出れない部屋01−withジン



組織の任務中だったとある二人が、或る部屋へと辿り着きました。

入った瞬間、入口のドアが勝手に閉まり、閉じ込められてしまいました。

そこへ、謎の効果音ならぬBGMが流れてきました。


[デッデデーン♪○○しないと出られない部屋シリーズ!!始めの標的ターゲットは、黒ずくめの組織のジンさんペアです!]
「ァア゙?何だ此処…?」
『なんか、何にも無い部屋ですね…。てか、変な音声流れてきてますけど、何なんですかね?』
「んなの知った事かよ。」
『あれ…?開きませんよ、これ。え、まさか閉じ込められた…っ!?』
[はい、その通りです!この部屋は、或る条件をクリアしないと出られない部屋となっております!!ちなみに、条件は、どちらかが相手にキスをする事で出る事が出来ます!!]
『ええっっっ!?きっ、キス…!?』
「ふざけた事を抜かしやがって、今すぐ撃ち込んでやる。」
[申し遅れましたが、この部屋は全方位防弾仕様となっておりますので、幾ら撃っても穴は開きません!]
「チ…ッ!」
『隠しカメラとかで此方の様子を見ているんですかね…?あ、そう言った側からカメラ発見。』


―バキュンッ、パキャッ!


ジン、無言でカメラの方へ振り向き、即座にカメラをぶっ壊す。

愛用銃ベレッタの銃口から硝煙が漂った。


[メインのカメラを壊しても、他数台の小型隠しカメラを設置しておりますので、無駄な抵抗はせず、さっさと条件を飲んだ方が早いですよ(笑)!]
『コイツ、確実に楽しんでやがる…っ!つか、スピーカー何処にあんの!?』
「相当死にたい奴なんだろうな、コレを仕掛けた野郎は。良いだろう。その残りの隠しカメラとやらで、此方を覗きながら怯えて待ってるが良いぜ?俺達が貴様をバラしに行くのをなァ…。」


超ドスの効いた低音ボイスと恐ろしい形相でニヤリと悪どく笑んだジン。

音声氏、あまりの恐怖にマイクのスイッチをブチッと切った模様。

途端に部屋は無音になり、二人だけの異質な空間となった。


『さて…どうしましょう?本当にこれって条件飲まなきゃ出られないんですかね…?』
「…さァな。」


色んな意味で不安になってきたキティ、部屋中を見回し、他に出られる方法は無いかを探る。

試しに、壁を拳で叩いてみるが、かなり硬い硬質な物なのか、びくともしない。

一方、ジンは煙草を吹かしながら、何か思案するように一点を見つめていた。


『う〜ん…ダメですね。何処も硬質性の壁で、あのドアが開かない限り出られないようです。』
「…フンッ。上等だ。なら、いっちょ試しにやってやるか。こんなふざけた条件を付けるくらいだ。“形”は、どうとでも良いってこったろう…?」
『ジンさん…?何か分かったんですか?』


一人ブツブツと呟き出した彼を見遣って首を傾げるキティ。


「おい、キティ。ちょっとこっちに来い。」
『はい、何でしょう?』
「俺の目の前に立て。」
『え?立つだけで良いんですか?』
「ああ。テメェは、何もせずにただ黙って突っ立ってろ。」
『は、はぁ…。』


訳が分からないとでも言いたげな表情で、彼の目の前で大人しくする彼女。

短くなった煙草を放り捨てると、靴で踏み付け、煙草の火を消したジン。

何の前触れも無くスルリと頬に触れられたキティは、流石に勘付いたのか。

一瞬、困惑した表情を浮かべた後、緊張した面持ちでぎゅっと目を瞑り、身を固くした。

数秒経たずして、煙草の匂いが強まり、彼がごく至近距離に居る事が伝わってくる。

「うわぁああーっっっ!!」と叫びたくなるのを必死で堪え、何とか堪えるキティ。

そうして混乱の極みに立たされていれば、不意に頭を押さえ込まれたかと思うと、額に生温かい感触が。

「え…?」と思ったのも束の間、ぱっと目を開き、斜め上を見遣れば彼の真顔。

瞬間、カチリッ、と何かが開くような音がして扉が開いた。


[条件クリアにて、脱出成功です!有難うございましたーっ!!]
「やはり、これでも可能だった訳だな。」
『え…?ぇえ…っ!?』


状況が飲み込めず、呆然と立ち尽くすキティ。

そこへ追い討ちのアナウンス。


[条件がクリアされましたので、この部屋はまもなく爆発します。お早めのご退室をお薦め致します♪]
『って、えええーッッッ!!?』


慌てて黒き衣を翻す二人。

出口から出る一瞬前、ジンが此方にちらりと視線を投げ、言った。


「お前、さっき本気でキスされると思っただろ…?」
『え゙っ!!』
「フ…ッ。少しでも期待しちまったってぇなら、後でやってやるよ。このくだらねぇ茶番に片を付け終わったらな。」


何故か、ご機嫌な様子のジン兄貴は、音声氏の元へ乗り込んだ後、上機嫌でウォッカに連絡を取ったのであった。

その背後で迎えを待つ彼女の顔は、赤かったとか赤くなかったとか。


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