狼少年Bダッシュ


 いつぞやに彼へ向かって、気紛れのたわむれ言として、“君の事が好きだよ”っていう感じの台詞を言っておいて。
忘れた頃の後になって、私は彼に例の話題を振ってしまった。
「刀剣男士って、すぐに勘違いするから、下手な事言えないのよねぇ〜…。だって、相手は曲がりなりにも神様だからさぁ、知らない内気付かない内に神隠ししてきそうじゃない?」
 きっと、その時の私は、“たぶん彼ならばそんな気は起こさないだろう”と思って、何気無く振った話だった。
…のだけれど、何でか知らない内に懐かれてた上に、そういう意味で惚れられていたみたいで。
「…そうだな」
 ――と、何気無い風に返してきた直後である。
彼は衝撃の言葉を私へ告げてきたのだ。
其れも、まさかの爆弾付きで、であった。
「今まさに、アンタは気付いていないものな」
 そう言って、ふ…っ、と小さく笑った彼。
瞬間、私は青ざめて、急いで周りに意識を集中し、騒がしかった筈の本丸の音が一切せずにシン……ッ、と静まり返っている事に気付く。嘘だろう、と思った。
あまりの事態に信じられなくて、焦る気持ちとせめぎ合っていたものの、人間咄嗟の事には動揺して動けなくなるんだなぁー…と変に客観的に思いつつ、半ばフリーズするように放心した。
 そうして、固まって身動き取れぬ内に、すぐに神域から戻してくれたらしい彼からこう言われる。
「――まぁ…今のはほんの一握りの力でしか作れていないが故に、まだ未完の神域であるが。そういった話は、迂闊に我等刀剣の者等にはせぬ事をお勧めしよう。何せ、曲がりなりにも神の位を戴く者だ…本気を出されたら一堪りも無いのだろう?」
 意味深な笑み付きで言われた台詞に、私はヒュッと呼吸が止まりかけるくらいにビビって、兎に角頷くしかなかった。
大千鳥君は、その反応に小さくにっこりと笑んで返した後、安堵の溜め息をいた。
 つまり、審神者の知らない内に“ちどさにフラグが建っていた”という事を、自己申告にて知らされた…という訳である。
自分からフラグを建て兼ねない餌を撒いておきながら其れに気付かぬとは、何とも鈍ちんなものだと、他者が聞いて呆れ返る話だった。
 まぁ、自らが蒔いた種ならば、責任を取るのが筋故、彼に気が無い訳でも無かった事も踏まえて、此れにていっちょ腹を括ると致しましょうか。

 そんなこんな、ゆるっとフェードインするみたく彼とお付き合いする事が決まりました、一審神者でありんす。


執筆日:2022.01.19
Title by:惑星