彼が猫から人の姿になった次の日、翌日の事。
何か、やたら頬やら耳辺りが擽ったく感じて目が覚めた。
どうせ毎度の如く、光忠がお腹を空かせて朝御飯欲しさに起こしに来たのだろうと思った。
ここ最近は、いつも光忠がぺろぺろと顔を舐めて起こしに来ていて、その擽ったさに目を覚ますというのが日常になっていた。
しかし、今日は普段と感触が違って、何だかいつもより生温かい。
しかも、特徴あるあの猫の舌の微妙なザリザリ感が無い。
でも、まだ眠たくて、もう少し寝ていたいと微睡んだ状態のままでいる。
すると、今度は首筋を舐めたり、軽く耳を食んでくるという攻めが起こし方に加わった。
流石にそれは擽った過ぎて堪えられずに呻く。
『ん゙ぅ゙〜……っ、みっちゃん擽ったいよ…。まだ眠いから、もう少し寝かせて………っ。』
擽ったさから逃れるように手で払い除けて布団を引っ張り、顔を光忠が居るのとは反対の逆方向へ向ける。
これで諦めてくれるだろうと思っていたのだが、甘かった。
もう擽ったさは訪れてこないだろうと油断していたのが悪かったのだ。
ただの擽ったい攻めで終わる事はなく、急に呼吸が苦しくなった。
何かで口を塞がれたような感覚がして息苦しい。
しかも、何故かそれは妙に柔らかいし、生温かい。
流石にこれは起きざるを得ず、一気に意識を浮上させた。
すると、目の前には綺麗な顔付きと金色の目が一つ。
「あ、起きた。おはよう、主。今日も良い天気だよ!」
『…やっぱりお前か、光忠…。つか、何処で覚えたんだ、こんな起こし方…。』
「え…?何処って言われても…。ただいつも通り主を起こそうと思って、ちゅーしたら起きるかなって。ほら、僕、いつも主の顔舐めたりして起こしてただろう…?」
『………だからって、今は人の姿なんだから…猫の時と同じ事しちゃダメだって…。寝起きにキスっつーか、キスされて起こされるとか、何処の眠り姫だよ。私はそんな柄じゃない。』
「あ、そっか…。今、僕人間の姿だったね。すっかり忘れてたや。」
『お願いだから、忘れないでー…。そこんとこ、めっさ重要なんで…。ああ、吃驚した。朝っぱらから何つーもん経験してんだよ。一瞬、何処のアメリカンですか?って思ったわ。俺の思考可笑しいな?あ、そりゃいつもか。…まぁ、取り敢えず…おはよう、光忠。今日も宜しくな?』
「うん…っ!起きたなら、早く御飯にしよう?」
『解った解った。解ったから…急かすな…。』
今日も新しい非日常が始まった。
『今、希望を言っていいなら、御飯食った後寝かせてください…。ご主人様は眠いのです…。』
「まだ寝るの…?日向ぼっこしないの?」
『みっちゃんも猫なんだから、いつ寝たって良いじゃないか。猫は寝るのがお仕事でしょ?だから、お昼寝しよ。ついでに日向ぼっこもしよう。』
「分かった。けど、う〜ん…。主にくっついて寝て良いなら、一緒に寝ようかな…?」
『いや、それは私が色々と耐えられないというか、何か爆発しそうになるんで…出来れば少し離れて頂きたいかな…。』
「えぇ…っ!?」
イケメンに慣れてないが故に、免疫力なんて零に決まってる。
気付けば、光忠が炊事洗濯等家事全般を担当してくれるようになっていた。
何で普通の猫だったのにそんな事出来るの、という疑問を投げかけるも…本人曰く。
「見様見真似でやったら出来たよ?」
らしい…。
器用過ぎか。
猫暮らしから人型に慣れると、ごく普通にイケメンなお兄さんになった光忠だった。
執筆日:2019.08.21
加筆修正日:2020.02.02