望郷の宝箱


 ジーコ、ジーコ、回すよ螺子回し。
 嘗て昔大好きだった、あの音楽を再び聴く為に。
 壊さないように気を付けながら、ジーコ、ジーコ、螺子を回す。
 やがて耳に響くは、懐古のオルゴール音。
 音楽と共に回り出す、盤上でピアノを弾く青色のレースフリルのドレスを身に纏う美しき女性。
 クルクル、クルクル。
 螺子を回した分だけ、音楽は鳴り響く。
 幼心に目に焼き付いたその光景は、今でもキラキラと宝物のように輝きを放っている。
 ジーコ、ジーコ、飽きずに回した螺子回し。
 そして、回した分だけ、クルクル、盤上で回る綺麗なピアノを弾くドレス姿の女性。
 飽きるまで、何度も繰り返し螺子を回しては見て聴いた。
 手元にあった其れは、気付けば壊れてしまったけれど、今も何処かのお家で嘗ての自分と同じように螺子を回しては、クルクル回る様を眺めながら聴いているのだろう。
 その度に、聴こえ来る螺子回しの音。
 壊さないように気を付けながら、ジーコ、ジーコ、螺子を回す。
 やがて耳に響くは、懐古のオルゴール音。
 クルクル、クルクル。
 音楽と共に回り出す、盤上でピアノを弾く綺麗なドレスを身に纏った女性。
 クルクル、クルクル。
 ジーコ、ジーコ。
 今も耳の奥で鳴り響いているよ。


後書き
※原文は此方より。
原文メモ日:2025.07.01/執筆日:2025.10.27
加筆修正日:2025.10.31/初出日:2025.10.31
公開日:2026.02.23