「あ…っ、そういや昨日って俺の誕生日だったんだよなぁ〜。すっかり言い忘れてたわ」
「え…っ!!虎杖の誕生日って、昨日だったの!?」
「うん、そうだよ。三月の二十日で、伏黒の誕生日から大体一ヶ月後ぐらいになんよね」
「そういう事は早く言いなさいよ馬鹿ァ…ッ!!」
「ええ!?でも、昨日は任務で忙しくて其れどころじゃなかったし…自分から“今日、俺誕生日なんだわー”とかって言いづらいじゃん!」
「其れでも、大事な事なんだからちゃんと言えよ馬鹿」
「二回も馬鹿って言われた…!!何で!?」
「一日くらいならまだセーフの内に入るかな?」
「オッケーよ!つーか、今からでも遅くない…っ!!虎杖の誕生日パーティー始める準備するわよ、莎草、伏黒!!」
『オッス…!!』
「え、や、俺、別にそんな気にしてないから良いよ…?」
「アンタは大人しく私達に祝われてなさいっっっ!!」
「ア、ハイ。分かりました。よく分からんけど……っ」
冒頭の会話があったのが今朝、何となしに寮の談話室に集まった時の事である。
まさか、そんな風にカミングアウトされるとは思ってなくて、何の準備も出来ていなかった私達は慌てて寮を飛び出し、虎杖の誕生日を祝う為のプレゼント諸々の買い出しに駆け回り始める。
取り敢えず、プレゼントはそれぞれ個人別に用意するという話で纏まり、一旦その場を解散して後で合流となった。
寮を出てきたついでに、仕事で高専を離れていた担任の五条先生にも連絡しておいた。
ちょっとした野暮用で東京から出ていた先生だが、私達の話を聞いてすぐ“ちょっ早で済まして帰るわ”と言って電話を切った。
他の人にも〜…と思って、二年の先輩方や七海さん達にもLINEでメッセージを送っておいたら、即既読が付いてそれぞれからの返事が返ってきた。
先輩方も同じく準備などしていなかったそうで、私達からの報告を受けてこれから準備するとの事で、後々暇が空いた時に纏めて渡しに行く事にするらしい。
七海さんからは、後日個人的にオススメの美味しいパン屋さんにでも連れて行く事にする、との事だそうだ。
良かったね、虎杖。
皆、お前の事大好きだよ。
それぞれから送ってこられたメッセージを見て、今更ではあるが、何だかんだありつつも虎杖は皆に愛されてる奴だよなぁ…としみじみ思った。
恥じらいつつも素直に喜んでくれる彼の笑顔見たさに、私も早くプレゼントを選んで皆と合流、そんで虎杖が待ってる寮に帰らなきゃと足を急がせる。
急遽、彼の誕生日祝い用に渡すプレゼントを用意するとなって思い付いた物を手に入れる為、近場の花屋さんへと駆け込み、驚く店員さんへ声を大にして言い放った。
「すみません…っ!飛びっきりデカくて華やかな花束を一つお願い出来ませんか!?出来れば急ぎで頼みます!!急遽友達の誕生日会をする事になったんです!!ご協力お願いします…っ!!」
花屋へ来るなり開口一番そう口にした私に、店員さん達は皆吃驚していたが快く受け入れてくれ、それまでしていた作業を中断していそいそと準備を始めてくれた。
私が慌てて駆け込んできたのに事情を察してくれたのだろう。
きっと他にも注文ややらなきゃいけないお仕事とかあっただろうに、無理矢理私の都合に合わせてもらって申し訳ない限りだ。
手早く私の注文した通りのイメージの花を選んで包んでくれた店員さんが、笑顔で私の事を見つめて言ってくれた。
「素敵なお誕生日会になると良いですね!」
「すみません、突然急なお願いをしてしまって…っ」
「いえいえ、気にしないでください。偶々、今日はそんなに急ぎの案件も無くてのんびりしてましたから。お友達さん、喜んでくれると良いですね!」
「はい…っ!有難うございます!!」
親切な店員さんに見送られて、私は合流地点まで走った。
今日は、休日も日曜という日だったせいで街中は人でごった返していたが、構わず急いで向かうと、既に先に済ませて戻ってきていた二人が待ってくれていた。
「お待たせぇ〜っ!!御免ね、二人共…!」
「うんにゃ、私達も今戻ってきたばっかだから、そんな待ってないわよ」
「そっか、良かった!」
「にしても…凄ぇ物用意してきたな、狗尾」
「えへへ…っ。プレゼントって言ってすぐに思い付いたの、コレしかなかったの。在り来たりになっちゃうかもだけど、大丈夫かな…?」
「全っ然オーケーよ!寧ろ、そんだけデカくて派手なら、彼奴も驚くんじゃないかしら?」
「そう?ならコレに決めて良かった!帰ったら、飛びっきりの特大サイズの花束で吃驚させてやろっと!!」
三人で一緒になってニシシと笑いながら、虎杖の待つ高専へと戻る。
そして、虎杖の部屋へ三人揃って突撃し、一斉にクラッカーを打ち鳴らした。
『一日遅れたけど、誕生日おめでとう虎杖っっっ!!』
「おわ!?スッゲ吃驚したぁッ!?気持ちは超嬉しいけど、いきなりのクラッカーは心臓に悪いって…!!」
「今日はお前が主役だ、オラ!!今日一日コレでも付けて目立ってなさい!!」
「うわ、何コレ恥っず…!?え、ちょ待ってよ!!マジでコレ一日付けてなきゃダメなの!?」
「うるせぇ、つべこべ言わずに受け取ってろ」
「え!?待って待って急な情報量の多さに付いていけん…っっっ!!」
「はい、コレ誕生日プレゼント!!飛びっきりデカイのあげるね〜!!」
「ほあ!?何コレ花束!?え、スッゴデカァ…ッッッ!!?」
「HappyBirthday、悠仁ーっっっ!!ついでにただいま我が生徒達よ!!」
「は!?五条先生!?出張行ってたんじゃないの!?」
「そこは最強の僕、悠仁の為にちょっ早で終わらせてきたよん☆――という訳で、これから悠仁の為に誕生日パーティー開くわよ皆ァ!!」
「よっ!!流石は五条先生…っ!!」
「それでこそ五条先生よ!!」
「え…っ、何か俺だけ皆のテンションに付けて行けてないんだけどどうしたら良い……??」
「安心しろ、俺もだ」
部屋に突撃するなりクラッカーの嵐に見舞われた虎杖は、めちゃくちゃ吃驚した様子で私達にもみくちゃにされる。
誕生日お祝いするならコレだろ、と用意されたパリピ眼鏡とド派手な
構わずそれぞれに用意してきたプレゼントの嵐を更に押し付けていると、その輪に乱入してくるかのように五条先生がご帰還なさった。
帰還して早々変なテンションでぶちかましてくる先生のノリに乗れば、やはり付いてこれていなかった彼がポカーンとしながら呟きを落とした。
其れをフォローしたのは、隣に居た伏黒である。
「今日は特別出血大サービスで、何でも好きな物食べさせてあげちゃうよん!!ちなみに、全部僕のポケットマネーから出すから、好きな物好きなだけ言っちゃってぇ…っっっ!!さぁ、悠仁は何が食べたい!?」
「え…っ、好きな物好きなだけ食べさせてくれんの!?ヤッタァーッッッ!!じゃ、じゃあじゃあ…っ、肉!肉が食いたい!!飛びっきり美味くてデカイヤツ…!!」
「よし…っ、じゃあ悠仁の大好きなビフテキ食べに行っちゃおー!!勿論三人も一緒だよん!!」
「ヨッシャア!!肉祭りじゃあーっっっ!!」
「わぁーいっ!!美味しいお肉食べ放題だぁ〜!!やっぱり持つべき者は五条先生だね!!」
「有難うございます、ご馳走になります」
「皆遠慮しないで食べてねぇ〜!!特に主役の悠仁!!肉だけじゃなくてケーキだって用意してあげちゃうんだから…っ!!お肉で満足した後は、とっておきの超絶美味しいパティシエの高級スイーツ店に連れてってあ・げ・る(はぁと)」
「へへへ…っ、俺、呪術師なって良かったわ…!だって、こんなに皆と楽しくはしゃげるし、何より、誕生日一つでこんなワイワイ出来るしさ…めちゃくちゃ嬉しいや」
そうはにかみつつも零した虎杖の顔は、これまで見てきた中でも最大級の笑顔で輝いていた。
急遽誕生日パーティーなんて開く事になったけど、虎杖がこれからも笑顔で幸せに居られるなら、また来年もそのまた来年もこうして祝ってあげられたらなって思うよ。
ううん、“あげられたらな”じゃない、絶対に祝ってやるんだ。
一日遅刻しちゃったけれども、この世に生まれてきて良かったって心から思ってもらえるように。
誕生日おめでとう、虎杖。
どうか、これからもずっとその笑顔を絶やさずに居てね。
AFTERWORD
執筆日:2021.03.25