何故か、虎杖の特別課外授業に半強制的に同行させられた先で見た領域展開がどういうものかというものと、今まで隠されていた五条先生のアイマスクの下が晒され開眼…想像だにしないご尊顔のお披露目会みたいな展開となったのが先日の事であった。
本日も、多忙の中、虎杖の特訓に付き合う為に任務の合間を縫って虎杖が居る部屋にやって来て、何時ものアイマスク姿を見せた。
「や…っ、調子はどう?上手く行ってる?」
「うん。だいぶコツ掴めてきて慣れたっぽいよ。順調順調〜!」
「そっ。じゃあ、その調子でガンガンレベル上げてくから頑張ってね〜。あ、莎草の方も、僕が与えた特別メニューちゃんと続けてる?毎日欠かさず続ける事が強くなる為の一歩だからね〜、絶対サボらずやるんだよ。」
『あ、や、其れはしっかりやってるし、今んとこ特に問題は無いんすけど…問題はそこじゃなくてですね。…えーっと、ちょっと良いっすか…?』
「うん?良いけど…どしたの?」
何事も無かったかのように振る舞う彼の袖を引っ張って一旦部屋の外に連れ出すと、元々表情読めない系の先生がちょっと不思議そうな顔をして首を傾げて私の事を見た。
『いやいや…“どしたの?”じゃないっすよ。何で何時も通りに戻ってるんすか…!』
「御免、何の事?」
『そのアイマスクの件ですよ…!この間、特別課外授業で領域展開出すとこ見学させられた時、思っくそ外してたじゃないすか…っ!何でまた付けちゃうんですか!?』
「え〜っ。アレは所謂サービスショットってヤツで特別にお見せしてあげただけで、普段は早々簡単に見せてあげる訳なぁいじゃん。あ、もしかして、何…?僕のスーパーイケメンフェイスに惚れちゃった?やだぁ〜っ、莎草も意外と惚れっぽかったんだね〜!莎草ってば普段あんまり女の子らしさの欠片微塵も見せないから、僕なりに教師としてちょっと心配してたんだけど…なぁーんだ!莎草もちゃんと女の子だったんだね!良かった、安心したぁ…っ!!」
『おい、ふざけんなよテメェ。変な勘違い押し付けんなら、今すぐ即行その顔面鼻中心に殴るぞゴルァ。』
「やれるもんならやってみてごらんよ、ほ〜らほらぁ〜!どうせ無理だから!今の力じゃ到底僕に届く訳もないし、そもそも出来る訳ないもんねぇ?」
『うわ、本当はマジで殴るつもりは無かったんすけど、あまりのウザさで本気で殴りたくなりましたわァー…っ。一周回って殺意すら沸いたんすけど、マジで一遍殺りに掛かって良いっすか?今の力じゃ絶対的に殺れないのは理解してるんで…せめて一発金蹴りぐらい受けてもらえません?ほら、五条先生って最強なんでしょ?なら、金的蹴りだっても一発くらい食らったって全然平気っすよね?つー訳で一発食らってください、お願いします。』
「いや、何が悲しくて男の最も急所を蹴られなきゃなんないのよ。やだよ、普通に。最強だっつっても痛いに決まってんでしょ?お願いされても、んなお願い誰が受け入れるかっての。君、僕の事何だと思ってんの?――というか、女の子がそんな躊躇いも無く真っ先に急所狙って蹴ろうとしないの…!ちょっとは女の子としての恥じらいや慎ましさを持ちなさい!あと、その上げた脚今すぐ下ろさないとパンツ見えちゃうよ…?良いの?写真撮っちゃうよ?そしたら恥っずかしい事になっちゃうけど、良いのかなぁ〜?」
『いや、其れ以前の問題、一教師名乗ってる癖して生徒のパンチラを写真に収めようとしないでください。今すぐその手に在るスマホも仕舞う…ッ。アンタ其れでも教師かよ。』
「じゃあ、今すぐそのおみ足下ろしてよぉ〜っ。僕は始めから教師には向いてないって知ってるし、その前に僕だって立派な男なんだから、可愛い女の子から誘惑されちゃあそりゃ手ェ出しちゃうかもでしょ?」
『うわっ、サイッテーだこの人…!やばい発言してる時点で絶対この人何時か教師首になるぞ、コッワ…!!』
「…で、何かさっきから有耶無耶にされてるけど、結局コレ何の用で連れ出されたの?僕。全く分かんないし、僕も暇じゃないんだけどなぁー…っ。」
『いや、話脱線させたの五条先生の方っすから。人のせいにせんでください。』
「莎草って本当僕を敬う気持ち足りないよね…?おまけに可愛げも足りない。もうちょい悠仁見習って敬ってくれて良いのよ?」
このまま五条先生のペースに飲まれてたら一向に話が進まないどころか脱線する一方で終わりそうだったから、一瞬イラッと来る事言われて煽られても総スルー図る事で話の軸を戻す事にした。
若干無視られてシュンとして見せてきた上に可愛い子ぶられたけど、其れもスルーする。
そしたら、流石の五条先生も真顔に戻ったらしくスン…ッ、とした何時もの表情になった。
『元の話に戻しますけど…先日一回はアイマスク外したんですから、別にわざわざまた付け直さなくても良いのでは?――と、私は思うんですけど…五条先生ご本人はどう思います?』
「え、率直に言ってやだ。残念だけど、僕の超絶クールガイなお顔はそんな簡単には見せてあげられないよーんっ。僕の顔はそんな安くないからね。幾ら莎草に可愛くおねだりされても、其れだけは聞いてあげられな…、」
『そうですかぁ…其れはすっごく残念っすねぇー…っ。』
「え…そんなにヘコむ程?」
『だって…勿体無いじゃないっすか。普段あんなに飄々とした感じでふざけた人ですけど、いざアイマスク外したら、その下は超絶美形のベビーフェイス且つまるで宝石みたいに綺麗なブルーアイとか。普段その顔で居たら、きっと世の女性は一瞬でコロッと行くでしょうね。ぶっちゃけ、そんな綺麗な顔と眼を隠してるのメチャクソ勿体無いっすよ?毎日拝みたいくらいとか思えるご尊顔してるんですから、普段から見せてたら良いでしょうに…。ちょっと私の語彙力の無さからじゃ伝え切れないっすけども、五条先生は普通に格好良いんですから。』
「……………え?な、何コレ…唐突なデレ?唐突なデレタイムか何かなの、コレ…?えっ?其れとも何…今、僕口説かれちゃってる?え、今、僕自分の生徒に口説かれちゃってるの…?キャアアアーッ!やだ、恥ずかしぃ〜っっっ!!」
何か素直に本音暴露したら突然アイマスク越しに顔を覆った五条先生が甲高い女子みたいな裏声で黄色い悲鳴上げて見えてる範囲の顔と耳を赤く染める。
え、どしたの急に…。
テンションの振り幅にちょっと引くわー。
取り敢えず、何か変なスイッチ入れちゃったのかな…と思って、このまま静かに退散しようと思った。
うん、其れが良い。
面倒事は避けるに限る。
そう考えて彼に背を向けてそのままスタコラサッサとその場を退却しようとした。
―そしたら、半分予想はしてたけど、後ろから大股で即距離を詰めてきた五条先生に捕まった。
チ…ッ、ワンチャンイケるかと思ったのにな…っ。
流石の呪術師最強の五条先生を撒く事はそう簡単にはいかなかったか。
そうこう内心悔しがっていたら、後ろから思い切り抱き込むように拘束してきた彼が耳元で囁いてきた。
「予想外だったわぁ〜…まさかそこまで先生好かれてるなんてねぇ〜。いやぁ、今さっきの完全に褒め殺しじゃない…?何時からそんな僕の事口説ける程になったのかなぁ〜、莎草…?というか、口説くだけ口説いて言い逃げするなんて良い度胸じゃない?ねぇ。」
『は…、や……その、えとぉ…………っ、(やべぇ、何か地雷踏み抜いたかなコレ?うわ、こりゃ死んだわ自分〜。The・end・of・私。グッバイ明るい未来よ…ッ。)』
「―取り敢えず、有難ね。純粋に嬉しかったよ…。告ってくれた御礼に、莎草だけには特別に見せてあげちゃうねん?じっくり拝んじゃってよ。」
『はぇ……っ?』
そう言った直後、下からアイマスクをすかせて少しだけ上にずらせて見せた彼のキラキラとした宝石みたいな美しい眼差しとかち合った。
途端、私の時が止まったみたいに呼吸が止まってしまった。
というか、正確にはあまりの美しさに中てられて呼吸を忘れた。
髪の毛と同じ色の白く長い睫毛が目の縁を縁取って碧眼に影を作る様が映る。
私は瞬きすらも刹那の間忘れて呆然と彼の綺麗な瞳を見つめた。
そしたら、その様が面白かったのか、逆さまから映り込んでいた彼の瞳が弓なりに細められる。
「ふふ…っ、そんな見惚れちゃうくらい気に入っちゃった?僕の顔。…良いよ?莎草にだけは今後も見せてあげても。特別メニュー頑張ってるご褒美の代わりね…っ。――でも、見惚れるのは良いけど、息をするのは忘れちゃ…めっ、だよ?」
クスリッ、と妖艶に笑んだ大人の余裕を滲ませる彼にキャパ容量を超えた私はそのまま無様に失神してぶっ倒れて、彼に部屋まで運ばれる羽目になるのだった。
東京都立呪術高等専門学校教師、呪術師最強、五条悟、28歳…恐ろしやァ。
AFTERWORD
執筆日:2020.11.16