年越しの瞬間も共に居た君に告ぐ


もうすぐ年も越すという年末最後の日に限って呪霊が湧いたからと呼び出されたのが先程で。

偶々何も無く、帰る実家も無いからと寮に居残っていた私と虎杖の二人が任務に駆り出され、伊地知さんの車で現地へと向かった。


『年末最後まで任務に当てられるとか付いてねぇ〜…っ。』
「本当其れなぁー。呪霊の方も空気読んで欲しいわ…せっかく紅白見てたとこだったのに…。」
『いや、そんなんだったら初めからウチ等苦労してないからね…?』
「うん…ソウデシタネ。でもまぁ、俺達の仕事は呪い祓うのが仕事なんだし、呪霊が出たってんなら仕方ないと思ってさっさと終わらせてこっか。」
『おし…っ、いっちょ年末最後の大掃除と行きますか…!』
「取り敢えず、早く片付けて帰って年越し蕎麦一緒に食おうぜ!」
『賛成…っ!!だって、ただでさえ寒くて堪んないんだもん、こんなんちゃっちゃと終わらせて早く帰りたい!!で、温かい飲み物飲みながらしっぽり炬燵に収まるんだからぁ…っ!!』


そう声を大に叫ぶ様ぶっちゃけ、お互いに気合いを漲らせて大量に湧く低級共を薙ぎ払っていった。

…ったく、何が悲しくて年末最後まで呪いを相手にせにゃならんのだ。

そんな苛立ちと八つ当たりも込めて、こてんぱんにぶちのめしていく。

任務の連絡を受けたの自体が夜も更けた遅い時間だったから、とにかく早く終わらせたい一心で呪霊共を一掃していった。


―そして、全ての呪霊を祓い終える頃にはすっかり深夜で、二人して草臥れた顔を張り付けながら任務完了の連絡を入れると共に補助監督の待つ地点まで戻る為、疲れた躰を引き摺って歩く。


『はぁ〜っ、つっかれたぁ〜…ッ。……怪我は無い〜?虎杖ぃ〜。』
「うん、俺の方は何ともないよ〜。あってもたぶん掠り傷程度かな…。そっちは〜?」
『私も何ともないでーす…っ。』
「良かった。じゃあ、無事二人共怪我無く任務遂行出来たって事だね。いやぁ〜良かった良かったぁ〜!」
『全然良くないよ、虎杖…もうすぐ年越すって時に任務駆り出された時点で最悪だったんだから…。』
「あ゙ー、まぁそうなんだけどさ…お互い無事で居れる事が何よりなんだから、大した怪我も無かっただけマシと思おうよ?…にしても、やっぱその事根に持ってたんだなぁ、狗尾…。」
『当たり前じゃん。何が悲しくて年末最後という瞬間まで呪い相手にしなきゃなんないの?ふざけんなよ、クソが。』
「うわ、思った以上のご立腹ぶり…気持ちは分からん事もないけど。」


何気無く同意してくれる虎杖に気を良くして、呪霊のせいで溜まった鬱憤を晴らすべく愚痴る。

そうこう駄弁りながら真っ暗闇の夜道を歩み進めていたら、何処からかボォーン…ッという鐘の音が聞こえてきた。

どうやら、知らぬ間に年が明けたらしい。

引き続き遠くから鳴り響いて聞こえてくる除夜の鐘の音に暫し耳を澄まして立ち止まった。


「…年明けちゃったね。」
『ね…。』
「結局年越し蕎麦間に合わなかったかぁ〜…っ。」
『まぁ、年明けにおうどん食べるとこもあるらしいから、今更食べても間に合うんじゃない?せっかくだから、この後伊地知さんにお願いして、帰りどっか寄ってもらおうよ。すっかりお腹も空いちゃったしさ。』
「其れもそうだな…!うん、どっか美味いとこ連れてってもらって蕎麦食べようぜ!」
『年末年始だから、開いてるお店あれば良いけどね…っ。今もやってるお食事処、この近場に在ったかなぁ…?』


来る時に見た通りを思い出しながら思考を回していると、不意に手を取ってきた虎杖に注意を引かれて其方を見る。

すると、寒さで鼻や耳を赤くした彼が笑った顔で私を見つめていた。


「年越す瞬間も一緒に居たし、年明けたから一応の挨拶…!明けましておめでとう、狗尾!今年も宜しくぅ…っ!!」


少しの照れくささも混じらせたその態度に、さっきまで抱いていた鬱屈とした空気があっという間に吹っ飛んで明るいお日様みたいな温かさが差し込んできた。

其れに私も彼自ら触れてきた手を握り返しながら笑顔で告げる。


『此方こそ、明けましておめでとう、虎杖…!今年も変わらず宜しくね!』


私の返事に、喜色満面な表情で笑んだ虎杖が、擽ったそうにしながらも私の手を引いて歩みを再開する。

勿論、体格も大きくて脚の長さも異なる事を気遣って、私の歩幅に合わせてだ。


「へへへ…っ、今年一番の挨拶が狗尾で何か嬉しい…!」
『ふへへっ、私も同じで何か嬉しいな…!』
「伊地知さんとこ戻ったらさ、伊地知さんにも明けましておめでとうの挨拶、せーので一緒に合わせて言おうぜ!」
『良いね、其れ…っ!ついでに、年末最後までお仕事お疲れ様でした、っても言ってあげよっか!』


二人仲良く手を繋ぎながら、寒空の下、東京の端の夜道を歩く。


『今年は良い年にしたいね…っ。』
「…うん。」


何とまでははっきり口に出して言わなかったけれども。

昨年は辛い事…色々と沢山あったから、今年こそは素敵な一年になります様に。

…そう願ったっても良いよね。

吐き出した息が白く滲んで何処かへと消えていく。

今、隣に在る温度を、手の内に在る温度を…どうか失くさない様にと祈って、私は彼の手をしっかりと握って繋ぎ直した。


AFTERWORD

執筆日:2021.01.16

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