けもっとショタッと分かれたよ!


今、目の前で起こった事をありのまま解説するぜ…。

何か謎で厄介な術を使う其れなりのレベルの呪霊倒しに来たら、血の気多い虎杖が突っ込んでってあっさり倒しちゃったまでは良かったけど、いつの間にか攻撃を食らってたらしく、呪術高専に戻ってきた瞬間急に姿が消えたかと思ったらちっちゃくなった虎杖が呆然としてその場に尻餅を付いていたよ。

ついでに何故かそのすぐ側にはどうやって虎杖の中から出てきたのか分からない呪いの王・宿儺様が同様に転がって顔を顰めていたよ。

更におまけにその二人にはけもっとキュートなお耳と尻尾まで付いちゃっていたぜ。

何でかな?

私が一番訊きたいよ。


『…えっと……一応の確認の為に訊くけど、虎杖…だよね?で、隣に転がってる同じ顔した子は、呪いの王である宿儺様…で合ってる、んだよね?』
「え………っ?あれ、今、何が起きた…?全っ然分かんねぇんだけど…何で庵原急に大きくなってんの?え、マジで何がどうなったん?」
「……おい、コレはどういう事だ小僧…。」
『…うん、取り敢えず中身は虎杖と宿儺様で間違いないっぽいね…姿縮んじゃってる上に何かケモミミと尻尾付いちゃってるけど。』
「ふぉわ!?本当だ、何で俺縮んでんの!?あとコレ何じゃこりゃあーっっっ!?尻尾!?俺のケツから猫の尻尾生えてる!?おまけに耳まで!!?ホワッツ…!!???」
「貴様…この俺に向かってこんなふざけた術を掛けるとは、余程死にたいらしいな。」
『いや、私何もしてないし。そっちが勝手にいきなり縮んだ上におまけに何かけもっとしてるだけだし。原因があるとしたら虎杖の方にじゃないっすか…?さっきのよく分からない呪霊倒したの虎杖ですし。』
「よし…何故小僧から分離してしまったかはよく分からんが好都合だ、今すぐ殺してやろう。何、痛みも感じぬ間に一瞬で葬り去ってやるから安心するが良い。」
「いや、何も安心出来るかァッッッ!!つか、コレ本当どうなってんの!?ねぇ、俺元に戻れんよね!?」
『…取り敢えず、こりゃゴジョセン頼り案件かなぁ〜。うん、私一人で解決とか無理だわー。ってな訳で、二人の事抱えて運んでくから大人しくしててね。その方が手っ取り早い気がするんで。』
「おい、俺に気安く触るな小娘。殺すぞ。」
『その見た目で凄まれてもただ可愛いだけっすよ、呪いの王様よぉー。』
「む…、確かに今の見た目では凄んでも威厳に欠けるか…致し方ない。元に戻れた暁は覚悟していろ。」
「いや、何で運んでもらってる身でそんな尊大な態度なん…?」
「元はと言えば貴様のせいだぞ、小僧。この落とし前は後できっちりと付けさせてもらうからな?」
「俺がお前に何したって言うのよ…っ!?」
『ハイ、この場で無惨に頭から突き落とされたくなかったら大人しくしてようねーっ。』
「落とせるものなら落としてみろ、小娘。八つ裂きにしてやるぞ。」
「止めろ、馬鹿…ッ!!」


コロコロと幼児のサイズになった二人を纏めて一遍に抱えて運べば、腕の中で小さな小競り合いを始めて言い合う二人。

正直可愛い以外の何物でもなかったが、今下手な口を開くと其れこそ宿儺様の機嫌を損ねて瞬殺され兼ねないので余計な口を挟む前に急ぎ足で駆けて五条先生の元へ急ぐのだった。


―程無くして、事態の急変を察して駆け付けてくれたらしい五条先生の元で腕に抱えていた二人を解放し地に降ろす。

現状を見ただけで一瞬で事を理解したらしい彼は、面白い物を見付けたとばかりに顔をニヤつかせて此方を向き、口を開いた。


「何か面白い事になってんねぇ〜?悠仁と宿儺。」
『コレの何処が面白く見えるんで…?』
「え〜?十分面白い状況でしょ…!にしても、本当悠仁は色々とやらかしてくれるよねぇ〜っ。見てて飽きないわ!」
『いや、この現状面白がってないでどうにかしてくださいよ…アンタ教師でしょ?』
「そうだぞ、五条悟。早く何とかしろ。お前なら解けるのだろう?」
「期待してくれてるとこ悪いけど御免、無理。流石の最強な僕でも出来る事と出来ない事があるから。」
「嘘でしょ、先生…ッ。」
「言っとくけど冗談じゃないよー?此れ、マジな話。確かに、解けない術式ではないだろうけども、下手に手を下して悠仁に死なれても困るからね〜っ。だから、現状何も出来ない。ので、術が解けるまでは暫くそのまんまね!」
「マジかぁ〜っ!!先生でもどうにも出来ないんじゃあしょうがないね…!元に戻るまでは我慢するわ!!」
「前から思ってたけど、悠仁ってちょっと…、いやかなり順応力高過ぎない?何かもうナチュラルに現状受け入れちゃってる感パナイんだけど…。」
『相変わらずイカれてますよねぇー、虎杖って…ある意味凄ェ脳味噌してるわぁー。』


取り敢えず、現状今はどうにも出来ないという事で落ち込む…なんて事も無くすんなり受け入れてすぐに立ち直ったらしい虎杖は平気な顔をして頷いていた。

よって、変わらず現状に不満そうなのは宿儺様だけになり、不機嫌さをありありと見せた彼は小さな姿のまま盛大に顔を顰めてクソデカ溜め息を吐き出した。

心なしか、感情に反映されて尻尾がたしーんたしーんっ、と地を打ち付けている様だったが敢えて突っ込まなかった。

今、突っ込んだら確実に殺される事100%だったからである。

まだ私は死にたくない。

一先ず、原因は先の呪霊との戦闘時と仮定して、私達は寮に戻って休む様言い付けられた。

明日になって元に戻っていなければ強制検査とだけ言われて。
(恐らく、宿儺と一時的に分離してる時点でどっちにしろ検査は確定事項だっただろうけど。)

そうして寮の自室へと戻ろうとした手前で、ふと引き留めてきた五条先生から何時も通りの空気で問い質された。


「ところで、悠仁…今、宿儺とは分離しちゃってるけど、躰が縮んで猫耳と尻尾付いてる以外で他に何か違和感を感じるとかはあるかい?」
「いや、特に無いっぽいけど…。」
「そっかぁ…じゃあ、仮に元に戻った時もこんまま宿儺が悠仁の中に戻らず分離したまま居る事って可能なのかな〜?」
「其れは無理だろうなぁ。現に、今俺と小僧は分離しているが、水面下――目に見えぬところでは繋がったままであるからな。何故俺が小僧から分離したかは原理が分からぬ以上説明は出来んが、つまりはそういう事だ。呪い自体を切り離す事は出来なかった様だな。全くよく分からん術式だ…。お陰で、今まで通り小僧を本気で殺す事は叶わん上に、縮んだ事による負荷か俺の呪いとしての力が制限されている。実に不愉快極まりなくて吐き気がするわ。」
『うわ、マジか…。』
「へぇ…聞くに本当面白い状況だねぇ。ちなみに、心咲の方は何ともないの?一緒に任務行ってたけど。」
『全然何ともないっすねぇー…。まぁ、其れも例の原因に成り得る呪霊と接近したのも倒したのも虎杖の方なんで。私は他の低級の雑魚共ばっか相手にしてたんで何の影響も受けてないっぽいです。』
「其れを聞いて安心したよ。ただでさえ人手不足のとこ貴重な戦力二人も削られちゃ面倒だからねぇ〜!良かった良かった!」


気になるんだろう事を幾つか確認されただけでその場は解散となったけども、あの人超が付く程の適当人間だからなぁ…。

軽薄が服着て歩いてるとまで言われる程の人だから、マジでコレ解決出来なかったらどうしようって心配になってくる。

そんな気持ちが面に出ていたんだろう、先と同様に二人纏めて抱っこしていたら逆に心配してきた虎杖にきゅ…っ、と服を掴まれ声をかけられた。


「あのさぁ、庵原…?俺、別に今の状態そんなに気にしてねぇから、んな不安そうな顔しなくて良いよ?たぶん、その内どうにかなるって!」
『虎杖のそのポジティブさ…時折めちゃくちゃ羨ましくなるよ。』
「うん?」
「ただ阿呆なだけではないか?此奴は…。」


取り敢えず、変にシリアスになるのもどうかと思えたので、何時も通りで良いかと思い直し、寮へと向かっていたが…ふと或る件を思い出して徐に歩いていた足を止めた。


『そういえば…何時も通り自分の部屋に戻ってから軽くシャワー浴びようとか思ってたけど、虎杖と宿儺様どうしようね…。何か色々突飛過ぎてその事頭から完全にすっぽ抜けてたわ。』
「あー…っ。」
『流石に二人を分けて居らす訳にもいかんだろうし、かと言ってこの状態のまま何時もの部屋にそんまま返すのもなぁ…躰縮んでるから色々と不便だろうし、あと服とか諸々どうしたもんか……。』
「宿儺、お前自分の服くらいどうにかなったりしねぇ?」
「貴様、俺を何だと思っておるのだ…?呪いの王であるだけに万物を成せるなどと思うなよ。俺にだって出来る事と出来ない事はあるわ。そもそも、どうにかなっていたのならばとっくの昔にどうにかしておったわ、この戯けが。どうにもならぬ事であるから現状この状態のままなのだろうが。少しはその足らぬ頭を働かせろ、阿呆め…っ。」
「俺、今ちょっと軽く質問しただけだったのに何でそこまでディスられなきゃなんない訳…?クソ腹立つんですけど。つーか、呪いの王語ってる癖して俺と一緒に術掛かってちゃ世話ないじゃん。最強何処行ったよ?」
「今は貴様に受肉している時点で貴様と一心同体なのだ…全く不本意だがな。故に、今回の件も俺は呪いだからとは弾かれず術の影響を受けたという訳だ。はぁ…不愉快極まりなさ過ぎて反吐が出る。」
『…頼むから、私の腕ん中で喧嘩すなよぉー…っ。後が面倒だから…。』


寮入口前で立ち止まってうんうん悩み唸っていると、丁度のタイミングで制服のポケットに仕舞っていた携帯が着信を告げた。

誰からだ、と確認しようも今は二人を抱えていて両手が塞がっている。

どうしようかと一瞬逡巡して固まっていたら、気付いた虎杖が此方を見上げて提案してきた。


「庵原、携帯鳴ってんよ?電話出るなら、俺一度降りようか?じゃないと出れないっしょ。」
『あー…いや、そのままで良いや。一旦降ろして抱え直すの面倒だし。虎杖さえ良かったら、虎杖がスマホ取ってくんない…?丁度、虎杖抱えてる方の制服のポッケに入ってるからさ。』
「え…っ、逆に良いの?本当に大丈夫?」
『うん?何を心配してんのかは知らんけど、別に私細かい事に関しちゃそんな気にしない質だから、全然構わないよ。』
「ん、分かった。んじゃ、ちょっくら失礼しますね〜…っ。」


ご丁寧にも一度断りを入れてからポケットの方へ手を突っ込んで探る虎杖。

こういうところ紳士対応だから良い奴だよなぁ…虎杖って。

難無くスマホを取り出してみせた虎杖は、コールを鳴り響かせるスマホを持って再度私に問いかけてくる。


「もしアレだったら、電話出るのも俺が持ったまま耳当てとく?その方が庵原楽だよね?」
『あ、んじゃあ其れでお願いしよっかな。宜しく頼むね。ちなみに、着信相手誰から?』
「五条先生って出てんよ。ロック解除は横スライドタッチでOKよね?」
『うん、合ってる合ってる。』
「ほいっと…はい、どうぞ。」
『ん、有難う。』


抱えられたままの虎杖が伸び上がって短くなった腕をぴんっと伸ばして耳に当ててくれたスマホを片耳に当て、通話に出る。

すると、先程聞いたばかりの軽薄そうな声が気軽な調子で電話越しに喋りかけてきた。


《ども〜っ。さっきは言い忘れちゃって御免ね〜!もしかして、もう寮の部屋着いちゃってた?》
『いえ…部屋に戻るにしても二人をどうしようかと思いまして、寮の建物入口前で立ち往生してました。何時も通りだったなら、私は女子寮に、虎杖は男子寮の自室に帰るところだったんでしょうが…現状そのまま帰る訳にもいかないだろうとなりまして。』
《うん、その件なんだけどさぁ…いっその事、宿儺も心咲も一緒に悠仁の部屋で過ごしてもらおうかな〜って思ったんだよね!だって、悠仁が今の状態になった時一緒に居たのは心咲じゃない?其れに、二人一ヶ所に集まってくれてた方が何かあった時にすぐ駆け付けやすくて一石二鳥!ついでのついでに、どうせなら心咲に最後まで面倒見てもらおうかなって思ったんだけど…良いよね?ちなみに、拒否権は無いよ〜っ!フフフ…ッ、我ながら天才的閃きでウケる。流石僕、あったま良い〜!》
『……まぁ、何となくそうなるんじゃないかなぁーとは思ってたんで、百歩譲って其れは受け入れるとして…服とかはどうするんです?今の虎杖達が着る服なんて、この高専内何処探しても無いと思うんすけど。仮に応急措置は取れても。』
《嗚呼、その点に関しては心咲は心配しなくても良いよ〜。悠仁達が現状の姿でいる際に必要な最低限の生活必需品はコッチの方で調達しとくから。だから、心咲達は特に何もしないで僕からの指示が入るまではゆっくりのんびり寛ぐなりして休んでて〜っ。んじゃ、其れだけだから。悠仁達の事ヨロシクね〜ん!》
『あっ、ちょっと…!……チッ、一方的に切りやがったあの野郎…っ。』


予想はしてたけど、言いたい事言い終えたら即電話を切りやがった我が担任…本当にコレで教師が務まってんだから世の中不思議だよなぁ。

そうこう短い通話を終えて複雑な心中を収める為に深々とした溜め息を吐き出すと、スマホを支えてくれていた虎杖が伸ばしていた腕を引っ込めながら問うてきた。


「五条先生何て…?」
『…とりま、私が強制的に虎杖と宿儺様の面倒を見る事なのは確定事項、且つ私の生活圏は暫くの間虎杖の部屋という事が確定した。』
「Oh……ッ、」
「あの男ならそう言うだろうなとは薄々思っていたが…まさかその勘が的中しようとはな。…まぁ、俺は大して困る事は無いから何方の部屋になろうとどうでも良いが。困るとしたら小僧の方だろうな。」
『あの人…何か面倒事起きたら伏黒の事巻き込む気満々なんじゃねぇかなァ…。』
「可能性は無くも無いよなぁ…っ、御免伏黒……まだ今日は顔合わしてないけど今から謝っとく。」
「おぉ、そういえばお前の隣室は伏黒恵の部屋だったな。よし、良いぞ良いぞ。このまま何もする事無く退屈する事にはならずに済みそうで一先ず安堵したわ。」
「だから何でお前そんな尊大な態度なん…?」
「おい小娘、今すぐ伏黒恵の元へ行くぞ。」
『え、今彼奴任務明けで絶賛寝てるとこだと思うけど…、』
「構わん。良いから行くぞ。」
『良いのか…。呪いの王様は大概勝手だなぁ…。つか、現在進行形で姿格好めっちゃシュールなまんまなんすけど、そこんとこはスルーする方向なんで?いやまぁ、ご本人が気にしない方向性なら私も何も言わないでおきますけども。』
「良いから早よ行け。然もなくばこの場で刻む。其れくらい今この状態でも造作も無いぞ?」
『ハイハイ、分かりましたよ…宿儺様の仰せのままに。』
「うむ、悪くはない返しだ。褒めて遣わす。」
「庵原…、此奴の言う事一々律儀に聞かなくても良いかんね?時には無視っても全然構わねぇから。じゃねぇと庵原の身持たなくなっちゃうよ?」
「喧しい。小僧は黙っていろ。」
「いや、お前が黙れっての。」
『だから喧嘩すなっつったろテメェ等…シバくぞ。』
「「ハイ。」」


早くも今後暫くの間は大変面倒くさくなりそうな気配を察知して、思わずこのままこの場で二人を捨て置いて現実から速やかなる逃避を謀った後のボイコットしようかと思ったが…現状に一番苦労してそうな虎杖を気遣って、盛大なクソデカ溜め息を吐き出すだけに留めて溜飲を下げるのだった。

そして、男子寮、伏黒恵の部屋の前に至った現在。

私は内心凄く申し訳なさを感じながらも呪いの王様からのご所望だと思って、しかしやはりどうしても良心が痛んで控えめのノック音を鳴らすだけに留め訪問を告げた。

ちなみに、ノックする際、両手が塞がっていては出来ぬだろうとその時ばかりは何故か素直に片手を空けれる様にとしっかり首に掴まってきた宿儺様。

さっきはあんなに我関せずとした態度だったのに…。

この人の素直スイッチが何処にあるか謎過ぎて分からんくて突っ込もうにも何も言えんかったから仕方なくそのまま触れんでおく事にした。

程無くして、中でガチャリと鍵を開ける金属音が鳴り、隙間程開いた扉先から渦中の彼が顔を覗かせた。


「……誰だよ、任務明けでこっちは疲れてんのに…っ。」
「…よ、よっすー、伏黒……っ。」
『…えぇっと、何か色々と御免…。』
「此れから暫く厄介になるやもしれんのでな、挨拶に来てやったぞ、伏黒恵。喜ぶが良い。」
「………いや…、何がどうなってんな状況になってんだお前等……。」
『話すと面倒な話になるんだけど…簡潔に事の顛末だけ述べると、先の任務先でちょっと。』
「いや、ちょっとでそんな事なる訳ねぇだろ、ふざけんな。――で…?俺にこの現状見せに来た目的は?俺もその如何にも面倒くさそうな事に協力しろってか…?」
『…いや、伏黒んとこ来たのは、虎杖と宿儺様が元に戻るまでの暫くの期間、隣の虎杖の部屋で厄介になる事になったから…一応その旨を伝えるついでの現状報告しに来たのと、あとは主に此方の呪いの王様からの指示で来ました。ちなみに、二人の面倒を見る云々については五条先生からのお達しで拒否権無しの確定事項です。』
「うわ…あの人本気かよ……ッ。ただの面倒事で片付く事なら“御愁傷様”って言うだけ言ってこのままドア閉めて関わらねぇつもりだったが…、其れは其れでお前が不憫に思えてならねぇからな…。何かあれば言えよ。力になっから。」
『うん…有難う、伏黒。今のその労いだけでも既に若干痛みを訴えてた胃と心に沁み渡ったから嬉しいデス…。』
「本気で大丈夫か?お前。」
『うん…っ、大丈夫、まだ頑張れない程ではないから…。既にメンタルと胃は磨り減ってるけど。』


同情と憐れみを帯びた視線を貰った上であからさまに心配されて励まされてしまったが、こちとらお疲れのところ無理矢理に押し掛けてしまったのだ。

此れ以上の迷惑はかけたくない。

今日のところは此れにて失礼しようと話を切り上げた私は、再度改めて謝罪を口にして、ついでに軽く頭も下げてからお暇させて頂いたのだった。