が強かった者に当たる。彼岸と此岸の境目も走るので、水上列車状態になる事もしばしば。その景色は、まるで、某ジブリ映画の如し世界観である。
 尚、【あやかし寝台列車】は人外用として重きを置かれている模様――。

「切符持ってる事が必須条件らしいけど、主、切符なんて物持ってったっけ? 基本出不精の超絶インドア派だから、現世の公共交通機関なんてめっきり利用してない筈だけど」
「お前ちゃんと文章読んだか? “【辻市】でしか手に入らない【隠り世行き切符】が必須条件”て書いてあるだろうが」
「あ、本当だ。御免、うっかり読み飛ばしちゃってたみたい」
 事実のみを端的に挙げて疑問を口にした大和守は、至極もっともなツッコミを和泉守から貰い、すぐに過ちを認めて謝った。素直で正直者なところは、彼の取り柄でもあり長所だ。閑話休題。
「つーかよぉ、そもそもが只人ただびとである筈の主が【辻市】に行けるとは思えねぇんだが……」
「いや、夢渡り出来ちゃう主ならうっかり行ってしまう可能性大だよ。実際、一度だけだけど、俺が無骨を【辻市】へ案内してる時に会った事あるし。その時は、“何で主がこんな所に来てんの!?”って、急いで主の事引っ掴んですぐに本丸まで引き返したから問題無く帰れたけど……。その時も、主は眠ってる最中に無意識に夢渡りしちゃって【辻市】まで来ちゃってたっぽいんだよね。だから、今回もその可能性有るかも……っ」
 和泉守の漏らした発言に対し、すぐに否を唱えたのは不動だった。どうやら、根拠に基づく話らしく、其れが事実ならば、尚の事、今回の事件は怪異が原因によって引き起こされた事である信憑性が高まってきた。この話に、追随するかのように徐ろに口を開いた骨喰が、何かを思い出した風に呟く。
「そういえば……何時いつぞやに、主本人がこんな事を言っていた覚えがある。“朝目が覚めると、知らない内に部屋の物が度々増えている事がある”のだとか……。その、いつの間にか所持している物の一つに数えられるのが、例の呼び鈴の鐘だったり、化け琵琶だったりするんだったか」
「えっ。兄弟、いつの間にそんな話聞いてたの? 俺、全部初耳なんだけど、アレ等そういう経緯で持ってたモンだったの!? てっきり主が蚤の市とか辺りで自分で買ってきたモンだとばっかり……!」
「あんっっっの馬鹿主めぇ……!! ホラー耐性付き過ぎて変な事に巻き込まれんのも大概にしろよな!?」
「まぁ、大将本人に悪気は無い上に、無意識下で起こった事なんだから、実質不可抗力だろうさ。ただ……今回ばかりは、ちと厄介だな」
 次々と判明する主周辺で起きた怪奇現象ネタに、思わず声を荒らげた加州は悪くない。常日頃から、初期刀として、本丸黎明期より審神者と共に切磋琢磨してきた仲だ。故に、本丸一、主に対する責任感は強く重い。双方それぞれの性格を理解しているからこそ、同時期に顕現した古株の薬研は、敢えて[[rb:宥 > なだ]]める立場に立ち、事実のみを述べるに留める。
 皆が口々に色々と話し合う中で、不意に一点だけを見つめて神妙な顔付きをしている弟に気付いた一期は、声に出して問うた。
「どうかしたのかい、前田?」
「……少々気になったので、主君の御身周辺を確認してみても宜しいでしょうか?」
「許可しよう」
 何かを察したらしき前田が断りを挟んでから、紳士的にも丁寧に衣服の内側が周りに見えぬよう配慮した上で身体検査を行う。すると、どうした事か。身に覚えの無い切符が、寝ている筈の主の布団の上に掛けられていた羽織の袂の内側から転がり出て来たではないか。思わず、そばで確認していた薬研が一切取り繕わぬ言葉で告げる。
「こりゃ完全に黒だな」
「あちゃーっ! 主ってば、やっちまってんじゃん!!」
「とすると、だ……。この怪異のルールに則ると、終点に辿り着くまでは外部からの干渉は不可になりそうだが……」
「ものは試し。ダメ元だろうが、一か八かやってみない事には分かんないっしょ? やるだけやってみてから次の手考えよ」
 取り敢えずは、適材適所として、今の状況に対し最も有効な手札を持つ姫鶴の意見を採用し、何とか夢を繋いで主の意識を取り戻せないか有言実行に移す。
 ――が、直ぐ様難しい顔をして起き上がった姫鶴が不機嫌そうな声音で告げた。
「クッソ最悪」
「どうだった、姫鶴よ?」
「完っ全に阻まれた……。何か分厚い透明な壁みたいなのに邪魔されて、無理矢理干渉したくても出来ない。物理行使しても駄目だったわ……チッ。うっっっざ。怪異の分際で俺に楯突くとか良い度胸じゃん……」
「アッ、おつうの激怒スイッチ入っちゃったかも」
「お、お姫……?? 何をする気だ?」
「あったまキタから、ちょっち全力出してぶちかましてくるわ。俺に何かあったらどんな手使っても良いから起こして。奥の手使ってでも主の事取り返してくっから」
「わかった。では、わたしたちは、ひめつるがおきるまで、まんがいちにそなえていくさじたくをととのえておこう」
「うん、そうして」
「姫鶴……主のこと、おねがいね」
「ご武運を、お祈りします」
「ん、任しときな。絶対ェ連れ戻してきたげるから」
 斯くして、姫鶴は再度とこに就き、強制的に夢を繋いで無理矢理怪異側へと渡り、主の意識を無事取り返してきたのだった。今回のMVPは確実だろう。ファインプレーにて、手助け役を担った前田も誉扱いなのは間違いなしである。
 まぁ、真実を述べると、某秋田藤四郎の働きが大いに関係したが故に無事に生還する事が出来た……なんて、敢えて口に出してまで言うべき事でもないだろうが。


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 今回作中にて登場した人物や怪異及び物だったりについて、ざっくり解説。別のお話で登場した物も、直接的ではないにしろ話の時間軸としてリンクした形で登場している為、該当するお話を読んでない人・または、本作品を読んでも分からなかった人向けに、分かりやすく箇条書きにてご紹介しているだけの蛇足文になります。特に読まなくても問題はないという方は読み飛ばしてくださってもおkです。ぶっちゃけ、自分用の覚え書き兼ケツ叩き用メモも兼ねてます故、マジのざっくりです。
 尚、怪異や怪異に関連するアイテムのみ分かりやすく、作中と同様に【】表記で明記致します。

▼以下より解説及び簡単な紹介文。

‌・夢主(という名の俺氏)……リアルに陸奥国で本丸を構えて七年になる、中堅どころの審神者。真のゴリラ勢からすれば、まだケツの青い雛ゴリラレベルだと言うのは本人談。ちな、現時点での審神者レベルは247Lv.程。所持刀剣は、2025年8月末時点で実装済みの刀剣はフルコンプ済み、及び、極修行実装済み刀剣は全員修行済み。その他、特の刀剣達もカンスト済みである。過去の時代の合戦場は、推奨レベルにまで到達していない理由から8面攻略途中で止まってる。異去は2-3まで攻略済み。
‌・秋田藤四郎……以前は備前国の本丸所属男士で、仲間達と切磋琢磨しながら過ごしていたが、とある日に合戦場へと出陣中にて検非違使に遭遇し、刀剣破壊してしまった。しかし、己の主君を想う気持ちが強過ぎたあまりに折れても尚、秋田藤四郎という核が概念的存在へ形骸化しつつも、存在し続けている。全ては、己の主君の為に。主君が一人ぼっちになっても寂しくないようにという気持ちだけを抱いて、たった一人きりで某怪異領域内に留まっている。刀剣男士としては既に扱えない存在になりつつあるけれども、その姿や心優しい性格は当時のままを保っており、時々生きたまま迷い込んでくる人や刀剣男士の魂を元の場所へと還す為に動いている。仮に、死んだ魂が迷い込んだ際は、その魂が行くべき場所・目指す場所を示して案内してくれる。ただただ良心の塊という存在で、オカスレでは、この秋田藤四郎の話が出たら忽ち泣けてくるとの話で有名。害意は全く無いので、オカスレ住民勢からは、心がほっこりするような癒しと悲しみを提供してくれるオアシス扱いされている。※もしかすると、今後もまた何処かで登場する機会が回ってくるかもしれないが、今のところ未定。
‌・秋田藤四郎の元主……以前は、備前国で本丸を構えて審神者をやっていたらしいが、ある時、采配ミスをして戦場で秋田藤四郎を折ってしまった。その事が切っ掛けで精神を病み、審神者を辞職。初期刀のみを残して全て刀解し、本霊へと還した。今は、初期刀をそばに置いて備前国支部の政府職員として働いているとの事。ある日、とある情報筋から、オカスレで自分の秋田藤四郎と思しき存在が怪異電車内で自分と再び会える機会を待っていると知り、思わず涙した。其れ以降、供養目的にお盆の時季限定で秋田藤四郎だったモノに会いに行っている。秋田藤四郎が作中で漏らしていたが、子供の頃から電車という物が好きで、所謂“鉄ヲタ”趣味な男の子だった。審神者だった当時は、学生時代を送っていた10代だったが、あれから10年の時を経て、今や立派な成人で社会人をやっている。未だ尚、秋田藤四郎を折ってしまった事を後悔し続けているが、二度と同じ事を繰り返したり、自分と同じような過ちを冒させないように、後進への教育や指導に励んでいるらしい。作中では登場する事は無かったが、一応明確にしておくと、初期刀は陸奥守吉行。今の彼を支える唯一無二の存在且つ相棒である。
‌・【幽霊列車】……本作品でメイン扱い且つ物語中心舞台となった怪異。作中でもご紹介した通り、死んだ者の魂や未練を残して亡くなった者の思念体などが乗客のおもたる電車である。異界へと通じる乗り物でもある為、走る場所は彼の世と此の世――つまりは、彼岸と此岸の境も行き来する。ちなみに、【幽霊列車】は人の形をした者だけが乗車可能な電車なので、折れた刀剣男士の未練なんかも乗れたりする。だから、秋田藤四郎の形骸化した概念的存在も乗れた次第。乗車する為には、万屋街の裏番通りに在る辻道に現れる【辻市】でしか手に入らない【隠り世行き切符】が必須条件。基本的に一度乗車すると、生きてる者は終点まで降りれない仕組み。(※怪異領域内の徹底されたルールなので破れない、且つ、五体満足で無事に元の場所へ戻る為には従う他無し。)見た目は普通の電車っぽくて、切符を所持している場合に限り、気付いたら乗車してる感じ。外の景色は、停車駅によって様々な様相。車内は、基本的に死者の魂か或いは未練の塊みたいなものが乗車しているので、目に見えて分かる範囲の乗客は皆影のように薄っすら透けた白黒モノクロ状態。極稀に、生きていた時のままの色彩を投影した姿の者も居るが、その場合は、其れだけ死んだ時の未練が強かった者に当たる。彼岸と此岸の境目も走るので、水上列車状態になる事も。その景色は、まるで、某ジブリ映画の如し世界観である。尚、【幽霊列車】とは、当該怪異の表向き通称名で、裏向きの別名も存在する。其れが、【あやかし寝台列車】で、此方は人外用として重きを置かれている模様。
‌・【あやかし寝台列車】……本作品の物語中心核となった怪異の別名で、裏向きとの扱いをされている時点でお察し。乗車する為には、【幽霊列車】に乗る場合の必須条件とは別にクリアしなければならない条件があるみたい。其れ故に、乗ろうと思わない限りは乗れないし、全ての必須条件を達成しない限り乗れないので、基本的には乗車不可。普通に過ごしてれば、まず乗車してるという事もないので、【幽霊列車】とは完全に扱いが異なる模様。そもそもが、用途が異なるらしい。今回は名前のみ登場した形で、メインで活躍するのはまた別の機会という事で今後に乞うご期待。
‌・【隠り世行き切符】……怪異:【幽霊列車】、或いは、怪異:【あやかし寝台列車】に乗車する為の必須アイテム。【辻市】でしか入手出来ない代物だが、【辻市】に行けば大概入手可能なアイテムな為、レア度は然程高くはない。欲しければ【辻市】で探せばすぐに見付ける事が出来るが、【辻市】そのものが普通の人間では辿り着けない場所なので、常識的な物の考え方で言えば、まず手に入らない。が、稀に例外はあるので、注意が必要。その例外というのが、作中のように、怪異:【幽霊列車】に喚ばれた・・・・・或いは招かれた・・・・場合のみ、自分の知らないところで勝手に所持しているケースが起き、半強制的という自動式で怪異:【幽霊列車】に乗車する事になる。当該切符を持っていれば、仮に意図せず某怪異電車に乗ってしまっても、終点まで辿り着けるので安心して元の場所へ帰る事が出来る。名前からお察しの通り、当該切符を利用して行ける場所は現世のことわりから外れた世界になる。所持対象は、生者にも死者にも等しく適応する。今後も活躍予定なので乞うご期待。
‌・【辻市】……万屋街の裏番通りに在る辻道からしか行けないあやかし市。入口は、万屋街の裏番通りに在る辻道なら何処へでも行ける為、万屋街で辻道を通っていると、うっかり知らない内に迷い込む事もあるが、市に並ぶ商品や場の雰囲気が異なるので、すぐに気付く事が可能。但し、只人ただびと=普通の人間は、まず辿り着けないので、【辻市】へ行く事も不可能。稀にその手に耐性のある者だけが辿り着けたりもする。怪異というよりは、ある種の特異点扱い。何処の時代の何処に在るかも不明な異空間。現時点で判明している事は、【辻市】内の時間軸は、過去・現在・未来のいずれかに該当するという事。その為、この場所で見聞きする情報は、過去の事か、今の事か、はたまた未来の事かは、その事象に遭うまでは分からない。但し、仮にこれから起こるかもしれない事象の場合なら、回避可能であったり対策を練る事は可能。つまり、確定した事実とは限らない。そんな場所なので、度々情報収集の場に使われたりもする。ちなみに、市で売っている商品は、現実には存在しない物ばかりである。故に、市で購入した物はすぐに判る。その為、曰く付きの物や特級呪物的な物だったりを入手した場合、怪異対策調査課が回収して回る事も。尚、【辻市】内での売買は、基本的に物々交換が適応する。現世の金銭でも遣り取りは可能だが、お代は対価として釣り合う物ならば何でも良い模様。極稀に、【辻市】内で売られていた商品が勝手に移動して訪れていた客の元へと付いて来る事も儘ある事らしい。その場合のみ、お勘定にお代は不要。理由は、商品そのものが意図的に持ち主という名の主人を選んだ故に、商品の意思を尊重した上での判断らしい。一応、今のところ害ある空間ではないという扱いで、定期的に調査対象として監視する程度で敢えて封鎖等の処置は行っていない(そもそも、安易に封じれるような空間であるなら敢えて放置したりはしないので、何方かと言えば利用価値があるからこそ、そのままにしていると言った方が合っている)。※初登場回は、刀剣掌編枠『Log:漆』収録の山鳥毛掌編『焼け野の雉子』より。今後も何処かしらで登場する可能性有り(メイン枠ではないかもだけど)。
‌・呼び鈴の鐘……喚びたい対象を思い浮かべながら鳴らすと、思い通りの存在を呼び寄せる事が出来る便利なベル。見た目は、某有名どころのR指定物なホラゲー『Bloodborne』にて登場する、プレイヤーが協力者を呼ぶ際に使用するアイテム『共鳴する不吉な鐘』っぽい、というか見たまんま。サイズ感は、懐にも仕舞えるくらいの小さな物。音色は、『Bloodborne』に登場する『鐘を鳴らす女』が鳴らす鐘の音をイメージしてくれたら良き。特定の相手を呼び付けるという意図で使う分にはすっごく便利な鐘。どんだけ便利かって言うと、どんなに遠くの場所に居てもよく響き渡るし、喚びたい相手へと必ず届く特殊アイテムだから。尚、拙宅のお話では単なる便利アイテムとしての扱いなので、決して不吉なものではない。【辻市】でのみ入手可能な代物。一応量産品らしく、【辻市】内の特定の露店へ行けば誰にでも買えるし、誰にだって使える。今後も登場予定のアイテムだが、実は正式名称を【呼寄よびよせの鐘】と言う。※初登場回は、刀剣長編枠・孫六兼元長編『黒と浅葱と、歪な縁に焦がれ絡んで結ばれて』の幕間編『相見えたその時から焦がれ絡め取られるは』より。
‌・化け琵琶……その名の通り、ただの楽器である筈の楽琵琶がくびわだった物に付喪が宿った物。何時いつの日だったか、うっかり夢主である審神者が【辻市】へ迷い込んでしまった先で、偶々目に付いた露店で売られていた商品の一つだった。彼女と目が合ってしまった瞬間、運命を感じてしまったらしく、本丸にまで勝手に付いて来た傍迷惑な子。物に性別の概念が有るかと言われれば甚だ疑問だが、聴こえてくる音色や鳴り方から察するに、一応♀扱いらしい。誰かに音色を奏でて欲しかったり、意思を主張したい時などに勝手に音が鳴る不思議な琵琶。付喪が宿った時点で物の怪に成ってるので、自分で移動可能らしく、度々定位置として置いてある場所から勝手に移動していたりする事がある。性格は構ってちゃん気味。実は、正式名称を【鳴きなぎの琵琶】と言ったり。雅楽で使われる楽器なので、平安刀など古ければ古い刀程、相性が良かったり。ばちとセットで勘定される為、ばちは相棒のような物。※初登場回は、刀剣掌編枠『Log:捌』収録の同田貫正国掌編『ヨナキの琵琶』より。今後も登場するかは未定だが、もしかすると活躍場面があるかもしれない。


執筆日:2025.08.29
公開日:2025.08.31
加筆修正日:2025.09.02