#04-残酷な世界


咄嗟の事で反応が遅れ、突然の暴挙に唖然とする狡噛。

地に落ちたドミネーターは、衝撃で滑っていき、離れた所で動きを止めた。

対象から照準が外れたからか、執行モードをパラライザーへと戻す。

一方、助けられた未有の方も驚き、佐々山の方を凝視した。

すると、視線に気付いた佐々山が近付いてきた。


「大丈夫か、嬢ちゃん…?もう心配しなくて良いからな。」
『…ぇ………っ?…な…何、で…………ッ。』


彼女の目の前まで来ると、膝を折り屈み込んだ佐々山。

背の低い自分への為か、または、恐がらせない為の配慮か。

どちらにせよ、逆に見下ろす立場となって困惑する未有。

佐々山は、己が着ていたジャケットを脱ぐと、ずぶ濡れで小さく震えていた彼女の肩へ掛けてやった。


「ん…?何で…ってそりゃ、可愛い女の子相手に乱暴な事出来ないからでしょ…?」
『…で、でも、私…っ、潜在犯…なんですよね………?』


小さく掠れ声で問うと、安心させるように頭へ手を置かれた。


「…俺はね、女の子を撃つ趣味は無いの。」


そう言って笑った佐々山の顔を、不思議なものでも見るような表情で見つめた。

彼の背後に立った宜野座は、再びドミネーターの照準を彼女へと合わせる。


「ちょ…っ!ギノせんせー!?何やって……ッ!!」
「…見ろ、佐々山。彼女の犯罪係数、急激に下がってるぞ。」
「は…、え………っ?」


訳が分からないまま、同じようにドミネーターを未有へと向ける。

遠慮がちに照準を合わせた彼は、叩き出された数値に、目を見開いた。


《犯罪係数365。対象の情報を更新します。執行モード、リーサル・エリミネーター。慎重に照準を定め…。》


先程まで完全排除すべき脅威度を示していた筈の値が、急激に降下し、驚愕する佐々山。

他の二人も同様の反応を見せる。


「何もケアせず、そもそもケアしても手遅れな値だった筈なのに………っ。…お前、何者だ…?」


あまりの出来事に眉根を顰めて問い掛けてきた佐々山。

そう言われても、自分自身理解出来ていないのだから、答えるなんて無理な話だ。

少し離れて、彼女を裁くか否かで揉め合う宜野座と佐々山をただ茫然と眺める未有。

そうしていると、突然、視界が霞み始めた。


(んぅ…?あ、れ………?)


可笑しいなと目を擦っていると、急激に身体の力が抜けた未有。

よろめいた彼女の異変に気付いた征陸が、ちらりと視線を向けた。


「…お嬢ちゃん……?」


何だか頭がクラクラしてきて、額に手を当てる。

自身の身に何が起こったのかを考えようとしたのも、束の間。

ぐらりと前傾に倒れゆく、未有の身体。


「ッ…!?危ない…っっっ!!」
「ッ!?」


ハッとした狡噛が駆け寄るよるも早く、話を中断した佐々山が動き、地面に倒れる前に彼女の身を受け止めた。


「おいっ!!しっかりしろ…ッッッ!!」
「佐々山…っ!」
「っく……!狡噛…ッ、急いで此奴運ぶぞ…ッッッ!!」
「え…っ?あ、あぁ…っ!」


未だ身元不明の少女を激しい雨の中抱え、走り行く一人の執行官。

その表情は必死で、今すぐにでも救ってやると言わんばかりに真剣そのものだった。

抱えられた少女の身体は、力無くだらりと垂れ、動かない。

今にも死んでしまうのではないかという程顔は青白く、生気が無い。


―雷鳴が、この世界の空でも轟いている。

…鳴り響くサイレンの音。

歪んだ刻の針が、進み始めた。


□To be continued...?

加筆修正日:2019.03.26

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