▼▲
涼を運ぶ風鈴の音とラムネの気泡



「俺のあーるじっ! 日頃の慰労も兼ねて、気分転換に少しだけ俺と出掛けてみないかい?」
 風来坊な出で立ちから涼やかな軽装に身を包んだ男から、そんな誘いのお声を掛けられて、「何処へ?」とも聞かずに頷いてやって来たのは、現世のとある地域だった。
 丁度、風鈴祭りの時季シーズンだったのか、沢山の風鈴達がそよぐ風に揺られて一斉に、ちりんちりん、と涼やかな音色を奏でて響かせるのが耳に届く。
 外は酷暑で、紫外線の強い日差しは肌をジリジリと焼くように熱いけれど、日傘で作った影の下で数多と並ぶ風鈴達の奏でる音を聴いていれば、心なしか涼しく感じた。涼を感じる音が、耳に心地良いのがまた、むわりとした蒸し暑さや熱気さえ吹き飛ばすようで、気持ちが良い。一つ一つを聴き分けていれば、それぞれが異なった音を奏でている事が分かるのも楽しい。
 精神疾患を患ってから体質が変化して、元々暑さに弱かったところに拍車をかけたように高温多湿な環境へ適応出来なくなってしまった。故に、夏場に外へ出るなんて考えすら湧かなかった。そんな折に、だ。涼を求めて、誘われるまま手を引かれて付いて行けば、其処は、現世のとある有名処の観光スポットだった。
「どうだい? こんなに沢山の風鈴が風に揺られる様は、圧巻だろう?」
 そう言って、本丸の離れに引き籠もってばかりの己に気晴らしがてら外へ出る機会を作って連れ出してくれた、人好きのする微笑みを湛えた男が、紫色の双眸を細めて振り向く。
「……うん、こんなにも沢山の風鈴達に囲まれたのは初めてかもしれんね。何か、ちょっと不思議な感じするわ」
「へぇ。例えば、どんな?」
「何処となく、この空間だけ切り取られたみたいに幽玄的で、まるでホラゲーによくある感じの、別の世界に来ちゃったみたいやんなぁ〜……って、感じ? 個人的には、そう思うたんやけんど、何となくは伝わったかいね?」
「大丈夫、ちゃんと伝わってるよ。君の独特の感性から見た感想も、全部ね」
 手を引く彼の金糸の如し御髪が、陽の光を反射してキラキラと視界で煌めく。風鈴の音色に包まれて涼を感じながらも、視界の中でまばゆくもチカチカと煌めく金糸が視線を奪って仕方がない。何となく、逸らせないままで居れば、視線に気付いた男が、チラリ、首筋から倶利伽羅龍の彫り物を覗かせながら振り向き様、お茶目な雰囲気を滲ませて宣う。
「ふふっ……そんなに見つめられちゃあ、熱せられたアスファルトの地面みたいに焼け焦げちゃうよ。心配しなくとも、君の手から離れて行ったりしないさ。俺は、もう君の刀で、君の元に居ると定めたんだから。――嗚呼、それとも……そんな風に見惚れてしまう程、君の心を奪ってしまったかな? なぁんてね、ははっ!」
 流石は長船の刀だ。女を扱わせたら、右に出る者は居ないくらいには巧みな話術と板に付いたエスコート力。あまりにスマート過ぎて、余所見する隙すらもない。
 涼やかな装いに、見る者を魅了する瞳の色と合わさるように重なる風鈴の音が、本当に心地良かった。
「小竜君は、日傘差さんくて良かったんけ?」
「ん〜……俺は、時折こうして君の作る日陰の中に入れてもらえれば、其れで十分かな!」
「でも、俺より上背がある分、お日様とちこうなるき……熱中症ならんよう、なるだけ日陰選んで歩きつつ、適度に水分補給くらいはしなね」
「其れは君にだって同じ事が言えるよ。丁度、この先でラムネが売ってるみたいだから、木陰のベンチに腰掛けてちょっと休憩しようか。この暑さにキンキンに冷えたラムネと風鈴の音は効くぞ〜っ」
「ふふっ、ラムネとか何時いつ振りやろ。子供ん頃に飲んだんは覚えてっけど、其れっきりで、大人になって以降飲んだ覚えは無いなぁ」
「じゃあ、折角せっかくだし、小旅行記念に一枚写真でも撮っておくかい? 想い出は幾らあったって良いものだからねぇ」
「俺、自撮りとか慣れてないから、小竜君に任せるよ」
「よし、来た! すぐに買って戻って来るから、ちょっとだけ此処で待ってて」
 日傘を差したまま木陰のベンチへと腰を下ろした己にそう言い置いて、駆け足気味に陽の下へと出て行く。その後ろ背で高く結われたお団子ヘアが、長い後れ毛と一緒にぴょこんと跳ねるのを視界に収めて、こっそり両手の親指と人差し指で四角い枠を作るようにトリミングポーズを組んで、心のシャッターを切る。そして、満足げに微笑むと、汗ばむ夏の尾を引き摺って残り続ける残暑の中、息をいた。
 敢えてスマホで本物のカメラを構えなかったのは、一瞬の出来事を記録するには網膜に焼き付けるぐらいが丁度良いと思ったからだ。まぁ、本当の事をぶっちゃけると、自分がカメラを構える頃には、撮りたい場面など時間にしてあっという間の出来事として過ぎ去ってしまった後になっているだろう事が読めていたから、とも言える。
 少し離れた位置では、そよぐ風に踊る風鈴達が相変わらず涼やかな音を響かせて行き交う人々へ涼を届ける。夏の盛りの時季シーズン限定でしか見られない、風物詩で平和な光景。
 ――偶には、こんな日があっても良いのかもしれないなぁ。
 そんな事を感慨深げに思い耽っていれば。不意に、日傘の影からにゅっと伸びてきた手に、冷たいラムネ瓶を押し付けられた。思わず、「ひぎゃっ!! ちべたァッ!?」と飾り気も無い繕いもしていない声がもろび出た。
 いきなり不意打ちを狙って首筋へと冷えっ冷えなラムネ瓶を押し付けた確信犯は、予想通りの反応が返ってきた事に愉快そうな笑い声を上げながら、大して悪びれた風もない上辺だけの謝罪を口にしつつ、早速瓶を開封して口を付ける。己も其れに倣うようにそっと瓶の蓋を押し上げようとして上手く行かず、素直に御伴の彼の手を借りて無事開封する事が出来た。
 一口、口を付ければ、広がるのはシュワシュワとした爽やかな甘みと炭酸独特の刺激だった。随分と久方振りに味わう飲み物だ。こんな機会さえ無ければ、飲む機会すらあまり無かっただろう。
「美味しいかい?」
「うん……ラムネとか久々に飲んだわ。懐かしいなぁ〜、この味。童心に帰ると同時に生き返るわ〜」
「はははっ、君はこの暑さに干乾びかけてたものねぇ! 存分に味わいな」
「有難う、小竜君。……にしても、よう綺麗に開け切ったなぁ?」
「逆に、コレくらい普通に開けれない事に驚いたよ」
「いやぁ〜、一応、此れでもそこそこ握力はあった方なんだがねぇ。鍛えも何もしとらんきに、弱っちまったんかもしれん。後は、単純に開け方とか要領の問題だと思う」
「うん、まぁ……その点で言えば、俺達極部隊は、以前にも増して握力とか諸々強くなっちゃったから、力加減が難しいんだよねぇ。うっかり力を込め過ぎちゃうと、こういう瓶とかす〜ぐにバッキリやりかねないから、気を付けないと」
「そもそもが、男士諸君の平均的握力と比べたら、人の子なんぞ一捻りでしょうがよ」
「君相手にそんな野蛮で暴力的な事はしないよ。ただでさえ人の子は脆く儚いんだ。下手に傷付けるような真似はしたくないね」
「そんな事言いつつ、さっき巫山戯ふざけて不意打ち食らわしてきたんは何処の何奴どいつじゃ。おん?」
「コラコラ、こんな処にまで来てメンチ切らないの。さっきのは、君が許す範囲と分かった上での、お茶目な俺からの可愛い悪戯だったじゃないか」
「いきなり首筋ねろうてきたんは、控えめに言っても遺憾の意です……。吃驚ドッキリ系は、心臓に悪いき駄目やち言うちょるやろがい」
「だから、真っ先にすぐに御免って謝っただろう?」
「この確信犯めぇ〜〜〜っ! ツラが良ければ全部許されると思うなよ!?」
「はははっ! そのツラの良さに見惚れてた方が、今更何を言うんだか!」
「うるせぇ! ヲタクは皆イケメンに弱い生き物なんだよ!!」
「其処で開き直っちゃうところが潔くて良いけど……どうせ見惚れるのなら、ずっと目を逸らさないでいなよ。ほら、俺はこんなにも近くに居るんだからさ?」
「いや、無理。これ以上の至近距離とか軽く死ねるから遠慮しときます」
「意気地無しだなぁ」
「意気地無しで結構。まだ死にたくないんでね」
「ふふっ……君の好きな覗き龍は何時いつでも大歓迎だからさ。また気儘にチャレンジしてきなね」
「気が向いたらにゃあ〜」
 他愛のない話を紡ぎながら、カロンカロン、と揺らす瓶の中で綺麗なビードロのエー玉が転がる涼やかな音が響いた。


■□■□■□■□■□■


▼おまけの小話。


 其れは、長船の風来坊に誘われ、現世へと小旅行気分で出掛ける前の事である。
折角せっかくなんだし、主もおめかししてきなよ。確か、浴衣以外にも涼しげな装い持ってただろう?」
「このクッソ暑い中浴衣なんぞ着てられっか。冗談抜きで死ぬぞ。世のお洒落番長達は体張り過ぎなんよ……もっと命大事にして……」
「かと言って、いつも本丸や実家で着てるような部屋着で出掛ける訳にも行かないだろう?」
「甚兵衛さんも持ってなくはないが……アレもアレで浴衣と同じく暑い事に変わりはねぇし……そも、今の小竜君の装いに合わせるならちょっとなぁ〜」
「別に、わざわざ俺に合わせてくれなくっても、君の好きなように着たい服を着たら良いと思うけど」
「くッ……長船の奴はコレだから反応に困るのよ……!」
 出掛ける為の服装を何にするかで悩んでいれば、これまたお洒落な長船の刀が一振り、柱から顔を覗かせて色気ムンムンに問うてきた。
「おやぁ? どっか出掛けるのかい、主?」
「おぉ、にゃーさんか。あぁ、ちと小竜君に誘われてな。ここんとこ、百鬼夜行やら花火イベやらと立て続けに忙しかったんで、気晴らしも兼ねてちょっくら出掛ける準備をばと思ってね〜。行き先は小竜君任せやき知らんが、まぁ〜そう遠くには行かんじゃろうて」
「信頼が厚いこって」
「そらぁ、俺の刀やき、信頼せん訳あるかいな」
「う〜ん……斜め上からの回答が来たな、こりゃあ……。ウチの主は、どうしてこうも刀たらしなんだか……っ」
「何ね、ウチの子自慢なぞ今更珍しくもなかろうや? 俺は、飽く迄も自分が降ろした俺の・・刀達を信じとるだけで、他意はあらへんぞー」
「うん。ウチの主らしいよね、こういうところが。故に、本丸の皆に愛される訳なんだけど……今はその話は置いといてっと。着ていく服は、何にするか決まったかい?」
「全っ然決まらん。つか、候補すら何も絞れとらんわ」
「何だ? 外出用の服装で困っているのか?」
「大包平」
 出掛ける為の服装の候補を挙げようと考えるも、中々良い案が浮かばずに云々と唸っていたらば、話が聞こえていたのか、柱の向こうからもう一振りの刀がやって来て、意識を其方へと向ける。
「御伴を担当するのは、小竜か? んで、小竜の服装が軽装で、今のお前と外の気候に合わせた服となれば…………ボレロタイプのシアーカーディガンと、オフショルダーの大柄の花柄ワンピース辺りはどうだ? ワンピースの裾は膝丈ぐらいだから、其処まで露出もせんだろう。あまり長過ぎても、外気温とを考えたら返って蒸れて暑かろう。足元は……履き慣れた靴の方が無難だろうな。日傘を持って行くのを忘れるなよ。あと、補給用の水分も」
「おおぅ……っ。大包平が来てくれた途端に服装決まったわ。アザーッス。にしても、何の迷いも無くスムーズ過ぎるくらいナチュラルに服決めれるとか、地味に凄ないか? 普通、箪笥の中のモン引っくり返しながら何着か候補挙げた後、数分は“どっち着ようかなぁ〜”って唸るで。ウチのお姉やんがそのクチや。最終的には、結局当日の気温とか天気次第で決めるけんど。見事に一発で決めたな。流石は大包平。もしや、俺が知らんだけで、ファッションの方にも精通しとったりする?」
「別に、そういう訳ではないが……。まぁ、お前が着る服だからな。何を手持ちとし、何が似合うかなど、今更な話だろう」
「まっ、そらそーか。何年本丸やってっか考えりゃ、確かに今更な愚問過ぎたな。とりま、大包平が決めてくれたコーデ着てくっから、一旦着替えに部屋戻るわ〜。合流場所は玄関前でおkかね?」
「俺は其れで構わないよ。ゆっくり着替えておいで」
「いや、一応他人ヒト待たせとる手前やき、なる早で準備してくるわ。小竜君の方は、其れまでに忘れモン無いかとかチェックして、水分補給とかしながらゆっくり待っとってくだせぇ〜」
「了解したよ。じゃあ、待ってるね」
 一時解散とばかりに捌けた後、その場に残された男共は意味深な目線を一人の男に投げてニヤリと笑った。其れに気付かない訳がない、紅色の男は片眉を上げてじとりと睨み問う。
「何だ……言いたい事があるならはっきり言え」
「いやぁ〜、あの大包平ともあろう男が、他の男と出掛けるのを良しとするばかりか、自ら手助けするような真似に出るとは……と、思ってだなぁ」
「珍しい事もあるもんだと思ってね。少しばかり意外だったな。君なら、分かりやすく妬くんじゃないかとばかりに思ってたんだが」
「ご期待に添えず悪かったな」
「いや、本当悪気はなかったんだ。気を悪くしたらすまない」
「けど、本当に良かったのかい? 主を連れ出すのが君じゃなく俺で」
「別に……主が許したのなら、俺からどうこう言う必要も無かろう。そもが、気心知れたお前相手ならば、尚更と言ったところだ。同じ所蔵先の同士相手に、わざわざ妬く必要を感じない。ただ其れだけだ」
「ヒュ〜ッ! 一度、意思を固めた相手ってのは、こういう時の反応も違うねぇ!」
「まぁ、トーハクに所蔵された物同士ってのは事実だし、同じ本丸の仲間同士って意味合いも兼ねたら、当然の信頼値……なのかな?」
「好きに解釈してくれて構わん。だが、此れだけは言わせてもらうが、くれぐれも主を怪我させたりなどするなよ。仮にも護衛役として伴に付くのならば、其れくらいはこなしきれ。良いな?」
「勿論、言われるまでもなく心得てるさ。本丸に帰り着くまでが遠足だからねぇ。心配には及ばないよ」
「まっ、道中楽しんできな。あっ、お土産宜しく……っ!」
 同じ所蔵先に居た物同士、思うところがなくもなかったりしたのか。すぐに意味深な視線は解かれ、解放された男は意外にもあっさりすんなり自室へと去って行った。茶化した一人である長船の色男も、土産の催促のみ言い残して気安く手を振ってその場から解散した。
 残された男は、仲間と主双方からの厚い信頼を向けられ、心なしか擽ったい思いを胸に残して、主の支度が整うまでを待つ。
 暫くして、出掛ける準備を整えてきた主が、「お待ちどおさ〜ん」と気安く口にしながらやって来た。
「ちっくと待たせてすまなんだやぁ……っ。いや〜、俺が出掛ける準備始めた途端、気配を察知した目敏いお洒落番長共が嬉々としてアップし始めてしもうてやな……。どうせ汗で落ちるきと思って化粧する気とか無かったんやが、此処ぞとばかりに気合い入れた清光達に薄化粧でもと粘られて、顔面工事されざるを得んかった……っ。ついでに、髪のセットアップも含めて弄くり倒されやしたで御座る……。やる気みなぎらせた子等に囲まれたが最後、俺に逃げ場など残されてはいなかったのだよ……っ」
「ふっふふ……! 君は、いつも化粧っ気が無さ過ぎるからねぇ。勿論、そのままの君も十分魅力的だけれどね。偶のお出掛けぐらい、着飾ったっても良いんじゃないかい? ただでさえ、君は出不精の超絶インドア派なんだし。主を着飾りたい勢からしてみれば、絶好の機会チャンスを逃す手は無かった、ってところかな? だから、少しくらい張り切ったとしても可笑しくはないさ。そのメイクだって、君の信頼するお洒落番長達からのお墨付きだろう?」
「一応、俺に気を遣ってナチュラルメイク程度に抑えてくれたんは有難いがの。まぁ、メイクは日焼け防止にもなるき、そういう意味でも結局は許したんだがにゃ。俺、自分の刀には大概甘いから……」
「それじゃあ、忘れ物もないようだったら、行こうか?」
「あっ、ちょい待ち。小竜君や、そのまんまじゃったら、髪の毛首元に張り付いて邪魔なるで。汗かく前提で考えたら、もうちょい上に結い上げた方がエエで」
「そうかい? じゃあ、気持ちもう少し上の方に結い直そうか」
「鏡要るなら貸すで?」
「うーん……どうせなら、主に結い直してもらえると嬉しいかな?」
「えぇ……っ、別に其れは構んけんども……俺が結ったら、ゆるふわのお洒落お団子ヘアにはならんけど、エエんか?」
「主の結いやすい結い方で良いよ」
「今、櫛持っとらんのもあって手櫛でやるき、多少グシャついたり癖付いても許せよ〜?」
 偶々目に付いた首に纏わり付く程長い髪の毛を指摘すれば、すんなり受け入れられた結い上げ位置。ついでとばかりに、主に手直しを頼めば、口では渋い返事を返しつつも、その手は素直に結紐を解いて結い直してくれた。
「ほれ、こんなモンでどうでっしゃろ?」
「うんっ、バッチリだね!」
「俺、ヘアアレンジとか得意じゃないから、次頼む時は別の誰かにせぇよ〜」
「ふふっ、どうも有難う! 俺の主!」
「お気に召したんやったら何より。ほな、行こか」
「そうだね! では、御手をどうぞ?」
「ッカァー! 気障キザったらしい仕草も似合うとか、流石は長船やなぁ!」
「其れは、褒めてるのか皮肉ってるのか、どっちなんだい?」
「褒め言葉だよ、チクショウ!」
「はははっ! 褒め言葉には聞こえない言い方だね、全く……!」
 わざわざ貸してくれた手鏡で確認してみれば、高く結い上げ直してもらったお団子ヘアは、崩れ防止に沢山のヘアピンで固定されていた。ヘアアレンジは得意じゃないとか何とか言い置きながらもしっかりとした結い目に、口元の緩みを禁じ得ない風来坊であった。


執筆日:2025.09.09
加筆修正日:2025.09.11
公開日:2025.09.11