▼▲
やめてくれ



此処最近、季節が夏となった事で皆薄着になり、露出が増えた。

其れは、刀の付喪神と言えど、今や人の身を得た僕にも言える事だ。

夏は暑いから、薄着になって多少の露出が増えるというのは仕方のない事だと思っている。

だけど、それ故に、大胆かつ無防備な格好をされるのは、些か頂けないなぁ…とは思うよ。

まぁ、此れは、唯一女人である審神者の主に対しての事なんだけど…。

幾ら、男勝りなところがあるからとは言えども、少しは周りに気を配って欲しい。

何故ならば、此処は本丸…刀剣男士という名からして、男ばかりが集う男所帯だからだ。

そんな中、ただ一人、女人である主。

故に、貞操云々とか諸々に対して、もっと危機感とか意識を持って欲しいかなと思う。

例えば、ある日の事だ。

夏場になって暑くなったからと、普段着なかったワンピース…つまりは、スカート系を着ていた主。

その日は暑く、空気が蒸していて、この本丸にはクーラーとか言う家電製品が設置されていない為、扇風機を回して暑さを凌いでいた時だった。

「暑い。」と扇風機の前に立った主は、徐にワンピースの裾を持ち上げて、扇風機の風に当たり始めた。

どうやら、スカートの中が蒸れて暑かったらしい。

それで、そのスカートの中に風を送ろうという事なのだろうが…幾ら何でもそれは駄目だ。

だから、僕は、堪らず一言零した。


「主…スカート捲らないの。みっともないよ…?」
『いや…だって、暑いから。』
「暑いからといって、スカート持ち上げるのはやめて…。ただでさえ、扇風機の風を受けてヒラヒラ靡いてるのに、捲られたりなんかしたら…下着、見えちゃうよ?」
『俺のパンツなんか見えたって何もなんねーだろ。大して魅力も無いんだし。』
「そういう問題じゃなくてね…っ。君は、女の子なんだから、慎ましくしていようねって事だよ。この場に歌仙君も居たら、きっと怒ってると思うよ?だから、暑くてもスカートの裾捲らないの。」
『はぁい。』


仕方なしに持ち上げていた裾を下ろした主。

変にひやひやとしたよ…。


またある日の事。

執務の合間に身体を動かしたいと、内番稽古の手合せに付き合っていた時の事だ。


『っふぁー!あっちぃ〜…っ。』


短刀である粟田口派の前田君と打ち合い終わり、休憩に入った主。

顔の汗を拭う為に、逞しくもそのまま着ている服で拭おうとして、上着を引っ張る。

すると、必然的にチラリと見えてしまう主のお腹。

普段は服で隠された部分である白い肌が、汗に濡れて艶かしく映り込む。


「はい、タオル。」
『お…っ?嗚呼、ありがとう。光忠、来てたのか…?』
「うん。そろそろ休憩に入る頃かと思ってね。冷たいお茶を持ってきたんだ。飲むだろう?」
『おぅ、飲む飲む〜。いやぁ、光忠ってば気が利くね〜っ!』
「前田君と厚君も飲むかい?君達の分も用意したんだ。良かったら、どうぞ。」
「わっ、ありがとうございます!頂きます!」
「へへっ、丁度喉渇いてたから助かるぜ…!サンキューな!!」
「どういたしましてっ。」


早速、僕が持ってきた冷えた麦茶をグビグビと飲み干す主。

余程喉が渇いていたんだろう。

主は、一気に飲み干した。


「ところで、主…。さっき、僕がタオルを手渡す前、服で顔の汗を拭ってたようだけど…アレ、やめた方が良いと思うよ。」
『へ…?何で…?』
「目に毒だからだよ。」
『え…?』


そう言うと、言われた意味が理解出来ないといった感じで首を傾げられた。


またある日の事だ。

この日も暑く、夜になっても昼間の熱が冷えずに熱帯夜であった時の事。

お風呂から上がったばかりで暑かったのだろう、部屋に行ったら、下着姿のままの主が居た。

思わず、部屋の障子を閉めた。


「何て格好してるんだい、主…っっっ!?」
『あ、ごめん。』
「全くもう…っ!せめて、下はズボンくらい穿いてて!!吃驚したじゃないか…っ!!」
『いや〜、だって、お風呂上がりで暑かったから〜…っ。つい…?』
「つい、じゃないよ!?思わず障子閉めちゃったじゃないか…っ!!此処は男所帯なんだから、そんな無防備な格好のまま居たら駄目だろう!?早く服着て…っっっ!!」
『えぇ〜…っ、まだ暑いのにぃ…。』


小さく愚痴りながらも、服を着てくれた主は、もう一度部屋を開けたら、扇風機の前を陣取っていた。


「まさかとは思うけど…下着姿のまま、部屋まで戻ってきたりはしてないよね…?」
『流石に、部屋に戻る時は服羽織ったよ…!実家じゃないんだし、其処は配慮するよ。』
「いや、実家でも駄目だろう…!?」
『え、実家くらい良いでしょ?身内、家族しか居ないんだから。』


実に男勝りな主だと思ったよ…。


「ねぇ、主…頼むから、無防備な格好晒すのやめて。」
『お前の真顔怖いんだけど…。』
「良いから、やめて。」
『すみません。』


平謝りされたけど、既に癖みたいなものになっちゃってたから、すぐには直らなかった。


「だから…っ、スカートの裾捲るのやめてってば…ッッッ!!」
『あ、すんません。』


今日も今日とて、羞恥と情けなさから叫ぶ僕の声が本丸に響き渡る。


執筆日:2018.07.06