今日も今日とてアルバイトに精を出す為、お昼を終えた後ぐらいに通っているコンビニへ向かって支給されている制服へと着替えた。

其処で改めて今日のスケジュールを確認し、担当分野を再認識する。

レジに入る前に陳列棚に並ぶ商品の補充に当たり、空になっていた棚の在庫等と照らし合わせながら同僚の先輩に確認を取って奥から該当の商品の在庫を取り出して並べておく。

最近はすっかり寒くなってきたのもあって、肉まんとかおでんなんかの売れ行きが増しているので、其れ等の品補充も忘れない様に時間帯と合わせてチェックしておく。

あと、レジ脇に置いてある温かい飲み物コーナーの減りもだいぶ偏っていたので、ちょこちょこ綺麗に並べ直しつつ足しておいた。

夕方から夜へ向けて購入する客が増えるのもあるからだ。

ある程度の品補充が済んだら、レジへと入って同じシフトの先輩と駄弁りながらお客さんが来るのを待った。

今日は朝から冷え込んでかなり肌寒かったから、温かい飲み物や食べ物系の売れ行きが伸びるだろうなぁ。

そんな事を頭の端で思いながらレジに立っていると、あっという間に時間は過ぎ行き、客足が多くなる夕暮れ時となっていった。

少し前に先輩からの指示で揚げ物の補充の為に奥で調理に立っていた私は、香ばしい匂いを漂わせながらレジへと戻り、接客対応に応じていた。

やはり、寒くなってくると温かい食べ物が食べたくなるものだよな。

先程補充したばかりの揚げ立てな揚げ物と肉まん等の注文が入る度に、売り上げの良さも相俟って内心頷く。

ついでに、今日の揚げ加減は我ながら上手くいったと自賛出来る出来なのでちょっと嬉しい。

其れ等を買っていく男子学生の集団を気持ち良く見送って微笑む。

若人達は季節問わず元気で宜しい。

毎度、こっちまで笑顔になれるくらい元気をもらっている為、何となく感謝している。

若いって良いよなぁ。

もうすっかり大人の仲間入りをしてから浅くない私はそんな呟きを零して先輩と笑い合った。

お互いお酒を飲み交わせる年代であるが為な話だが、まだまだ歳若くうら若き乙女なんだからそんな年寄りくさい事言わないの、だなんて言われた。

だけども、事実学生であった十代の頃の体力や輝きは既に失われてしまった残念な独り身ガールなのだから、そんな発言が口から出てしまったとしてもしょうがないのである。

斯く言う先輩だってまだ三十代前半でお若いのだから大して変わらないではないか。

束の間、客足が少なくなった時分にそんな話を交わした。

こういう時の他愛もない話は、何故かぽんぽんと浮かび上がってきて尽きない。

その理由に、二人共の性別が女というのも大いにあったかもしれない。

女というのは、大概がお喋り好きな生き物である。

会話が一区切りした頃、とある若い女性のお客さんが誰もお供を付けずにお一人様でやって来た。

その人は寒そうに何も付けていない手を擦り合わせながら入店し、店内を見渡した。

天気予報で夕刻から風が強まると言っていたから、だいぶ日も暮れて暗くなってきた時分での手袋無しは身に堪えるだろう。

もしかして、近場に住んでいる人なのかな。

パッと見、家からそのままぱぱっと出てきたっぽい装いであった。

しかし、その女性が身に纏っていた上着は彼女が着ている服装にしては似合わず、其れだけが何となく浮いて見えた。

ちょっと近場のコンビニに寄るだけだから財布とスマホだけ持って適当に上着を羽織ってきたのだろうか。

私もよくやる事だったから一人勝手に親近感を持ちつつ、女性とは別の他のお客さんの接客に応じながらレジ対応をしていた。

そのお客さんを見送ってマニュアル通りの接客台詞を吐いて、新たに入ってきたお客さんの姿に目を留める。

その人は、歳近そうなイケメンの色黒青年だった。

何故かちょっと駆け足気味で店内へと駆け込んできた彼は、入店してすぐにきょろきょろと誰かを探す様な仕草で辺りを見渡す。

そして、目的の誰かが見付かったのか、ほんの少し安堵した様に表情を和らげるとその人が居る方向へと真っ直ぐに躊躇い無い歩みで進んでいった。

その先は、先程入店してきた彼女の元で、青年は彼女の元に辿り着くと徐に口を開いて言った。


「―おい…、出掛けるなら俺も一緒に行くと言ったろう?俺を置いて一人で勝手に行くな。」
『あや、御免。伽羅、ゲームに真剣集中してるみたいだったから、邪魔しちゃ悪いかなぁ〜って思って一応声かけるだけかけてから家出てきたんだけど…何だ、結局付いてきちゃったんだね。』
「もうだいぶ暗くなってきてる時間帯に女一人にするのは危ないだろ…っ。いい加減、自分の性別に対する自覚を持ってくれ。」
『此処から家までそんなに距離無いけどね。だからそんな心配せずとも良いのに〜。』
「アンタの危機感が薄過ぎるから言ってるんだ…っ。あと、何で俺の上着を着て行ったんだ?わざわざ俺のを着らずとも、自分のを着て行けば良かっただろうに。」
『あー…今時分に着る自分の上着は丁度洗濯に出しちゃってさ。今着るのに手頃なのが無かったから、出がけに丁度目に入ったヤツを適当に着てきちゃった!』
「其れで俺のを着てきたのか…まぁ、俺は別に他にもあったし、そんなに寒くもなかったから何も羽織らずに出てきたが。これくらいならまだセーター一枚でも平気だからな。」
『伽羅、寒いのも暑いのも平気だもんねぇ〜。』
「アンタはどっちも苦手だよな。」
『あははっ、だから何時も伽羅に頼り切っちゃってるんだけどねぇ…!特に冬時期はお世話になりっ放しだな!』
「その話は分かったから…さっさと買い物済まして帰るぞ。」
『はぁ〜い。』


成程、彼女が着ていた上着は彼氏さんの物だったか。

道理でちょっと浮いて見えた訳だ。

ちょっぴり微笑ましいカップルのほのぼのとした会話を小耳に挟みつつレジ対応に勤しんだ。

入店してきた時はお一人様での来店だったが、帰りは二人仲良く手を繋いで店を後にしていった彼等。

帰り際の仲睦まじさといったら、未だ彼氏居ない歴=年齢の独り身ガールにとっては羨ましい限りだった。

彼等二人を見送って一度客足が途絶えた後、私は何も無い宙を見上げてぽつり、独り言をごちた。


「はぁ〜あ…っ、私も彼氏欲しいなぁ……。」
「その内一人くらい出来るって!大丈夫、貴女若くて可愛いんだから…っ、諦めず待ってりゃ向こうからやって来るわよ!」
「格好良くてイケメンな人ですか…?」
「其れは分かんないけど…三輪ちゃんなら大丈夫だって!」
「其れなら良いんすけど…本当、一度くらい誰か素敵な人との出逢いとかないっすかねぇ〜……?」


しがないアルバイターを続けているだけでそんな夢見る様な素敵な出逢いがあるかは謎であるが、この仕事は地味に好きで気に入っているので、今暫くの間辞める予定は無いのである。


執筆日:2020.11.24

【後書き】
何でか唐突に第三者視点なキャラのお話を書きたくなりまして、書こうと思った際に「そういえばその手のテーマを扱った企画サイト様があったなぁ…。」と思い出しまして、せっかくなら自サイトに上げる前に某企画様へ提出しようと思い至り、提出への流れと相成りました。
ちなみに、作品とは全く関係ありませんが…この作品を書こうと思った切っ掛けにボカロ曲「九龍レトロ」を使用した刀剣MMD動画を見まして、其れで政宗組が内番着モデルで踊っていたので、伽羅ちゃんの内番着ジャージの上着を見ていたら其れを着てる夢主なネタが降ってきました。
ので、今回は其れを書き起こした感じのお話になりましたね。毎度思うけど、ほんと欲望に忠実だな私って(笑)。でも、伽羅ちゃんのジャージ好きです…上着だけで良いから一度着てみたい……っ!
最後に、当作品の視点主・モブ子(?)の名前は思い付いた響きのものを適当に付けただけで特に意味はありません。取り敢えず、何か苗字の様な名前っぽい様な両方イケそうなものにしました。
+余談として、本作品はアルバイターさんのお話ですが、私は未だ嘗て一度もアルバイト経験が無い為に全て想像の域で書いておりますので、細かい点についてはスルーして頂けますと幸いです〜…。
後書きを締め括るにあたりまして、素敵な企画を用意してくださったつかさ様には、大変感謝致します。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の稚作な作品を並べてくださり、誠に有難うございました。