その他
ファンティーヌ

2022/10/30 21:45

(G32ーゴ♀)
25歳、女性、168p
一人称:私
二人称:貴方

舞台女優を目指し田舎から出てきた娘。
女優になる事を両親には反対されたが、演劇好きの祖母だけは応援してくれ、魔除けに、と悪を払うと言われているサンゴのアクセサリーをくれた。ファンティーヌはそれをファーの留め具として使っている。

都会に出てきたのは良いものの、数々のオーディションを受けるも歯にかからない。
ファンティーヌは役者として特出して何か秀でるというわけでなく至って普通の女の子だった。数少なく受かったオーディションもあったが、セリフもない端役が与えられるのみ。
役者として生活が送れるはずもなく、昼はオーディション、夜は酒場の給仕…といった生活を続けていた。

ある日の家への帰路、薄暗い道を通っていると人のいないその路地に目元を覆った男が怪我をして座り込んでいた。
ファンティーヌは盲目の男が暴漢に襲われたのかと思い考える暇も無くとにかく家へと連れ帰った。怪我の治療を行う間、男に家や名前など聞くがはぐらかされる。治療をして身体に触れることで傷だらけなことや左腕がない事に気付き、何か訳有りの男だと知る。
それでも怪我をしていて放っておけなかった事と盲目の男ならば自分に何か悪さをする事も無いだろうと、その晩は一晩泊めることにした。
夢の為家を飛び出してきた身、オーディション通いと仕事に明け暮れる毎日でまともに人と話すことが無い生活をしていたファンティーヌは名前も知らぬ男に一晩かけて自分の事を語った。朝が来ればもう会わないと思えば話しやすかったのかもしれない。男の表情はあまり読めなかったが聞いてる風ではあった。それだけでファンティーヌは満足した。
次の日の朝、眠っている男の顔を見てつい好奇心に駆られたファンティーヌは目を覆う布を取ってしまう。顔に触れられて起きた男の目は人間の目ではなかった!ファンティーヌは驚いた、が訳有りの男には何故かぴったりな気がしてただ驚いた顔をしていた。
男は少しだけ悲しそうな顔をしてファンティーヌの前から去った。

去った男は何日か後ファンティーヌの前に現れた。男は「人ではないと知られてはいけなかった。しかし知られてしまった。でもそういう時どうすればいいか分からなかった」と言う。男は盲目な訳ではなく、人と異なる目をしていたが為に隠していたのだった。知られてはいけないという事は知られると貴方に対して何か不利益があるという事。でも私は何もしないから大丈夫よ、ファンティーヌはそう優しく言った。
男はファンティーヌの簡単な質問に答えてくれた。言葉は通じ、また話せるが語彙は多くないようだった。ファンティーヌが驚いたのが彼に名前が無いことだった。ファンティーヌは彼に自分の好きな作品に出てくる人物の名前だと言ってジャンと彼に名前をつけた。愛の物語なのよと言ってファンティーヌはその場で即興劇を始めた。コロコロと場面や人物に合わせて表情を変えるファンティーヌにやはりジャンは聞いている風でもあったし今度はしっかりと両目で見ていた。
改めてファンティーヌは女優になりたいという夢を強く持つのであった。

こうして何度もジャンと逢うことを続ける中でも、数多く受けたオーディションでは役を得られなかった。志と現実とのギャップに打ちのめされたファンティーヌはこれを最後に田舎に帰ろうと決めたオーディションにやはり落ちてしまう。
翌日、ジャンへの別れの挨拶を、と彼を捜すがどこにも彼の姿は無かった。仕方なく駅へ向かうと実家行きの列車に乗るためのホームで号外が配られていた。見出しには太文字で『 新進気鋭の女優、変死』と書かれていた。
その女優はファンティーヌが受けたオーディションでヒロインの座を勝ち取ったあの女優であった。
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