土砂降り雨にはご注意を
大雨警報と雷警報が表示される気象庁発表のウェザーニュース。
屋根の下から見上げた空はどんよりとしていて、当分止む気配は無い。
今朝はドタバタしていて天気予報など確認しておらず、梅雨時期の不安定な気候というのも忘れ、折り畳み傘しか持って来なかったのだ。
まぁ、折り畳み傘だけでも持ってきた自分は褒めたいが…。
幾ら、今朝は小雨程度しか降っていなかったからって、油断は禁物だろう。
おかげで、今日はずぶ濡れ決定だ。
といっても、この雨では、普通の傘を差していてもずぶ濡れになってしまうだろうが…。
堪らず、「ハァー…ッ。」と心の底から重い溜め息を吐き出した。
(仕方ない、諦めて腹括るか…。)
そう内心で呟いて歩き出そうとしたところに。
―ゴロゴロピッシャァアアン…ッッッ!!
ドデカイ音を立てて光った雷が盛大に落ちた。
思わずその方角を見つめ、呆然と立ち尽くす。
うわぁ…マジですか…。
流石にこんな激しい雷鳴り響く中を無理矢理強硬突破しての帰宅はしたくないなぁ…と思った。
だって、最悪運が悪ければ御陀仏になり兼ねないくらい酷い雷だ。
これは流石に参ったな、と頭を悩ませ項垂れていると…?
絶賛公安の顔での仕事中だったらしい安室さんが車で通り掛かった。
そして、何と運の良き事か、今は一仕事終え警察庁に戻る途中だったと言う。
加えて、そのついでに家まで送ってくれると言う。
わおぅ、何て素敵なタイミング…。
ナイスタイミングとしか言い様の無いタイミングの参上振りに賛辞の言葉を贈りたいくらいだった。
思わず、思ったままに「あまりのタイミングの良さに感激したので、賛辞の言葉を贈っても良いですか?というか贈らせてください…!」と言うと、彼から返ってきた返事はこうだった。
「あははっ。お気持ちは大変嬉しいですが、早くしないと君がずぶ濡れになって風邪を引いてしまいますので、乗ってください。席は助手席でも後部座席でもお好きな方で構いませんから。」
と、何とも華麗に私のよく分からないボケをスルーした。
流石は安室さん、
『それではお言葉に甘えて…、お願いしますね。』
「はい、どうぞ任せてください。」
にこやかに笑みを浮かべて頷く降谷さん。
普段とは違ってきっちりかっちりとスーツを着こなした彼は、まさに警察の方らしい厳格さというものが窺える。
お堅いスーツさえも着こなしてしまうとは、やはり彼は素晴らしい才能をお持ちである。
なんて、何処か明後日な事を考えてしまっている頭は、どうやらこの予想だにしなかった現状に混乱しているようだ。
遠慮がちに敢えて後部座席へと座った私をバックミラー越しに見遣りながら、彼は小さく笑みを浮かべながら此方を安心させようと他愛ない会話を振り、然り気無い気遣いすら見せている。
これが、俗に言う“大人の余裕”というヤツだろうか。
全く以て、彼には勝てる気がしないなと改めて思った。
執筆日:2020.05.23