
#01-雷鳴轟く
―ガヤガヤと、騒がしく街中を通り過ぎて行く人々。
例え、その視界に不快なものが掠めようが、気にも留めずに歩き去り、見て見ぬ振りである。
少し鬱陶しい街の喧騒に耳を塞ぎながらも、己も同じように歩いていく。
3月の半ばだった。
通っていた高校を卒業し、周りに急かされるように決めた進路に進まなければならないという不安と、ごちゃ混ぜのように複雑に絡まった心境を抱えながら、歩いていた。
―西暦2012年03月14日。
少女…露罹未有は、短いながらも何かしなければと、春休みの中、特に遣る事も無さげに街の中心地へと出向いたのだが…。
暇な時間を持て余した彼女は、小さく溜め息を吐いていた。
取り敢えず、適当に店を回ってみたが、いつも行っていた所ばかりで飽きてしまった。
試しに本屋にも行ってみたが、特に買う物も無く、暫く本を眺めて回るも、欲しい本の新刊がある訳でもなし、無駄遣いはしたくなかった為、店を後にする。
午前中から出て来ていた事もあり、途中昼食を摂る為にファーストフード店に寄ったが、あまりにも人が多く、騒がしいのが耳に障って、食べ終わるなりすぐに店を出てしまったのであった。
そして、現在に至る。
友達を誘わなかった為に、一人ぼっちという事もあってか、余計に暇なのだった。
駅周辺にあるベンチに座ったまま、大分時間が経ったのではないかと思う。
何を考える事もなく、ぼんやりと周りの景色と人の群れを眺める。
やがて、それにも飽きると、耳にヘッドフォンを嵌めて、外界の音をシャットアウトした。
その先には、愛用の音楽プレイヤーが繋がっている。
入っているのは、アニソンやボカロなどの曲で、今流れている音楽は、その中でもお気に入りの曲の一つだ。
ハマりにハマっている、大好きなアニメ「PSYCHO-PASS」のOP曲を聴きながら、自分の世界に浸りつつ、手元の携帯端末を弄った。
ふと、携帯の画面に水滴が落ちた。
服の袖ですぐに拭ってから、空の雲行きが気になり、顔を上げる。
すると、ぽたり、頬へ落ちた雫。
(―…雨か……。)
次々に降ってきた雫は、次第に雨へと変わってゆく。
そんなに濡れない内にと、鞄に突っ込んでいた折り畳み傘を取り出し、立ち上がると同時に天へ向かって差した。
足早に屋根のある建物の元へと急ぐ。
しかし、思いとは裏腹に、降る雨は数分経たずして本格的な雨へと変わるのである。
遠くの空でゴロゴロと嫌な響きがしたかと思えば、あっという間に黒い雲で覆われてしまった。
先程まではそうでもなかった風も、急に強さを増し、横殴りな雨を叩き付けてくる。
思わず、眉間に皺が寄った。
続いて、口を突いて出た舌打ちと嘆息。
近くで稲光が光り、雷鳴を轟かせる。
大きな音に、小さく肩が跳ねた。
耳を
劈く程の大きさに、遅れて空いていた片手で耳を塞ぐ。
あまり意味は無いが思わずしてしまった行為。
それ程までに、間近で落ちた雷に対して恐怖を感じたのである。
身の危険を感じ、早急に建物の中へ避難しようと、泥水が跳ねるのも構わず駆け出した時であった。
―ピシャアァァン…ッ!!
『ひぎゃあ…っ!?』
物凄い威力で、すぐ側に建っていた街灯に雷が落ちた。
かなりの衝撃で、地面が震動する。
間近で目にした光景に、信じられないものでも見たような表情で立ち竦んでしまった未有。
その間も、何処か近い場所で雷鳴が轟き、鋭い閃光を瞬かせる。
頭の中で警告が鳴り響いているが、足が強張ってすぐには動けなかった。
数十秒、その場で固まっていたが、寸分して漸く我に返り、再び駆け出した未有。
一刻も早く、この場から離れなければ、と気付かぬ間に浮かんだ涙が視界を歪ませる。
速まる鼓動と上がる駆け行く速度。
また一歩と水溜まりを跳ねたところで、再び鳴り響いた雷。
突然、視界が白い光で埋め尽くされた。
(え…………っ?)
ゆっくりと流れ行く風景。
音を失った雨音。
―そして…。
『ッッッ…!!!??』
身体を貫いた凄まじき電撃。
瞬間的に呼吸が詰まり、声にならぬ悲鳴を上げた。
―ドオオォォ……ン…ッッッ!!!!
地を揺るがす程の今までで一番大きな雷が、彼女を襲ったのだった。
不運な事に…直撃である。
真っ白になってゆく頭の中。
(…や、…ば……ッ。これ、は…っ、死ぬ……、な……………ッ。)
揺らぐ世界。
傾いていく身体。
意識が遠退いていくのを、朧気に映る視界の中、感じたのだった…。
加筆修正日:2019.03.26
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