いつの頃からだったか。私は、とある刀に惚れていた。
初めて、本気の恋心というヤツを抱いていた。
その恋情に気付いたのは、彼の姿を自然と目で追うようになり、近くに居らねばその姿を探すようになってからだ。
気付いた時には、落ちていた。底無し沼だ。
深い深い、底の見えぬ沼で、天井が何処までかも分からぬ、深い深い沼へ、私は落ちていた。
ほとんど無意識だったように思える。
ハタ、と自覚した時には、私はとある刀を好いていた。恋をしていたのだ。
お伽噺の中だけと思っていたような、一途な気持ちだ。
けれど、私は其れを告げぬ気で居た。己には過ぎた想いだと。
始めたばかりで、すぐに諦めようとした。
己には、果たさなくてならぬ責務がある。
其れを他所に、惚れた腫れただのとうつつに抜かしている暇は無い。
己は、審神者だ。戦の指揮を担っている。未だ嘗て、戦の先が見えた事は無い。
つまり、我々は終わり無き戦争の只中に居た。
戦の渦中に居て、どうして恋などと淡い夢想を抱き、浸れるのであろうか。
そんな暇があれば、戦に勝つ為の策でも練った方がよっぽど有意義な時間の使い方が出来よう。
とどのところ、私は、感情を持て余していたのだった。
己には過ぎたものだと、勝手に抱いておいて、勝手に諦め、憂いている。
私は、凡そ生きるのが下手だ。よって、器用な生き方をとんと知らなかった。
良く言って“箱入り娘”、悪く言って“無知な世間知らずのただの小娘”である。其れが、私だった。
この世に生まれてきて、二十数年しか経たぬ青二才の小童(こわっぱ)。
恋というものを未だ嘗てした事の無い、“彼氏居ない歴=年齢”の喪女。
おまけに、独身貴族を謳歌している。
そんな、生まれてこの方、一度として男を知らなかった私が、遂ぞ恋をした。
所謂、春が来た、というやつであった。春に天井は無いように思えた。
常春に頭が沸いて、ふわふわとするのだ。宛ら、酔っ払いのようだった。
まぁ、酒すらまともに飲めた試しが無い者故に、真に酔うという感覚は知らなかったが。
代わりに、乗り物酔いの方なら、身に沁みる程存じていたが。
要は、その程度の女であった。
歳で言えば、とっくに恋を知り、男を知り、結婚して子が出来ていても可笑しくはない歳ではあった。事実、同い年の親しき友人は、昨年晴れて想い人と結ばれ、結婚し、子も出来ていた。
知らぬ間に、友は女になり、母になっていたのである。
相手の男の事も、よく知る者だった故、彼ならば心配は無いと安堵し、祝福して、送り出したくらいだ。その男とやらも、実は私と同い年で、嘗ては同じ学舎で学び、青春を共にした友人であった。
互いに見知った仲ならば、何て事は無い、素直に受け入れ、ただただ喜ばしい事だと歓声を上げ祝福した。
彼女は、嘗ての一時期だけ、審神者をしていた時期があったと言う。
しかし、現世の仕事と兼業での勤めだったらしく、両立が厳しくなった折に、担当へ言って辞めさせてもらったらしい。
ただでさえ体を壊していた身だ、体を大事にと現世へ戻る事を勧められ、結果現世へと戻った先で想い人と婚約を結び、目出度く籍に入ったという事であった。
いやはや、世の中どう転ぶかは分からぬものである。斯く言う私も、其れは同じである。
今、私は、刀に恋していた。ただの世の中ならば、考えられぬ事であろう。
しかし、私は、恋をしたのだ。己の刀に。
相手は、まこと戦の為に生まれてきたかのような出で立ちの者であった。
その名を、同田貫正国と言い、折れず曲がらずで有名な実戦刀なのであった。
どう考えても、恋情なんかに振り回されぬ男であろう。
寧ろ、彼は、血沸き肉躍る戦場で刀を振るい、好きに暴れては敵を斬り倒している方がお似合いだ。
私自身、そんな彼の姿を見ている方が心躍ったし、まるで美しき宝石の原石を見付けたかのように瞳をきらきらさせて魅入っていた。
恋情抜きにして、ただ己の刀である彼が好きだったのだ。
目映さすら感じる生き様に、純粋な憧れすら抱いて、格好良いと思っていた。
ただ其れだけで居た頃のが、よっぽど良かったように思える。
実のところ、彼にほんに惚れてしまってから、苦しいのだ。
息がしづらくなったみたく、心の臓がきゅうーっと締め付けられて、腹の底が重くなったように辛くなるのである。
此れは、きっと、病だ。恋煩いという、この世で最も厄介で治療の術が無い、病だ。
そんな病に効く薬があるのならば、今すぐにでも処方して貰いたいくらいには、手遅れなところまで来ていた。
一方的に相手を想い、一途な気持ちを傾け続ける片想いとやらは、どうしてこうももどかしいのか。
二進(にっち)も三進(さっち)も行かぬ想いが募るばかりで、溜め息ばかりが増えていった。
遂には、初期刀にすら心配をかける始末だ。
―その日、近侍だった清光は、私に言った。
「なぁーんか最近元気無いよね、主……。どうしたの?今も腑の奥から吐き出すみたいな深い溜め息吐(つ)いてたけど…。悩み事あるなら、話くらい聞いたげるよ。ちょっと吐き出してみたら?アンタ、ただでさえ溜め込みやすいんだし。どんな話でも、俺は主の話なら何だって聞くからさ……一人悩んでるくらいなら話してみてよ。俺も一緒に悩んだげるから」
正直、もう一人きりで抱えるには大き過ぎるくらいに膨らんでいた。
信頼の厚い初期刀の彼になら話せるかと、思い切って話してみる事にした。
「清光だったら……言えるかもな」
「おっ、話す気になった?良いよ良いよ。その調子で溜め込んでる事、話せるだけ話してみな」
「うん……。実は…私、好きな人が出来たっぽい……」
「え」
「あ、でも、相手はその事知らないし…おまけに、“人”相手じゃないから、ぶっちゃけどうしたら良いか分かんなくって……」
「え、待って、嘘でしょ?誰よ相手は。何処の馬の骨とも知れない奴に、主はやれないかんね…!」
「いや、相手は清光もよく知る奴だから…っ」
「えっ、マジで!?嘘、誰だろ……其れって、相手刀剣男士の誰かって事だよね?最初に“人相手じゃない”って言ってたんだし…。えー、マジかぁ……っ。とうとう主にもそんな時が来ちゃったのかぁ〜……っ。いや、まぁ…主女の子だし、遅かれ早かれ、そんな時が来ちゃうんじゃないのかなってのは思ってたんだ……。けど、そっか、マジかぁー……。俺、アンタに選ばれた初期刀だから、覚悟してたつもりだったんだけど……結構来るね、コレ…。うわー、此れが手塩に掛けて育てた娘を嫁に出す父親の心境かぁ〜……地味にツッラァ…」
「清光…気が早過ぎるって。私、まだ嫁入り云々すら先の事過ぎるレベルなんだけど…」
「待って、まだ相手の事言わないで。自分で推理したいから…!えっと…主が見初めるような刀でしょ?んーっと……その相手の奴って、演練先とかでも会う刀の中に居る奴?」
「演練以前に、ウチの本丸に居られる方ですが……」
「えっ、ちょ、待って!待って、まだ考えさせて!コレ、初期刀としてのプライドだから…!主の刀として、主の事も知らなかったら面子立たないから……っ」
「どうぞどうぞ……気が済むまで推理してくだせぇや」
いつの間にか、主旨が変わっていた。始めは、私の恋愛相談へ乗ってもらうつもりで話し始めた事だったのに、気付けば、私の想い人は誰かを当てるゲームが始まっていた。
何処ぞの鶴さんではないが、驚きである。
清光はウンウンと唸りながら頭を巡らせ、おずおずと口を開いてくる。
「主が好むようなタイプだからぁ…少なくとも、自分より強くてしっかりしてそうな奴を選ぶよね……。体格は、主よりも大きい奴等に絞られるよな」
「うん、正解正解。短刀の子達も良い子なんだけどね…見た目幼い子達へ手を出す気にはなれなくてさ。短刀の子達には悪いんだけど、眼中に無い、かな…」
「ってなると、最低でも脇差以上になるよねぇー……範囲広いな。うん、でも、主が好きになるような相手だし…たぶんだけど、太刀とか打刀のが合ってる?」
「うん、近いね。槍とか大太刀の子達も捨て難いくらいに素敵な子達だと思うんだけども…御免ねって事で。……嗚呼、でも…彼を好きになる切っ掛けをくれたのは、とある槍の子だったかな」
「えっ、其れって…つまり、槍と関わり合いがあって、槍とも仲良くしてる奴って事にならない……?」
「んー…遠からず近いかな」
「……ねぇ、其奴って、今もこの本丸に居る奴だよね…?」
「うん?遠征に出掛けてる子達以外って事を言ってるなら、不正解だよ。だって、ウチは誰一人として折った事無いもの。というか、私が私であり、私が主である限りは、誰一人だって折らせなんかさせねぇよ」
「…何か、極めて帰ってきた薬研みたいな事言うね」
「ったりめぇーだろ。私の刀は、絶対欠けさすなんて事しない、誰一人とて折らせるもんですか…っ。私は、私が審神者となる時に、そう誓った」
「格好良いじゃん。流石は俺の主…っ、女の子だけど強いよね」
「泣いてしおらしくしてるだけが女と思ったら大間違いだっての。……まぁ、世間じゃ、まだその印象のが根強いけどね。だから、女は下に見られがちなんだけど…」
「要は、そうじゃないってのを理解してくれてる刀が、主の好きな相手って事だ…っ」
諸手を挙げて「降参」と告げた清光が、肩を竦めて答えを教えてくれと促した。
私は努めて平静を装い、口を開いた。
「正解はね……たぬさんだよ」
「えっ……?あの、戦しか能が無さそうな、戦馬鹿の……?」
「そっ。……意外だった?」
「いや…そんなに。……でも、俺、主が付き合うんなら、大倶利伽羅の奴だと思ってた…。彼奴なら、主との距離感適度に保ってるし、主の事分かってて気遣える良い奴だし……何より、馴れ合わないって言ってる癖して、主と居る時の雰囲気良かったしねー…。そっか……同田貫かぁ…。切っ掛けは?」
「いやぁ……其れが、ぶっちゃけ分かんなくて」
「は?何ソレ、どういう事?」
「えっとねぇ…自分でも本当気付かない内に目で追いかけるようになってて……知らん内に好きになってたんよ」
「いつから…?」
「……審神者始めて半年くらい経った頃から、になるんじゃないかな…?」
「って事は、既に一年以上は温めて来てんじゃんかよ……っ!!一途かよ、純愛じゃん!ピュア過ぎてもどかしいっつーか焦れったいの通り越して早よくっ付いて結婚しろよのレベルだかんね!?」
「怒涛の感想有難う、無茶苦茶刺さりまくって痛ェわ。いや〜……まさか自分がこんなに長く片想いするとは思わなんだやぁ。いや、全く、世の中何が起こるか分かんないね!」
「現実逃避してないで早く成就するよう努力しよう?主」
「話しといて何だけど……ぶっちゃけ、私が本気で好きだとかどーとかって事、本人に伝える気無いよ」
「は…?え、どうして……告っちゃえば良いじゃん。皆、誰も反対したりとかしないよ…?寧ろ、きっと、“おめでとう”って祝福して喜んでくれるって。……何が、気掛かりになってんの?」
清光は驚いてすぐ真面目な顔付きになって、私の本心を聞き出そうと促した。
正直、本音を語るのは、初期刀である彼相手でも憚られた。
何故ならば、私は彼等に対して、ずっとずっと一線を引いて接してきていたから…。
本音を語るには、とても勇気の要る事だった。
私は俯き、唇を噛んで、一寸ばかり悩む素振りを見せてから、意を決したように顔を上げ、清光の方を見た。
「本当は……此れを言うの自体、申し訳ないって気持ちでいっぱいになるんだけど…今なら……、っいや、今だから言うね…っ。私、審神者だから、本当は誰か一人を特別に扱う事は良くないって、ずっとずっと思ってた。今もそう。この本丸で顕現した子達皆、等しく私の刀達だから…優劣を付けるなんて、そんな烏滸がましい事出来ない、したくないって思ってた……。だって、皆私の刀で、大好きなんだもん…。だけど、いざ、たぬさんの事好きになって……怖くなった。否定される事が、ってだけじゃない……色んな事全てが、怖くなった…。だって、私は臆病で、チキンで、弱くて脆いから…彼と契った先を想像して、私には無理だってしんどくなって…諦めようとした。でも、結論から言って、駄目だった……っ。今も変わらず好きで好きで堪らなくて、気持ちだけが突っ走って止まんないの…。ねぇ、私、どうしたら良い……?私、今まで一度として誰かを本気で愛した事なんて無かったし、恋愛なんて更々無かったから、恋する事がこんなにしんどくて辛いだなんて知らなかった……ッ。ぶっちゃけ、伝えた先、契るとか云々無しで側に居る事さえ叶えば、其れだけで良いの。言わずのままで居るのなら、この想いは墓場まで持ってくだけ……その覚悟は決めてる。……でも、どうしてかな………好きで好きで堪らない気持ちが溢れて、しょうがないの…っ。いっそ、気が触れてしまいそうなくらいに!」
審神者としての勤めがあるから。歴史を守るという、終わり無き戦の只中に居るから。
そんな気持ちとがせめぎ合って、現実と板挟みになっていた。
気付けば、ただの感情に雁字搦めになって、身動きが取れなくなるところまで来ていた。
どうすれば、この辛い状況から解放される?どうすれば、この気持ちを楽に出来る?
気狂いを起こしそうな程、大きく膨らんだ気持ちを一人抱えたまま、悩んでいた。
「主にとっちゃ、初めての真剣勝負の恋だもんね…。悩んで当然か」
しかし、初期刀として本丸設立の黎明期より連れ添ってきた彼は、すんなり納得したかのように受け入れ、頷いていた。そして、彼は一言だけ告げる。
「良いんじゃない、其れでも。その想いは主だけのものなんだし、主の好きにしたら良いと思うよ」
「え………?」
「俺は、どっちでも応援するよ。主が彼奴に想いを告げるって選択肢を取っても、このままずっと告げずに墓場まで持ってくって選択肢を取っても。俺は主の意思を尊重するよ。もし、仮に後者を選ぶってんなら、俺も一緒に墓場まで持ってってあげる。俺はアンタの初期刀だもん……其れくらいは許して貰えるよね?」
つまりは、何方を選択しようが、彼は私に付き添い続けると言ったのだ。
「どっちみち、アンタは泣き虫で泣いちゃうだろうから…その涙を拭ってやる相手が一人くらい居てやんなきゃ、可哀想でしょ?俺ならずっとアンタの事愛してやれっから、もし彼奴に振られた時は、俺のとこ飛び込んできな。抱き締めて、アンタが疲れて眠っちゃうまで泣くの見守っててやっからさ。ついでに、“こんな可愛くてお前にやるには勿体無い子振るなんて信じらんない!”って怒って、皆に止められるまで思い切りぶん殴ってやるんだから!」
戦の只中で、惚れた腫れただのうつつを抜かすなど愚か者のする事だと、叱られても良いくらいだと覚悟していた。ぶっちゃけ、御上に告げたら、確実に今考えたような事を嫌味としてネチネチ言い募られる事間違い無しであろう。
だけども、私の刀は、否定もせずにすんなり受け入れてくれた。
私が、人間だから、自分達とは違う時間軸の中で生き、短い一生の中で悩み、考え、時には挫けながらも懸命に前を向いて進もうと足掻いているから。
その短い一生の僅かな一時でも良い、自分達が主の支えになれたらばと。彼は、そう言ったのだ。
そんな風に言われて、泣かない訳が無かった。そんな風に誰かに思われた事は、これまでに一度と無くて、だからこそ身に沁みて、彼等となら何処までも共に居れると思った。
例え、想いが実らなくとも良い。ただ、側に居る事さえ出来れば、其れだけで構わないのだ。
初めて、自分の刀へ本音を告げた日であった。
其れから幾日かが経った、ある日の事である。
満を持して、修行へと旅立つ許しを得たたぬさんが、徐に話しかけてきた。
「なぁ、何で俺だったんだ?」
脈略も無く、いきなり振られた会話だっただけに、私は理解が及ばずに怪訝な顔を作って聞き返した。
「はい?御免、何の事言ってんのかな…?」
「アンタが好いたっつー相手……何で俺だったのかって話」
「……誰かに聞いたの」
「いや、誰に直接聞いたとかは一切無ェよ。強いて言うなら、アンタの目が如実に物語ってたっつーくらいだな」
「……気付いてたんかい…」
「アレで気付くな、っつー方が逆に無理だろ?」
「ハハッ……なぁんだ……っ、言わずともバレてんじゃ世話ないじゃん…」
「で…?何で俺だったんだよ」
「今、このタイミングで訊くか?普通……」
「修行出る前に聞いとかねぇと、修行に集中出来ねぇかもだろ。其れじゃ意味無ェじゃねーか。俺は、他の刀と違って清算する過去は無ェが、元の主が複数だった分、厄介な事になるんだ。ただでさえ悩みの種は尽きねぇのに、アンタの事まで気掛かりになってちゃ、無ェ頭働かせなきゃなんなくなるだろ…。だから、せめてアンタの本心くらいははっきり聞いてから修行に出たかったんだよ。この期に及んで、今更言わねぇとかは無しだぜ?アンタが吐くまで此処で待つからな」
「修行行くのの妨げになる程厄介なもんでしたか…そうですか」
「勝手に人の気持ち決め付けて落ち込むんじゃねーよ。まだ何も言ってねぇだろうが」
「いやぁ……正直、たぬさん本人に告げる気無くて、このまま墓場まで持ってくのを押し通すつもりで居たんで…」
「其れはこっち見てから言いやがれ」
「視線が痛い」
ものごっつ睨まれてるんすけど……と、藪蛇に睨まれた蛙か鼠のように縮こまる。
ただでさえ強面な顔付きなのに、そんな戦場でしか見ないような形相で見つめられちゃあ、ビクついてもしょうがあるめぇよ。
視線を逸らしたくても逸らせないように頭を鷲掴みされては、もう腹を括って言うしかあるまい。
意を決して私は口を開いた。
「……何でって言われても、ぶっちゃけ私自身も知らんし分からんよ…。気付いたら好きになってたし、目で追いかけるようになってたし……」
「へぇ。俺みたいなのを好くたぁ物好きだな。……いつからだ?」
「清光にも話したんだけど……たぶん、審神者始めて半年経ったくらいからだったと思う」
「そんな前からだったのか……。俺自身が気付いたのは、ほんの最近の事だ。アンタからの視線がやけに熱っぽい気がしてさぁ…嘗ての主達の中で女作ってた奴の記憶は無かったかって、記憶遡ってみて勘付いたっつーか、初めてアンタの気持ちに気付いたっつーか……まぁ、そんな感じだ。…この話知ってる奴、他に居んのか?」
「直接話したのは清光だけだけど…何となく前田君と薬研は察してたっぽいかもなぁ。何か最近そういうムーヴしてたし」
「あぁ…まぁ、片やアンタの懐刀だし、もう一方もアンタの忠臣の刀だからな。無理もねぇだろ。大抵何方かが側に付いてる事のが多いんだ、気付かねぇって方が可笑しい」
事実、自分でも自覚していたところもあるので、彼の言い分には納得出来た。
つまりは、二人も、私が片想い拗らせて一人で悩みまくっていた事を知っていた訳だ。
知っていて、敢えて何も言わず、ただ行く末を見守るに徹していてくれたのだ。感謝しかないわ。
清光に至っては、焦れに焦れて強引な策に出ようとしかけていた事もあったが、私の事を気遣ってか、最後まで彼をけしかける事も無かった。
皆、恐らくきっと気付いていたのだ。何せ、一番鈍そうな本人でさえ気付いていたと言うのだから。
……というか、其処まで私は顕著に面に出していたのか?
今更ながらに思い至って、恥ずかしさに居た堪れなくなり、顔を覆い隠して、穴があるなら埋まりたい精神に駆られた。
勿論、其れは目の前の男に阻止された。
「何やってんだ」
「いや…っ、その、今更ながら気恥ずかしくなってきちまいやして……っ?」
「今更過ぎんだろ。何で今のタイミングでだよ」
「今しがた、たぬさんに言われた事実を自覚した途端に、何か…こう、ぶわわっと……無理、羞恥度MAXで頭沸騰しそう…無理、コレは恥ずか死ぬヤツやん……ッ」
「んなくらいで死なれてたら、こっちの身が持たねぇっつの…。――で…?散々待った挙げ句、まだ俺は待たされんのかよ」
「え…?」
「好きなんだろ、俺の事。何で告りもしねぇ内から人の気持ち決め付けて、勝手に諦めてんだよ?せめて、アンタが其処までしようとした理由聞かせてくれるまで、俺はこっから動かねぇからな」
「何でって……そりゃ、当たり前の事じゃん」
「はぁ?」
此処まで来ては、もう止まらなかった。
私は、これまで押し留めてきた全てを吐き出す勢いで吐露し始めた。
「私達、何の為に此処に居んの?戦の為でしょ?戦況はずっと変わらず膠着状態、戦に終わりは見えずのまま。私は審神者、戦に勝つ為に投入された刀剣男士達を率いて、束ねて、戦の指揮を取らなきゃならない責務がある。戦争の只中に居るのに、呑気に恋愛にうつつ抜かしてる余裕なんて無いでしょ。御上だってきっとそう言うわ。ただでさえ女は戦には不向きだ何だって嫌味言われてきてんだ、手に取るように分かるわ。だから黙ってたって訳じゃない。理由は他にもある」
捲し立て始めた私に驚く彼を他所に、言葉を続ける。
「私は審神者で、本丸の主だ。一人だけを特別扱いする事なんて出来ない。優劣を付けるだなんて烏滸がましい真似、更々無理だ。おまけに、相手は刀で付喪神……今は仮初めの器で人の身を模しているけれども、其れも戦の間だけ。今している戦が終われば、皆本霊へと還る事になる。つまりは、期間限定の仮初めの幻想でしかないって訳……っ。私は人間で、生きる時間も違くて、結ばれたとしても…その先で待ってるのは別れだもの。人の一生は短いから…きっと、私はたぬさんを置いていく事になる。……私には、其れが、何より寂しくて、身が切れそうなくらいに辛いのよ………ッ」
「主……」
「御免、たぬさん……でも、好きなんだ。もう、誤魔化せないし、嘘吐(つ)けない…っ。どうせ、嘘吐いたところで、私嘘吐くの下手だからバレちゃうだろうけどね……。本当、御免。人間って都合良い生き物で。酷いよね。人間は傲慢で欲深いから、勝手に好きになって、勝手な都合で簡単に切り捨てちゃうんだ…。非情だって、恨んで良いよ」
「………っはぁーーー……。アンタって、つくづく莫迦(ばか)だよなぁー……っ」
「なんっ、………ぅええ?」
突然罵倒されて、狼狽える。
彼は、私の事を真っ直ぐに見据えたまま言葉を紡いだ。
「何で其処で謝んだよ。一方的に言い募っときながら、俺の答えは一切無視だってか?其れとも何か?アンタは身が切れそうなまでに辛いのが嫌だから、俺を刀解して全て無かった事にするって?」
「はあ!?んなっ…んな事する訳ねぇじゃん!!莫っ迦じゃねーの!?誰一人として折らせる気無い私が、んな真似するかいッッッ!!断じて無ェから!!地球がひっくり返ったってしねェーから!!つか、何でんな話になってんの!?私、んな事言った覚えひとっつも無いんだけど!?」
「似たような示唆するような事は言ってたけどな。まぁ、変なとこで度胸の無ェアンタにゃ無理な話だとは分かり切ってたが」
「じゃあ、何で、人の事焚き付けるような事言ったの……」
「アンタの本心が知りたかったって、最初に言っただろうがよ。……だから、聞いてみて、心底分かったよ…。アンタが其れ程までに俺に惚れ込んじまってるってのがさぁ」
「…………」
つい、無言になって俯いてしまった。
途端、目の縁に溜まっていた涙の滴がぽたりと溢れ落ちて、膝の上の衣服を濡らした。
一度許したら、後から後から続け様に涙が浮かんで来てしまって、目尻を流れ、頬を伝い落ちていった。溢れた涙は、衣服へと落ちては染みを作るだけだった。
何も泣くつもりなんて無かった。だが、気付いた時には感情的に喚き散らしていて、涙が視界を揺らしていた。彼にとっちゃあ、迷惑でしかないだろう。
そう思ってしまったら、急に居所を無くしたように心細くなってしまって、私は清光の元へ駆け出したくなった。初期刀として、最も信頼を預けた彼ならば、きっと何も言わずとも受け入れてくれるだろう。泣き崩れていたのなら、泣き止むまで側で慰めてくれるだろう。
私は堪らなく不安になって、無意識に初期刀である清光を頼ろうと、腰を浮かせかけた時だった。
目の前の刀が、徐に頭を下げたのだ。所謂、土下座というヤツである。何で……?
訳が分からなくて、私は困惑を張り付けた顔で、彼の旋毛の部分を見返した。
彼は頭を下げたまま、口を開いた。
「すまねぇ。何も、主の事泣かせるつもりじゃなかったんだ…。悪かった」
「……いや、私も変に泣いちゃったりとかして、御免…。私も、泣く気とか無かったんだけど……ほら、私ってば泣き虫だからさ。何か、感情昂ったりすると、泣けてきちゃったりして……まぁ、メンタル弱いせいなんだけど」
「アンタは悪くねぇよ。今のは、言葉足らずに言った俺が悪かったんだ。……悪ィ」
「いや、良いよ……別にそんな気にしてないから」
「アンタが良くても、俺が気にするって言ってんだよ」
彼が溜め息混じりにそう言った。私はすかさず問うていた。
「何で」
「何でって…そりゃ、好いた相手泣かしてんだ。責任感じるだろうがよ……」
「は」
言われた意味が全く理解出来なくて、取り繕っていない素の言葉が口から出ていった。
あっ、と思って慌てて口を塞ぐも、もう遅い。
彼が頭を上げて、此方を見てくる。
「…アンタ、下手に取り繕ったりとかしてねぇ方が良いぜ。どっちかってぇーと、俺はそっちのが気に入ってっし」
「は、え…」
「つかさぁ、アンタに其処まで想われてて、嬉しくねぇ奴が居るかよ?少なくとも、俺は嬉しかったけどな。他にも良い刀は居て、見てくれ良い奴なんて此れでもかってくらい溢れてんのに、アンタが唯一自分の相手に見初めたのは、戦の為に生まれた実戦刀の俺だったってな。純粋な気持ちで認められたんだなってのが、伝わってくる言葉だったよ。……アンタは、先の事まで真剣に考えて、俺の為を思って身を引こうとしてくれてた……そうなんだろ?」
「え……まぁ、うん…?」
「呆けてんなよ。まだ俺の話終わっちゃいねェーからな」
「ア、ハイ…すんませんっした…」
彼の言葉は、まだ続いた。
「確かに、俺も戦の刀が故に、同じ事を思ったさ…。“戦の最中にんな事してる暇あるかよ”って。けど、其れとは別に、アンタの事を幸せにしてやりたいとも思ってたんだ。まぁ、この本丸に居る奴等全員が思ってる事だろうけどさぁ…。アンタが、穏やかに笑っていられるなら、俺はその為の戦に勝つ気で居た。でもさぁ……其れだけじゃ駄目な事に気付いちまったんだよなぁ。戦だけが取り柄だった俺みたいな刀でも、主の事を支える事が出来たなら…ずっと一緒に側に居てぇって、願っちまったんだ……。らしくねぇ事だとは、俺も分かってるさ。けどよ、もうどうしようもないくらい、アンタの事が大事で大事でならねぇんだ。……傷付けたくねぇ、だから、この想いを踏み留まらせるつもりで居た。……でも、アンタの本心聞いたら、やっぱ無理だわ…っ。ごちゃごちゃ悩んだり考えたりすんのは性に合わねぇから、はっきり言う」
頭をがしがしと乱暴に掻いた後(のち)に、そうはっきりとした口調で告げた。
「主、俺はアンタの事に惚れてる。マジな話でだ。刀が人に対して懸想を抱くなんざ、気が触れてるとしか思えねぇだろうが…ソイツはアンタも同じ気持ちだったんだろ?なら、もう迷わねぇよ。変に悩むくらいなら、俺ははっきり物を言う。歯に衣着せぬ物言いだって、歌仙とかには雅じゃねぇって叱られるところだろうけどよ。俺には、直接的な物言いしか出来ねぇし、下手に取り繕っても、アンタが勘違って、また泣かせちまうような事になっても面倒だから直球で言うぞ」
「へい…どうぞ……?」
「俺はアンタが好きだ。添い遂げるなら、アンタみたいな女が良い。つか、アンタしか居ねぇよ。俺を好きで、俺に添ってくれる物好きはよ……っ」
「………………空耳かな……?今、たぬさんから飛んでもない爆弾を落とされた気がしたんですが……私の頭、とうとうイッちまったのかね??」
「人が一思いに告白してやったのに、何でんな事なってんだよ。オラ、こっち見やがれ。明後日な方向見てんじゃねぇ、俺の事見ろや」
「わぁ凄い。たぬさんが凄い気障な口説き台詞言ってる〜」
「実際、今、目の前に居る女を口説いてるところだったんがなぁ…?」
「うーん?たぬさんの目の前に居る女って誰の事だろうな〜?」
「テメェしか居ねぇだろうがよ。何、器用に目ェ逸らしてんだ、こっち向けやゴルァ。無理矢理にでも口吸いすんぞ」
「ひぇっっっ!?調子こいてすんませんっした!いきなりは心臓が破裂するからやめて!!せめて心の準備出来るまで待ってくだせぇ!!」
「…どれくらい待てば許してくれるって?」
「えっ?……其れ、はぁ…えーっとぉ………仮に三日程くらいとかで如何でしょう?」
「よし、分かった。んじゃ、修行戻ったら何が何でもするからな。口吸い以上の事も、これまで我慢して堪えてきた分も纏めて一気にするからな。覚悟してろよ」
「え、は?ま、え?ちょっ……今のどういう事っすか、たぬさん!!?」
「言葉通りの意味だよ。…っじゃ、俺、支度してくっから。準備終わったら声かける。……見送り、してくれるんだろ?そん時までに、その顔、どうにかしとけよ」
「えっ、ちょまっ、たぬさん……ッッッ!!!!!」
最初、顔を突き合わせた時とは打って変わって、彼は晴れやかな顔をして笑って部屋を出ていった。
私は寸分、呆けた状態のまま、理解が追い付けずに居た。
其れまで抱えていた気持ちとが晴れた時、憑き物が落ちたみたいに体が楽になって、心がスッとした。同時に、これまで踏み込めずに居た一線を、互いに踏み越えたのだと気付いて、ぶわっと顔が一気に赤くなるのを感じた。
ひたすらに顔が熱い、でも何だか嬉しくて、天にも昇る気分であった。
今にも何言かを叫び散らしながら走り回りたくなるような、そんな心地であった。
一先ず、清光に報告せねば……!
其れだけを、やっとの事考え出して、急ぎ足で初期刀が居るであろう刀剣部屋の棟へ駆け出す。
そして、離れから出てすぐの曲がり角で、曲がり切れずに、派手にすっ転んだ。
地味に痛いというのを通り越して、打ち付けたところが大層痛く、のた打ち回るように悶え、情けない呻き声が洩れた。凡そ、女らしくの無い声であった。
盛大にすっ転んでしまったが故に、物音を聞き付けた者達が集まってくる。いや本当申し訳ない。
「大丈夫ですか、主君…っ!?」
「派手にすっ転んじまったみてぇだなぁ、大将。怪我は無ェか?頭は打ったりしてないよな?」
「ゔぐふッ………にゃ、にゃんとかぁ……?心配かけてすまなんだや…ちと、慌ててたもんで……っ」
「っもぉー、気を付けてよね?主は女の子なんだから、傷でも残ったらどうすんの?」
「ハハハッ……ほんま、面目ねぇっす……っ」
「ほらよ。いつまでも倒れ込んでねぇで、立てよ。……ったく、仕方ねぇ奴だな、アンタは」
「あははっ……お転婆娘ですまんね。有難う、助かるよ」
スッと目の前へ差し出された手を、よくも見ずに受け取って、体を起こすのを手伝ってもらう。
そうして、改めて礼を口にしようと顔を上げた先で、驚いた。
なんと、真っ先に私へと手を貸してくれたのは、たぬさんだったらしい。
とっくの昔に別れた筈と思っていたのだが、案外まだ近場に居たらしい。
よって、派手な悲鳴を上げてすっ転んだ私の声を聞き付けて、飛んできたらしかった。
二重の驚きである。
「アンタさぁ、転ぶにしても、もっと色気ある声出せよなぁ…?」
「いやぁ〜、其れに関しては善処出来兼ねますなぁ〜!はははははっ……」
「……まっ、別に良いけどよ。修行から帰ってきた後に、存分に聞かせてもらうつもりだし。其れまで気長に待つとすっかねぇー」
「は?え、ちょっ、何ソレどういう事、」
瞬間、視界がよく分からなくなって、目を瞬(しばたた)かせた。
次いで、唇に触れてるらしき生温かなやわこい感触へ意識が移る。
――今、ワタシ、何ガ起コッタ……??
宇宙猫状態の脳内で、その一文だけが片言で再生される。
思考を取り戻した時には、目の前で不敵に笑う想い人の刀が居た。
突如として、周囲がドッと騒がしくなる。
不意打ちで私へ口付けたのだろうたぬさんは、周りの刀に取り囲まれて、羽交い締めにされたり、何やら締め上げられている。おお、怖い。
私は、口付けられた事などすっかり忘れて、可笑しさに莫迦みたいになって笑った。
涙が出るまで笑い転げてたら、その場に居た皆に、「頭でも打って可笑しくなったか…?」と心配された。安心せい、頭は打っとらんし、気も触れとらんわ。
ただ、意固地になって引いていた一線を、ひとっ飛びで飛び越えてくれた彼に感謝している。
無意識に築いていたであろう壁を、いとも容易く踏み倒してくれたどころか、その更に一歩内側の部分にまで触れてくれたのだから。
彼が言うように、下手に取り繕う必要は、もう無いのだろう。
ならば、素直に笑い、泣いて、素の感情を見せていけば良いのだ。
彼が私にくれた、言葉を信じて。
執筆日:2022.02.05
【後書き】
今回参加した企画は、『お題配布式』というものでして、主催者様よりこれまで提出した作品などから感じたイメージ・印象を元にお題を選出して頂く、というまた新しい感じのものでした。
タイトルを頂いて、初めに思い浮かんだのは、刀剣キャラであったのは同じだったんですが、実は最初にお相手として考えたのは、燭台切か御手杵でした。
たぶん、何となくタイトルの“熱”という部分に引っ張られた事によるものだと思います。
ので、初めに抱いた構想は、風邪を引いた相手刀を看病している内に、審神者の温かな優しい気遣いに絆された相手刀が、自分は彼女に惚れてるんだと気付いて、熱に魘される最中、朧気な意識で審神者へ告白しちゃう……みたいな流れにする予定でした。
しかし、実際に書いたお話は全く異なる物で、ここまで長くなる予定はありませんでした(笑)。
書きたい事を詰め込む内に、私の悪癖が出まして、大層な長文に……っ。
何故、同田貫をお相手に定めたのかと言いますと…単純に、私の最推し刀だったからです(コレ言うの何度目だろう=何度だって言うヤツ)。
刀剣のゲームその物が目出度く七周年を迎え、その折に今一度自分の最愛の刀への気持ちが溢れまして……。
心傾くままに、彼が修行へ出た日の事を思い巡らせながら書かせて頂きました。
我が本丸の同田貫が修行へ旅立ったのは、今から二年程前の六月の初頭になります。
順番として、彼は11番目でした。
審神者就任二周年の記念すべき日の翌日の日に見送ったので、今でもよく覚えています。
たった二年程の事ではありますが、思い出を懐かしみながら、彼への気持ちを改めて形にするように想いを込めました。
お陰様で、大層な文量と化してしまいましたが、書きたい想いを全て詰め込む事が出来たので、満足です。
兎に角、今最大限に書ける気持ちはコレだ、と自負しております。
きっと、何度だって似たような話を書き綴る事でしょう。
そうして、推しへの愛を再確認し、想いを言葉という形で込めていくのです。
後書きを締め括るにあたりまして、素敵な企画を用意してくださった宮様には大変感謝致します。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の稚作な作品を並べてくださり、誠に有難うございました。
今回参加した企画は、『お題配布式』というものでして、主催者様よりこれまで提出した作品などから感じたイメージ・印象を元にお題を選出して頂く、というまた新しい感じのものでした。
タイトルを頂いて、初めに思い浮かんだのは、刀剣キャラであったのは同じだったんですが、実は最初にお相手として考えたのは、燭台切か御手杵でした。
たぶん、何となくタイトルの“熱”という部分に引っ張られた事によるものだと思います。
ので、初めに抱いた構想は、風邪を引いた相手刀を看病している内に、審神者の温かな優しい気遣いに絆された相手刀が、自分は彼女に惚れてるんだと気付いて、熱に魘される最中、朧気な意識で審神者へ告白しちゃう……みたいな流れにする予定でした。
しかし、実際に書いたお話は全く異なる物で、ここまで長くなる予定はありませんでした(笑)。
書きたい事を詰め込む内に、私の悪癖が出まして、大層な長文に……っ。
何故、同田貫をお相手に定めたのかと言いますと…単純に、私の最推し刀だったからです(コレ言うの何度目だろう=何度だって言うヤツ)。
刀剣のゲームその物が目出度く七周年を迎え、その折に今一度自分の最愛の刀への気持ちが溢れまして……。
心傾くままに、彼が修行へ出た日の事を思い巡らせながら書かせて頂きました。
我が本丸の同田貫が修行へ旅立ったのは、今から二年程前の六月の初頭になります。
順番として、彼は11番目でした。
審神者就任二周年の記念すべき日の翌日の日に見送ったので、今でもよく覚えています。
たった二年程の事ではありますが、思い出を懐かしみながら、彼への気持ちを改めて形にするように想いを込めました。
お陰様で、大層な文量と化してしまいましたが、書きたい想いを全て詰め込む事が出来たので、満足です。
兎に角、今最大限に書ける気持ちはコレだ、と自負しております。
きっと、何度だって似たような話を書き綴る事でしょう。
そうして、推しへの愛を再確認し、想いを言葉という形で込めていくのです。
後書きを締め括るにあたりまして、素敵な企画を用意してくださった宮様には大変感謝致します。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の稚作な作品を並べてくださり、誠に有難うございました。
