お疲れ様です



本日も、天候は晴天なり。

しかし、彼の調子的なものは、雨天候なり。

またしても、酷い無惨な有り様の愛車と傷をこさえて帰ってきた、安室さんもとい降谷さん。

これまた凄い有り様である…。

彼のテーマパークとアトラクション等が一体化した施設での一件を思い起こさせる仕様だ。


『これは、まぁた凄まじい有り様ですねー…。前回の比じゃない酷さじゃないですか?』
「あ゙ー…そうかもな。確かに、今回のは自分でもやり過ぎたとは反省してる…。」
『違反行為、しまくりでしたもんね。“貴方、それでも警察の人間ですか?”って並みに。上からも、だいぶ絞られたんじゃないですか…?』
「あぁ、まぁな…。流石に、今回のは自分でも自覚してる分、痛いな。」
『またもや怪我負ってますもんね。そりゃ、痛いですよ。まぁ、それはコナン君もでしょうけど。』
「彼は、ほとんど傷は負ってない筈だよ…僕が庇ったからね。子供の彼を巻き込んだ上に、大怪我なんてされれば、僕の気持ち的にも堪ったモンじゃない。」
『だからって、貴方が無茶をして良いという話にはなりませんよ。全く…っ、貴方はいつも無茶ばかり働く…!』


彼の腕の怪我の手当てをしながら、窓の外から見える無惨な姿に成り果てた彼の愛車の末路を見つめ、常日頃思っていた愚痴を零す。

コナン君の方も怪我を負ったらしいが、幸い、軽い火傷や打撲程の軽傷で済んだらしい。

彼が身を呈して庇ったおかげもあるようだ。

一方の彼自身は、数日前の掠り傷は治ったものの、また新たな傷をこさえてきてしまった。

それも、腕を切る等という、それなりの中傷っぷりだ。

だいぶ血も流した事であろう。

幾らハイでアドレナリンがバンバン出ていただろうとはいえ、あまりにも無茶苦茶な事をしでかしている。

最早、命が幾つあっても足りないんじゃないかってくらいに命の綱渡りをしていた。

よくあんな事をしてても死なないな、と感嘆の溜め息まで漏れてしまう。

だがしかし、幾ら日本の危機だったとはいえ、国を守る事と自らの命を犠牲にするのは話が別だと思う。

そう簡単にホイホイ命を投げ出されては、此方の心臓が幾つあっても足りない程心配になる。

少しは、自分を労る事ぐらいして欲しいものだと嘆きたい。


『…ハイ、包帯巻き終えましたよ。』
「あぁ…すまなかったな、有難う。自分でやろうとすると、やはり、こうは上手くいかないからな…助かるよ。」
『そう思うんでしたら、あまり怪我なんて負って来ないでください…。あんな酷い有り様になるまでの事があったと思うと、気が気じゃなくなりますから。少しは、此方の身にもなってください。ついでに、自分の身の事も少しは大事にしてあげてください。』


窓の外に映る車の有り様を滲ませて口にすると、彼も反省はしているのか、苦い顔で視線を逸らした。


『この国を守っていくのが、貴方のお仕事なのは分かってます。だけども、それで貴方が死なれたら、元も子もないですよ?』
「いや…梨トが言いたい事は分かってる…。分かってはいるんだがな……っ。」
『でしたら、もっと自分の身を大事にしてください…!昨日だって、帰ってくるなり急に倒れて、死んだように眠ってしまったじゃないですか…っ。吃驚したんですからね!』
「すまん…っ。家に帰り着いたと思うと、急に意識が遠退いて…。」
『どれだけ無理をきたしていたんですか…!!本当に吃驚したんですからね!?帰ってくるなり、いきなり倒れたんですから…っ!しかも、幾ら揺すっても起きやしませんし、顔色は酷いし、おまけに腕やら何やら怪我してますし…!!運ぶの苦労したんですからね!!』
「…俺自身、全く自覚は無かったんだが…そんなに酷かったのか、俺は…?」
『それは、もう…っ!“本当に死んでないよね!?”って疑ったくらい、身動きの一つも無しに落ちてましたよ、意識。』
「マジか…。」


事件に片が付いた後、後始末やら何やらに追われ、上への報告や部下への指示出しなり何なりで、事件が終わった後も休む暇無く、心身共に心底疲れ果てていた自覚はあったが、まさかそこまでとは思っていなかったようで。

苦い顔を崩さずに溜め息を吐いた降谷さん。

怪我の包帯を巻き替える作業にも、もう慣れたものだ。


「はぁ〜…っ。心底心配をかけてすまなかった。」
『良いですよ。降谷さんこと安室さんがお忙しく危険な事に毎日追われているのは、今に始まった事でもありませんから。…ただ、あんまり自分の身を酷使する事だけは控えてくださると嬉しいです。』
「…約束はし兼ねるな。」
『約束は出来なくとも、せめて、心に留めておくぐらいはしておいてください。』


綺麗に巻き終えた包帯の結び目をなぞりつつ、彼の身が少しでも癒されてくれる事を祈って、早く治ってくれるよう優しくまじないをかける。

“痛いの、痛いの、飛んでいけ”、と。

その眼差しを受けてかは分からないが、柔く表情を崩した彼は、私の頭にポンッと手を置いた。

そうして撫でられる事に、敢えて何も言わず、話を変える。


『所で…あの車、どうするんですか?修理する以前に、もう完全にご臨終してますよね…?』
「あ゙ー…っ、そう、だな……。新しいのを買う、しかないだろうな…。」
『また同じマツダのRX-7にするんですか…?RX-7も可哀想だな…。買われて、最終的に行き着く末路があんなんじゃ…。車側も、こんなボロボロな状態になるなんて、思ってもみなかっただろうな。』
「おい、何かその言い方ちょっと刺さるから、やめろ。」
『物は大切にしなきゃダメですよ…?』
「分かったから…!その何か言いたげな顔をやめろ!!」
『良い車だったのにな…。』
「お前は、俺と車、どっちが大事なんだ?」
『勿論、降谷さんの方が大事に決まってますけど。』
「ゔぐ…ッ。」


何故か急にときめいたのか、照れてそっぽを向き、顔を背けた降谷さん。

僅かに顔が赤らんでいるのは、気のせいだろう。


『取り敢えず、昨日は帰ってきて早々ぶっ倒れられて言えてなかったので、改めて…。おかえりなさい、降谷さん。今日もお仕事お疲れ様です。』
「…あぁ、ただいま…。」


穏やかに笑んでいる表情の方が、貴方には似合っていますよ。


執筆日:2018.06.14

PREVNEXT
BACKTOP