甘やかな戀に毒された
「主ってさぁ、意外と純粋っていうか…ピュアだよね。」
『へ……?』
「あ…っ、あと押しに弱いとこもあるよね!何か其れも意外かな〜。」
一通り仕事を終えた後に、のんびりまったりとお茶を飲んでいたところに、沖田組二人から揃って何となしにそう言われた。
そんな事、自身では全く思いもしなかった。
故に、キョトンと構えてから「んん〜…?」と首を捻って唸る様に返した。
『えぇ〜?俺、そんなにピュアって程純粋な感じしないと思うけど…?どっちかって言うと中身腐ってるし。』
「うん、大体こういうのは本人は自覚無しって相場が決まってんだよねぇー。」
『うえぇ…っ、いやマジな話だって〜。』
「あはは…っ。主自身はよく分かってないのかもしれないけど、僕から見ても、主は純粋でピュアな心の持ち主だなぁ〜って思うよ?」
『えー…?何でっすかぁー…っ?』
急にそんな話題を振られて、何だかムズムズと内側がむず痒くなる様な感覚になり、照れ隠しの様に机の上にダレて顔を伏せる。
そうした頭を、右隣に座る清光からつんつこ
うがぁっ、やめろ其れ…!
何か余計にむず痒くなる…っ!!
「考えてもみなよ?今までの自身が取った行動や言動を。」
『うぇ〜……っ、俺、そんなピュアっ子思わせる様な素振りしたかぁ〜…?うーん………。』
「そんなに悩む様な事でもないと思うけど…。」
『うーん…、確かに自分中身はとっくの昔に腐りに腐り切ってしまいやしたがぁ……ギリ残ってる女子的な部分のとこを言えば、まだ純粋さってのはあると言えるのかなぁ?幾ら男勝りに染まり切った風になってても、一応女子らしくときめく乙女心は持ち合わせてる訳だからね。』
「うんうんっ、主はちゃんと女の子だよ…!だから、その僅かにでも残ってる女の子の心は忘れないであげてね!あとついでに、此れ以上イケメンになるのも抑えてくれると嬉しいかな…っ!純粋な乙女心捨てちゃ駄目だから…!!」
『え…何、今のそういう話だったの?』
「…いや、俺はそういう話にするつもりなかったんだけど…。」
突然血相変えて間近にマジな顔付きで迫ってくるから、何事かと思ったら…何だ、そういう話と違うんかい。
一瞬でも本気で心配した俺が馬鹿だった。
早とちりも良いとこじゃん…恥ずい。
何やら若干論点からズレてきてしまっていた様で、軌道修正しようと清光が軽く咳払いをして、間近に迫っていた安定の首根っこを反対側の席から掴んで引き離した。
「話の軸を戻すとぉ…そんなまだまだ純粋さを残すピュアっ子な主の好みのタイプとかポイントについて、すんっごく気になってた訳なんだけど…。其処で思いっ切り問い質したいと思いまーすっ。」
『え…と、問い質されんの?俺…。』
「で…?ぶっちゃけ、どうなのよ其処んとこ…?」
「好きなタイプの話題に関連して、今まで何れだけの恋をしてきただとか、どんな人と付き合ってきただとかも含めて洗いざらい吐いてもらうよ主…っ!」
『え…何この不可解な尋問……。誰かからのテコ入れですか?』
「ハーイ、細かい事は気にしなーい!細かい事気にし過ぎてるとモテないよー?」
『いや、別にモテたくもねぇしモテなくても良いんだけど…。』
そんなこんな始まった謎の尋問に、早々に適当にはぐらかして逃げようかと画策するも、手の内を読まれていたのか、両サイド側から固められ、動きを封じる様に肩へと手を置かれ“早よ言わんかい”と視線で脅された。
何時も戦場でオラオラ言ってる二人だが、今は自分に向かってオラオラしてきていた。
何でや…解せぬ。
内心全く納得いっていないが、逃げれぬのならしょうがないと諦め、誰のテコ入れかは知らぬが素直に答えていく事にした。
『えー……まぁ、ぶっちゃけやる気無いけどぉ…何かお前等の目がオラオラ言ってくるから答えるわ…。地味に脅されるの怖ェよ。』
「え、俺そんなに主張したつもり無かったんだけどなぁー?」
『そうかぁー。まぁ、良いわ…。取り敢えず、質問された事に答えりゃ良いのね?』
「そうそう。じゃあ、取り敢えずは、これまでどんな人と付き合った事があるか教えて欲しいな?」
『付き合った事があるか?マジでぶっちゃけたら、俺二十数年生きてきてこれまで一度も誰とも付き合った事無いんだけど…。』
「え…っ?マジで?」
「えっ?其れって実質恋愛経験ゼロって事じゃない?え、やば…っ。主、其れ女としてやばくない…?うわ、僕いきなり地雷踏み抜いちゃったかな…何か御免ね。」
『うん…何か此方こそ御免ってかスゲェ然り気無くグサッと刺さる事言われたんだけど、俺の気のせいだったかなぁ?何か今軽くディスられた気がすんだけど…??』
「気のせい気のせい…っ!!安定が言った台詞の後半については何も聞かなかったと思ってくれて良いから!あとついでに、此奴の事は後で俺が殴っとくから気にしないで…!!」
『そう…。なら、お話続けてどうぞ?』
半ば自棄クソにそう返して先を促したら、俺の背後で何やら一発殴る音が聞こえた後に何事も無かったかのように取り繕って会話の続きを始めた清光。
その横で鳩尾押さえて悶え苦しみながら踞る安定の姿が視界に入るもんだから、話に集中出来ない。
「馬鹿定の事は放っておいて、さっきの話の続きしよ!」
『え…いや、あの、安定さんめっちゃ悶え苦しんでますけど…良いんすか?』
「うん、デリカシーの無い馬鹿は放っておいて良いから。主は気にしないで!」
『いや、でもめっちゃ痛そう…っ、』
「うん。けど、無視ってて良いから。気にしないで?」
『ア、ハイ。分かりました…。』
此れ以上の追及は許さぬとオーラで脅され、仕方なく脱線していた話を元に戻す事に。
あれ…そもそも何でこんな会話になったんだっけ?
「えーっと、じゃあ次の質問ね…!付き合った事が無いって話は今聞いたから…今度はどんな恋をしてきたかについて追求してこうかなぁ?付き合った事は無くても、憧れだったり一目惚れとかの経験は主にもあるでしょ…?そういう感じで、片思いなり初恋な経験話聞いてみたいなぁ〜っ。」
『俺の初恋…?うーん………何時だったかなぁ?』
「おっ、流石の主もやっぱり女の子…!初恋経験はお有りなのね…!」
『…んー、言うても二次元お相手なんじゃが…コレは有りに入るのかね?』
「あ、現実世界でのお相手じゃないんだったらナシの方向で。」
『えぇーっ、じゃあこの話題自体意味成さないよ?だって、俺、リアルでの恋愛経験ゼロだもん…。初恋も二次元に捧げてる生粋のヲタク野郎だもの。何とでもディスるが良いさ。』
端から自棄クソ気味だったのから最終的には不貞腐れ、臍を曲げた様に返す。
流石の此れには遣り場の無い感情を察したのか、本気で反省したらしい安定がすまなそうな顔をして話題を切り替えた。
「じゃっ、じゃあ、好きなタイプの話しようよ…!好きな人のタイプとかなら、主にだってあるでしょ…?例えば、憧れの人だったりとか理想だったりとか、そういうの!」
『ふむ…好みのタイプかぁ……まぁ、其れぐらいなら俺にも答えられるかな〜?』
「(ヨッシャ!!ナイス安定…ッ!!)例えばどんな感じ?見た目とかさぁ!“人は中身で見るものだ”とはよく言うけどさ、実際外見も其れなりに良くないと駄目だと俺は思うんだよね。やっぱさ、幾ら中身がめちゃくちゃ格好良くたって見た目超不細工とかだったら嫌じゃん?」
『あ〜、其れクッソ分かるわ〜。逆に見た目良くても中身最悪だったら糞だしな…!』
「主…お口悪いよ。」
『大丈夫大丈夫。今歌仙近くに居ねぇから。ちっとくらい口悪く喋ったって許されるって(笑)。』
半笑いでやんわり指摘されるも、からからと笑って返した。
事実、今歌仙は離れの部屋からは遠い厨の方に居るので、己の話し声を含めた会話の内容など聞こえない筈だ。
よって、許される範囲=お咎め(お説教)無しである。
「で、主の好みのタイプって…?出来る限り具体的に教えてね!」
『具体的に、とな。ふむ…まぁ、外見はぁ…そうだな、意外とがっしりした体格の人が好みかな。あんまりなよっとしてそうな人とか、如何にもひょろいタイプの人は好きじゃないかも。』
「成程…見た目は体格が良い人がタイプと?」
『あ、体格が良いって言っても、デブって意味じゃないよ?ある程度鍛えてそうなイメージね。かと言ってガチムチのマッチョとかでもなくね。あとは…、あんま派手目じゃない方が良いかな…。俺、あんまギラギラした人得意じゃないし。如何にも軟派でチャラい奴はお断り案件。』
「あぁ、うん。其れは知ってた。何時ぞやの演練会場での時だっけ…?主絡まれてたもんね?」
『うん、アレはマジでウザかった。かと言って変に刺激して逆上されても困るしなぁーって内心悩んでたら、試合終わって戻ってきた篭手切君が気付いて“アイドルへのお触りが禁止なように主へのお触りも禁止です!”つって相手にジャーマンスープレックス掛けてくれたから助かったけど…。』
「後から俺達もその話聞いたけど、本当マジビビったよね?普段は温厚そうで大人しめのあの篭手切がさ。」
『ま〜、江ファミリーは総じて皆変わってらっしゃるから今更な驚きだったけども。アレはいきなりもあってビビったわな…っと、話が脱線しちまったな。すまんすまん、つい。』
思わず最近の思い出話に花が咲きかけて、慌てて話の軸を戻す。
今、江ファミリーのお話はどうでも良かったわ。
『えっと…今体格の話したから、あと見た目の好みとして付け加えるなら〜…身長かな?』
「おぉっ、其れって結構大事じゃない!?」
『まぁ、身長については定番でベタだけど、自分よりは高い方が良いかなぁ〜って思う。だって、やっぱね、女の子ですからね。身長差あった方が何か良くない?』
「うんうん…!分かる分かるよ!!」
「ちなみに、その身長差は何れくらいの範囲が好み?あ、理想はって事だよ。」
『ん〜…っ、まぁ10cmくらいの差が丁度良い感じかなぁ…?あんま高過ぎても自分が相手見上げる時辛いし。例えたら、165cm〜170cm以上の人?あ、でも流石に180cm以上はちょっとキツイ。俺の身長が今大体160cmより下だから。最近測ってねぇから正確なとこは分かんないけど。』
「あ、じゃあ俺等も守備範囲内に入るって事か。やった…!」
「え…ソコ喜ぶとこなの?清光…。というか、其れだとウチの本丸の面子のほとんどが守備範囲内に入るよね?」
変なとこでツッコミが入り、またもや喧嘩腰で睨み合う二人。
コラコラ、仲良くしなさい。
『えー、見た目のタイプは此れぐらいにして…後は何だ、次は中身についての話か?好きなタイプの性格についてになるの?』
「うん、其れ其れ!結構重要なとこだよ…!」
『うーん…まぁ、此れもぶっちゃけベタ路線走るけど、優しい人が良い!…ってのは大事よねぇ〜。』
「まぁ、そうよね〜。」
『でも、優しいだけじゃ駄目なので、付け加えるなら自分よりしっかりしてる人ってのをポイントとして挙げる。』
「ふむふむ…此処までは至って普通な回答だね。無難なタイプって感じ。」
『他+するなら…そうね、家事もこなせる人が良いかな。自分家事てんで駄目なんで。一緒になる人、付き合うならそういうとこも気にするかな。ぶっちゃけて自分の欠点を補える様な人?何か、付き合ってく上でお互いの欠点を補い合えるのって大事だと思わない…?』
「あー、何となく分かる気がする…。」
『ね。で、其れに更に+して、あんまり相手の事を縛らない人…!此れ重要な。俺、束縛強いのとか苦手だし、どっちかと言うと自由な方が好きだし。自分の行動について制限付ける人とか、束縛強めなタイプは無いね〜。なるべく自由で居たいわ。』
「うんうん。最近テレビで見るのそんなのばっかだもんねぇ〜。」
「この間、乱が昼ドラみたいなドロドロした話のドラマ見てたけど、俺あーいうの駄目だわ〜…。理解出来ない。というか無理。何で最近のって束縛強め系っていうか、独占欲強め系が多いの?」
「其れ僕も思ってた。」
『恋愛くらい明るい話が見たいよね〜。ってな訳で、俺の理想のタイプを語る話については以上かな。』
何だかんだ言いつつ、大分話した気がするのは気のせいかな…。
まぁ、捨てても自分女の子なのは変わりないって事よね。
「此処まで協力してくれてありがとね〜!お陰で意外な事まで知れたよ!」
「主もやっぱり女の子だったんだね、って分かって安心した…!!」
『うん、俺も再認識した感じしてちょっと面白かったわ(笑)。…で、結局誰のテコ入れだったのかな?コレ。』
「ん〜っ、其れは内緒かなぁ〜?」
「あ、最後に一応聞いとくけど、主って今フリーな状態だよね?」
『え?フリーて…誰とも付き合ってねぇとか、現状誰も好きな人が居ねぇ事指してんの?』
「うん。」
『…そんなん改めて訊かずとも分かるだろーがよ…。え、何…?地味に最後に俺のハート抉ってく感じで終わんの、コレ?悲しいな、オイ。悪かったな、今も変わらず独り身でよ…!どうせ俺は此れからも独り身貫いていくよ、チクショウ…ッ!!』
最後の最後にデカイダメージ食らって脆いハートも豆腐メンタルも粉々木端微塵ですか、そうですか。
地味に萎えて畳の上で項垂れて伸びると、謝りつつもそそくさと去りながらまたもや爆弾を落としていった天然安定君に清光からの制裁が入れられたのは言うまでもない。
離れから出て廊下を進む先から、安定の沈められる声を聞き届けた後に何かを引き摺る音がしたのも気のせいだ。
―そんな会話をしていた他所で、その話を途中部屋の外からこっそり聞いてしまっていた者が居た。
その者は、部屋から彼等が出て行くのを近くの部屋でやり過ごしながら見ていた。
意外にも、その人物とは恋愛からはかけ離れた風な者で、れの字も思い付かなそうな人物だった。
其れは、偶々審神者である彼女に用があって部屋へ訪れようとしていた同田貫であった。
彼は、思わぬところで彼女の恋愛話を耳にしてしまい、内心動揺を露にしていた。
彼女の知らぬところで恋の花が咲こうとしていたとは、此れ如何に…?
―沖田組の突撃恋愛リポートに付き合って暫く経った頃。
変に落ち込まされた気持ちも復活して仕事に戻っていたところに、何やら用があって訪ねてきたたぬさん。
用と言っても、内番を終えた報告といった程度だった。
錬度が上限になってからは出陣は政府催しのイベント限定ばかりになったカンスト組なので、内番に組まれない以外は暇なのだろう。
少しだけ不満気にしていたが、今は以前に比べてイベント続きなので、近い内彼の活躍する場も増える筈だ。
『……ふむ、最近また刀数が増えたからねぇ。もう少し畑を広げて面積広げてみても良いかもね。そしたら、収穫出来る量も増えて食には困らないでしょ。今のまんまでも暫くは困らないだろうけど…ちょっと他の子達に訊いてみた方が良いね。此ればっかりは色んな子達の意見を募った方が良いだろうから。』
「そういえば、燭台切のヤツが新しい肥料に変えてぇってな話をこないだ新撰組の誰かにしてんのを聞いたな。」
『うん、其れも含めて他の子に訊いてみようかね。肥料を改良したいとかなら、経理の方にも話通しといた方が良いかな?後で諸々長谷部達に話しとこうかね。』
近くに置いていたメモ帳に今話した事についてを軽くメモし、相談しなくてはならない事項を簡易的に箇条書きにして書き留めておく。
こういう小さな事も本丸を運営していく上で大事なので、審神者としてしっかり皆に話を通して意見を募りたいところだ。
最近また刀数が増えたのも事実だし、育成面も極組が出来た事もあって色々調整しなければならない点が多い。
度々政府からの催し物もあるので、其れと同時進行で諸々を調整しなければならない審神者は常に忙しさが付き纏う。
そろそろまた大きなイベントが来るとあるので、一週間くらいの纏まった休みが欲しいところである。
『さて…一旦此処で仕事に区切り付けて、お茶のおかわり貰うついでに長谷部辺りに軽く話通してこようかね。あ、肥料の件に関しても具体的に詳しく聞いときたいから、みっちゃんにも話聞いとくか…。みっちゃん厨に居るかな?長谷部はたぶん部屋だから、厨向かうついでに声かけてながらで話すとして…。うん、此れで行こう。よし、早速…っ、』
そう、一人話を纏めてちょっと席を立とうとしたところを、服の裾を掴んで引き留められた。
予想だにしない展開に首を捻って彼の方を見遣る。
『た、たぬさん…?服引っ張られてたら何処にも行けないのですが…?』
「何処に行くつもりだよ?」
『え…っ?何処って、ちょっとお茶を取りに厨に…。そのついでにさっきの話を軽く何人かに通しとこうかと……、』
「俺がこうしてアンタの隣でずっと居んの、嫌なのか?」
『え…?や、別に嫌とかそんなつもりは全く無いけど……っ、』
「じゃあ、そのまま居りゃあ良いじゃねーか。茶くらい言ってくれりゃ俺が取ってきてやるからよ。今の話だって軽く話通しとくだけなら俺でも出来るし。アンタがわざわざ直接動く事でもねぇだろ。」
『え、でも……、』
突然の事に上手く対応出来ずまごついていると、彼が此方を真っ直ぐに見据えてこう言った。
「なぁ、どうしたらアンタは俺が隣に居るのを許してくれる…?」
『は、え……?』
一体何の事を言っているのかが分からなくて、取り敢えず問われた意味をそのままの意味で返した。
『ゆ、るすも何も…最初からたぬさんの事を拒んだつもりはない、けど…?』
「なら、此れから先もずっとアンタの隣に居続けても許されるんだな?」
『え…っと、俺自身は別に嫌う理由とか無いから構わないよ…?ただ、たぬさんが嫌じゃないとかなら、そうしたいのなら…どうぞ?』
訳も分からずそう返したら、遠回しに問うのを止めた様で、今度は直接的に此方へ問うてきた。
「…じゃあ、今度は敢えて言い方を変えて改めて訊くが、俺はどうしたらアンタと恋仲になれる?どうしたら、アンタに振り向いてもらえる?」
『え……………っ?こ、こ…い、なか………だと?』
あまりにもタイムリー過ぎる内容の話だった。
私は思いっ切り動揺した様子で狼狽え、視線をあっちこっちに彷徨わせる。
すると、服の裾を掴んだままのたぬさんが不安そうに瞳だけを揺らしながら首をコテン、と傾げて見つめてきた。
「…やっぱ、今すぐは駄目か?」
『え、や、今すぐが駄目だとかいう事じゃなくって………!え……?其れは、つまりアレですか…?俺と“恋人になりたい”って事ですか…?』
「だから、さっきからそう言ってるじゃねーか。」
『What………?え、じゃ、じゃあ訊くけども…っ、其れって俺の事が好きだからっていう事ですか…?い、異性の相手として……??』
「其れ以外に恋仲になりてぇ理由とかってあるのかよ?」
『え、や…少し、いやかなり意外だったというか、物凄く驚いたというか…めっちゃ動揺してしまったというかぁー………っ?』
突然の告白展開に処理が追い付かず、頭の中はてんやわんや状態であった。
其処へ間髪入れず彼からの問いが投げ掛けられる。
「で…?駄目なのか良いのか、はっきりしろや。」
『ええ…っ!?そ、そんないきなりの事で急に答えろって言われましても……ッ!!』
「アンタが今率直に思う答えで良い。…アンタからの返事を直接聞きてェ。」
『ッ………!!』
なんて真っ直ぐな目で見てくるんだと思った。
その視線と今の告白を受けた事で、今まで抱いていた彼への印象がガラガラと崩れ去っていく。
元々硬派で好ましい感じには受け取っていたが、恋愛面では全く考えた事が無かった故に、今激しく動揺している。
何せ、タイミングがタイミングで、あまりにもタイムリー過ぎる。
そのせいで、余計に頭の中がとっ散らかっている。
今まで、彼の事を恋愛の面で意識した事が無い。
からの現状で、あまりにも突飛過ぎて頭が沸騰しそうなくらいである。
何より、自分が誰かに告白を受ける事なんて無いと思っていただけでなく、誰かからこうして好意を露に向けられる事なんて無いと思っていた。
経験の無さ過ぎる事が起き過ぎて、顔は沸騰寸前に真っ赤だ。
今すぐ外の風に当たりに行きたいくらいには熱くなっている自信がある。
やばい、こんな時まずどう答えるのが正解なのかが分からない。
そうこう焦っている間にも時間は一刻一刻と進んでいく。
加えて、彼からの追撃も混乱する私を更に追い詰めた。
「…で、どっちなんだ?了承するも良し、断るも良し、アンタの自由だ。…ま、俺的には今すぐ頷いてもらえりゃそりゃ嬉しいし万々歳だが…アンタの意思は尊重してぇからな。待てっつーんなら待つさ。俺の気が保つまでは、な?」
結局は押されるがまま、真っ赤に染まった顔を俯かせて蚊の鳴く様な小声で「Yes」との返事を返す結果に落ち着いたのだった。
其処で、沖田組との会話の始めで“押しに弱い”という事を言われた意味を身を持って知るのであった。
参考元:「演練相手にセクハラされました!!」(667907)